災害医学・抄読会 2002/03/29

イギリスにおける災害時のための救急医療体制

(橘田要一ほか、日救急医会誌 11: 627-635, 2000)


イギリスの救急医療の現状

 救急本部では電話に対応する職員であるcall talkerがコンピューターソフトのプロトコールにより患者の状態を把握し、助言や指導を救急車到着まで続ける一方、この情報により緊急度・重症度がトリアージされる。dispatcher(救急車を派遣する職員)はこれをもとに、重症の場合は、救急車以外にもBASICS doctor1) (院外救急活動を行うボランティア医師)や、first responder2)(車やバイクで急行するparamedic)の派遣を決定し、院外医療活動が開始される。救急車は救急部のある真近の病院に患者を搬送し、病院を選定する自由または必要はない。救急部を受診すると、看護婦によりコンピューターを使った症状別のトリアージを受け、診察の優先が決定される。このように通常の医療体制にトリアージの概念が組み込まれている。

 大災害のためには Major Incident Medical Management and Support(MIMMS)3)という教育システムが完成されている。このシステムでは大災害時の医療にかかわる警察、消防、救急、医療機関、ボランティア、行政などの各部門の役割と責任、組織体系、連携の仕方、連絡のとり方などが講義、訓練される。これは医療関係だけでなく、大災害に関与する警察、消防、行政、ボランティア組織など全員が理解できる共通語として浸透することを目的としている。

 イギリスではこのような大災害に対し、BASICS doctorを中心とする医師の院外救急医療活動、通常の医療活動の中でトリアージの概念、MIMMSという教育・訓練システムが平常時から存在している。日本でもトリアージへの更なる理解と院外救急活動の開始が必要である一方、全国的な警察、消防、救急と地域行政との連携の構築が急務で、イギリスの経験から学べる点は多いと考えられる。


1) BASICS:The British Association of Immediate Care Schemes

  1. 1977年にできたボランティア組織。

  2. BASICS doctorは日常は地域の病院に勤務したり、開業医として自分の診療所で医療活動を行っているが、あらかじめ自分がBASICS doctorとして活動できる日時をオンコール可能として救急本部に登録している。ひとたびBASICS doctorが必要な事例が発生すると、救急本部から、現場に最も早く到着できる場所にいるBASICS doctorが派遣要請され、現場に向かう。

  3. 派遣要請の基準―車内に閉じ込められた交通外傷、重症と予想される交通外傷、クレーンなど大きなものにはさまれた、10 m以上の高さからの墜落、一部の心肺停止症例(若年者など)。

2)first responder

  1. paramedicのより迅速な派遣が必要と判断した場合(高所からの転落、若年者の心肺停止、心筋梗塞の強く疑われる胸痛、車内に閉じ込められた交通外傷など)に車やバイクに乗り、一人で現場に急行するparamedicのこと。

3)MIMMS

  1. MIMMSの教育はイギリス全国で各地域ごとに年に4回程度繰り返して行われる。

  2. 救急隊員や医師などの医療関係だけでなく消防、警察、赤十字などのボランティア組織も対象となる。


群馬県内で起こった化学工場爆発による災害

(饗庭庄一ほか、日本集団災害医学会誌 6: 158, 2001)


 平成12年6月10日(土)18時08分頃、日進化工群馬工場で爆発事故が発生した。爆発の原因は、劇物であるヒドロキシルアミンをタンク内で再蒸留中、何らかの原因で爆発して火災となったといわれている。爆発はかなり強烈で工場の北側近くにある地震計は震度2を記録し、30q離れた前橋のヘリポートでも爆発音とともに建物の揺れが感じられた。現場付近にはアンモニアのような強烈な刺激臭が立ちこめ、工場では火災も発生した。被害は工場を中心に付近周辺の家屋建物の窓ガラスの損壊など半径1,500メートルの範囲に集中した。当時の気象状況は曇りで、北北西の風、風速1.4m、気温は17.9度である。現場は利根川の堤防から北に2km足らずで、国道17号線バイパス(上武国道)と国道354号線が立体交差する間に位置する。

 太田地区消防本部指令課では、18時09分に第一報を受け、18時11分には本火災を危険物火災で運用し、初期段階から第二出場として他地区の消防本部からも消防車などを出動させた。18時25分、現場対策本部が風上にあたる現場の北側に設置されて指揮にあたった。日本赤十字社群馬支部からは、救護用品として毛布150枚、生活用品50箱、見舞品50セットなどが搬送された。

 工場付近の状況は、道路上にスレートやドラム缶が散乱しており進入困難であった。工場北側では建物3棟が延焼中で、他に白煙や蒸気が噴出しているものもあった。地面には金属などの破片が散乱しており、すぐには踏み込めない状況である。蒸留塔の建物は爆発により破壊されて原形をとどめていない。蒸留塔東にはタンクが6本設置されているが、爆発で4~5本に亀裂が入っており、タンクから薬液の流出が見られた。東側倉庫では薬品容器から白煙が立ち込めていた。薬品の蒸気が噴出しており、現場にはアンモニアのような強い刺激臭が充満していた。蒸留塔南で小規模の火災が2ヶ所確認された。

 従業員からの事情聴取により、当日の稼動人員のうち4名が行方不明であること、タンクから流出している薬液は希硫酸で毒性はなく爆発の危険性もないこと、爆発した蒸留塔の薬品はヒドロキシルアミンであることが聴取された。これらは直ちに消防本部指令課に報告された。

 人的被害は負傷者が62名で死亡4名、重症1名、中等症4名、軽症53名であった。軽症者が多かったため、救出された順に病院へ搬送され、結果的にはトリアージは行われなかった。建物の被害は全焼4棟、全半壊18棟、一部損壊281棟、車両・工作物62、ガラス破損179棟、工場周辺では249世帯で停電、電話は47回線が不通となった。上武国道は6時間、国道354号は22時間の通行止めとなった。

 この爆発事故を契機として、劇物・毒物の扱い基準や報告制度、取り締まりの方法などが問われる結果となった。化学物質災害は危険性を持つ化学物質が多いため、その危険度の評価が大切である。評価の結果によっては地域住民の退去勧告の問題、被害者の救護の問題、救助者・医療従事者自体への影響の有無によりその対策としての保護の問題があり、緊急医療チーム派遣の要請などが問題となる。今回は行われなかったが、多くの災害現場では災害規模によっては被害者のトリアージの問題も必要になる。また今回の事故では、漏れているガス・液体・蒸留タンクの危険性などから二次災害発生の危険性を考慮し、周辺から検索が行われた。タンクのうち4~5本は爆発の影響で亀裂が入り薬液の流出が認められたが、確認の結果これは希硫酸であり毒物や爆発の危険はないことが分かった。刺激性のアンモニア臭も次第に減弱した。一時期、近くの河川で浮いた魚が認められて飲料水のための節水制限が出されたが、まもなく解除された。その後の住民被害者検査からも特別な障害は聞いていない。

 この種の化学工場爆発火災事故の原因は、慣れからくる些細な注意義務の怠慢や操作ミス、日ごろの装置・システムの保守・点検の不備によるものと思われる。事故再発防止のためには毒物劇物取締法の劇物としての管理が必要であり、行政的にも定期的な安全点検の実施、現場の監督者や担当者に原因として考えられる事項を絶えず点検する、点検させることを義務化する必要がある。今回の事故後、群馬県消防防災課の指導や群馬県保健福祉部薬務課からは毒物・劇物安全管理の手引きが配布され、説明会などが開かれた。


広域集団災害における負傷者消息安否情報システム導入の試み

(桜井立良ほか、日本集団災害医学会誌 6: 164, 2001)


災害医療のT

  1. Triage(選別)
  2. Treatment(応急処置)
  3. Transportation(搬送)   ・・・従来の"Three T"
      +
  4. Tidings(消息) 

 阪神・淡路大震災の経験のもとにあげられる問題点の主なものは、診療機能が低下した被災医療機関に負傷者が殺到したため情報が途絶し、孤立した医療機関は、建物の崩壊、ライフラインの供給停止、医療スタッフや医薬品、材料の不足から大混乱に陥り、十分な医療ができていなかったことであった。さらにその混乱をいっそう助長した事柄は、電話回線復旧時に外部からさまざまな問い合わせの電話があったことであり、その中でも消息安否情報の問い合わせが大多数を占めた。それでなくとも手が足りない医療スタッフがその対応に忙殺されたばかりでなく、入院外来患者の安否について答えるすべがなかったと経験した医療機関は述べている。

4番目のTの訓練方法

 災害発生場所
   ↓
 トリアージセンター:トリアージタッグ1枚目回収
   ↓
 患者搬出場所:2枚目回収
   ↓
  病 院:3枚目回収
   ↓
  パソコン:インターネット 検索可能な形式で提供

 消息安否情報の入力
 3ページ目の収容医療機関用トリアージタッグを回収し、それをもとにNTTの仮設の電話回線に接続したノート型パソコンを用いて奈良県が独自に作成していた「奈良ボランティアネット」上に負傷者の消息安否情報を入力。

 項目:地域、内容(名前、年齢、重症度など)、登録日


 訓練の結果、負傷者の消息安否情報の入力およびデータ検索がスムーズに行えることが判明した。

<問題点>

1.入力画面の整備

 氏名、年齢、重症度、転帰などの項目が必要である。そして登録時間や発信医療機関も必要ではないかと考える。しかし、入力項目が多いと、実際の災害現場では混乱しているため入力困難になる恐れがある。

2.入力情報の入手

 医師のカルテからの情報は専門用語が記載されている可能性があり、入力オペレーターにとって判読困難である。一方トリアージタッグを使用したところオペレーターにとっては容易に入力できる。しかし3ページ目のトリアージタッグを使用した場合、負傷者転送時には回収できない可能性もあり、安否情報入力用のページの追加の必要も考えられる。

3.電話回線の途絶の可能性

 仮設回線さえ設置できない状況も想定されるため、携帯電話や衛星回線などの使用についての訓練も必要である。


YOSAKOIソーラン祭り会場テロにおける救急医療対応

(丹野克俊ほか、日本集団災害医学会誌 6: 137, 2001)


 参加者約4万人,観客約200万人の大きなイベントであるYOSAKOIソーラン祭りで発生した爆発事故を通し,プレホスピタルケアにおけるトリアージおよび医療体制について検討した.

事件経過

[医療体制]

 22時15分まで現場近くに私的病院の救急車2台に医師2名,看護婦2名が待機していたがイベント終了時間となったため発災時は引き上げていた.

考 察


トリアージと法的問題

(浅利 靖、救急医療ジャーナル 9巻6号(通巻52号)、21-24、2001)


1) トリアージとは

 医療が十分に提供できる状態では、治療の適応、優先順位はまず最も重篤な傷病者から選択されるのが通常だが、災害時など不充分な医療の提供しかできない状態では、重症の傷病者より中等症の傷病者を優先的に治療した方が医療全体としての効率、救命率が上昇し、その後の合併症発生率が減少する可能性がある。

 そこで、災害時など、その地域の医療の供給能力を上回る大量かつ重篤な傷病者が発生した場合に限り、効率よい医療効果を求めて傷病者の治療の適応や優先順位を決定するという考え方が生まれた。これをトリアージという。

2) トリアージと法的問題…今後のトリアージの理想

 トリアージによる判断が絶対的なものでなく、災害と医療供給とのバランスによって決定されるものであるため、さまざまな法的問題点が生じる。

  1. トリアージの法的容認

     医師;

    緊急の場合において、複数の患者に対する診療の義務を履行しえない場合に、治療に対する合理的な判断により治療すべき患者を選別する。

    →この場合、「緊急避難」、「義務の衝突」などの法理により合法化される。

    ※治療の優先順位を判断する=個々の傷病者の重症度を判断する=医療行為

  2. トリアージを行う者の資格・資質

    資格;

    • 医師→
      重症度の診断、すなわち'診断する'という行為はそれ自体医師のみが行える医業である。つまり、医師には法的にその資格がある。
      しかし、トリアージが求められる環境下では、医療資機材の不足、医師自体のマンパワーの不足が起こるのが通常であるため、医師はトリアージ以外の直接的な医療行為でその能力を発揮すべきという考え方もある。

    •   医師以外(救急隊員・救命救急士、看護婦・看護士) →
      法的には難しい。
      しかし、非災害時の実際の現場を考えると、救急隊員(救命救急士)で あれば、傷病現場からの傷病者搬送先選定を行っているし、また看護婦 (士)であれば、外来診療などで医師の診察の前に重傷者を判断し、よ り早く的確な診療を行えるようにしている。つまり、トリアージにおいてその能力を発揮できることは十分に考えられる。

      ※つまり、上記の人物誰もが災害時にトリアージを行うことができる環境が望ましい。

            的確なトリアージのために…

           資質;

      災害時の混乱した状況下で、冷静にトリアージを行う能力とトリアージに関する知識・技術を持ち得た者が望ましい。
      傷病者の不適切なトリアージは(例えば、黒の患者を赤と判断など)、逆にトリアージの原則を崩して効率の低下を招く。

  3. トリアージカテゴリー'黒(治療適応外)'の判断

    • 医師→死亡の確認・判断は医師によってのみ行い得るため、法的にその資格がある。

    • 医師以外(救急隊員・救命救急士、看護婦・看護士)
         →今の法の下では不可能。

  4. トリアージの判断の妥当性
    生じた災害に関して、その時点の状況を十分に把握し、それに対する正確な認識に基づき、医療、搬送などの合理的な判断(その時点で最良と考えられるトリアージ)を行う。

    →結果的に傷病者にとって不利益となっても、直ちに法的責任となる可能性は少ない。

  5. 良きサマリア人法
    災害時に最良のトリアージを行ったとしても、結果として傷病者が不利益を被った場合、医療従事者はその責任を問われてしまう。そのため、医療従事者は積極的にトリアージを行いにくい環境にあるといえる。

    そのため、米国では全州において、上述のようなトリアージが行われた場合は、傷病者が不利益を被ったとしても医療従事者は法的に保護されるという法律が制定されている。これは、良きサマリア人法と呼ばれる。

    日本においても、医療従事者に不安・危惧を抱かせない社会的な体制を確立するために、このような法律や考え方が必要である。


災害派遣時の医療キット

(福家伸夫、救急医療ジャーナル 9巻4号(通巻50号)、50-52、2001))


 一口に災害と言っても、地震と洪水とではその様相は異なる。また、同じ災害であっても発生場所により様相が異なる。そのため、必要な医療機材は異なってくる事は当然である。

 しかし、災害の救助に赴くスタッフが自分達で使用するために携行するものなら、そう大きく変わることはない。なぜなら、何人かの集団が医療サポートの不自由な場所でしばらくの間生活していかなければならない事を想定すると、その答えは見えてくるからであろう。

 さらに、ここで言う「集団」とは医療従事者である場合もあり、そうであるならば、一般家庭の「救急箱」より遥かに医療効果の高い機材・薬品を準備出来る訳であるし、またしなくてはならない。

 携行する装備に関しては、絶対的な標準装備があるわけではないが、基本的には自分自身の常備薬は自分自身で用意するべきである。ここで注意しなければならないのは、輸送量や輸送条件には自ずから制限がある事であり、1)災害と直接関係しないもの(ワクチン、避妊器具など)は持ち込まない、2)管理に特殊な配慮が必要なものは避ける(冷所保存の薬品)、3)法的規制のある薬物(麻薬、覚醒剤など)は持ち込まない、などである。

 世界保健機構(WHO)は、災害急性期に普遍的に必要と思われる医療機材・薬剤の標準装備を示している。目標は、3ヶ月に1万人を診察する想定である。参考として例を示すと、1000人に対して、5%クロルヘキシジン液(消毒用)1l、脱脂綿1kg、絆創膏(2.5cm×5m)30巻、弾性包帯(7.5cm×5m)20巻、ガーゼ包帯(7.5cm×5m)200巻、せっけん10個、体温計6本、処置用使い捨て手袋100双という見当である。

 わが国の国際災害援助組織である緊急援助医療チームの出勤に際して用意される医薬品・機材・生活資材は、軽量で丈夫なジュラルミンのケースに収納されており、用途別に色分けされ番号が付けられている。この利点は、活動場所が決定すれば、それらのケースを重なると、整理棚として使用する事が出来る点である。

 特殊な状況として、航空機内での傷病発生を想定した医療キットがある。乗務員が使用出来るものとして救急キットと医薬品キットがあり、前者には主に軽外傷用の絆創膏・きず薬など、後者にはかぜ薬・乗り物酔い止めなどの市販薬が収められている。また、より高度な医療の充実のために国際線ではドクターズキットが搭載されるようになった。しかし、キットの使用資格は医師および医師の指示を受けた看護婦(士)に限定されているのが難点である。

 そのキットは、最近では国内線の一部でも搭載されるようになり、さらには、心肺蘇生の2000年ガイドラインで航空機内に除細動器を搭載するよう求めているため、その数は急増中である。

 市中病院集中治療センターにおいて、意識障害のある患者を飛行機で搬送するときのために、携帯キットを用意している施設もある。これは航空内で使用するため、飛行計器に影響をする電気製品は極力避け、また使用する場合も安全が確認されたものに限定している。

 これらのキットに対して、日常の管理が必要な事は言うまでもないが、普段使用しないために、管理がおろそかになりがちである。また出勤した直後は後片付けがずさんになりやすく、誤った箱に入れたままになっている可能性もある。改めて早々に整理し直さなくてはならない。

 また薬品や滅菌機材には有効期限があり、点検を怠っているといざというときの使用不可能なことに気付くことになる。ただし、有効期間は年単位なので、年1回の点検で十分であり、特定の日を決めて点検・機材の補充を行うと良いであろう。


第5章 二度の地震、ヒンドウークシ山脈を襲う

(世界災害報告 1999年版、p.42-84)


 紛争、貧困、経済停滞、厳冬、毎年の洪水、地震。あらゆる自然災害や人災に慣れて いるアフガニスタンを2つの悲惨な地震が襲った。1998年2月と5月、被災地は山間部の交戦地帯である。地震の報道が広く行き渡り、いち早く救援金が寄せられたにもかかわらず、 双方の地震で地域の災害対策及び人道援助機関の対応能力の弱点が露呈されることとなった。 何が機能して何が機能しなかったか。最初の地震の教訓が二度目の地震に生かされたか どうかを考察した。

 第1の地震:1998年2月4日、震度は6.1、死者の数は推定で2500にも 上った。ドウシャンベとニューヨークのアフガニスタン大使館に加え、世界中のジャーナリストの呼びかけにより、まだ調査が始まらない内に約60万米ドルの資金が集まった。しかし、通行困難な地形(山脈や川、タリバンの境界線に囲まれている)と悪天候が救援を妨げ、 各援助団体の前に大きな問題として立ちはだかった。拠点とすべき地点がタリバンに 攻撃されたこともあり、各団体がそれぞれ別に拠点を置いたため、物資調達や 状況調査の件で初期に混乱をきたした。また国際的な上席マネージャーをリーダーに したため、地元の団体と摩擦を起こし十分に支援するまで手間がかかっている。通信手段 においても各団体が個別の機器を使用したため互換性がなく、通信網が混乱を来した。当然今回のような 僻地では大打撃である。

 第2の地震:1998年5月30日、同じジクワットをさらに大規模な地震が おそった。被害は前の約5倍にもなった。状況が違うため単純に比較することは難しいが、即時の対応は迅速であった。被害状況の調査、分配の手順は悪化し、通信手段も 整備不足のままであった。そして何より改善すべきであった団体間の災害対策 へのアプローチも不足していた。しかし対応が迅速であったといっても、以前の団体が 残って活動を続けていたと考えると、改善されることは何一つとしてなされていないと言える。

 ほとんどの国では、国際救援が到着するまで現地の災害対策は、政府、 軍、緊急サービスが対応できている。しかし政府が分割されている質 の悪いアフガニスタン(当時)では、役割を果たすのは小さなグル−プ のみである。よってこの不安定な情勢をいち早く安定し、救急対策における、 既存の地元の専門知識を強化して、早急に被害状況調査や応急処置を行うことで、 大規模な国際団体の負担を減らし、また団体間の潤滑油として機能させることが 対処法であると考える。


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