ナースのためのコンピュ−タ通信講座

  目 次
序言(白川洋一)   1、パソコン通信(冨岡譲二)
2、LAN(美代賢吾)  3、インターネット(新田賢治)
4、救急医療とコンピュ−タ通信(伊藤成治)
5、災害医療とコンピュ−タ通信(越智元郎)


3 インターネット

市立宇和島病院麻酔科 新田賢治
(エマージェンシー・ナーシング 9 (12): 1077, 1996)


目 次

はじめに
インターネットの歴史と仕組み
WWW(World Wide Web)
電子メールとメーリングリスト
ネットニュース
終わりに


はじめに

 ここ数年の間に世界中に,存在する計算機ネットワークを次々につないでいってあたかもひとつの大きなネットワークとして利用する試みが盛んに行われるようになってきた.ネットワークとネットワークをつなぐネットワークという意味でインターネットと呼ばれている.インターネットでは航空券の予約や買い物ができたり,新聞が読めたりするので利用者は急速に増え続けている.今回はこのインターネットについての紹介をさせていただく.

インターネットの歴史と仕組み

 インターネットの生い立ちは1969年,米国国防総省がARPANETというネットワークを構築したことに始まる.ARPANETは軍事研究を支援するためのもので,爆撃などで部分的に停電しても機能するネットワークについての研究が行われた.その後,軍事用のネットワークはMILNETとして独立し,ARPANETは大学や研究機関のネットワークのバックボーン(背骨)としての役割を果たすようになった.

 1980年,カリフォルニア大学バークレー校の人たちが,BSD版UNIXという計算機の基本ソフト(OS)を開発した.このOSにははじめからネットワークに必要な機能が付属していたため,これを用いて米国の各大学が接続されていった.キャンパスネットワークの普及が進むにつれ,各種企業,団体のネットワークも次々と相互に接続され,蜘蛛の巣を作るように世界中にネットワークが張りめぐらされていったのである.現在では71カ国,26,000以上のネットワークが結ばれており,利用者は推定3,000万人以上となっている.  インターネット上ではさまざまなサービスが自主的に運営されている.例えば,ある人が遠くの友人に電子メールを送った場合,メールはネットワークを次々とリレーされてその人の所まで届けられる.インターネットがパソコン通信と大きく異なる点がここにある.PC-VAN,NIFTYserveといったパソコン通信では,1つの大きな計算機に会員全員が接続し,その計算機との間でのコミュニケーションが持たれる.しかし,インターネットの場合は利用者はその気になれば世界中の無数の計算機と会話することができてしまうのである.

 インターネットの中ではなんでもできるといわれる.それは音声,画像,文字などのデータを自由に送受信できるからである.情報はインターネットによって迅速に伝わるため,新しい技術が開発されるとすぐに,インターネットの中で利用できるようになっている.今後もどんどん新しいサービスがインターネットで生まれ使われていくことであろう.

WWW(World Wide Web)

 インターネットには非常にたくさんの情報(リソース)が存在し,それを簡単に探し出せる仕組みが要求され開発されてきた.その1つがWWWである.WWWはCERN(European Laboratory for Particle Physics:ヨーロッパ粒子物理学研究所)によって提唱された全世界に分散した画像,動画,音声などからなるデータベースを構築するプロジェクトである.情報を得ようとする人(クライアント)は,モザイクやネットスケープといったブラウザ(検索するためのプログラム)を使用する.

 WWWを利用すると情報提供者は最寄りの計算機に流したい情報を置くだけで,あとは見たい人が勝手に情報をとっていってくれる.一方情報を求めている人は,必要な時に必要な情報だけを自由に手に入れることが可能である.そのためこれまで情報提供者が宣伝にかけていた費用が大幅に削減されることになり,また情報の受け手にとっては時間に制約されることがなくなって,両者にとって大変都合がよくなった.

 ブラウザのひとつ,ネットスケープを起動すると何も設定していない場合ネットスケープ社のホームページに接続される(図1).情報のありかを示す場所があらかじめ指定されているわけで,この情報のありかのことをURL(Uniform Resource Locater)という.直接URLを指定することも可能である.「リソース名 : //計算機名/パス名」という書き方をする.例えば市立宇和島病院をポイントする場合は,

 http://www.uwajima-mh.go.jp/

とする.とっつきの悪い表記法であるが,コロンやスラッシュを打ち間違えるとまったくつながらないので注意が必要である.もっとも,ネットスケープの場合は簡単にwww.uwajima-mh.go.jpと指定するだけで当院の情報を得ることが可能になっている(図2).

 画面に表示される文字にはところどころ違う色やアンダーラインがほどこされた部分がある.その部分をマウスでクリックすれば関連する次の情報が表示される.すなわちハイパーテキストといわれるMacではおなじみの仕組みが用いられている.異なるのは,その情報の蓄えられた場所が,自分のハードディスク内にとどまらず,全世界に散らばって存在する点である.

 このようにWWWを使うと,だれもがインターネットの情報をマウスを使って次々と芋づる式に手に入れることができるようになる.これを波乗りにたとえ,ネットサーフィンと呼ぶ人たちもいる.

電子メールとメーリングリスト

 電子メールは離れた人同士でメーセージを送りあう仕組みである.地球の裏側に住んでいる人に宛てて出してもごく短時間で届けられる.受け取る人は好きな時に読めるので電話のように作業を中断されることもない.郵便を送る時に宛先が必要なのと同様,電子メールを送る時にも宛先が必要である.利用者個人個人が世界で1つしかないアドレスを持っている.著者の場合は,以下のようなアドレスである.

 knitta@uwajima-mh.go.jp

アドレスの標記の仕方は

 ユーザの名前@組織名.組織の種類.国名

 となっている.uwajima-mhはUwajima Municipal Hospitalの略である.組織の種類にはco(企業),ac(大学),ad(ネットワーク管理組織),go(政府関係),or(これら以外の組織)があり,それぞれ2文字で識別される.

 電子メールは相手が1人というのが基本であるが,何人かに同じ内容の手紙を送ることもできる.少ない人数のときは,メールアドレスを全部書けばすむ.しかし,人数が増えるとこの手間が大きくなる.複数のメールアドレスをグループにして,そのグループのメールアドレスに送って全員に届くようにしたものがメーリングリストである.これにより非公開のグループでの議論をすることができる.まただれでも参加できるようなメーリングリストもたくさんある.生活,趣味を同じくする人たちが集まって,さまざまな共通の話題についての情報交換が行われている.

ネットニュース

 パソコン通信の掲示板(BBS)にあたるものである.異なるのはパソコン通信ではその会員しかアクセスできないが,インターネットのネットニュースはあちこちのニュースを供給する計算機の間で記事が交換されるので,世界中の人たちがほぼ同じ内容を読むことができることである.記事はいくつものニュースグループに分類され,さまざまなジャンルが存在している.代表的ニュースグループに,fj,tnn,comp,altなどがある.このうちfj,tnnは日本語で配送されている.昨年,医学関係者のためのニュースグループjpmedが作成され,医学に関する自由な意見交換や情報提供が行われるようになった.

終わりに

以上インターネットとその代表的なツールについて簡単に述べさせていただいた.WWWは現在,全世界的に爆発的に発展している.電子メールは電話と同じように気軽に使える優れものである.今回はどうすればインターネットに接続できるのかについては書けなかったが,書店にはいろいろな雑誌でインターネットの紹介がされている.ぜひそれらも参照されたい.


■救急・災害医療ホ−ムペ−ジへ  ■News from the GHDNet