ADLやQOLとICF

ICFは、ADLやQOLの対象をほとんど含む

ICFのそもそもの目的が、21世紀の健康分類として、ADLやQOLのようなものの国際的な比較可能性の弱さがあることから、ICFはこれらADLやQOLの対象を含んだものと位置づけられます。

ただ、現状では、ADLやQOLの質問票が信頼性や妥当性の検討が行われているものに対して、ICFにはそのような検討が欠けているために、実用的な面ではうまく併用することが必要でしょう。

ADLやQOLに対するICFの利点

ICFが、ADLやQOLに対して基本的に優れている点として、次のようなことがあります。

ADLは「日常生活活動能力」などと訳されることもありますが、原語には「能力」はないなど、概念的に混乱しやすいことが表れています。高齢者の場合など、体力測定のような心身機能の評価の目的で、ADL質問票を使うことがありますが、「階段は上れるか」という質問についてその傾きや手すりの有無など標準化がないと適切な評価になりにくいという限界などがあります。

ADLやQOLは基本的に医学モデル的な発想で、なるべく少数の項目で社会生活能力や日常生活能力などを、当該個人の特質として評価する目的で使われることが多いものです。しかし、社会生活や日常生活の内容は多様性もますます大きくなっており、個人の機能障害があっても社会生活や日常生活を向上させる環境整備の方法が多くありますが、一般に、これらの個別性はADLでは扱いにくく、「社会モデル」的発想に欠けやすいという点に注意が必要でしょう。


ICF覚書に戻る
ホームに戻る
Yuichiro Haruna
yharuna-tky@umin.ac.jp