第11回
2004年7月9日

倫理委員会;横浜中央病院での見解

社会保険横浜中央病院 病理
桂 義久

2004年3月に当院(社会保険横浜中央病院)でもAi導入に関して倫理(審査)委員会で承認を得、病院として積極的にAiを導入していこうとの方向づけがなされました。その際の意見と当院の見解を提言としてまとめました。

当院のような一般病院では、病理解剖の主たる目的は、・死因を解明し最終診断を下すことで臨床医の疑問に答えること、・CPCにより研修医や若手医師等への教育を行うこと、等となっています。このような状況の下、当院ではAiに対し、“病理解剖による診断が最終的診断であり、Aiは死因追求の1手段として位置付け、病理解剖を行い最終病理診断をつける際の補助的手段として、必要ならば積極的に導入する。”という立場をとることになりました。

Ai試行において、倫理的問題は存在するか?という点に関する討議の際、当院顧問弁護士の方から

  • 病理解剖のように遺体に侵襲が加わらない。
  • 摘出臓器を使用して検索するものではない。

等の理由で、「病理解剖に対する承諾書が得られている、あるいは病理解剖承諾書にレントゲン学的検索も行う旨が記載されていれば全く問題はないだろう」という意見を頂戴しました。

私の個人的意見では、例えば解剖時に血液や臓器から採取した生化学的データと生前の検査データを比較検討する姿勢が大切であるのと同様に、死亡時の画像所見も病理学的最終診断をつけるためには必要と考えています。

これまでも病理医ならばThanatophoric Dysplasia等が疑われる死産児では全身骨格のX線写真を撮像していたと思います。これも立派なAiに相当すると考えます。このような症例に対しX線写真をとる必要が生じたときに、倫理委員会に諮る必要性を考えたでしょうか?確定診断をつけるために必要な検査の場合はX線写真であってもとるのが当然であると考えているのではないかと思います。今まで当然のことと思っていたことの延長線上に、CTやMRIという大規模な画像検査が出現しただけであるというシンプルな視点を見失っているために、Aiを複雑なものとして考えているように思えます。

当院は中華街の中にあり、30%以上の患者は中国系の方々で、宗教上の理由や民族的慣習により病理解剖が得られないケースが多々あります。そのために死亡診断書の作成に苦慮するケースが多いというのが現状です。Ai導入により、将来は病理解剖承諾が得られない症例でもAi施行によって死因の推定ができ、納得のいく死亡診断書が作成できるようになればありがたい、との意見もでました。ただしこれはあくまでも病理解剖承諾がとれず、かつ死亡診断書記載が困難な症例に限定するということが前提です。

当院でも、CTやMRIの撮像をいつ、どのように行えばよいか、放射線技師や看護師の協力態勢をどのように確立するか、遺族に対する謝礼などはどう考えるか、画像読影をどのようにシステム化するのか、症例情報の保管はどうすれば安全か等、解決しなければならない問題が山積しており、対応はまだ完全ではありませんが、各担当部所で話し合いが少しずつ進行しつつあり、病院として対応できるように進んでいる途上です。