警察官による応急処置を

(救急・蘇生関連メーリングリストの論議より)


 目次

新聞記事紹介(2005〜2006)  11月 9日   巻き添え死:事故後5分間放置、警官は救命処置を   担当記者からのメッセージ  11月17日   いのちの輪:救命問題を考える 警察官による心肺蘇生、2年前に医師らが要望書  11月19日   いのちの輪:救命問題を考える 福岡・豊前の死亡事故 2警官、救急講習受けてた  11月26日   全国の警察で差 「組織的に実施」36都道府県−−毎日新聞調査   いのちの輪:救命問題を考える 警察全体で意識を 「手いっぱい」恐怖心吐露も  2006年 1月20日   いのちの輪:救命問題を考える 警察官の訓練要望−−衆院内閣委で民主議員  2006年 2月 5日   いのちの輪:救命問題を考える 同僚が救急法学ぶ 事故犠牲者の会社で講習−−福岡

衆議院内閣委員会における質疑(2006/01/19)

救急医療メーリングリストにおける意見交換

 越智[eml-nc5: 1738] 事故後5分間放置、警官は救命処置を  B [eml-nc5: 1739] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  C [eml-nc5: 1742] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  D [eml-nc5: 1743] RE: 事故後5分間放置、警官は救命処置を E [eml-nc5: 1744] RE: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  中村[eml-nc5: 1745] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  越智[eml-nc5: 1747] Re: 1739 事故後5分間放置、警官は救命処置を  長嶺[eml-nc5: 1748] 事故後5分間放置、警官は救命処置を  B [eml-nc5: 1749] Re: 1739 事故後5分間放置、警官は救命処置を  H [eml-nc5: 1750] Re: 1739 事故後5分間放置、警官は救命処  平岡[eml-nc5: 1751] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  山本[eml-nc5: 1753] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  平岡[eml-nc5: 1756] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  K [eml-nc5: 1757] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  おかどめ[eml-nc5: 1758] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  M [eml-nc5: 1759] 交通事故時の電話は119,110?  N [eml-nc5: 1760] RE: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  O [eml-nc5: 1761] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  越智[eml-nc5: 1763] Re: 1757 事故後5分間放置、警官は救命処置を  P [eml-nc5: 1764] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  中村[eml-nc5: 1765] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  B [eml-nc5: 1766] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  Q [eml-nc5: 1767] 事故後5分間放置、警官は救命処置を  岡田[eml-nc5: 1768] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  今井[eml-nc5: 1769] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  山本[eml-nc5: 1773] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  平岡[eml-nc5: 1775] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  越智[eml-nc5: 1777] 公開ウェブ資料を(事故後5分間放置、警官は救命処置を)  長嶺[eml-nc5: 1779] 警察官による応急処置を(改題)  P [eml-nc5: 1780] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  U [eml-nc5: 1781] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  中村[eml-nc5: 1782] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  V [eml-nc5: 1783] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  W [eml-nc5: 1784] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  K [eml-nc5: 1790] ちょいと怒りを放って良いでしょうか?  X [eml-nc5: 1791] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  Y [eml-nc5: 1793] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を  Z [eml-nc5: 1794] Re: ちょいと怒りを放って良いでしょうか?  越智[eml-nc5: 1795] 警察官による応急処置(記事をウェブ収載)  越智[eml-nc5: 1796] Re: 1795 警察官による応急処置(仰臥位でない傷病者へのアプローチ)  P [eml-nc5: 1797] Re: 警察官による応急処置  あ [eml-nc5: 1798] Re: 警察官による応急処置  越智[eml-nc5: 1799] Re: 1797 警察官による応急処置  長嶺[eml-nc5: 1808] 警察官による応急処置(社会機能維持者)  越智[eml-nc5: 1809] Re: 1790 ちょいと怒りを放って良いでしょうか?  P [eml-nc5: 1810] Re: 1797 警察官による応急処置  越智[eml-nc5: 1811] Re: 1810 警察官による応急処置(ご意見をウェブ資料に収載させてくださ  い [eml-nc5: 1812] Re: 警察官による応急処置  P [eml-nc5: 1813] Re: 1810 警察官による応急処置(ご意見をウェブ資料に収載させてください)  岡田[eml-nc5: 1814] Re: 警察官による応急処置  山本[eml-nc5: 1815] Re: 1810 警察官による応急処置(ご意見を  K [eml-nc5: 1816] Re: 1810 警察官による応急処置(ご意見を  う [eml-nc5: 1817] Re: ちょいと怒りを放って良いでしょうか?  え [eml-nc5: 1818] Re: 1810 警察官による応急処置(ご意見を  お [eml-nc5: 1819] Re: 1810 警察官による応急処置(ご意見を  越智[eml-nc5: 1827] ウェブ収載にご協力下さい(警察官による応急処置を)  越智[eml-nc5: 1828] 続報記事―警察官による心肺蘇生 か [eml-nc5: 1829] Re: 警察官による応急処置(ご意見を N [eml-nc5: 1831] RE: 警察官による応急処置(ご意見を  P [eml-nc5: 1832] Re: 続報記事―警察官による心肺蘇生  山本[eml-nc5: 1833] Re: 続報記事―警察官による心肺蘇生


新聞記事紹介

 下の記事は新聞社のご許可のもとにウェブ収載させていただきました(ウェブ担当者)。


2005年 11月 09日(毎日新聞福岡版)

【巻き添え死:事故後5分間放置、警官は救命処置を】
消防官の父、訴える−−福岡・豊前

◇事故後5分間、息子は車道に放置された

 福岡県豊前市で10月12日夜、パトカーに追われた車が他の車両に衝突し、巻き添え となった男性が死亡する事故があった。現場には警察官が先に到着したが、救急車が 来るまで被害者の救命処置はとられていなかった。事故直後の処置の有無が死亡率を 大きく左右するとされる救急医療の現場では、捜査を優先するあまり警察官による負 傷者の手当てが不十分だと指摘する声も多い。現職消防官である被害者の父親は「警 察官も救命救急の基本的技術と意識を持って」と訴える。【出来祥寿】


 死亡したのは、同県椎田町上ノ河内の会社員、加生(かしょう)徹也さん (23)。豊前署によると、12日午後8時57分ごろ、北九州市警のパトカーに追跡され た元診療放射線技師の舟本祐紀容疑者(21)=業務上過失致死などの容疑で逮捕=の 車は約1・4キロ逃走したうえ、赤信号を無視。青信号で交差点に入った徹也さんの 車に衝突した。

 父親の京築広域圏消防本部消防司令、順一さん(51)は事故発生当時、本部の指令 室で勤務中だった。現場は徹也さんの通勤ルート。「20代の男性が負傷」という報告 に息子だと直感した。病院に妻と駆けつけ、徹也さんの死亡を確認した。

 順一さんは葬儀の席で、現場に出動した救急救命士から「徹也さんは、警官の手当 てを受けずに車道上に放置されていた」と聞かされた。この救急救命士は毎日新聞の 取材に「徹也さんは車外に投げ出されてうつぶせ状態のままで、気道の確保もされず に手当ても受けていなかった」と話す。

 パトカーからの119番通報は午後8時58分にあり、救急隊が現場に到着したのは 同9時3分。少なくとも5分間は放置されていたことになる。

 事故について、県警広報課は毎日新聞の取材に「パトカーの隊員2人は事故後すぐ に119番通報した。肩を揺らして加生さんの意識確認をしたり、脈を調べたが、反 応はなかった。気道確保などはしていない」と答えた。さらに、救命処置をとらな かった点について「新たな事故の防止や違反車両の運転手の身柄確保もしなければな らなかった」と話している。

 これに対し、順一さんは「あおむけにして気道を確保し、自発呼吸の確認をするの は市民にも教えている救急の基本。警察の対応はあまりに不十分だ」と訴えている。

加生さんが亡くなった事故現場

■解説
 ◇講習受け市民に範示せ

 日本では心肺停止など重篤な症状になった人の救命率が欧米に比べかなり低く、そ の原因の一つに「第一発見者による応急手当ての不足」が挙げられている。社会全体 で取り組むべき問題だが、救急医療に携わる医師は「特に警察官が救命救急の講習を 積極的に受けるなどして、範を示してほしい」と話している。

 「警察官が現場で心肺蘇生などの処置をしたという話はめったに聞かない」。関東 地方で長年、救命救急に取り組む医師はこう打ち明ける。現場の保全などが警察官の 仕事だが、この医師は「指示されたこと以外はやらない、という印象を受ける」。ま た、別の救命救急医は「十分な訓練を受けていないため、手当てに二の足を踏むとい うのが実情では」とみる。

 けが、病人の発見者がすぐに気道確保や人工呼吸などを施し、救急隊員に受け渡せ ば「救命のバトン」がつながり、助かる率は高まる。国内では昨年、一般人にも心臓 への電気ショック(自動体外式除細動器、AED)の使用が解禁され、救命救急への 関心も高まりつつある。

 しかし、最も基本的とされる心肺蘇生法も、講習を受けた成人の市民はまだ少な く、福岡市でも3割に達していない。現場であわてずに処置をするために、定期的に 講習を受け直すことも重要だ。

 父親の順一さんは「息子は結果的に助からなかったかもしれない。しかし、最初の 発見者が救命の意識を持ってくれなければ、助かる命も助からない」と語る。この事 故をきっかけに、広く救命救急の意識と技量が高まれば、失われた若い命に報いるこ とができる。警察がその先導役になれないだろうか。【金田健】


■担当記者からのメッセージ

 豊前市で10月、今の救命救急体制の現状をいろいろな意味で考えさせられる痛まし い事件が起きました。毎日新聞が、11月9日朝刊の社会面で大きく報じています。

 毎日新聞は、この記事をきっかけに、警察官が、ひいては市民が積極的に心肺蘇生 法などの講習に参加し、救命救急への意識を高めてもらえるようなキャンペーンを計画して います。そのためには、まずこの事件に対する救急サイドの方々のさまざ まな声、意見を紹介し、問題提起をしたいと思います。

 毎日新聞福岡の報道部(電話 092-781-3100、電子メール fuku-shakaibu@mbx.mainichi.co.jpまで 皆様のご意見をお寄せ下さい。


2005年 11月 17日(毎日新聞西部朝刊)

【いのちの輪:救命問題を考える 警察官による心肺蘇生、2年前に医師らが要望書】

◇福岡県警から返答なし、豊前の事故に生かせず

 北九州市内の男性(当時70歳)が03年3月に死亡した際、現場に駆けつけた警察官 の処置に疑問を感じた医師らが、同市内の全警察署に改善を求める要望書を提出して いたことが分かった。福岡県豊前市で10月、暴走車の巻き添えとなって死亡した被害 者の父親も事故現場の警察官の救命処置の不十分さを訴えているが、県警は2年半前 の医師らの提言を生かせなかった形だ。医師らは「今回の事故をきっかけに、改めて 問題提起をしたい」と話している。【救命問題取材班】

 要望書を提出していたのは、日本蘇生学会心肺蘇生法普及委員で、愛媛県八幡浜市 の八幡浜総合病院麻酔科長、越智元郎さん(53)ら。北九州市の救命救急医と連名で 03年3月、同市内の全8署に郵送した。救急関係者たちがインターネットのメールで 意見を交換し合うメーリングリストでも内容を公表している。

 きっかけは当時、救命救急医が遭遇した事例だった。北九州市内で70歳の男性が自 宅で倒れ、意識不明になっているのを妻が発見。とっさに110番したが、到着した 警察官は妻への事情聴取と救急車の出動要請をしたのみで、人工呼吸や心臓マッサー ジなどの救命処置は一切しなかったという。

 通報から救急隊が到着するまでに6分以上かかり、男性は病院に搬送されたが死亡 した。一刻を争う救急の現場では、心停止から何の処置も施されなければ、約3分間 で半数が死亡するといわれている。

 越智さんらはこのケースを「極めて不適切」と感じ、発見者から救急隊、医療機関 へと患者がリレーされ、適切な救命処置をすることで重篤なけが人や急病人を救う 「救命の輪」の重要性を、警察にも訴えることにした。日ごろ救急隊員から「警察官 が救命処置をしてくれない」と聞かされていたことも背景にあったという。

 要望書では、この実例を挙げ「警察官が心肺停止者の第一発見者となった場合、速 やかに心肺蘇生法を行い、救急隊に引き継ぐことは、善良な一市民として、国民を守 るべき公僕の一人として率先して実施すべき行動」「こうした患者に遭遇することが 多い警察官も『救命の輪』の貴重な担い手になって」と記した。しかし、警察からの 反応は一切なかった。

 福岡県警は、毎日新聞の取材に対し「警察官は現場到着後、可能な限りの措置を講 じていた」と説明。要望書には返答していなかった点については「あくまで要望とい う形で受理しており、回答は求められていない」と話す。また、警察官の積極的な救 命救急講習が必要とする医師らの指摘については「今後、検討していきたい」として いる。

 越智医師らは、豊前市の事故のケースを報じた毎日新聞の記事をメーリングリスト に投稿し、全国の救急医療関係者と改めて意見交換を始めている。

越智医師らが提出した要望書


2005年 11月 19日(毎日新聞西部朝刊)

【いのちの輪:救命問題を考える 福岡・豊前の死亡事故 2警官、救急講習受けてた】

◇被害者の父親「なぜ初歩的処置しない」

 福岡県豊前市の交通事故で死亡した会社員(23)の救命処置を現場の警察官がして いなかったとされる問題で、福岡県警は現場にいた2人の警察官は警察内で救急法の 授業を受けて「初級」の検定を取得し、その後も救急法の講習を受けていたことを明 らかにした。しかし、現場では会社員の気道を確保せずうつぶせのままにしており、 基礎的な救命処置も実践していなかった。被害者の父親は「知識があったなら、なぜ 初歩的な処置すらしてくれなかったのか」と憤っている。【救命問題取材班】

 事故は10月12日夜、速度超過で県警のパトカーに追跡されていた車が、約1・4` 逃走して赤信号の交差点に進入。青信号で交差点に入った会社員の車に衝突し、この 会社員は死亡した。

 県警によると、追跡していたパトカーの警察官2人は、事故現場の約70b手前で衝 突を目撃。現場に到着後、車外に投げ出され、うつぶせ状態の会社員の肩を揺らして 意識の有無と脈を確認したが、反応がなかったため119番通報した。しかし、救急 車が到着するまで、気道が確保できる姿勢にしたり、呼吸の有無を調べたりしなかっ た。

 警察庁などによると、新人警察官は通常、都道府県の警察学校で人工呼吸など心肺 蘇生法や止血など救急法の授業を受け、「初級」の資格を取得する仕組みになってい る。その後は警察署などにいる「上級」の資格をもつ指導員が、所属部署で救急法を 指導するのが一般的な教育システムだ。

 県警は現場にいた警察官2人の氏名や年齢などを明らかにしていないが、ともに警 察学校で初級を取得し、「その後も所属署で適宜受講した」と説明する。一方で、2 人がどんな講習をいつ受けたのかについては、各警察署に報告を求める仕組みがない ことを理由に「詳細を把握しておらず分からない」と話す。

 これに対し、会社員の父親は「救急法を知っているなら、意識がない傷病者に対し 気道確保などの救命処置をするのが当然。脈がないことまで確認したなら、どうして うつぶせで放置したのか分からない。講習を受けていたのなら現場の警察官は積極的 に救命処置をしてほしかった」と語る。

 救命処置の現場では傷病人に意識がない場合、気道の確保は119番通報の次にす べきこととされている。警察の訓練態勢について、複数の救命救急医は「心肺蘇生法 などは講習を受けても、数年たてば忘れてしまう。この際、教育システムがしっかり 機能しているのか、県警は検証してみる必要があるのではないか」と指摘している。

 救命救急問題に関するご意見、ご感想をお寄せ下さい。送り先は〒810―855 1(住所不要)毎日新聞福岡本部報道部。ファクス092・721・6520。メー ル fuku-shakaibu@mbx.mainichi.co.jp


2005年 11月 26日(毎日新聞西部朝刊)

【救命訓練:全国の警察で差 「組織的に実施」36都道府県−−毎日新聞調査】

 警察官が心肺蘇生など救急法の訓練や講習をどのように受けているかについて、毎 日新聞が全国の警察本部に取材したところ、36の警察本部が「組織的に実施してい る」と回答した。この中には各署で実施される訓練などの時期や内容を把握していな いところも多い。「警察学校を除き実施していない」「組織的に実施していない」と した警察本部は11に上り、取り組みに大きな差が生じている実態が浮かんだ。(25面 に関連記事

 福岡県豊前市で暴走車の巻き添えとなって死亡した会社員の遺族が、救急隊より早 く現場に着いた警察官の処置が不十分だったと指摘している問題を受け、全国の警察 本部に訓練・講習の開始時期や内容を尋ねた。

 いずれの警察本部も、警察学校で新人の警察官に人工呼吸などの心肺蘇生や止血の 方法などの基本的な救急法を教えている。落ち着いて救命処置をするには、定期的に 繰り返し訓練・講習を受けることが重要とされており、調査ではその後の訓練状況な ども聞いた。

 訓練状況では、日本赤十字社などのトレーニングを受けた「救急法上級」の指導員 を独自に養成し、指導員が所属先の警察署などで教えるというケースが判明分で30に 上り、最も多かった。

 「組織的に実施」とした警察本部の中で、指導員による訓練・講習の回数などの状 況をある程度把握している県警は、岐阜、北海道、宮城などにとどまる。「回数や内 容は各署に任せている」(福島)▽「実施状況を県警本部に報告する規定はない」 (福岡)など「現場任せ」のところも多い。群馬県警は、同様の教育システムをもつ が、訓練が不定期だったり、署が主体であることを理由に「組織的には実施していな い」と回答した。

 一方、「警察学校以外では未実施」「組織的に実施していない」と答えた警察本部 には「実際に使う機会は少ない。完全な対応をするには高度な講習を受けさせる必要 があるが現実的には無理」(山梨)などの声のほか、「警察官の任務の第一は事件事 故の被害拡大を防ぐこと。人命救助の訓練はしているが、組織として救急法の取得を 徹底するのはおかしい」とした警察本部もあった。【救命問題取材班】

◇救急法講習実施の状況

 △は「警察学校以外では実施していない」、○は「学校以外に警察署などでの実施 もあるが、本部としては組織的に実施していない」、◎は「学校以外でも警察本部と して組織的に実施」

回答
 北海道 ◎
 青森  ○、岩手  ○、秋田  ◎、宮城  ◎、山形  ◎、福島  ◎
 栃木  ○、茨城  ◎、群馬  ○、埼玉  ◎、東京  ◎、神奈川 ◎、千葉  ○
 新潟  ◎、富山  ◎、福井  ◎、石川  ◎、長野  ◎、山梨  △
 愛知  ◎、静岡  ○、岐阜  ◎、三重  ◎
 京都  ◎、滋賀  ○、兵庫  ◎、大阪  ◎、和歌山 ○、奈良  ◎
 島根  ◎、鳥取  ◎、広島  ◎、岡山  ◎、山口  ◎
 徳島  ◎、愛媛  ◎、香川  ◎、高知  ○
 福岡  ◎、長崎  ◎、佐賀  ◎、熊本  ◎、大分  ◎、宮崎  △、鹿児島 ◎、沖縄 ◎


2005年 11月 26日(毎日新聞西部朝刊)

【いのちの輪:救命問題を考える 警察全体で意識を 「手いっぱい」恐怖心吐露も】

 毎日新聞が全国の警察本部に実施した調査で、警察官に対する救命処置訓練への取 り組みや意識に大きな差が生じていることが分かった。講習で学んだ救急法で人命を 救ったケースも数多く報告される一方、訓練や講習に消極的な理由として「捜査や犯 罪防止で手いっぱい」という“本音”も聞かれる。今回の調査を受け、救命救急の専 門家は現存する教育制度を全国共通の内容に変更し、外部機関との交流などを通じ て、より実効性の高いものにするよう提言した。【救命問題取材班】

 警察庁などによると、警察官の救命教育の始まりは、1954年に出された警察庁 の訓令にさかのぼる。救急法は逮捕術などとともに、警察官が身につけておくべき技 能とされ、訓令を受けて、県警が技能検定制度を創設し、有資格者が指導に当たるよ うになった。

 今回の調査で、実際に警察官が重篤の急病人やけが人を救ったケースを挙げたのは 20の警察本部。岩手県警では今年10月、宮古市で海に転落した人を救助し、署員が心 肺蘇生を実施。神奈川県警では同7月に起きた交通事故で、車内で心肺停止状態だっ た男性に警察官が心臓マッサージを行い、5分後に蘇生させた。

 福岡県警でも03年5月、くも膜下出血で北九州市の自宅で倒れたお年寄りを交番の 警官が発見し、適切な処置をして、命を救ったケースがある。福岡県内の救急医は 「すべての警察官に問題があるわけではなく、やる人はやっている。ただ、救命救急 の意識が組織全体に浸透していないのが残念だ」と語る。

 一方、救急隊などより早く現場に到着した警察官が、けが人の容体を見極め、救命 処置をすることへの「恐怖心」を率直に明かした県警もある。「犯罪防止や捜査で手 いっぱい。救護者に異常が起きるかもしれず、現場の警察官は怖くてできないのでは ないか」(和歌山)「内臓破裂をしていた場合、心臓マッサージなどは容体を悪化さ せるかもしれない」(三重)などの声もあった。

 救急法の教育が逮捕術などと似た仕組みで行われてきたことは、救命救急の専門家 の間でも知られていない。ある救急医は「警察署では、剣道などは盛んに練習するの に、救命処置のトレーニングには時間を割かない」と指摘する。今回の調査でも「指 導者が各署を巡回指導しているが、逮捕術や銃の取り扱いが中心。救急法にはあまり 時間を割けない」と明かした県警もあった。

◇共通システム再構築を−−日本救急医学会理事長の山本保博・日本医科大教授の話

 警察で救急法がどのように教えられていたかは、これまで知られていなかった。し かし、実際に警察官が心肺停止の人を蘇生させた事例が各地にあり、全員がしっかり 救急法を身につけたら、助かる人はもっと多くなるはずだ。訓練の量や質が各県警で まちまち、というのも問題がある。

 これを機に長年続いた講習や訓練内容を見直し、全国で共通の教育システムを再構 築したらどうか。実効性がある体制にすることが重要で、各県警本部が訓練の実施状 況をしっかり把握し、消防など外部との交流を促進することも効果的だ。

 各都道府県には、急病人やけが人への初期手当てから病院搬送までの流れを検証す る「メディカルコントロール(MC)協議会」が設置されている。MCが各県警のア ドバイザーの役割を果たしてもいいと思う。


2006年 1月20日(毎日新聞西部朝刊)

【いのちの輪:救命問題を考える 警察官の訓練要望−−衆院内閣委で民主議員

 事件や事故現場で警察官の救命処置や日ごろの訓練が不十分とされる問題が19日、衆 院内閣委員会で取り上げられた。質問した泉健太議員(民主・京都3区)は沓掛哲男・国家公安委員 長や警察庁に「警察の第一の任務は国民の生命、財産を守ること。すべての警察官が救急処置の技能 をいつ、どこでも発揮できるよう、繰り返し訓練に取り組んでほしい」と強く要望した。

 福岡県豊前市で昨年起きた交通事故で、死亡した会社員の父親が「先着した警察官は現場で気道の 確保など救急処置をしていなかった」と訴え、救急法の教育体制の見直しと充実を県警に要請した。 また毎日新聞のアンケート調査で、訓練回数や内容を現場に任せる県警があるなどの問題点が明らか になった。

 泉議員はこうした状況を紹介し「警察庁の訓令は、救急法は警察官に必要な技能としている。警察 学校で救急法を学んでも、その後も訓練をしなければ、知識は失われていく一方だ」と、定期的に繰 り返し訓練をする重要性を指摘した。

 豊前市の事故について、沓掛委員長は「警察官は全国に24万人いる。基本的教育はしているが、 全体の水準は必ずしもそんなに高いわけではない」とした。「(正しい処置とは違う)何か間違った ことをすれば、いろいろな問題もある。そういう状況を勘案しながら、一番最善な方法は何かを考え ながら対応している」と答弁した。【救命問題取材班】


2006年 2月 5日(毎日新聞西部朝刊)

【いのちの輪:救命問題を考える 同僚が救急法学ぶ 事故犠牲者の会社で講習−−福岡】

 福岡県豊前市で昨年10月に起きた交通事故の巻き添えとなって死亡した加生徹也さん(当時23歳)が、生前に勤務していた同市の自動車部品メーカー「三福」(恒川義人社長)で4日、救急法の講習会があった。事故をきっかけに遺族が救急法の普及を訴えていることに応えた。【救命問題取材班】

 遺族から直接、救急法普及の大切さなどを聞かされた恒川社長が「いざという時、社内だけでなく、家庭でも役に立つ」と受講を決定。派遣社員も含めた全従業員約90人に参加を呼び掛け、約50人が2回に分けて受講することになった。技術を忘れることがないよう、数年ごとに再受講の機会を設ける予定だ。

 初回の同日は、恒川社長ら約20人が参加。京築広域圏消防本部の救急救命士の指導で、人工呼吸の手順やAED(自動体外式除細動器)の操作法などを学んだ。

 加生さんは、同社が操業を始めた03年9月から勤務。まじめで温厚な性格で、仕事に真剣に取り組んでいたという。斎藤修二取締役(58)は「将来、社の核になる人材と期待していた」と残念がる。

 加生さんと仲が良かった同僚の青木将人さん(25)=同市大西=は「万が一の場合は率先して実践したい。仲間を亡くしたのは悲しいが、事故をきっかけに救急法が普及すれば加生君や遺族も喜んでくれると思う」と話していた。

   ◇  ◇   
 事故をきっかけに「いのちの輪」の連載を始めた毎日新聞の福岡本部(福岡市中央区)でも同日、救急法の講習会があった。記者や広告・販売部員ら26人が参加し、同市消防局職員の指導で心肺蘇生術を学んだ。

 指導した市消防局救急課の伊佐直樹主査は「心臓が止まると、3分で死亡率が約5割まで上がるといわれている。ためらわずに有効な処置が取れるかどうかが生死を分ける」と、迅速な応急処置の大切さを解説した。


救急医療メーリングリストにおける意見交換


Subject: [eml-nc5: 1738] 事故後5分間放置、警官は救命処置を 
From: 越智(医師)

 eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。
 
 2003年当時からeml-ncメンバーであった皆様は・・市の警
察署に送付された以下の要望書のことを憶えておられますでしょうか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「警察官による心肺蘇生法実施に関する要望書」
http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/03/n3-police.htm
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 残念ながらこの要望書への返信をいただくことはできませんでしたですが、最近 
同じ福岡県で、巻き添え交通事故の被害者(最終的に死亡)が先着した警察官が救急
隊が到着するまで何の手当も受けていなかったという事件(用語が適切でないかも知
れません)がありました。119番通報を受けた通信指令は何と傷病者の父で、この方
は葬儀の日に、出動した救急隊員から警察官の手当がなかったことを知ったそうです。
その後の流れとして(一部 越智の推測)
・傷病者の父が警察の対応に疑問を持ちウェブなどで調べる経過で、要望書のことを
 お知りになった。
・傷病者の父が新聞記者の取材を受けた機会に、警察官の対応に対する疑問や要望書
 のことに言及された。
・新聞記者が・・さんと越智に取材。
・毎日新聞西部本社版の社会面記事(11月9日)で取り上げられた。
・記者の方針として今後も、救急救命の現場から警察官による心肺蘇生法実施を求め
 る訴えがあるということを軸に、市民に広く初期救急措置の意識を高めるような記
 事を書いてゆきたいとのことです。

 以下、記者の方から提供された記事全文を紹介させていただきます。本MLでご紹介
することについては許可を得ましたが、著作権上の問題がありますので外部への転載
等をされないようお願い致します。
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(中略)
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 eml-ncの皆様の中にはすでにこの事件(?)についてご御存知の方、この記事を読
まれた方もおられると思いますが、地域での反響などはどうでしたでしょうか。eml-nc
の皆様のご意見などをお聞きできれば幸いです。

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Genro Ochi  gochi@m.ehime-u.ac.jp


Subject: [eml-nc5: 1739] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: (医師) Bです。長文容赦。 (中略)  警察官が現場で救命手当をすることは「責務」ではないでしょうか? だとすると、 「警察官にも手当をして下さい」とこちら側からお願いするというよりも、むしろ最初 から「義務違反」ともとれるのではないかと思いますが?  確かに最近では犯罪件数も増えて検挙率もさがり安全日本の神話も崩れつつあります。 検挙率が下がるとまたマスメディアや市民から叩かれる(表現悪くてすみません)ので、 そちらに力をいれ応急救護が後回しになるであろう現状も理解できます。  だから、たぶん警察内部ではとにかく初動操作、現場保存、報告を優先させているの かもしれないということが、なんとなくわかります。  ただ、これらの改善については、一個人が要望書を一警察署に提出してもそのまま無 視されるのは目に見えております(もちろんその要望書を提出された行為と意識の高さ には敬意を表しております)。  今後の対応策としては、やはり搬送した救急隊の事後検証として医師検証会議で討議 していただき、もし改善点、要望事項等あれば(もちろんありますが)、県MC協議会へ あげて、そこから当該警察、あるいは県警に要望書をMC協議会の名前で出さないと難し いかもしれません。  蛇足ですが事後検証の目的は(1) 救急隊隊活動の検証 (2) プロトコール(活動基準) 見直し (3) 救急医療システムのoverview の3点が基本です。  小生の属する消防本部ではこの3点について検証しており、特に搬送先病院の問題や ら現場における関係諸団体(警察など)との連携に問題がある場合はMC協議会を通じて 要望を入れてもらうよう医師検証会議から上にあげています。  もちろんMC協議会で却下された事案もありますが、いくつかは関係諸団体に話を入れ てもらっております。  その後、これらEMSシステムが改善するかどうかはわかりませんが、少なくともそこま で行なうことが我々、救急医、事後検証医、あるいは消防関係者の務めだと思っていま す。  もしMC協議会で「うちでの管轄外」と判断しこのまま、何もアクションを起こさない のならそれはそれで救急現場における「最高決議機関」の判断としてやむを得ませんが、 少なくとも所轄消防出張所の担当者が医師検証にこの事例をもちあげないと、話ははじ まりません。  この事例について地域〜県MC協議会が今後どのように活動するかは大変興味のあると ころと存じます。


Subject: [eml-nc5: 1742] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: (救急隊員) 皆さん、こんにちは、C@・・消防局です。 なぜ、警察官は救命処置を含む応急手当をしてくれないのかと 普段から疑問に思っています。 警察法では (警察の責務) 第二条   警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、       交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。     2  警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当       つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自       由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。 さらに警察官職務執行法では  (保護) 第三条  警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して左の各号の一に該当することが明      らかであり、且つ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、      とりあえず警察署、病院、精神病者収容施設、救護施設等の適当な場所において、これを保護し      なければならない。      一 精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞のある者      二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人        がこれを拒んだ場合を除く。) と警察に対する責務等が示されています。 以上の条文からも、応急手当について行うことは職務範囲と思いますが。 いかがでしょうか。 また、都道府県警察の職員の職務執行についての苦情については 同じく警察法に下記のとおり明記されています。 (苦情の申出等) 第七十九条  都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に対し、国家        公安委員会規則で定める手続に従い、文書により苦情の申出をすることができる。        2  都道府県公安委員会は、前項の申出があつたときは、法令又は条例の規定に基づきこ           れを誠実に処理し、処理の結果を文書により申出者に通知しなければならない。ただ           し、次に掲げる場合は、この限りでない。         一 申出が都道府県警察の事務の適正な遂行を妨げる目的で行われたと認められるとき。         二 申出者の所在が不明であるとき。         三 申出者が他の者と共同で苦情の申出を行つたと認められる場合において、当該他の者           に当該苦情に係る処理の結果を通知したとき。 上記条文から、今回の件に付き該当した都道府県公安委員会にたいしても働きかけをしてみてはと思いました。 長文失礼いたしました。


Subject: [eml-nc5: 1743] RE: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: (救急隊員) 皆さん、こんばんは。 D@・・消防本部と申します。 警察官の救命処置について、参考になればと思い、 久々の投稿です。 と言うか、情報提供程度ですが・・・。 私が勤務しております分署ですが、そこにも○○警察署があります。 (中略) で、その警察署では、以前からレサシアンを所有され心肺蘇生法を 身につけておられます。 ・・県では(中略)中学生が地域の 事業所で仕事を体験しています。 他の都道府県でも実施されていると思いますが・・・。 その警察署に入った中学生は、警察官の指導で 心肺蘇生法を学んでいます。 先日もパトロール中の警察官が倒れている人を発見し、 救急要請されたんですが、きちんと意識、脈拍、呼吸などを 観察され119通報時に伝えられていました。 また、通常の救急現場で患者搬送やら処置の補助を お願いしたら、喜んで手伝っていただけます。 それと、(中略)土砂崩れで家屋が倒壊し 胸まで土砂に埋まった男性を警察が救助に向かい 救出し病院に搬送されました。 残念ながら、男性は埋まっている間は意識があったようですが、 救出して間もなく心肺停止になり、病院に搬送されるものの 亡くなりました。 たまたま、他の用件で病院に顔を出していた私以下5名の 消防職員も病院スタッフの手伝いをしましたが、搬送された 警察官も最後まで一緒に手伝いをされていました。 その事案では、消防は道路破壊や浸水で、その現場に 行くことが出来ませんでした。 ちなみに、その警察署に、消防から心肺蘇生法の習得を してもらうように話しを持ちかけたことはありませんし、 指導にも行ったことがありません。 今度、その警察署に勤務する友人の警察官に、詳しく 聞いてみます。 以上、情報提供でした。


Subject: [eml-nc5: 1744] RE: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: (医師) Date: Sat, 12 Nov 2005 越智先生、皆様、こんばんは。 E@・・病院です。 (中略) 当地域では、 救急救命士・救急隊員と救急に携わる医師・看護師が意見・情報交換を行う場として 北九州CPCRセミナーを救急医療に関わる病院とその地域の救急隊とが協力し、 輪番で開催しています。 その中で、 (中略) 本事例の概要報告と、同様な事例を知っていれば 記事をかかれた・・記者へ情報提供したいので 報告してほしい旨の話が参加者にむけてありました。


Subject: [eml-nc5: 1745] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 中村 Date: Sat, 12 Nov 2005  中村@東北大医療管理学です。  以前より警察官僚の一部に、目前の瀕死の命を救うことよりも、法文万能主義を背 景に、起こり得る被害の拡大防止に汲々とすることを現場に求める者があるようです。  このような上司の下では、現場の警官は被害者の手当をすることよりも、交通整理 と現場保存に専念せざるを得ないのが現状のようです。  これは制度と組織の問題であり、現場の警察官の善意や工夫を無にするものです。 あるいは重傷者でも社会復帰し得たかも知れない若者が、このような警察官僚の保身 の犠牲となって尊い命を失ったことには、統計の数字の問題以上の反省がされて然る べきでしょう。 -- Toshihito"rijin"Nakamura MD 中村 利仁


Subject: [eml-nc5: 1747] Re: 1739 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 越智  Bさん、Cさん、Dさん、中村さん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科  越智元郎です。警察官の応急処置に関し、皆様から貴重なご意見・情報をいただき、有難 うございました。 〇 Bさんは書きました(eml-nc5: 1739): > (引用部分省略) → 警察官が傷病者の応急処置をすることが当然の責務であることは間違いないようです   ね。 > だから、たぶん警察内部ではとにかく初動操作、現場保存、報告を優先させているのか  もしれないということが、なんとなくわかります。 → 「傷病者の救命」が「犯人検挙」に勝るとも劣らない、重要な責務であることを、今   回の事件?報道が再確認させてくれるとよいですね。 〇 > ただ、これらの改善については、一個人が要望書を一警察署に提出してもそのまま無視  されるのは目に見えております(もちろんその要望書を提出された行為と意識の高さに  は敬意を表しております)。 → 以前の要望書は関係者のやむにやまれる気持ちから出たものであり、それがウェブに   収載され、今回再び日の目を見ることになったのは幸運だったと思っています。警察   署から返答がなかったこともそうですが、各地の救急現場で今回と同様の冷たい対応   がなされていると(救急隊員などから)お聞きしており、マスコミや国民の声で警察   官の意識を少しでも変えることができればと希望しています。 〇 > 今後の対応策としては、やはり搬送した救急隊の事後検証として医師検証会議で討議し  ていただき、もし改善点、要望事項等あれば(もちろんありますが)、県MC協議会へあ  げて、そこから当該警察、あるいは県警に要望書をMC協議会の名前で出さないと難しい  かもしれません。 → MCの関与があればすばらしいですね。しかし、秋田の「救急救命士、病院内で違法   の除細動を実施」の例 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/04/oc-aed.htm   をみても、当該地域のMC協議会が全く動かないことも大いに予想されます。MC協   議会を動かすこともまた、世論(私共のような草の根の救急医療関係者や市民の声)   にかかっているのかも知れません。   Bさんが書かれましたように、救命の連携が途切れる(遅れる)例として、警察官   が応急手当を実施しない例を、それを実際に目にした救急隊員がMC協議会や関連学会   に持ち込むことも必要ではないかと思います。  引き続き皆様のご意見、情報を宜しくお願いいたします。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


Subject: [eml-nc5: 1748] 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 長嶺(医師) Date: Sun, 13 Nov 2005 みなさま 池友会小文字病院 長嶺です。 越智さん、今回の一件につきご報告ありがとうございました。 また様々な貴重な御意見ありがとうございます。 2003年に記しました「要望書」はemlの皆様とともに意見交換 を交わし、越智さんはじめ様々な方々にご助言をいただき作成 をいたしました。 当時、当地域の8箇所の警察署長あてに郵送いたしましたが、 残念ながら回答はありませんでした。 Cさんからお示し頂いた「苦情の申し出」に対する条項など は存じ上げておりませんでしたので、無回答についても 「そんなものだろう」と受け止めていました。 当時、要望書を提出する前に当該警察署に電話連絡をいたしま した。 そのやり取りの中で最終的に言われたことは 「内規にない」 ということでした。 内規にないため「警察官が心肺蘇生をしなかったからといって 責められる問題ではない」という見解でした。 さらに、傷病者への対応は 「(救急隊などの)プロに任せるべき」 との返事でした。 電話応対をされた方の私見(誤解も含めて)も混じっているの だろうと、電話ではなく「要望書」という形になったと記憶し ています。 しかしCさんが示された「警官の責務」をみましても、特に 拡大解釈しなくとも「救命処置」は「責務」ととれそうです。 今回、当地域で起こった事故は、その事故の救急通報を直接受 け取った司令課の方が、事故被害者の親御さんだったというこ とです。 (中略) もちろんすべての警察官が救命処置に対する意識が低いわけで はなく、またDさんからのご紹介のように組織として高い意 欲で取り組んでおられる地域もあると思います。 また日ごろは検死(実況見分)などでお世話にもなります。 一個人が、もしくは一病院が、「警察署に物申す」とやっても 成果が得られないばかりか、良くない影響も懸念されます。 しかし、問題提起はしたけれどその後は何もしなかった、その 結果不幸なことが近隣地域で起こったとなると、やはり「命を 救う仕事」を引き受けている我々は何かアクションを起こさな いといけないでしょう。 今回の新聞報道は、単に警察への批判に終わるのではなく、フ ォローの記事がでる予定です。 なんとか良い方向へ向かうようにしたいものです。 みなさま引き続き、方法論やご意見をお願いいたします。


Subject: [eml-nc5: 1749] Re: 1739 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: Bです。 越智さん:wrote >秋田の「救急救命士、病院内で違法の除細動を実施」の例 >をみても、当該地域のMC協議会が全く動かないことも大いに予想されます。 >それを実際に目にした救急隊員がMC協議会や関連学会 >に持ち込むことも必要ではないかと思います。  どう考えても、これら事例が事後検証にあがらないのはフに落ちません。  総務省消防庁の通知では事後検証対象例の要件を出しています。 次に掲げる症例のうちから心肺機能停止症例を中心に選定 (1) 医師に対し、特定行為に係わる指示要請を行なった症例 (2) 自動体外式除細動による除細動を行なった症例 (3) 医師に対し、指導、助言要請を行なった事例のうち初診時程度が重症以上の症例 (4) 初診時程度が重症以上のうち、初診医師より今後の救急活動の参考に資する意見   が寄せられた症例 (5) その他、今後の参考に資すると認めた症例  ですので、(5)とすればいくらでもピックアップされるであろう事例だと思われる のですが、これがMC協議会に登っていないとすれば、消防担当者の何らかのバイアス がかかったのでは?と勘ぐってしまいます。  あるいは実際は事後検証にあがったけれども、医師検証かMC協議会など、どこかの レベルで「問題無し」とすませたのではないでしょうか?  システム改革の方法論として、民意を高めてマスメディアを動かして変えて行くの も一つの方法と思います。しかしながらこの問題の対処は、せっかく世の中にひろま りつつある病院前救護におけるメディカル・コントロ−ルが本来の機能として行なう べきことなので、MCが動くのが本筋と思います。  また今度もマスメディア主導の行政改革になったら、消防・救急医療の自律性が問 われるのではないでしょうか?


Subject: [eml-nc5: 1750] Re: 1739 事故後5分間放置、警官は救命処 From: (医師) Date: Sun, 13 Nov 2005 皆さん、こんにちは、H@・・救命救急センターです。 当地に置きましても警察に対する評価の多くは傷病者の救護が 遅れる傾向(もちろん個々の警官の対応にはいろいろございますが) にあるというものですし、実際の事例もございます。 先日当地での日本交通福祉協会の救命処置講習会の際に協会の方が 警察へご挨拶に伺った折り、傷病者への対応はGさんが お書きになっておりますように「(救急隊などの)プロに任せるべき」 であると言い切られたとのことです。 これは全国的な傾向じゃないかと愚推いたします。 よって警察庁が動かないとどうにもならんように思えます。 まずは110番入電時に人身事故だとわかればその場で119番へ 一報入れていただけるシステムだけでも構築できないもので しょうかねえ。


Subject: [eml-nc5: 1751] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 平岡(医師) Gさん,皆さん こん○○は 平岡範也@京都第一赤十字病院です.  今回の件については,警察関係の方は職務規程で警察側からの 個人的な発言はできないはずですので,このML上では,一方的な 議論になってしまうことを申しておきます. (中略)  責務であろうがなかろうが,バイスタンダーのCPRが重要なことは 警察官であれ,一般市民であれ,分かる人にはわかっているはず です. (個人的な温度差がかなりあることは,JR事故におけるJR職員の 対応を持ち出すまでもなく明らかだろうとは思います)  そりゃ,最終的にはプロに任せるんですが・・・    ただ,事件の場合犯人を捕まえられるのは警察官だけですし  救命処置のために事故処理が遅れて,二次災害でさらに多くの  死傷者が出ていては警察の機能を果たしているとは言えないと思います.    (中略)   小生自身も自分の身内が職務中に他病院に搬送された末に  亡くなった経験や,知り合いのDrの御尊父様を看取った経験が  あり,その時職務を優先された心中を察すると,まさに胸が張り  裂けるとしか表現できません.   しかし事故や病気にあった人には,必ずそれを悲しむ身内の  かたが,救急や医療関係の方でなくともおられるはずです.  そのことも忘れないようにしなければなりません.   もしも今回のことが 救急関係の方のご子息でなければ,問題  にならなかったなんてことはないでしょうネ.(愚問でしたか?) (中略)    本当にそのとおりです.  個人的には,やはり警察は捜査,事故処理のプロですから蘇生処置  は,市民を含めたバイスタンダーの活躍や,救急隊へのスムーズな  連携の部分でもっと改善できるところがあるのではとも考えております  が皆さんは如何でしょうか?   ************************** 京都第一赤十字病院 呼吸器科              平岡範也 **************************


Subject: [eml-nc5: 1753] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 山本(デザイナー) (中略) いろいろな表面的な事情が事実だとして。。 事実に直面していたのは、「生身の警察官」なわけです。 「内規」がどうであれ、とっさに助けようとする人はいくらでもいるでしょう。 でも、この人はそうしなかった。 考えられるのは、 倒れた人をどうやって助けたら良いのか分からなかった。 本当はそういうことなんじゃないでしょうか。 もちろん、訓練も受けているのかもしれないし、本当はどうするべきなのか分か っていたのかもしれない。でも、もし、間違って死なせてしまうような事が あったら、自分はどう、責められるんだろう。。。そんな所が躊躇をうみ、放置 をさせたのではと思います。 こういうMLに参加されている方の一般人とか、講習にわざわざ参加されに来る人 たちは、助けて失敗しても、罪に問われることは無い。のをご存知だと思い ます。 でも、普通の人に、どれだけそれが浸透しているのかどうか。。。。 バイスタンダーへの一番の呼びかけは、 「助けて下さい」ではなく、 「助けようとして失敗してもあなたは罪に問われません」 かもしれません。 山本 百合子


Subject: [eml-nc5: 1756] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 平岡 平岡範也@京都第一赤十字病院です.  「一般市民」という言葉を端々に使っていたので  山本さんが”食いついて”(失礼!m(_ _)m)くれるかなと  期待していました. > 考えられるのは、 > 倒れた人をどうやって助けたら良いのか分からなかった。 > 本当はそういうことなんじゃないでしょうか。    警察官が本当に救命処置をご存じなかったとしたら  やっぱりちょっと悲しいです.  想像だけですけど,そんなことはないと思います(信じます). > でも、もし、間違って死なせてしまうような事が あったら、自分はどう、責めら れるんだろう。。。そんな所が躊躇をうみ、放置をさせたのではと思います。   そういう意味で,市民ではなく警察官が蘇生処置を間違って責められるかも?  と考えることも有り得る話ではあります.しかし実際にはどうでしょう.   むしろ真面目に警察官としての職務を遂行されていたの  ではないでしょうか?   ちょうどJR事故の乗務員が,真面目に出勤しようとして  現場を離れたのと同じ心境だったのかもしれません.   ただ,今回,事故の被害に遭われた方が,警察官が駆けつけた際  どのような状況であったかが問題だと思います.   もう助からないと判断されて,むしろ二次災害を防止することにメリット  があると判断(トリアージ)して,行動されているとしたら,これは素晴らしい  ことですし,JR職員が現場を離れたのとは全然意味合いが違います.   われわれも集団災害などである意味,効率を重視し”見殺し”  にしたと非難される可能性もあるわけですから,マスコミの一方的な  情報だけで非難することは,避けたいと思います. > バイスタンダーへの一番の呼びかけは、 > 「助けて下さい」ではなく、 > 「助けようとして失敗してもあなたは罪に問われません」 > かもしれません。   市民の目から見た鋭いご意見で,毎度恐れ入ります.  個人的には,それでも(罪に問われるかどうかではなく)  「助けてください」に答える社会を期待します(毎回同じ  オチですが) ************************** 京都第一赤十字病院 呼吸器科              平岡範也 **************************


[eml-nc5: 1758] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: おかどめ(企業職員) おかどめ@JR西日本です。 欧米では警察官と鉄道マンは、同じレベルの救命処置(応急手当)の 知識・技能を身につけておくことが求められているとききます。 こういう問題が発生するのは弊社のような所だけかと思っていたら、 警察でも発生しているのですね。 > > さらに、傷病者への対応は > > 「(救急隊などの)プロに任せるべき」 > > との返事でした。 福知山線列車事故以前、応急手当の普及を社員教育で全社員に 定期的にすべきと意見を述べたら、このような発言をした上司もいました。 どこも一緒ですね。 警察は市民の、鉄道マンはお客様の、生命・財産を守る存在であるべ きで、職責との兼ね合いも考慮しながら、「助かる命を助けるために」 最大限の努力をすべきです。鉄道マンは職責上まずやることは 三河島事故のような多重事故の防止です。 >  責務であろうがなかろうが,バイスタンダーのCPRが重要なことは > 警察官であれ,一般市民であれ,分かる人にはわかっているはず > です. > (個人的な温度差がかなりあることは,JR事故におけるJR職員の > 対応を持ち出すまでもなく明らかだろうとは思います) >  そりゃ,最終的にはプロに任せるんですが・・・ 「個人的な温度差」を小さくしていかなくてはいけません。 救命のスキルを身につけるのはどこまで社員教育で、どこから自己 研鑚ですべきかなどという問題もありますが、とにかくこの温度差を 小さくしていきます。 今月職場で実施した有志参加の普通救命講習で、我が職場ではこの 温度差はかなり小さくなったと思っています。 JR西日本新大阪総合指令所 おかどめ 大阪市消防局認定応急手当普及員(自己研鑚で取得)


Subject: [eml-nc5: 1759] 交通事故時の電話は119,110? From: (医師) Date: Sun, 13 Nov 2005 皆さん、こんばんは。Mです。 私は交通事故の時、どこに連絡を最初にするか?という話をするとき、 まずは119番にしましょうと話しています。 110番に電話を入れた場合、警察官が現場についてから、119番通報する可能性が 高いですので、病院での治療が必要な場合は遅れてしまいます。そうならないように、 まずは119番通報してください。119番時に交通事故でという話をいれると、消防から110番して くれますので、問題はありませんと付け加えるようにしています。 ただ、問題は搬送の必要のない軽症の場合は無駄な出動が増えるのではとの懸念もありますが、 現場で患者を診ないと病院が行く必要があるかどうか判断もできません。 たとえ消防と警察が通報内容を共有化し、110番交通事故との情報が消防側にも即 流れるようになった場合、消防側としては安全のために、救急車を出動させるのではないかと 思います。それなら、119番を110番よりも優先するように話しをしても問題はないかなと思います。 ずっと以前、警察が現場検証をしてその後で、傷病者が具合が悪そうということで、 119番通報。行って観察して、目立った外傷等はなかったのですが、 頚椎損傷の可能性ありと判断、搬送したこともありました。 そんなこともあり、安全のためにはやはり119番優先してくださいと話しています。


Subject: [eml-nc5: 1760] RE: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: (救急隊員) Date: Mon, 14 Nov 2005 みなさん、こんばんは。N@・・消防です。 Kさんの言わんとすること、納得です。 私も99なので警察官に不満がありますが、私自身も脳疾患を疑うのにかかりつ けの内科に運ばなければならない時のうしろめたさとか、大災害の時に近所に手 を貸さずに署に集結しなければいけない葛藤とか、きっと被害者から見たら正義 でないことをしてしまうのではないかと思ったりもします。 ただ、市民の言葉に耳を傾けずに正義感ぶってしまうことのないようにはしたい と日々、思っているわけで・・・ でも、これもどこかで線を引かないときりがないということでしょうかね。


Subject: [eml-nc5: 1761] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: (救急隊員) Date: Mon, 14 Nov 2005 みなさん、O@・・消防です。 警察官への救命の思い等貴重な ご意見を拝見しました。 ところで今度の・月・日に地元警察署で 救急講話の依頼を地元警察署から いただきました。 話の内容は、交通事故現場等での傷病者管理について です。(初めての試みだそうです。消防にも初めて話しが あり、まずは動機付けをしようということらしいです。〜時間は 約1時間しかありませんが・・・) 今回の皆様のメールを見て、力の入った内容にしようと 思っております。 つきましては、みなさんの方から「こんなことも話て!」なんて ことがあればご意見いただければ幸いですが。 よろしくお願いします。 警察官の地域によっては頑張っておらるとろろもあるかと は思いますが、地域の警察から県警察へそして全国へと 警察官の応急手当の重要性が広がっていく環境を消防で 一役買いたいとの思いから今回引き受けた次第です。 警察への要望なんかでも結構ですので、ご意見下さい。


Subject: [eml-nc5: 1763] Re: 1757 事故後5分間放置、警官は救命処置を(国際的レベルとは) From: 越智  Kさん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。  「犯罪捜査」は「初動が命」―このお考えは十分理解できます。そのお考えで 警察が活動して下さることが国民の利益にかなうと思います。ただ、現場で心肺 停止に陥った(または心肺停止が切迫した状態となった)傷病者にとっては最初 の数分間が神経学的後遺症なしに救命できるかどうかの境目になります。公務員 である警察官として、この医学的事実を軽視して来られた経過が問題になってい るのではないのでしょうか。  現在わが国では一般市民によるAED(+ABC)すなわち Public Access Defibrillation (PAD)のことが大きな話題となっています。しかし米国などでは PADに先立ち、 1990年代前半から、救急隊に先着する救護者(First Responder)によるAED (first responder defibrillation)の重要性がまず強調されて来ました (PADはfirst responder defibrillationの延長上にあります)。そして、警察官 は消防士(消火隊員)と並びfirst responder defibrillationの重要な担い手と 考えられてきました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ILCOR勧告1997より:地域社会での第一応答者(ファースト・レスポンダー)によ る早期除細動 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/99/ilcor4.html#44  ここで言う第一応答者(ファースト・レスポンダー)とは特殊な訓練を受けた者 で、かつ医師の監督下にある救急医療体制とは無関係に活動を行なう者を言う。地 域社会においては警察官、警備員、ライフガード、航空機乗務員、駅員、ボランテ ィアの応急手当員の他、職場や各地域において応急手当担当者として AED 使用に 関する訓練を受けた者が含まれる。 (以下、略) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  ピッツバーグ市などではすべての公務員が一次救命処置を学ぶことが義務づけら れており、警察官がAED(+ABC)が実際に実施できる体制となっていました。米国 の警察官による除細動場面は医療機器会社のビデオなどでもご覧になった方が少な くないものと思います。  このような米国の警察官の応急手当への関わりに比べ、わが国の状況は少しお寒 いと考えるべきなのではないかと思います。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


Subject: [eml-nc5: 1764] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: In [eml-nc5: 1745] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を Toshihito rijin Nakamura MD 中村 利仁さんは書きました: >  以前より警察官僚の一部に、目前の瀕死の命を救うことよりも、法文万能主義を背 > 景に、起こり得る被害の拡大防止に汲々とすることを現場に求める者があるようです。 > >  このような上司の下では、現場の警官は被害者の手当をすることよりも、交通整理 > と現場保存に専念せざるを得ないのが現状のようです。 > >  これは制度と組織の問題であり、現場の警察官の善意や工夫を無にするものです。 > あるいは重傷者でも社会復帰し得たかも知れない若者が、このような警察官僚の保身 > の犠牲となって尊い命を失ったことには、統計の数字の問題以上の反省がされて然る > べきでしょう。 官僚機構の特性としてご指摘のような保身的、事なかれ主義的な問題が 内在して居るであろうことは、容易に想像できます。 しかし、もし、警察官が被害者の救命を優先して加害者を取り逃がした としたら、あるいは、現場の保存が出来ず証拠不十分として立件が見送 られたとしたら、それはそれで『警察の失態』として新聞紙面に踊るこ とになりはしませんか?そこまで云わずとも、捜査より救命を優先した 警察官に対して「良くやってくれた。ありがとう。」と声を挙げる者が どれほど居るでしょうか? (中略) 昨今の風潮として警察などに故なき敵意と反感を剥き出しにする者ばか り多くなり、黙々と公務に尽くす人たちに敬意と謝意を表す者が居なく なりました。そうした世論とマスメディアの姿勢が、今回のような問題 の遠因となっているような気もします。


Subject: [eml-nc5: 1765] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 中村  P先生、こんにちは。  中村@東北大医療管理学です。 (P先生) > 官僚機構の特性としてご指摘のような保身的、事なかれ主義的な問題が > 内在して居るであろうことは、容易に想像できます。  それは官僚制の特性であると同時に、上に立つものの資質が、組織の機能に対して 大きく影響する実例でもあると考えます。  組織は人であるか、制度であるかは、常に論じられる古い問題ではありますが、こ の場合は、発生が容易に想像できる事象=警察官が交通事故現場に先着して、負傷者 が重症あるいは心肺停止状態であるという場合に、現場の警察官の業務の優先順位を どのようにつけるかという基本的な業務設計の問題であります。  本来であれば各県警察本部毎に交通部長等が各々決め、現場に干渉するようなもの ではないのではないでしょうか?  現場に出ない中間管理職が保身のために勝手な法理を振り回すことを許していては、 国民の生命・財産を守ることなど覚束無いのではありませんか。現場の状況は様々で すから、最終的には現場の警察官のセンスに任せるしかないにしても、原則を定める ことは中間管理職でなく、トップの責任でありましょう。  保身に奔る警察官僚だけでなく、組織全体、特にトップがそろそろ不作為が問われ て然るべきと考えます。  救命を優先した警察官に対して、マスコミが警察の失態を報じるにしても、逆に人 命軽視とされるのも如何なものかと考えれば、業務設計の余地はあると考えますが、 如何でしょうか。 -- Toshihito"rijin"Nakamura MD 中村 利仁


Subject: [eml-nc5: 1766] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: Bです。 >しかし、もし、警察官が被害者の救命を優先して加害者を取り逃がした >としたら、あるいは、現場の保存が出来ず証拠不十分として立件が見送 >られたとしたら、それはそれで『警察の失態』として新聞紙面に踊るこ >とになりはしませんか?そこまで云わずとも、捜査より救命を優先した >警察官に対して「良くやってくれた。ありがとう。」と声を挙げる者が >どれほど居るでしょうか?  まったく同感です。  特にこのような情報を市民に伝えるマスメディア(とひとくくりの表現はいけない と思いますが)の情報伝達のやりかたで如何様にも伝えられてしまいます。  多くの(すべてではありません!)手法は、最初から、善玉、悪玉がマスメディア 側によって決められて、「派手なうたい文句、はでなグラビア」で見出しが出されま す。  上記の場合では、「組織の中での逆風もかえりみずに救命を優先したヒューマニズ ムあふれる現場警官!」と賛美されるものと、もうひとつは「初動のおくれ、本来な らば検挙できたはず! 職務怠慢警官!」とどちらでもかけます。  おうおうにして、後者の場合は「応急手当」をしていたという事実は報道されませ ん。  マスメディアの書き手によって美談にも糾弾にもかかれてしまう恐ろしいことがま ま見られます。  昨今の医療事故の何割かは、完全に医療がわに落ち度がないのもあるようです。し かし最初の報道の時には病院側は「悪者」として「大々的に」報道されます。  あとで事実判明した時の事実の報道は約3行程度でしょうか?  自分もなにかこの術中にはまればいつのまにか「エリート医師」と誠に嬉しい?肩 書きがつけられます。  この警官の応急手当不施行の問題は、一般市民の価値観やマスメディアの報道の仕 方も含めてとても根が深いかと思います。 


Subject: [eml-nc5: 1768] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 岡田(医師) Date: Mon, 14 Nov 2005  謹啓.EML MLの皆様.岡田@鳥取県立中央病院救命センターと申します. 数?年ぶりのRAM modeですが,警察官にしても医療従事者にしても一般人の方にしても,すべてがうまくいくよう な行動などとれるわけがないと思います.毎日の仕事にしてもそうですが,物事にpriorityをつ け,行動しないことには何でもかんでもやれるわけはありません.(super capacityを持って いる方は別として) 即ち日々triageですよね. 各人の職務もあるでしょうが,社会通念上や はり人命が優先されるのではないでしょうか. 捜査はやり直しできる可能性がありますが,救 命はやり直しがききませんから.    捜査より救命を優先した警察官に対して「良くやってくれた。ありがとう。」 と声を挙 げる者がどれほど居るでしょうか? → (捜査を職務に置き換えて)救命より職務を優先した者に,”よくやった!”といった事例 が今まであったでしょうか.  JR福知山線の職員は事故後出勤し,立派な会社員ではあります.    黙々と公務に尽くす人たちに敬意と謝意を表す者が居なくなりました。 → 公務に尽くすことは社会人として尊敬されるべき行為である以外の意味はないと思います.  もっと言えばそれで救命行為が免責されることはないと思いますが・・・  自分がそのvictimその人だったら,どうしてほしいのか,そのvictimの家族だったらどうして ほしいのか,を考えると,もちろん犯人を捕まえてほしいのは当然ですが,その前に”命を助け て!”と僕なら叫びたい.   あとで何と弁解しても,その人のその場でとった行動がその人のpriorityそのものだと思いま す. ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆     岡田 稔  MINORU OKADA  鳥取県立中央病院 救急科 救命救急センター   〒 680-0901  鳥取県鳥取市江津 730


Subject: [eml-nc5: 1769] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 今井(医師) 東京北社会保険病院の今井です。 加害者を追いかけるために、被害者への対応が手薄になった、というのなら 立場の違いという物もありうるでしょう。しかし、現場保存のために被害者への 対応が手薄になった、というのは納得いたしかねます。まして、加害者のいない、 道端で突然倒れたというようなケースなら、なおさら。 (中略) 消防官や一般市民が救命のために手を差し延べたのを警察官が制止した という話は聞いたことがありません。(あるのかもしれませんが、少なくとも 救急隊の活動だけは絶対に制止しないでしょう。) 手を出してもいいんですよね! どうせ手を出すなら、どうしたら現場保存になるべく差し支えなく手を出せるかを 判断できる警察官が一番いいのではないですか? (失礼ながら、技術的な問題は、さておいて。) ----- Imai Koyu


Subject: [eml-nc5: 1773] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 山本 (中略) この議論、すべて推測をベースに行われていますが、その推測が外れていたとしても、 ベースとしている「懸念」には普遍性があると思って、更に、食いついてしまいます。 >    警察官が本当に救命処置をご存じなかったとしたら >  やっぱりちょっと悲しいです. >  想像だけですけど,そんなことはないと思います(信じます). 確かに、そうだとは思います。 たぶん、昨今の事ですから、ちゃんとカリキュラムにはそういうのが入っていたんだ と思います。けれどやっぱり、どこまでそれが遂行しやすい形で伝えられているかだ と思います。 このMLの中でも、いろんな問題にいろんな解釈があって、何でもっとはっきり言わな いんだろう!と思う事に基づく議論がいっぱいありました。 その一つにサマリア人があって、プロである人がミスすると、それは過失になるとか、 ならないとか。。。よくわからないというより歯切れの悪いものがいっ ぱいあります。 国かどこかが、ちゃんと分かり易い日本語で「翻訳」するべきではないでしょうか。 もし、警察官がとってもこういう問題に対して意識が高く、こんな議論を聞いていた としたら、妻子の顔を思い浮かべて、「現場保存」に走った。。なんてい う事もある かもしれません。ましてや関心が無い警察官であれば、躊躇無く「現場保存」でしょう。 けれど、本当は、おっしゃるように、別に「助けて!」と言わなくても、人は人を助け るものだと思います。どんな場面であれ、どんな境遇であれ、それが基本だと。 > しかし、もし、警察官が被害者の救命を優先して加害者を取り逃がした > としたら、あるいは、現場の保存が出来ず証拠不十分として立件が見送 > られたとしたら、それはそれで『警察の失態』として新聞紙面に踊るこ > とになりはしませんか?そこまで云わずとも、捜査より救命を優先した > 警察官に対して「良くやってくれた。ありがとう。」と声を挙げる者が > どれほど居るでしょうか? だから、 いくらメディアが意地悪でも、 もし、警察官が被害者の命を第一にすることによって、犯人を取り逃がしていたとして、 それを責めることは無いと思います。視聴者だってそんな馬鹿じゃありませんし。


Subject: [eml-nc5: 1775] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 平岡 平岡です。 > この議論、すべて推測をベースに行われていますが、その推測が外れていたとしても、 > > ベースとしている「懸念」には普遍性があると思って、更に、食いついてしまいます。 > > > たぶん、昨今の事ですから、ちゃんとカリキュラムにはそういうのが入っていたんだと思います。 > けれどやっぱり、どこまでそれが遂行しやすい形で伝えられているかだと思います。 > > > けれど、本当は、おっしゃるように、別に「助けて!」と言わなくても、  人は人を助けるものだと思います。どんな場面であれ、どんな境遇であれ、  それが基 本だと。   そうなんです.  結局,いつもこういう場面において問題になるのは  「マニュアルどおりに」きちんと仕事をこなすことを  小さい頃から体で覚えさされている我々は,「職務を  遂行するマニュアル」と「救急処置をおこなうマニュア  ル」のふたつのマニュアルのどちらを,どんな場面で  使うのかを判断するマニュアルを教えてもらってない  ことなのです(この文章が一気に読めたひとはちょっと  すごい).      ちょっと考えれば分かることですが,すべての出来事  をマニュアル化しても,各マニュアルの優先順位をすべて  マニュアル化することは不可能です(無限の組み合わせ  になりますから). とっさの判断でどのマニュアルを開け  るか(あるいはマニュアルなしでも行動できるか)が,  その人の価値を決めるのかも知れません.    ここまでは普遍的な問題ですが,今回の件で警察官が  どのような理由で,そのマニュアルを選択したのか  分からない以上,一方的に「こうすべきだ!」という  議論は,池友会小文字病院の長嶺貴一さんが書か  れていたような「良い方向に向かう」とは思えないので  すよネ!(状況は普遍的ではなく,個別ですので)・・・ > いくらメディアが意地悪でも、 > もし、警察官が被害者の命を第一にすることによって、犯人を取り逃がして  いたとして、それを責めることは無いと思います。 > 視聴者だってそんな馬鹿じゃありませんし。    イェーイ!! ************************** 京都第一赤十字病院               平岡範也 **************************


From: 越智 Subject: [eml-nc5: 1777] 公開ウェブ資料を(事故後5分間放置、警官は救命処置を)  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。「事故後5分間 放置、警官は救命処置を」の話題につきましては皆様から多数のご意見をいた だいており、感謝しています。さらにこの件はメーリングリスト外の人々とも 問題意識を共有することが重要と考え、公開ウェブ資料を作りたいと考えてい ます。(以下、省略)


Subject: [eml-nc5: 1779] 警察官による応急処置を(改題) From: 長嶺 Date: Tue, 15 Nov 2005 みなさま 小文字病院の長嶺です。 貴重なご意見ありがとうございます。 「どうしたら良い方向にいくのか」という難しい問題。 例えば、みなさまの意見交換の中にあがりました 「現場保存」(「証拠保全」) 「二次災害の予防」 「被疑者の身柄確保」 のkey wardと 「人命救助」 を上手くやるにはまさに 「トリアージの技術と考え方」 が必要なのかもしれません。 英国では「MIMMS」という活動があります。 あまり良く紹介されているHPがないのですが http://www.alsg.org/inst_mimms_regs.htm 【英国ALSGのホームページからのリンク】 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/circle/02/m329gaku.html 【MIMMSを日本にご紹介くださった橘田要一先生(なぜか ’橋田’先生になってますが・・)の日本救急医学会11: 627-635, 2000  の要約】 が参考になるかもしれません。 私もイングランドにいた時に幸運にもMIMMSに参加するこ とができました。 平たく言えば災害訓練ですが、参加業種が日本と違いました。 医療関係 消防 警察 は勿論のこと マスコミ 電気 水道 電話通信 ボランティア といったライフラインを含めた関係者がずらりでした。 そして学ぶべき大きな目標は 「共通の言語」「共通の意識」 を構築することでした。 実際の交通事故現場にも出動しましたが、共通の言語があるた めに、それぞれの役割分担をしっかりこなすことと、他の業種 の分担もある程度援助できる、それが素早い(ツーカー)こと に感銘を受けました。 イングランドは約50年前から医師と救急隊が同時現場出動する システム(BASICS Dr , First responder)があり、これが互 いの仕事のよき理解につながっているのだと教えていただきま した。 MCは Medical Control ではなく Medical Collaboration( 協働)だと思ってます。 すでに形骸化されつつある、という不名誉な批評がなされてい るMC協議会も地域によってはあろうかと思いますが、折角の 立法と行政が可能な、予算の付いている会であります。 お互いの仕事の理解のために、大きな目標は国民の安全のため にMC協議会を利用しない手はないと、再認識しています。 「英国は50年かかったが日本は頑張れば5年でできる」と英国 でお世話になった教授は言ってました。 当地域でもMC協議会に警察も含めた多業種を入れれば良いん ですが・・・・ 既得権益を持った人達の集団となってますからねえ。。 どうしたものか。。。 (後略)


From: Subject: [eml-nc5: 1780] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を (中略) そのようにステレオタイプに批判するのは、止めませんか?福知山線の 事例では、事故車に乗り合わせた職員が被害者の救護に専念したとした ら、当該職員が乗務するはずの列車はどうなるのか。大きな事故に際し 職員が勝手な行動をし始めると、事故の影響が止めどなく広がり鉄道輸 送の麻痺や第二の事故を誘発する恐れもあります。大きな組織の一員と しての立場を考えた場合、先ず自分に命ぜられた職務を優先するのは大 原則であると思います。 (この原則は、JR職員に限らず誰しも同じであり、もし、大規模災害 が発生した場合は、警察官や消防官は自宅近隣の被害を個人的に救援す るよりも、非常呼集に応じ署に集結するのが優先であろうと思います。 私自身も同様に、家族を残し病院に参集することになるでしょう。) (中略) 我々のほとんどは事故現場に居合わせたのではなく、マスコミの報道や このメールリストに流された情報を伝聞の形で知り、想像を巡らして議 論をしているだけです。『車から投げ出され車道上に』という報道から 明らかに即死の状態だったのかも知れない。あるいは、二次事故を防止 するため路上に反射板を置くなどしていたときに救急隊が到着したのか も知れない。詳しい状況は新聞記事から読み取れません。 これとは別件の事件ですが、交通事故の加害者が現場から逃走し、半日 後に警察に出頭した。実は犯人は飲酒運転で事故を起こしたのですが、 酒が醒めてから自首したので飲酒運転について起訴できなかったそうで す。むざむざ逃げ得を許すようでは、法治国家として街の治安が脅かさ れます。一市民として怒りを覚えた事件ですが、加害者の身柄確保、迅 速な初動捜査の大切さを知りました。警察官は、捜査を優先して欲しい と思います。


Subject: [eml-nc5: 1782] Re: 事故後5分間放置、警官は救命処置を From: 中村  中村@東北大医療管理学です。 (中略)  あくまでも救急車到着までの「数分」をどうするかという問題であって、何も警察 官が負傷者を救命センターまで連れて行こうという話ではありません。現着が警察・ 救急でほぼ同時であれば、その問題すら発生せず、そういう工夫もあって然るべきか と思います。  期待することは鎖の第一環としての役割だけであり、場合によってはそれすらも必 要ない。しかし、必要な時には充分に役割の果たせる警察であって欲しいというのが、 国民一般の感情ではないでしょうか。  事故の予防も瀕死の負傷者へのサポートも、人としての仕事の大切さに軽重はあり ません。Uさんの仰るとおり、最後の咄嗟の判断は現場に任せるしかないでしょう。  ただ、方針を明確に示し、如何に業務を設計するかは、トップの責任です。やはり Uさんがご指摘のように、警察官に対しての救命講習の義務づけというのは、現実 的に可能であり且つ必要な決断として、トップの重要な仕事でありましょう。 -- Toshihito"rijin"Nakamura MD 中村 利仁


From: 越智 Subject: [eml-nc5: 1795] 警察官による応急処置(記事をウェブ収載)  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。警察官による応急 処置について皆様から貴重なご意見をいただいている所ですが、今回の意見交換 のもとになった記事を、許可を得てウェブに収載することができました。 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/police.htm (中略) ■  追伸 私の先日の投稿メールを一部訂正したいと思います。 越智より( [eml-nc5: 1738] 事故後5分間放置、警官は救命処置を) | 残念ながらこの要望書には何らの返信もいただけなかったそうですが、最近 同じ |福岡県で、巻き添え交通事故の被害者(最終的に死亡)が先着した警察官が救急隊が |到着するまで何の手当も受けていなかったという事件(用語が適切でないかも知れま |せん)がありました。119番通報を受けた通信指令は何と傷病者の父で、この方は葬 |儀の日に、出動した救急隊員から警察官の手当がなかったことを知ったそうです。そ |の後の流れとして(一部 越智の推測) |・傷病者の父が警察の対応に疑問を持ちウェブなどで調べる経過で、・・さんの要望 | 書のことをお知りになった。 |・傷病者の父が新聞記者の取材を受けた機会に、警察官の対応に対する疑問や要望書 | のことに言及された。 |・新聞記者が・・さんと越智に取材。  訂正:傷病者の父を取材した記者が警察官の対応に疑問を持ちウェブ検索した 結果、2年前の要望書をウェブ検索して見つけ、要望書を書いた・・さんと越智 に取材した・・という経過でした。  それでは皆様、また。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


From: 越智 Subject: [eml-nc5: 1796] Re: 1795 警察官による応急処置 (仰臥位でない傷病者へのアプローチ)  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。警察官による応急 処置についての新聞記事を読み直していて、記事の誤り(不正確な部分)に気づ きました。 越智より(eml-nc5: 1795) > 警察官による応急 >処置について皆様から貴重なご意見をいただいている所ですが、今回の意見交換 >のもとになった記事を、許可を得てウェブに収載することができました。 >http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/police.htm 記事より | 事故について、県警広報課は毎日新聞の取材に「パトカーの隊員2人は事故 |後すぐに119番通報した。肩を揺らして加生さんの意識確認をしたり、脈を |調べたが、反応はなかった。気道確保などはしていない」と答えた。さらに、 |救命処置をとらなかった点について「新たな事故の防止や違反車両の運転手の |身柄確保もしなければならなかった」と話している。 | これに対し、順一さんは「あおむけにして気道を確保し、自発呼吸の確認を |するのは市民にも教えている救急の基本。警察の対応はあまりに不十分だ」と |訴えている。  仰臥位でない傷病者へのアプローチ(対処法)ですが、 心肺蘇生のテキストな どには意外にあまり書かれていません。私は現時点での国際的な合意は「心肺蘇 生法に関するILCOR勧告1997」の「処置の順序(Sequence of Action)」だと思っ ています。 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/99/ilcor2.html#22 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 1.救助者及び傷病者の安全を確保 2.傷病者の意識・反応を確認 3a) 反応ありの場合(傷病者が返事をするか、動いたなら)   周囲が危険でなければ、傷病者を動かさずに傷病者チェック継続   (必要により通報) 3b) 傷病者が反応しないとき  ・応援を求める(通報)  ・そのままの体位で気道確保   (頚髄損傷の疑いがなければ頭部後屈あご先挙上法で)    → ★気道確保がうまくゆかないときは仰臥位にする  4)気道確保し続けながら呼吸確認(見て、聴いて、感じて)   5a)呼吸あり → ・☆回復体位に(継続して呼吸確認)   5b)呼吸なし → ・★仰臥位でなければ仰臥位にする           ・外から見える口腔内異物を除去           ・救助呼吸2回 (以下、省略) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  この、「意識、気道、呼吸を確認、必要により通報し、気道確保ができない時 点、自発呼吸がないとわかった時点で仰臥位に」という考え方は外傷系の教え方 でも同じですね。  今回の記事で「意識のない傷病者はすべて仰臥位にして気道確保」と取れる書 き方をしているのは不正確だと思います(例えば伏臥位のまま用手気道確保をし て気道開通、自発呼吸あり・・という状況では体位変換は救急隊到着後でよい)。  以下、今回の経過をもう一度整理してみます。 ・今回、警察官は伏臥位の傷病者にまず意識確認 → これは正解 ・意識がなかったので119通報 → これも正解  *できたら110番通報の段階で傷病者の有無を確認し、この時点で119通報をし   ておいていただければよかった(警察 ⇒ 消防)。 ・呼吸確認せず? → 一次救命処置の訓練を受けていないのでは ・脈を確認(手首の動脈で? 頚で?) → これも現在の一次救命処置から逸脱 ・心肺停止が疑われる状況(意識・脈なし) → 仰臥位にしてCPRが必要  *現場の警察官が2人とも「新たな事故の防止や違反車両の運転手の身柄確保」   に回ったのは残念な対応だと思います(改善の余地あり)。  以上、皆様のご意見はいかがでしょうか。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


From: Subject: [eml-nc5: 1797] Re: 警察官による応急処置 In [eml-nc5: 1796] Re: 1795 警察官による応急処置(仰臥位でない傷 病者へのアプローチ) Genro Ochiさん は書きました: >  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。警察官による応急 > 処置についての新聞記事を読み直していて、記事の誤り(不正確な部分)に気づ > きました。 (中略) > 記事より > | 事故について、県警広報課は毎日新聞の取材に「パトカーの隊員2人は事故 > |後すぐに119番通報した。肩を揺らして加生さんの意識確認をしたり、脈を > |調べたが、反応はなかった。気道確保などはしていない」と答えた。 そうしてみますと、今回の議論の前提となった『事故後5分間放置』は、 誤報ないし新聞のミスリードであったのですね。被害者が車外に放り出 されたという状況から頚損の恐れも十分に考えられ、現場の警察官が意 識確認を行い反応がないことを確認し、安易な移動や体位変換をしなか ったことは、救急医学的にも正解であったと思われます。 当所より[eml-nc5: 1764]私が危惧しておりました通り、 > それはそれで『警察の失態』として新聞紙面に踊るこ > とになりはしませんか?そこまで云わずとも、捜査より救命を優先した > 警察官に対して「良くやってくれた。ありがとう。」と声を挙げる者が > どれほど居るでしょうか? という状況と考えますが、いかがでしょうか?被害者が消防職員の息子 さんと云うことで、お気の毒な話でありますが、極めて強いバイアスの 掛かった取材源に新聞記者が引きずられたのでしょう。恐らく悪しき取 材の典型例です。とまれ当該記事を書いた記者さんとお知り合いなら、 続報の掲載、少なくとも訂正記事の掲載を求められたいと思います。


From: 越智 Subject: [eml-nc5: 1799] Re: 1797 警察官による応急処置  Pさん、皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。コメント をいただき、有難うございました。 □ Pさんは書きました(eml-nc5: 1797): >そうしてみますと、今回の議論の前提となった『事故後5分間放置』は、 >誤報ないし新聞のミスリードであったのですね。被害者が車外に放り出 >されたという状況から頚損の恐れも十分に考えられ、現場の警察官が意 >識確認を行い反応がないことを確認し、安易な移動や体位変換をしなか >ったことは、救急医学的にも正解であったと思われます。 → いえ、警察官の対応は不十分なものであったと思います。意識のない   伏臥位の傷病者に対し呼吸を確認し、呼吸が確認できなければ仰臥位   にして気道確保・人工呼吸・循環のサインへと進んでいただきたかっ   たと思います。そのような一次救命処置の流れを警察官が習得してお   くべき時代になった・・それが私が主張したいことです。 越智より(eml-nc5: 1796)   | 以下、今回の経過をもう一度整理してみます。 |・今回、警察官は伏臥位の傷病者にまず意識確認 → これは正解 |・意識がなかったので119通報 → これも正解 | *できたら110番通報の段階で傷病者の有無を確認し、この時点で119通報をし |  ておいていただければよかった(警察 ⇒ 消防)。 |・呼吸確認せず? → 一次救命処置の訓練を受けていないのでは |・脈を確認(手首の動脈で? 頚で?) → これも現在の一次救命処置から逸脱 |・心肺停止が疑われる状況(意識・脈なし) → 仰臥位にしてCPRが必要 | *現場の警察官が2人とも「新たな事故の防止や違反車両の運転手の身柄確保」 |  に回ったのは残念な対応だと思います(改善の余地あり)。  皆様のご意見はいかがでしょうか。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


Subject: [eml-nc5: 1808] 警察官による応急処置(社会機能維持者) From: 長嶺 Date: Thu, 17 Nov 2005 小文字病院の長嶺です。 ・・さんのご紹介にもありましたが「社会機能維持者」という 言葉(恥ずかしながら)初めて知りました。 【タミフル処方の優先順位に関する指針】 http://www.asahi.com/special/051102/TKY200511110407.html 社会機能維持者の定義ははっきりとはしていないようですが、 記事にもありますように 医療従事者、交通・通信、石油・電力などのエネルギー産業、 警察・消防があたるようです。 優先順位が2番目、児童・高齢者をさておいての順番です。 それだけの期待がある医療従事者や消防、警察です。 優先もある以上、責務も重大であると再確認させられました。 ○ 表題の議論に戻りますが、初動捜査の問題、二次災害の問題、 うつぶせの傷病者の対応の仕方、など個々の場面によって解釈 は様々でしょう。 何一つ文書化できる「これが正解」というものはない、という 意見に賛成です。 お互い「現場の苦労を知ってるのか」という感情でお付き合い をしますと、不利益を一番被るのは、ハザマにいる弱者となっ てしまいがちです。 Pさんが「救急医学的に不正解」とお書きになられましたが、 そのように白・黒つけられる学問であればどんなに良いかと 思いもします。 社会機能維持者と呼ばれ、優遇措置まで考えられている私達が、 人命を救助したことで「よくやった!」と褒められることを 期待したり、賞賛されないことに不満を持つことは、それこそ 「期待はずれ」の考え方でしょう。。 初動捜査も、二次災害防止も、傷病者の手当ても、全部できる ように最善を尽くす、そのためにはトリアージの技術を活かす、 そのためには多職種が同じ気持ちで働く。 最初は批判、非難にようになるかもしれませんが、悪いと思わ れることは出してみて議論すれば良いのではないでしょうか。 今回の件にしても「要望書」は出したくせに、その後は何も働 きかけもしなかった私も後悔しています。 「イチャモンばっかり言うな」といわれても仕方ない有様でし ょう。 いずれにせよ命に関わることであればナアナアで済まして良い 問題ではありません。


From: 越智 Subject: [eml-nc5: 1809] Re: 1790 ちょいと怒りを放って良いでしょうか?  Kさん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。い つも貴重なご意見を読ませていただき、感謝しています。 (中略) → 確かに警察官と消防職員、病院職員が顔の見える関係になれば今回のよ   うな問題もよい方向に進んでゆきそうですね。実際に警察と消防で勉強   会、研修会などの機会を持っておられる地域もあるようで、ぜひそのよ   うな交流を進めてゆきたいですね。(中略) (中略) → Kさんと私との間に意見の差異はほとんどないと感じています。公   務員としての警察官にとって一次救命処置(AEDを含む)の素養は必須、   現場では対応できる人数や重傷度によって処置の優先順位は変わる、い   ずれにしても「生命」の優先順位はかなり高い・・・という考えで一致   できると考えています。  それでは引き続き意見交換を宜しくお願いいたします。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


Subject: [eml-nc5: 1810] Re: 1797 警察官による応急処置 From: しつこく絡むようで申し訳ないのですが… 元の新聞記事を私は拝見しておりませんが、『巻き添え死:事故後5分 間放置』という見出しを見て多くの方々は、被害者が容態を見られるこ ともされずに路上に放置された、警官にネグレクトされた、と考えたと 思います。しかし、実際には警官は、安全確保と意識の確認という絶対 必要な行為は行っています。しつこいようで恐縮ですが、当該記事はセ ンセーショナルな見出しを踊らせ世論をミスリードしたと考えられます。 交通事故の現場で頚損の可能性が高い状況で、被害者を仰臥位に体位変 化するのが妥当であるのか?それは、運を天に任せてやるのも悪くない が"MUST"ではない。交通事故では胸部損傷、多発骨折も多いが、損傷を ひどくするのではないかとCPRを躊躇したとしてもやむを得ない。医療 従事者でないバイスタンダーにそこまでは要求できない、と考えます。 これについては、救急医学の専門家の見解を賜りたいと思います。 勿論、ここで多くの方がご指摘のように、警察と救急との密接な連携も 必要です。事故現場に急行することが多いであろう警察官に救命の鎖の 第一環としての役割を期待し、警察官の訓練の一環としてBLSの受講を 勧めるのは、私も賛成です。パトカーにネックカラー、救急キット、さ らにはAEDの装備も望みたい。 しかしながら、事故現場で弛緩が必要にして最低限度の処置は行ったに もかかわらず、新聞に『事故後5分間放置』などとセンセーショナルな 見出しが踊り指弾されたのでは、現場の警官は積極的な救命活動を躊躇 うかも知れません。エラーを過大に指弾されるのを恐れ萎縮して仕舞う。 もし、私が上長、署長の立場ならば、部下が無用に指弾されるのを恐れ て「手を出すな。救急に任せなさい。」と事なかれ的な指示をするかも 知れない。 その意味で、当該記事が世論をミスリードした罪は大きいと思います。 その記者さんとお知り合いなら、少なくともそういう意見があったこと を伝えて欲しい。


From: 越智 Subject: [eml-nc5: 1811] Re: 1810 警察官による応急処置 (ご意見をウェブ資料に収載させてください)  Pさん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。 意見交換有難うございます。 〇 Pさんは書きました(eml-nc5: 1810): >元の新聞記事を私は拝見しておりませんが、『巻き添え死:事故後5分 >間放置』という見出しを見て多くの方々は、被害者が容態を見られるこ >ともされずに路上に放置された、警官にネグレクトされた、と考えたと >思います。しかし、実際には警官は、安全確保と意識の確認という絶対 >必要な行為は行っています。しつこいようで恐縮ですが、当該記事はセ >ンセーショナルな見出しを踊らせ世論をミスリードしたと考えられます。 → ML上でもとの記事の全文を紹介させていただきました(eml-nc5: 1738)。   また同じ情報を以下のウェブに収載させていただいています。 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/police.htm   確かに「見出し」は読者に様々な反応をもたらす恐れがあります。必   要以上に人を引きつけようとして、不正確になるという例も少なくな   いと思います。   今回の例で、警察官が彼らの通常の常識による「絶対必要な行為」   が実施されたのは事実です。見出しからそれも実施しなかったと誤   解し、本文を読まないまま謝った記憶を残す読者もいないとは限ら   ないと思います。   ただ、私はこの記事の見出しは(多少けばけばしいにしても)市民   に求められる一次救命処置(世界的にはAEDも含む)すら、警察官   によって実施されなかったことを取り上げたものであり、ことさら   にセンセーショナルあるいは世論をミスリードするほどではないと   考えています。 >交通事故の現場で頚損の可能性が高い状況で、被害者を仰臥位に体位変 >化するのが妥当であるのか?それは、運を天に任せてやるのも悪くない >が"MUST"ではない。交通事故では胸部損傷、多発骨折も多いが、損傷を >ひどくするのではないかとCPRを躊躇したとしてもやむを得ない。医療 >従事者でないバイスタンダーにそこまでは要求できない、と考えます。 >これについては、救急医学の専門家の見解を賜りたいと思います。 → 先のメールでILCOR勧告の処置の手順を紹介しましたが、伏臥位で   反応がない傷病者において呼吸を確認することができなければ(仮   に頚髄に衝撃が及ぶとしても)仰臥位にして、気道確保 → 人工呼   吸 → 循環のサイン確認 → 必要により心臓マッサ−ジ へと進む   ことが望まれます。これは一般市民にも、医療関係者でも共通であ   り、現場に先着する可能性のある警察官にもそのような素養を持っ   ていただきたいというのが私の希望です。 >勿論、ここで多くの方がご指摘のように、警察と救急との密接な連携も >必要です。事故現場に急行することが多いであろう警察官に救命の鎖の >第一環としての役割を期待し、警察官の訓練の一環としてBLSの受講を >勧めるのは、私も賛成です。パトカーにネックカラー、救急キット、さ >らにはAEDの装備も望みたい。 → 同感でございます。 >しかしながら、事故現場で弛緩が必要にして最低限度の処置は行ったに >もかかわらず、新聞に『事故後5分間放置』などとセンセーショナルな >見出しが踊り指弾されたのでは、現場の警官は積極的な救命活動を躊躇 >うかも知れません。エラーを過大に指弾されるのを恐れ萎縮して仕舞う。 >もし、私が上長、署長の立場ならば、部下が無用に指弾されるのを恐れ >て「手を出すな。救急に任せなさい。」と事なかれ的な指示をするかも >知れない。 → 虚脱(心肺停止)から最初の5分間は傷病者にとってかけがえのな   い生存のチャンスであり、そこで手を差し伸べてくれる警察官であ   ってほしいというのが私の希望です。今回の記事の見出しがセンセ   ーショナル過ぎて警察官の反発を招くとすればそれはとても残念で   す。 〇 >その意味で、当該記事が世論をミスリードした罪は大きいと思います。 >その記者さんとお知り合いなら、少なくともそういう意見があったこと >を伝えて欲しい。 → 私は記事を書かれた新聞記者と面識はありませんが、電話や電子メー   ルで意見交換をしました。もしPさんのご了解をいただけるようで   したら、Pさんのここまでのご発言を上記ウェブ資料 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/police.htm   に収載させていただき、Pさんのご意図を記者にも伝えたいと思い   ます。匿名でのウェブ収載でもかまいません。ご了承をいただきたく   どうぞ宜しくお願いいたします。  それでは引き続き、意見交換を宜しくお願いいたします。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


From: Subject: [eml-nc5: 1813] Re: 1810 警察官による応急処置(ご意見をウェブ資料に収載させてください) レスポンスをいただきありがとうございました。 お話を通じて感じることは、救急医学の専門家が一般市民、バイスタン ダーに期待する一次救命処置と、医療従事者ではない一般人が自分には これぐらいは出来るだろう/しても良いだろうと思う内容に、かなりの 乖離があるように思われます。すなわちBLSの受講がまだそれほど普及 していないのが問題なのでしょう。 警察官など公務に就く方が率先して受講するのが望まれますが、一方で そうした活動に世間の応援と温かい目も必要でしょうし、過度の責任を 負わせることのないように注意したいですね。


Subject: [eml-nc5: 1814] Re: 警察官による応急処置 From: 岡田 Date: Thu, 17 Nov 2005  前略.EML MLの皆様.岡田@鳥取県立中央病院救命センターです.ここ数日間ICUに早くも冬 眠状態で,久しぶりにMLをみました. Critical situationにおいて,各人の立場もあるとは 思いますが(というか立場が違うのは当然なわけで),そこでどうしようかと考えてる暇もな いし,どうすればいいのか誰か教えて下さ〜い,と言った時に,こうすればいいんだと教えて いるのが,BLSのconceptではないでしょうか. 即ち, > 初動捜査も、二次災害防止も、傷病者の手当ても、全部できるように最善を尽くす、その ためにはトリアージの技術を活かす、そのためには多職種が同じ気持ちで働く。  といった長嶺先生のご意見のその同じ気持ちで動くactionの1つで,Critical situationの 際のactionがBLSだと思います.  それは意識がなければ,人・物集める・119,呼吸していなければ人工呼吸,循環のサインが なければCPR,それだけです. victimが10人,循環のサインがない人が1人,First responder が自分1人の場合はたぶんCPRは開始しないでしょう. しかしvictimが1人しかも循環のサイン なし,responderも1人の場合,CPRを開始すべきと教えるのがBLSです.もちろん自分の安全が 確保できなければ,CPRを開始することもない. BLSを教える場合,職種ごとに異なったaction を教えることはありませんよね. 職種を考慮したinstructionはするでしょうが,幹はいっし ょですから.  救急処置は救急隊に任せればよい,と考えている会社の上司もおられるとは思いますが,それ じゃだめというのは明白なわけで,bystanderのactionが大事です,だからBLSを少しでも普及さ せたい,とうのが医療従事者の願いだと思います. とうのを越智さんは強調されているのでは ないでしょうか.  僕は医療従事者しか教えたことがありませんので,一般の方も教えられている消防関係の方々 のご意見は如何ですか. ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆     岡田 稔  MINORU OKADA  鳥取県立中央病院 救急科 救命救急センター   〒 680-0901  鳥取県鳥取市江津 730


From: 山本 Subject: [eml-nc5: 1815] Re: 1810 警察官による応急処置(ご意見を 山本です。 この問題、このケースだけというわけではなく、普遍的な部分を持っていると感じます。 On 2005/11/17, at 13:02, Genro Ochi wrote: > http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/police.htm にありました、記事の内容をもう一度考えてみました。 以下抜粋してみました。 > 12日午後8時57分ごろ、北九州市警のパトカーに追跡され た元診療放射線技師の舟本祐  紀容疑者(21)=業務上過失致死などの容疑で逮捕=の 車は約1・4キロ逃走したうえ、  赤信号を無視。青信号で交差点に入った徹也さんの 車に衝突した。 > 「徹也さんは、警官の手当 てを受けずに車道上に放置されていた」 > 「徹也さんは車外に投げ出されてうつぶせ状態のままで、気道の確保もされず に手当て  も受けていなかった」と話す。 >  パトカーからの119番通報は午後8時58分にあり、救急隊が現場に到着したのは 同  9時3分。少なくとも5分間は放置されていたことになる。 >  「パトカーの隊員2人は事故後すぐに119番通報した。肩を揺らして加生さんの意  識確認をしたり、脈を調べたが、反応はなかった。気道確保などはしていない」 > 「新たな事故の防止や違反車両の運転手の身柄確保もしなければならなかった」と話して  いる。 いろいろ難しいので、その場の「光景」を映像的に書き直してみました。 私の解釈が間違っていなければ、以下のような様子になると思います。 パトカーは加害者の乗った車を追いかけている。スピードを出して走る2台。交差点で赤信 号を無視して飛び出した加害者の車が被害者の車に衝突する。 被害者の車からは、徹也さんが車道に投げ出され、うつぶせ状態で倒れている。一人の警察 官が119番し、もう一人が徹也さんの肩を揺らした。意識が無 く、脈も調べたが、反応は無 い。 警察官は二人とも徹也さんのそばから離れて、「加害者を取り押さえるべく、加害者の車の 方へ行った。同時に辺が危険でないか(交差点の近く)見渡した。」(この「」内は『違反 車両の運転手の身柄確保』という言葉を推測して描写したものです) 5分後、救急車が到着し、車道でうつぶせに倒れている徹也さんの方へ向かった。 このケースに関して考えると、 パトカーはずっと加害者を追っているわけですから、車のナンバーなど承知していたでしょ う。だから、取り逃がしてしまっても、盗難車でなければ、後で探すのは難しくない気がし ます。となると、5分の間、「身柄確保と新たな事故の防止」に二人の警察官がおわれてい て、加害者は道路にうつぶせのまま置かれているというのはやはり不自然 ではないでしょう か。(二人もいるんですから!) よしんば、明らかに亡くなっていたとしても、2人のうちどちらかそばについている事ぐら い出来た気がします。 素人の身になって考えると、とっさに「気道確保」など思いつかなかったのではないでしょ うか。(ヘナチョコ市民の私だったらそうかもしれません)まして や心肺蘇生など手が出 ないかもしれません。「プロに任せる」という言い訳は、私だったら、後から思いつくでし ょう。 以上、このケースに関する私の推測です。 皆様はどう思われますか? その上で、普遍的問題にシフトすると。。。 自分のヘナチョコさを棚にあげて勝手な言い分ですけれど、(ヘナチョコだからこそ分かり ますが)こういう事態に直面する可能性の高い警察官に、救命法のスキルはMUSTではないで しょうか。


From: 越智 Subject: [eml-nc5: 1827] ウェブ収載にご協力下さい(警察官による応急処置を)  Pさん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。    「警察官による応急処置を」の公開ウェブ資料 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/police.htm に、Pさんをはじめ皆様のご発言を収載させていただきました。ここま での資料で不適切な部分などがありましたら越智あてご連絡をいただきた く、どうぞ宜しくお願いいたします。  皆様のご意見をできるだけ多く収載させていただき、救急医療関係者、 警察関係者、報道関係者など、様々な立場の方々に考える材料を提供した いと考えています。今回のテーマでのご発言をまだ収載させていただいて いない方でウェブ収載をご了承下さる方がおられましたら、ぜひ越智宛に ご連絡をお願い申し上げます(gochi@m.ehime-u.ac.jp)。


From: 越智 Subject: [eml-nc5: 1828] 続報記事―警察官による心肺蘇生  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。  「警察官による心肺蘇生」に関する続報記事が11月17日の毎日新聞西部朝刊 に掲載されたようです。この記事を新聞社のご許可のもとにウェブ資料として 収載させていただきましたので、ご参照下さい。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 2005年 11月 17日(毎日新聞西部朝刊) いのちの輪:救命問題を考える 警察官による心肺蘇生、2年前に医師らが要望書 ◇福岡県警から返答なし、豊前の事故に生かせず http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/police.htm#a1117 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  記事中で、2003年の以下の要望書「警察官による心肺蘇生法実施に関する要 望書」http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/03/n3-police.htm や救急医療メー リングリストについて紹介されています。取材を受けた私としては「心停止か ら何の処置も施されなければ、約3分間で半数が死亡」と(科学的根拠の乏し い)以前のドリンカー曲線の数値?が紹介されていることなど、記事に若干の 違和感はありますが、記事自体は警察官が応急手当に目を向けてくださるきっ かけになるのではないかと期待しています。  またeml-nc内の論議の内容を会員外の人に話すことについては制約があり、 主には私と・・さんの主張を中心に一般的な話をするにとどめたつもりです。 ただ以下のような記載の語調が強すぎるとお感じになる方はおられるかも知れ ません。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 越智さんらはこのケースを「極めて不適切」と感じ、発見者から救急隊、医療 機関へと患者がリレーされ、適切な救命処置をすることで重篤なけが人や急病 人を救う「救命の輪」の重要性を、警察にも訴えることにした。日ごろ救急隊 員から「警察官が救命処置をしてくれない」と聞かされていたことも背景にあ ったという。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  記事をご覧いただき、皆様のご意見などお聞かせいただけましたら幸いです。


Subject: [eml-nc5: 1831] RE: 警察官による応急処置(ご意見を From: Date: Sun, 20 Nov 2005 みなさんこんばんは。N@・・消防です。 最初に論点をずらしたのはもしかしたら私? なんだかいろんな場面を想像してしまったので元の話が自分の中で薄れたのかも しれません。 私の署の職員に救命講習をして職員の100%取得としたのがごく最近のこと で、身内といえば市役所職員だって市民の為に働かなければいけないのだから、 当然のように・・・と言いたいところですが・・・(話題に加わる資格なし?) いつも警察官の対応には不満をもっていたのですが、先日は少々勝手が違いまし た。 たまにはそんな人もいるということですね。 でも、概ね警察官の優先順位は私のとは一致しないようです。 治安という要素が加わると引くに引けないということなのでしょうか? 武力行使が是か非かみたいな感覚に近いのでしょうかね? 最近、ワイドショーなんかをみていても「暴れる音や助けてと言う悲鳴を聞い た」なんて殺人現場付近の住民が平気でこたえていたりするけど、110番なん てしていないんですよね。 発見が身内ということであったり、火災であったりしているようですし・・・ 生命を守るのは誰にも頼れない時代なのでしょうか? すみません、再び論点をずらしてしまいそうなので、この話題から消えます


Subject: [eml-nc5: 1832] Re: 続報記事―警察官による心肺蘇生 From: Date: Sun, 20 Nov 2005 In Re: [eml-nc5: 1828] 続報記事―警察官による心肺蘇生 Genro Ochiさんは書きました: >  「警察官による心肺蘇生」に関する続報記事が11月17日の毎日新聞西部朝刊 > に掲載されたようです。この記事を新聞社のご許可のもとにウェブ資料として > 収載させていただきましたので、ご参照下さい。 > 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 > 2005年 11月 17日(毎日新聞西部朝刊) > いのちの輪:救命問題を考える 警察官による心肺蘇生、2年前に医師らが要望書 > ◇福岡県警から返答なし、豊前の事故に生かせず > http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/police.htm#a1117 > 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ご紹介のあった記事および皆様のご意見を拝聴してふと思ったのですが、 救急と警察の間が上手く行っていない、互いの間に不信感のようなもの があるように感じられました。 雑談ですが今から72年前、大阪の曽根崎交差点で「ゴーストップ事件」 として知られる事件がありました。休暇外出中の兵隊が巡査の手信号を 無視して交差点を渡り、それを咎めた巡査と喧嘩になった、という他愛 ないいざこざが原因です。日頃ともに威張っていた警察と軍隊の喧嘩と 言うことで庶民は囃し立て、新聞はこぞって記事にしました。しかし、 事件は警察署対憲兵隊、大阪府庁対陸軍第4師団の面子の問題、さらに は内務省対陸軍省の官僚機構の対立に発展し、内閣すら仲裁できず遂に 昭和天皇の裁断を仰ぐ事態に。 この事件を口実の一つとして、軍が内閣に従わなくなったと言われてい ます。後に軍部の暴走を許し戦争へ突き進んだ歴史を考えれば、世相の 変わり目を映した事件でした。 小さな事件が背後に潜む大きな問題を予兆させるのは、往々にしてある ことです。豊前事件が現代のゴーストップ事件とならぬことを祈る、と 言ったら大げさでしょうか。


From: 山本 Subject: [eml-nc5: 1833] Re: 続報記事―警察官による心肺蘇生 Date: Sun, 20 Nov 2005 おはようございます。 山本です。 すみません、私も本筋とはずれていると思いますけれど。。。 > ご紹介のあった記事および皆様のご意見を拝聴してふと思ったのですが、 > 救急と警察の間が上手く行っていない、互いの間に不信感のようなもの > があるように感じられました。 ちょっと、このご意見に?と思いましたので。。。 最近あまり見ない気がしますが、ちょっと前まで、何か事件があると救急車を背にして 白い服を着た救急隊員や、消防車をバックに制服を着た消防隊員(という事は少なくと も映像的には私人ではなく公人として)が事件の詳細をメディアに向かってしゃべるシ ーンがありました。 でも、私の記憶の中、ながーい人生の中で、警察官がそういう事をしているシーンは見 た事が無い気がします。私も身内に警察官がいるんですが。。。彼の話を聞くと、警察 官っていろんな所からいろんな訴えがあって、それはもう、個人情報ゴシップの渦中に いるとのこと。小さいものにしろ大きいものにしろ、そういう情報や内情を守るガード なんかは相当しっかりしている気がします。 仲が悪いというより、仲良くならないスタンスなんじゃないでしょうか。(何しろ、物 理的に逮捕なんかもできちゃう日本で一番大きな「権力」を持ってるわけで)それは癒 着も防ぐでしょうし、よく、ドラマなんかにある、悪徳警官の活躍の場も無くすのでは と思います。 不信じゃなくて、交わらない。(もちろん組織同士でしょうからいろいろあると思いま すけれど。。。性格のイイ市民はそう、善意に解釈します) という本筋から離れた投稿なんですけれど。。。 でも、だからこそ、今、世間で静かに起きつつある、「救命の環を繋げる運動」も伝わ っていかないのかもしれません。こういうMLに私人でこっそり参加されて、伝令にでも なってくれる人がいないと。。。 > 雑談ですが今から72年前、大阪の曽根崎交差点で「ゴーストップ事件」 > として知られる事件がありました。休暇外出中の兵隊が巡査の手信号を > 無視して交差点を渡り、それを咎めた巡査と喧嘩になった、という他愛 > ないいざこざが原因です。


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