研究法 │Study│

 近年の医学は、EBMが全盛である。様々な領域において大規模な無作為化比較試験が積極的に行われ、その中で統計学的な有効性を見いだせない診断法や治療法は、「エビデンスがない、または乏しいもの」として扱われる。確かにEBMの概念を導入することによって、患者は科学的根拠に基づいた医療を受けられるようになった。しかし、EBMだけで医療が遂行できるわけではなく、症状が典型的でない場合には、医療も患者も苦悩するとの批判がある。最近ではEBMとNBMを統合した医療を行うべきとする声も大きくなっている。NBMにおいて、人間はそれぞれ自分の「物語」を生きており、「病気」もまた、その物語の一部であるとされ、治療的な対話が重要な柱となっている。

エビデンスに基づく医療 Evidence-based Medicine: EBM
 "the conscientious, explicit and judgicious use of current best evidence in masking decisious about the care of individual patient" 「入手可能で裁量の科学的根拠を把握した上で、ここの患者に特有の臨床状況と価値観に配慮した医療を行うための一連の行動指針」
 医療に科学的手法を取り入れようとする運動のひとつである。医療行為における治療法の選択などにあたっては、理論や経験や権威者の判断ではなく、確固とした疫学的証拠に基づき、科学的に最良の判断をすべきであるという考え方を最大の特徴とする。

物語に基づく医療 Narrative-Based Medicine: NBM
 「Narrative」=「語り」あるいは「物語」。
 1998年に英国でそのコンセプトが初めて提唱された。
 一人一人の患者には自らの人生とともに、それぞれの疾患に対する物語がある。その物語を患者と治療側が共有することで、科学としての医学と個々の人間に対する医療との間に横たわる溝を埋めていこうというもの。
  1. 患者の語る「病の体験の物語」をまるごと傾聴し、尊重する。
  2. 医療でのあらゆる理論や仮説や病態説明を「構築した物語」として相対的に理解する。したがって、科学的な説明を唯一の真実であるとはみなさない。
  3. 異なった複数の物語の共存や併存を許容し、対話の中から新しい物語が創造されていることを重視する。


無作為二重盲検法 randomized double-blind trial
 EBMに基づいた臨床試験のための研究法。