第24回
2005年8月1日

死後看護とオートプシー・イメージング

重粒子医科学センター病院 看護課
徳山 憲子

当院看護師のAiへの関与を振り返って検討し、看護師と死亡患者及び遺族との関わりを「死後看護」という観点から捉え直してみた。当院看護師に「死後看護という考え方は大切だと思うか」という質問に対する意識調査を実施してみたところ、35名中33名(94%)が大切であると回答した。看護師は、潜在的に死後看護という概念を体得しているように思えた。

詳細に検討してみると、死後看護という概念は大きく二つに分けられる。遺体に対する直接的ケアと遺族に対する精神的ケアである。これまで死亡患者への対応は、死後処置という方法論、技術論として述べられてきたことが多く、必ずしも明確な意識で対応してきたわけではなかった。看護師は、長期間辛い状態にあった遺族の気持ちを配慮し、遺体ケアと搬送にあたる。死亡時の処置を行う際にも、看護の心を持ち続けることで、看護師自身も生前看護に対する納得や遺族感情の受け入れができるようになる。こうしたことが「死後看護の概念」の根幹を成すのではないかと考える。

ここでは「死後看護」にAiが影響した症例を経験したので、呈示する。

K氏は鼻腔癌・重粒子線治療施行。脳転移、多発骨転移が出現、姑息的照射を施行した。頸椎転移により下半身完全麻痺が生じたため全面介助が必要となった。妻はパート後の16時から19時まで6ヶ月間毎日身の回りの世話を続けた。

治療のかいなくお亡くなりになった直後、担当医の解剖依頼に対し、患者を一番知る妻から、患者本人の代弁者として「本人は医学の役に立てればとても喜ぶと思います。そういう人でしたから」というお返事をいただいた。しかし遺族の思いは様々であり、他の親族の反対により解剖承諾は得られなかった。そこで担当医がAiとネクロプシーの併用法について説明したところ、家族全員が「お世話になったので」と直ちに快諾された。遺体に傷をつけないAiは遺族にとって、心情的に受け入れやすい検査である。Aiを遺族に依頼することは、遺族から見ると、受け入れやすい検査を受諾することで、医療従事者に対する感謝の気持ちを伝えることもできるというメリットが存在する。看護師にとっては、患者と遺族への思いを、看護のエビデンスとして捉え直すことで、遺体と遺族への新たな対応の模索が可能になる。Aiに対しては、遺族との橋渡しになる看護師のかかわりの重要性も理解される。

自分たちのケアの実際を振り返り、またアンケート調査により看護師全員から死後看護について意見を聞くこともでき、看護課として、患者や遺族への関わりが一つのまとまりとして現れてきたことも成果の一つだと思う。

これまでのAiへの関与を振り返る中で、私たちは「死後看護」の概念にたどりついた。これから、当院看護師の実践が一つの形となり学問として発展していくことを望んでいる。


文献::徳山憲子、村上ちえみ、中村美佐子.オートプシー・イメージング(Ai)への看護師の関与. 臨床看護31.(7):1117-1119.2005.

謝辞 本稿は平成17年度重粒子医科学センター病院センター長調整費の補助を受けました。