尼崎JR事故に建設的な批判・提案を

救急医療メーリングリストからの提言(2005/05/17)
科学的な原因究明・立証と、今後に繋がる防止策の立案。
JR客室乗務員への一次救命処置(BLS)+除細動教育。
 主要駅や新幹線に自動体外式除細動器(AED)を備えること。
鉄道(特に新幹線)と関連施設のテロ対策も急務。

    文責:金子高太郎(県立広島病院)、越智元郎(市立八幡浜病院)


目次

救急医療メーリングリストにおける意見交換  A [eml-nc5: 0701] Re: news 電車事故  B [eml-nc5: 0703] Re: 電車事故  C [eml-nc5: 0705] 電車事故の報道について  D [eml-nc5: 0706] Re: 無理です。  E [eml-nc5: 0708] Re: 無理です。  F [eml-nc5: 0710] Re: 無理です。  G [eml-nc5: 0711] Re: 電車事故の報道について  A [eml-nc5: 0712] Re: 電車事故の報道について  H [eml-nc5: 0713] Re: 電車事故の報道について  A [eml-nc5: 0715] Re: 電車事故の報道について  I [eml-nc5: 0719] Re: 無理です。  H [eml-nc5: 0721] Re: 電車事故の報道について  J [eml-nc5: 0763] Re: 尼崎事故  K [eml-nc5: 0764] Re: 尼崎事故  H [eml-nc5: 0766] Re: 尼崎事故  L [eml-nc5: 0767] Re: 尼崎事故  越智[eml-nc5: 0772] JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)  金子[eml-nc5: 0773] RE: 0772 JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)  越智[eml-nc5: 0774] RE: 0773 JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)  M [eml-nc5: 0777] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)  越智[eml-nc5: 0778] JR へ建設的な批判を(他ネットより)  A [eml-nc5: 0779] Re: JR へ建設的な批判を(他ネットより)  K [eml-nc5: 0781] Re: JR へ建設的な批判を(他ネットより)  D [eml-nc5: 0802] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)  K [eml-nc5: 0815] JR 尼崎事故  N [eml-nc5: 0816] Re: JR 尼崎事故  O [eml-nc5: 0818] BLS/JR 尼崎事故  A [eml-nc5: 0831] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置  K [eml-nc5: 0832] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置  K [eml-nc5: 0833] Re: BLS/JR 尼崎事故  A [eml-nc5: 0834] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置  K [eml-nc5: 0835] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置  A [eml-nc5: 0842] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置  K [eml-nc5: 0846] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置  A [eml-nc5: 0851] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置  越智[eml-nc5: 1004] JR 社員よりご意見をいただきました  田辺[eml-nc5: 1006] Re: JR 社員よりご意見をいただきました  P [eml-nc5: 1015] Re: JR 社員よりご意見をいただきました Q [eml-nc5: 1017] JR 東、 AED を試行導入  越智[eml-nc5: 1049] ML の提言を実現していくために(JR社員より)

ACLS大阪メーリングリストにおける意見交換   い  [acls-osaka:8046] JR西日本への普及活動   徳田 [acls-osaka:8047] Re: JR西日本への普及活動   小林 [acls-osaka:8048] Re: JR西日本への普及活動   大窪 [acls-osaka:8049] Re: JR西日本への普及活動   な  [acls-osaka:8050] Re: JR西日本への普及活動   西本 [acls-osaka:8051] Re: JR西日本への普及活動   高橋 [acls-osaka:8052] Re: JR西日本への普及活動+喫煙対策もお願い   と  [acls-osaka:8053] Re: JR西日本への普及活動   寺井 [acls-osaka:8054] Re: JR西日本への普及活動   木下 [acls-osaka:8055] Re: JR西日本への普及活動(level1?)   越智 [acls-osaka:8056] JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)   ち  [acls-osaka:8059] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)   寺井 [acls-osaka:8060] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)   寺井 [acls-osaka:8065] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)   い  [acls-osaka:8356] JR西日本の回答   大窪 [acls-osaka:8361] こんなんどうですか?(・・さんのメ−ルにたいして)

産業衛生メーリングリストにおける意見交換  洙田 [OH-ML:3515] 尼崎JR事故と産業医  守屋 [OH-ML:3516] Re: 尼崎JR事故と産業医  洙田 [OH-ML:3517] Re: 尼崎JR事故と産業医  守屋 [OH-ML:3518] Re: 尼崎JR事故と産業医  洙田 [OH-ML:3519] Re: 尼崎JR事故と産業医  洙田 [OH-ML:3524] 尼崎JR事故と産業保健のあり方  金  [OH-ML:3525] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  清水 [OH-ML:3526] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  津田 [OH-ML:3527] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  洙田 [OH-ML:3528] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  洙田 [OH-ML:3529] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  洙田 [OH-ML:3530] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 金  [OH-ML:3532] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 影山 [OH-ML:3533] 産業保健と睡眠のこと  越智 [OH-ML:3534] 尼崎JR事故と産業医  洙田 [OH-ML:3540] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  清水 [OH-ML:3541] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  影山 [OH-ML:3542] メンタルヘルスと睡眠問題  津田 [OH-ML:3543] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  洙田 [OH-ML:3544] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  洙田 [OH-ML:3545] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方  洙田 [OH-ML:3546] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方(メンタルヘルスと睡眠問題) 越智 [OH-ML:3547] 尼崎JR事故と産業保健のあり方の話題をウェブ収載させていただきました  海道 [OH-ML:3549] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方の話題をウェブ収載させていただきました  洙田 [OH-ML:3550] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方の話題をウェブ収載させていただきました  影山 [OH-ML:3551] 事故後のメンタル対応について 清水 [OH-ML:3552] Re: 事故後のメンタル対応について  海道 [OH-ML:3553] Re: 事故後のメンタル対応について  洙田 [OH-ML:3554] 尼崎JR事故と産業保健(被害管理と危機予防)  海道 [OH-ML:3555] Re: 事故後のメンタル対応について ホ  [OH-ML:3556] Re: 事故後のメンタル対応について  海道 [OH-ML:3557] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方の話題をウェブ収載させていただきました  洙田 [OH-ML:3559] 尼崎 JR 事故と産業保健(安全性向上計画)  海道 [OH-ML:3560] Re: 尼崎 JR 事故と産業保健(安全性向上計画) 毛利 [OH-ML:3563] Re: 尼崎 JR事故と産業保健(安全性向上計画)  洙田 [OH-ML:3564] Re: 尼崎 JR 事故と産業保健(安全性向上計画)


救急医療メーリングリストにおける意見交換


Subject: [eml-nc5: 0701] Re: news  電車事故 From: (一般市民) Date: Mon, 25 Apr 2005 16:55:27 +0900 Aです。 私も今日は家にいます。 ニュースでずっとこの事故を見ていました。 時々チャンネルを変えるとその反応の違いがあるのが分かります。 ちょっと気になる発言もあります。 「今、アセチレンが運ばれました」 に対して、 「事故から8時間たって、今頃重機が運ばれているなんて。」 さっきからずっと、 「消防をきちんと指揮できているのかどうか?」 「4時間もたって、まだ電車の中に閉じ込められている人がいるなんて」 など、ずっとおっしゃってられました。 クレーン車かなんかで、ガガっと持ち上げちゃえば一発っていうことだろうか。 と、ちょっと、??と感じてしまいました。 これだけの情報で、放送局の部屋にいる人に、批判できるんでしょうか?


Subject: [eml-nc5: 0703] Re: 電車事故 From: (救急隊員) Date: Mon, 25 Apr 2005 20:01:34 +0900 Aさん、皆さん、今晩は。B@・・消防です。 > Aです。 > 私も今日は家にいます。 > ニュースでずっとこの事故を見ていました。 ⇒私も、ずーっとではないですが、見ていました。大変な事故ですね、皆さんが  今も活動されていると思いますが、本当に気をつけて頑張ってください。 【Aさん】 > 色時々チャンネルを変えるとその反応の違いがあるのが分かります。 > ちょっと気になる発言もあります。 > 「今、アセチレンが運ばれました」 > に対して、 > 「事故から8時間たって、今頃重機が運ばれているなんて。」 > さっきからずっと、 > 「消防をきちんと指揮できているのかどうか?」 > 「4時間もたって、まだ電車の中に閉じ込められている人がいるなんて」 > など、ずっとおっしゃってられました。 ⇒私は救助の専門家ではないのですが、この現場では大変難しい救助作業が  行われていることは容易に想像できます。  先頭電車は、マンションの中に入り込んでいますし、最初先頭車両だと思って  いた2両目もマンションに張り付くまで変形していますし、重機などで簡単に持ち  上げるなど不可能です。  へたに力を加えると、そのせいで未だ挟まれている人の部分が、更に狭くなり  生存者の様態が悪化する恐れがあります。車体を切断するにも、慎重に行わ  なくては、同様の結果になります。  火花を出す救助機械も火災の恐れがあり、安易に使用できません。アセチレン  溶断器の使用も、現場の責任者が熟慮した結果、使用に踏み切ったとおもいま  す。  生存されている方の救出も、時間経過と共に慎重になる必要があります。  クラッシュ・シンドロームなど考慮する必要がありますし。  幸い、現場には多くの医師の方が来ておられる様子が、テレビで見て取れま  したので、最大限の配慮はされると思います。  事故はすべて、そうなのかもしれませんが、飛行機事故と同じく、日本全国  どこでも起きる可能性がある事故だと感じました。  一人でも多くの方が無事救助される事をお祈りしています。


Subject: [eml-nc5: 0705] 電車事故の報道について From: (救急隊員) Date: Mon, 25 Apr 2005 23:02:10 +0900 Aさん、皆様こんばんは。C@・・消防です。 件名を変えさせていただきます。 > 色時々チャンネルを変えるとその反応の違いがあるのが分かります。 > ちょっと気になる発言もあります。 > 「今、アセチレンが運ばれました」 > に対して、 > 「事故から8時間たって、今頃重機が運ばれているなんて。」 > さっきからずっと、 > 「消防をきちんと指揮できているのかどうか?」 > 「4時間もたって、まだ電車の中に閉じ込められている人がいるなんて」 > など、ずっとおっしゃってられました。 某関東圏のキー局の報道で、某評論家?コメンテーターでその言葉を発して おられまして、大変残念に思いました。その中で、山間部でなくて、都会の 中で起こっている事で、こんなに時間が経っているに、指揮命令系統が確立 されているのでしょうか。といったコメントを発言されておりました。 私も、その現場をTVの報道でしか見ることはできませんでしたが、このコ メントには少しカチンと来た一人であります。現場の救助隊、救急隊、消防 隊および警察官はその任務に精一杯尽力されているはずです。外部からそん な評価を受けたのは誠に残念でなりません。 極端な話ですが、救急車が現場に到着するのに遅すぎると感じて、そのまま 通報から現場に来るまで時間がかかりすぎる、といった感情と同じ思いであ ると感じさせられました。コメンテーターはあくまで客観的、かつ総合的に 評価するべきであって、救助に当たる隊員等に落ち度があるようなコメント は控えるべきではないかと思います。 ただ、私も消防側の人間であって、現場の混乱は十分に分かっているつもり ですが、コメントによってはその内容が屈曲した捕らえ方になりかねないこ とを認識していただきたいと思います。 > クレーン車かなんかで、ガガっと持ち上げちゃえば一発っていうことだろうか。 > > と、ちょっと、??と感じてしまいました。 > これだけの情報で、放送局の部屋にいる人に、批判できるんでしょうか?


Subject: [eml-nc5: 0708] Re: 無理です。 From: (救急隊員) Date: Mon, 25 Apr 2005 23:56:23 +0900 ・・さん、皆さん、お疲れ様です。 E@・・消防です。 (中略) TV報道などでは勝手な批判が出回っていますが 部隊の行った活動にネガティブにならず、今後の 検証課題としてポジティブに考えていってください。 消防力が勝っていれば長時間を要せず救出も可能でしたし、 全ての負傷者にフルファイトで来たことは 消防人なら理解してくれるでしょう。 現場にいた人にしかわからない無力感、決して我々は 批判などしません。 (中略)


Subject: [eml-nc5: 0710] Re: 無理です。 Date: Tue, 26 Apr 2005 06:51:54 +0900 From: (救急隊員) ・・さん、みなさんこん○○は。・・@・・消防です。 今回の脱線事故現場で、救急救助活動に当たられていらっしゃる 皆様、お疲れ様です。 また、負傷者に対し、懸命のケアを行われている医療機関スタッフの皆様、 ご苦労様です。 昨日の午前中より、ずっとTVで見ておりました。 毎回のごとく、安全なスタジオでとんちんかんな 話をされている方が何名か見受けられて、その度にTV局のHPに、 意見(苦情?)を書いていました。 (中略) 全ての隊員の方は、決して御自身を責めるような考えを持たずに、 そしてASD(PTSD)に対してのケアも考慮して頂ければと思います。 大変でしょうが、引き続き残された方の救出活動、がんばって下さい。 事故被害者の方々に、お悔やみ申し上げます。


Subject: [eml-nc5: 0711] Re: 電車事故の報道いついて From: (救急隊員) Date: Tue, 26 Apr 2005 09:19:49 +0900 Cさん、皆さんこんにちはG@・・消防です。 ・・さん、現場で活動されている皆さん、本当にお疲れさまです。 また、後方で支援活動されている方々お疲れさまです。 昨日からいろいろな報道を見聞きします。 その中でも救助活動と言うものを知らない解説者の無責任な発言、残念です。 >> 「消防をきちんと指揮できているのかどうか?」 大きな事故や災害があると、それからの教訓を生かしているのか・・・生かしています。 しかし、全く同じ災害などあり得ません。災害は常に初対面です。 >「事故から8時間たって、今頃重機が運ばれているなんて。」 傷病者の上に乗っている丸太を取り除くのとはわけが違います。 この現場の状況や活動を日本中の人が目にしています。しかし、現場で自分の目で見て いる人は、ほんの一部の人です。自分を含め他の大多数の人が報道テレビからの映像で しか現場を見ていません。その映像も報道スタッフの解説で色々に取れてしまいます。 消防・警察の現場での活動を良く知らない多くの方は、報道スタッフの発言を鵜呑みに してしまいます。自分の言った一言がどれだけ影響を及ぼすかと言うことを「報道番組」 に出演する者(ゲストを含め)は考える必要があると思います。 その一つに昨日からの報道で、事故原因は若い運転士のスピードの出し過ぎや過去のミ スが引き金になったような報道をされています。原因が解明されていない現在、余りに も安易な報道ではないのでしょうか。この報道により、何も知らない国民の多くがこの 若い運転士個人をなんだかの形で攻めていると思います。 こういう大きな災害を報道するときはその道の専門家(消防・警察の報道担当等)をゲ スト出演させ、素人にも正確に理解できる報道をすべきです。 とにかく、現場で活動されている皆さん、疲労も極限に達していることと思います。 どうか身体を大切にしてください。精神的な面で今後もケアが必要かと思います。 最後に、犠牲になられた乗客の皆さんのご冥福をお祈り致します。


Subject: [eml-nc5: 0712] Re: 電車事故の報道いついて From: Date: Tue, 26 Apr 2005 09:59:12 +0900 みなさま、ご返信ありがとうございました。 ・・さまのご投稿は、驚愕いたしました。 これだけの事故ですから、当然の状況なのかもしれませんが、改めて、その現実に驚きました。 > 某関東圏のキー局の報道で、某評論家?コメンテーターでその言葉を発しておられまして、  大変残念に思いました。 本当にそう思います。 あのような現場で力を尽くしていらっしゃる方の様子を思うと、ムカつくものがありました。 あのヒト(木村某)は、昔、デポドンが飛んで来た時、 「日本の国は何をしている。発信場所を突き止めて、そこを攻撃する位の態度を示してもイイ!」 と言い切ったヒトです。 個人の表現の自由的意見として、ゲストの評論家が言うなら結構です。でも、番組を傘にした、 報道局を代表するキャスターとしての意見として、こんな事を 口にする人です。 > その中で、山間部でなくて、都会の中で起こっている事で、こんなに時間が経っているに、  指揮命令系統が確立されているのでしょうか。といったコメント を発言されておりました。  私も、その現場をTVの報道でしか見ることはできませんでしたが、このコメントには少し  カチンと来た一人であります。 ・・さんのご発言で、ますますカチンときました。 で、・・テレビに投書しました。 (まあ、ヌカに釘でしょうけど) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 昨日の電車事故の報道を拝見しておりました。番組内で、繰り返し、「4時間たっても、まだ 電車内に残された人がいるとは。」「7時間たって、やっと重機を運び入れるなんて。」 「消防は指揮系統がきちんとしているのか。」というようなコメントをされていました。 これだけの事故です。しかも明らかに列車の形がゆがめられ、想像のできない状態になってい る事は素人でもわかります。慎重を期した上で最善,最速の対応 がされていると想像します。 これをクレーンかなにかで持ち上げてしまえばカタがつくとお思いになってのご発言だったの でしょうか?放送局の部屋内に送られる情報だけで、このような言葉には疑問を感じました。 実際、見ている人間にも、なかなか救助されない様子は歯がゆいものがありました。その中で のこの ようなご発言は、そのまま真に受ける視聴者もいると思います。コメンテータとして ご出演されるのなら、表面的な見方だけでなく、もう一歩踏み込んだ見識をお示しいただきた いと思います。それができないのであれば、批判的なご発言はお避けになるべきではないでし ょうか。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


Subject: [eml-nc5: 0715] Re: 電車事故の報道について From: Date: Tue, 26 Apr 2005 20:12:25 +0900 今帰宅したところで、電車事故の続報は聞いていないのですが。。 (引用部分省略) 昨日の午後の報道番組にはちゃんと「有識者」が出てました。 (素人の私はそういわれれば信じてしまいますけど) 例のハイパーレスキューで実際活動されていた、その道のエキスパートと紹介されてい ました。いくつもの局がさかんにそういう番組を作っていましたが、どこも、その手の 何らかのプロがいました。 もしかして、この方も、本当にその道の専門家なら、キャスターのあのコメントにはム カついていたかもしれません。しかし、レスキューの専門家でも、テレビカメラを前に して、上手に「反論」できるでしょうか。それに反して、テレビのプロには、誘導尋問 は簡単ですし、そういうコメントを引き出すことなどチョロいものでしょう。反論を言 いそうだったら、マイクをまわさなければいいのですから。 (引用部分省略)


Subject: [eml-nc5: 0764] Re: 尼崎事故 From: (医師) Date: Thu, 5 May 2005 18:04:25 +0900 Kです. 悲惨な列車事故の後,事故車両に同乗していた JR西日本の職員が,乗客を放って出勤していた ことや,ボーリングをしていたことが明らかとなり マスコミを賑わしています. JR西日本では,BLSの講習等行っていたのでしょうか? 以前,このEMLでマウスtoマウスの人工呼吸が素人には 無理じゃないかという議論がありました.  実際の所,その場になってみないと自分でも感染のリスク を乗り越えられるかわかりませんが,BLSの講習を受けたこ とがある人は,「何かしなきゃ」と思うでしょ! (おもってほしいなぁ〜)  別に,実際に蘇生処置をしなくても,何かを運んだり,声を かけて励ますだけでも良いと思うのですが・・・  また,各地で地震,水害も有りましたし,ボランティアに参加 している人も,職場に1人くらいはいたと思うのですが,こんな時 隣の困っている人を助けたくならない方が多くおられる事に驚き ました(まあ,これが現実ですかね?).  現場の近くでは,工場を休止してでも救護に駆けつけた会社 の方もおられましたよね!  心肺蘇生法を普及させる目的は,手技を伝えるだけにあらず! と日頃から思っていたので,便乗して発言させて頂きました.


Subject: [eml-nc5: 0772] JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育) From: 越智元郎 Date: Fri, 06 May 2005 21:34:21 +0900  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。  尼崎のJR事故の検証が進んでいますが、一方でJR職員への(マスコミ の)風当たりは厳しいものがあります。何か妙な方向に行っているのではな いかという心配もあります。  とはいえ、組織としてのJR、またそれぞれの職員が大きく変わる絶好の 機会であることは間違いないと思います。私は人命重視や危機管理の一つの 表れとして、今こそ真剣に職員の応急処置教育に取り組んでいただきたいと 思っています。  実は本メーリングリストやemlから派生した市民団体「心肺蘇生法を学び広 める市民の会」でもJRと接点があり、職員の応急処置教育について提案を して参りました。特に2002年および2003年に広島駅でJRの催しに協力する 形で実施した「踏切事故防止キャンペーン」では、駅前の広場にテントを張 り、市民へのCPR指導、2003年にはJR職員に対するAED訓練も行いました。  JRのような大きな組織がいったん目覚め、動き出したらその好影響は多 大なものがあると思います。事故当日のボーリングや親睦会のことはさてお き、具体的な改善の方向に目を向けてゆきたいですね。   ■991222. JR職員に救命手当の普及を ―1999年12月18日、JR西日本への提言― (津秋活之、津秋圭子、円山啓司ほか eml有志) http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/99/jcjr.htm ■踏切事故防止キャンペーン  2002年および2003年 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/02/maJR.files/slide0001.htm *追伸:私が1995年に視察に行った米国Pittsburgh市では、公務員はすべて (警察官も役所の職員も)一次救命処置を身につけることが義務になってい  ました。JRに限らず、わが国の公的な機関の職員は同様の教育を受ける  べきだと思います。そうすれば、多数のけが人を前に「敵前逃亡(テレビ  に映った市民の声)」せずに済むのではないかと思います。  それでは皆様、また。


Subject: [eml-nc5: 0773] RE: 0772 JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育) From: 金子高太郎 Date: Fri, 6 May 2005 22:56:58 +0900 eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎さん、 金子高太郎@県立広島病院救命救急センターです。 ・ハインリッヒの法則にもあるように、一つの重大な事故の  背景には多くのインシデント(ひやりはっと)が存在しま  す。JRはこれを個人の責任に回避し、個人を罰することで  秩序を保って参ったようです。しかしながら、それは明ら  かに間違いです。何故駅でのオーバーランが起こったか、  それを穴埋めするためにどれだけの超過速度での運転が施  行されてきたか。それは、個の責任ではなく、JR自体に内  在するシステム上の誤りが原因ではないか。事故調査委員  会の前向きな、科学的な立証と、今後に繋がる方策の立  案に繋げて欲しいと思います。 ・先日の日本臨床救急医学会の特別講演でも「正常化バイア  スに陥らないためのリスク・コミュニケーション」を講演  された広瀬宏忠先生は、「新幹線安全神話」は「正常化バ  イアス」が働いており大変危険とコメントされました。  時速300kmで走行する車両の安全確保(特にテロ対策)は、  全くといって良いほどなされていません。ドイツでのICの  事故の反省が我が国のJRに繋がっていないのは先進国であ  りながら異常です。 ・手近な所から、JR客室乗務員へのBLS+AED教育は、大局  を見越して重要な位置づけを占めていると同感いたします。 ・「新幹線にAEDを、全JR職員にBLS教育を」PR活動の輪  を拡げましょう。そしてテロに強い新幹線のあり方も  検討していただきたいと思います。 〒734-8530 広島市南区宇品神田1丁目5-54 県立広島病院救命救急センター 金子高太郎


Subject: [eml-nc5: 0774] RE: 0773 JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育) From: 越智元郎 Date: Fri, 06 May 2005 23:28:34 +0900  金子さん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎で す。ご意見をいただき、有難うございました。 〇 金子さんより(eml-nc5: 0773) >・手近な所から、JR客室乗務員へのBLS+AED教育は、大局を見越して >重要な位置づけを占めていると同感いたします。 >・「新幹線にAEDを、全JR職員にBLS教育を」PR活動の輪を拡げましょう。 >そしてテロに強い新幹線のあり方も検討していただきたいと思います。 → ご賛同いただき、有難うございます! 「JRの危機管理」「新幹線   にAEDを、全JR職員にBLS教育を」「テロに強い新幹線」、これらの   キーワードで巨大な組織であるJRが変わってゆけるよう、利用者で   ある市民・マスコミ、有識者・学会、国・自治体などが声をあげ、   方向付けをしてゆきたいですね。 〇 >・先日の日本臨床救急医学会の特別講演でも「正常化バイアスに陥らない >ためのリスク・コミュニケーション」を講演された広瀬宏忠先生は、 >「新幹線安全神話」は「正常化バイアス」が働いており大変危険と >コメントされました。 → 私は参加できませんでしたが、有意義なご講演であったようですね。   私なりに想像しますのに、「正常化バイアス」とは「うまくゆく筈」   という一種の願望により、危険性に対して目をふさいでしまうとい   うことかなと思います。   このことはJRに限らず、さまざまな組織、施設、地域などが内蔵し   ている落とし穴なのだと思います。   *私の新しい活動の場となりました八幡浜市も、切り立った斜面に   建ったたくさんの家屋・集落、近傍に伊方原発、ちかぢか起こり得   る南海大地震・・ など、様々な危険要因があります。日常の麻酔   や救急の臨床とともに、これらの危険性への対策についても勉強し   てゆきたいと思っています。  それでは金子さん、皆様、また。


Subject: [eml-nc5: 0777] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育) From: (医師) Date: Sat, 7 May 2005 12:21:28 +0900 (中略) 尼崎の事故については、次々と明かされる驚くべき事実に一市民として 怒りを禁じ得ないこともありますが、しかし、坊主憎けりゃ袈裟まで… とばかりのJR西叩きにも行き過ぎの感はないでしょうか。職員のレク リエーションも時節柄、不謹慎かも知れませんが、全社員が謹慎すれば ことは済むのでしょうか。JR西の社員と云うだけで結婚式まで自粛し なければならないとしたら、お気の毒というより他ありません。 報道関係者には 第三の権力とも称されるマスコミのペンの暴力についても考えて頂きた いと思います。


Subject: [eml-nc5: 0778] JR へ建設的な批判を(他ネットより) From: 越智元郎 Date: Sat, 07 May 2005 18:21:42 +0900  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。JR脱線事故 に関して、他ネット(医療関係)で以下のような意見に接しました。私も 同感でしたので、ご許可を得てeml-ncへ転載させていただくことにしまし た。皆様のご意見はいかがでしょうか(発信者は医師の方です)。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Date: Sat, 7 May 2005 00:13:30 +0900 Subj: [nagomi:008206] Re: JRの脱線事故 やれボーリングをしていたとか ゴルフをしていたとか、 マスコミこぞってのJRいじめが盛んですが、 彼らがボーリングをしていなかったり ゴルフをしていなかったりすれば 何か解決に役に立つことがあったのでしょうか? 私は、病院で重症の患者さんを受け持ったときに、 病室の中だけで派手なパーフォーマンスをしている 患者さんの親戚の人たちを沢山見てきました。 そのような親戚の人が沢山集まってきたときは、 私は、患者さんの家族の人たちを呼んで、 「あの人達は、いつまでも側についておれないので  今の内に懸命にパフォーマンスをして、  私はこれほど一生懸命に患者さんのために頑張っている・・・  ということを見せつけておく必要があります。  しかし、あなた方は、最後まで看病をし続ける必要があります。  あの人達が頑張っている間に十分に体力を温存して、  あの人達が来なくなった後、  介護の手が不十分にならないように  今から備えておく必要があります。  あの人達と一緒にパーフォマンス合戦をしていると、  3日目くらいでばててしまいますよ。」 と指導したものでした。 当院の看護師さんのご主人は、あの日は非番でした。 しかし、会社から呼び出され、 事故現場の状況を綿密に計測する仕事をしていました。 つまり、JRでは、 非番の人であっても 必要であれば呼び出して仕事をさせているのです。 当院の看護師さんは、 4月29日から5月7日までの長期にわたり 休暇を取っています。 実家の九州に帰ると言っていました。 きっとご主人も休暇をとって 一緒に九州に帰られる予定だったと思います。 しかし、噂では、連休中に・・でその看護師さんを見たという人がいます。 結局、帰れなかったのかも知れません。 当院は今日も休んでいましたが・・・・・ もちろん、休みを返上して会社の命令で仕事をしているわけですから、 その分の手当は出るはずです。 ですから、 JRとしては、必要な人だけを呼び出して 必要でない人は呼び出さなかったのだと思います。 必要のない人まで呼び出して、無駄な支出をすることはよくありません。 また、人間というものは、 あのような緊張を強いられる現場に24時間いられる物でもありません。 ですから、順番に交替しなければならず、 非番の間は、 次の当番の時に全力を出し切れるように英気を養っておく必要があります。 ですから、非番にまで会社の仕事を引きづりこむようなことは してはならないのだと思います。 現実に、事故後のJRの対処の仕方に何か問題があったのであれば、 それは重要なことですし、 また、そうなった原因がボーリング大会にあったのであれば 当然ボーリング大会を批判すべきでしょうが、 そこはどうなのでしょうか? 私が見るところ、 JRはそれなりに適切に対処していたと思います。 事故当初は当然、JRの交通網は麻痺していたと思いますが、 その後は、あの過密ダイヤをさほど崩すことなく 臨時のダイヤを組んで運行していたようで、 私の同志社に言っている娘もまともな時間に帰ってきていました。 「うまく帰れるか心配だったけれど、  実際には、いつもとほとんど変わらない時間に梅田にたどり着けた。」 と言っていました。 このことがどんなに大変なことか・・・・ ダイヤの組み替えだけではなく、 車両や運転手、車掌の手配も必要です。 それらを短い時間にやり遂げたのですから 私は賞賛に値するとまで考えています。 当院の看護師さんのご主人は、 救出活動を横目に 計測活動にいそしんでいたそうです。 それで良いのです。 ゴールキーパーが自分のすべき仕事を忘れて シュートを打ちに前衛に出て行って、 結局がら空きの自陣にシュートを決められてしまった・・・ では話にならないのです。 計測活動も、今回の事故の原因を探求し、 今後、同じような事故をおこさないようにするための 重要な仕事だと私は思います。 人の命よりも大切なのかといわれてしまえばそれまでですが、 救命活動をする人がいないのであれば大変ですが、 実際にはちゃんと集まってきていたわけですから、 計測活動をするように命令されて現場に行った人は 計測活動に専念するのが当然だと思います。 これを言い始めると 今度は、マスコミの人たちがなぜ救出活動を手伝わなかったか・・・ という事になりますから、 そこまでは、マスコミも追求しないでしょうが・・・・ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  転載ここまでです。それでは皆様、また。


Subject: [eml-nc5: 0779] Re: JR へ建設的な批判を(他ネットより) From: Date: Sat, 7 May 2005 18:53:09 +0900 Aです。 私もご投稿にとても共感しました。 今回のことで、とても感じるのは、JRの対応のマズさというよりも、マスコミの 「煽動」でした。ニュースの第一報で発せられた「消防は何をしているんだ」発 言。実際その後の展開を見ると、それは失言以外の何者でもなかったと感じます が、謝罪はあっ たのでしょうか? 次は、JR叩き。ご投稿にあるように、オフは職員も私人です。マスコミに叩かれ る理由があるでしょうか?確かに心情的に許せない気持ちはあります。しかし、 法律違反でも無いものをマスコミが糾弾する事の「重さ」を理解しているのでし ょうか? 「置き石」にしても、JRが流した「言い訳」のように発言しているのを見ました が、「置き石」をJRはどの位強調して発表したのか。。。線路に傷があったのは 事実でしょうから、それを言ったのは「事実」のはずです。この発言を何度も何 度も流して「強調」したのはマスコミに他なりません。 (中略) また、JRの訓練に対する批判も見ました。「イジメ」のようだとか。そんな事、 外部の人間に分かるのでしょうか? 実際、あのような過密なダイヤを今まで事 故無く運行させてきたという事実があるのです。訓練が「イジメ」だったら、そ んな事できるわけありません。 過密なダイヤに対する批判もありましたが、ダイヤが過密であったり、電車が遅 れたりするのがなのが問題なのではないでしょう。そのダイヤを遂行させないと 輸送しきれない。だから過密になるのです。電車がガラガラの時間帯は過密にし たりしないんですから。 JRが本当にすべきは、マスコミへの正しい態度ではなく、再発の防止と、遺族へ の形のある保障なのではないでしょうか/


Subject: [eml-nc5: 0781] Re: JR へ建設的な批判を(他ネットより) From: Date: Sat, 7 May 2005 21:30:11 +0900 Kです. 越智元郎先生のご意見で,この件は収集がつきそうです. 〇 > JRはそれなりに適切に対処していたと思います。 > 事故当初は当然、JRの交通網は麻痺していたと思いますが、 > その後は、あの過密ダイヤをさほど崩すことなく > 臨時のダイヤを組んで運行していたようで、 > 私の同志社に言っている娘もまともな時間に帰ってきていました。 > 「うまく帰れるか心配だったけれど、 >  実際には、いつもとほとんど変わらない時間に梅田にたどり着けた。」 > と言っていました。 > このことがどんなに大変なことか・・・・ > ダイヤの組み替えだけではなく、 > 車両や運転手、車掌の手配も必要です。 > それらを短い時間にやり遂げたのですから > 私は賞賛に値するとまで考えています。 事故直後,被害者の方からでさえJR職員の方が一所懸命にしてくれた ことに感謝されている,コメントも出ていましたし,少なくともマスコミが たたいているほど,JRもぼけてはいないことは明らかです(これは今 までのどの事件でも後になって事情がわかれば現場は精一杯やって いたことがわかってくるものですし,良識のある人は理解していると思 います). 〇 > やれボーリングをしていたとか > ゴルフをしていたとか、 > マスコミこぞってのJRいじめが盛んですが、 > 彼らがボーリングをしていなかったり > ゴルフをしていなかったりすれば > 何か解決に役に立つことがあったのでしょうか? 全くその通りかも知れません. でも,被害に遭われた方やご遺族の方からすれば,休日を返上し駆けつけてくれた 人がいれば,これからの人生を送るときに何かの支えになったかも知れません. 〇 > 計測活動も、今回の事故の原因を探求し、 > 今後、同じような事故をおこさないようにするための > 重要な仕事だと私は思います。 > 人の命よりも大切なのかといわれてしまえばそれまでですが、 > 救命活動をする人がいないのであれば大変ですが、 > 実際にはちゃんと集まってきていたわけですから、 > 計測活動をするように命令されて現場に行った人は > 計測活動に専念するのが当然だと思います。 全く同感です. 救急室でも,多発外傷のひどいのが来てても,そちらは手が足りているからと 黙々とただの風邪や腹痛の外来患者を診てくれている,若い医師がいること に敬意を表します.はでな治療をしている医師,看護師も,地味な仕事をして くれている職員が居て,初めて成り立つからです(もちろん救急の場ではトリア ージュとかプライオリティが重要では有りますが).


Subject: [eml-nc5: 0815] JR 尼崎事故 From: Date: Sat, 14 May 2005 20:35:53 +0900 Kです. この話題にはもう触れないつもりでしたが‥ JRの事故車両に乗っていた職員の方から マスコミに謝罪?の手紙が出ていました. 今回のことは,一生背負っていかなければ いけないと書いておられました. BLSやACLSは,他人を救うだけではなく 自分も救うものです. 救急の現場で,自分のとった行動が最高,最善 であったかどうかなんて,誰にもわかりません. だけど,最低限BLS,ACLSのマニュアルどおりの ことができれていれば,大きなトラウマにはなりません. このことは蘇生の講習会で,もっと強調されても 良いと思います. あらためて被害者の方のご冥福をお祈りすると共に, 救助にかかわられた方々,ご苦労様でした.


Subject: [eml-nc5: 0816] Re: JR 尼崎事故 From: (医師) Date: Sat, 14 May 2005 22:41:27 +0900 Nです。 K様:wrote >BLSやACLSは,他人を救うだけではなく自分も救うものです. >救急の現場で,自分のとった行動が最高,最善 >であったかどうかなんて,誰にもわかりません. >だけど,最低限BLS,ACLSのマニュアルどおりの >ことができれていれば,大きなトラウマにはなりません. >このことは蘇生の講習会で,もっと強調されても良いと思います.  米国の多くの病院では医師、看護師、検査技師以外の一般職でも 「患者とたとえわずかでも接点をもつすべての職員」にBLSの資格保有 を義務付けているところも多いようです。  特に入職時にこの資格がないと雇ってもらえないとして講習を受け にいく人も沢山います。  つまり病院、会社などの組織では、ある意味、リスクマネジメント として資格を保有させることを必要としています。  もちろん救命できればそれにこしたことはありませんが、救命でき なかったとしても「少なくとも現場ではできうる限りのことは行ない ました」という事実をつくることが、すでに米国の種々の社会(組織) の中では重要視されています。  日本のいろいろな組織においても一刻もはやく、このリスクマネジ メントでも何でもいいから会社単位での受講が「あたりまえに」なる ことを期待してます。  というか、まだ日本では、いろいろな傷病者の発生する突発事故が あったときに、「なんで職員がBLSの資格もってないの?」とか「えっ、 AEDは設置してなかったの?」などと社会一般からあまり指摘されない ため、だから組織でのリスクマネジメントがなされていないのかもし れません。  マスメディアも「宴会やって酒飲んだ。けしからん」などというこ とをあげつらい糾弾するよりも、組織におけるBLSの普及啓発活動は どうなっているのか?などと世論をもりあげないと、いつまでたって も、市民、会社組織へのBLS普及は進まないかも知れません。  このような悲惨な事故を契機にして普及活動の「うねり」が起きな いと、種々会社組織内での普及は望めないような気がします。  このことの重要性は我々がBLS講習の中で強調することももちろん 大事です。しかし「講習にこない」人達に対して啓蒙するのは、やは りマスメディアの力だと思います。  今後の彼らの「目のつけどころ」に期待したいと思います。


Subject: [eml-nc5: 0818] BLS/JR 尼崎事故 From: (一般市民) Date: Sun, 15 May 2005 21:59:56 +0900 K先生、N先生、皆さま こんばんは、O(東京都在住一般市民)です。 定期検診で大学病院に行くたびに思うことですが 待合室に設置してあるディスプレイは、いつもテレビ番組を流しています。 昨年秋に、厚生労働省に行った際のことですが ロビーにビデオ専用の大型ディスプレイがありましたが 何も上映されていませんでした。 待合室などで、BLSについてのビデオを上映していただくことは 意味のあることだと思います。 JR山手線の車内には、小型ディスプレイが設置されていますが 常時、CMが流れています。 満員状態のときなどは、結構、目を向けてしまいますので BLS普及に活用できるのではないかと思います。 映画スパイダーマン中には、ほんの一瞬ですが 心臓マッサージを行う場面がありました。 例えば、映画やアニメそしてTV番組にも CPRを入れる工夫をしていただくだけでも 普及に繋がると思うのですが... 組織においては 上層にいる方々から、積極的に取り組んでいただきたいのですが これは至難の業でしょうか... [K先生] >BLSやACLSは,他人を救うだけではなく自分も救うものです. 本当にそうですね。


Subject: [eml-nc5: 0831] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置 From: Date: Tue, 17 May 2005 20:09:27 +0900 こんばんわ。Aです。 しつこく、この話題にこだわってしまいますが。。。 On 2005/05/11, at 11:47, D wrote: *引用部分要約:利用者が、今この時期にでもまず「正確なダイヤ」「多い本数」次に「安全」を求  めていると言う調査結果が、TVで示されていた。これは、国民の声は、得てして自分勝手で利己  的であるということか。 「安全」はわざわざユーザに聞くモノじゃないですよね。 安全はJRが運行される大前提。もし、その安全性にちょっとでも不安な要素があったなら、この路線 はありえなかったはず。でなければ、通勤客は毎朝、大 バクチを打ってる事になっちゃいます。 「良いハンバーガーの条件は?   食べられる事!」 この調査が本当だとしたら、ジョークみたいです。 それにしてもJRも大変だと思います。 利用者にとっては、「正確なダイヤ」「多い本数」は別物なのかもしれませんが、運行する側の立場 では同じものでしょう。結局ある特定の時間帯に通勤客が集中するから、それだけの輸送力を持たな ければならないわけです。 特にこの地域は私鉄と競合していて、何らかの商品力を付けないと勝てない。だからスピード化をせ ざるをえなかったわけですよね。 私たち、何て勝手な消費者なんでしょうか。「鉄道は公共の物」であれば、JRが公共の分を超えて、 商業的活動に奮闘しなければならないようなところへ追 い込んでしまってはいけないはず。消費者 が鉄道に公共性を求めるなら、高くても、遅くても、儲かってない方に乗ってあげるぐらいの公共心 を持つべきだったんじゃないでしょうか。


Subject: [eml-nc5: 0832] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置 From: Date: Tue, 17 May 2005 21:12:18 +0900 K@・・病院です. Aさんのご意見です. > 私たち、何て勝手な消費者なんでしょうか。「鉄道は公共の物」であれば、JRが公共の分を超えて、 > 商業的活動に奮闘しなければならないようなところへ追 い込んでしまってはいけないはず。消費者 > が鉄道に公共性を求めるなら、高くても、遅くても、儲かってない方に乗ってあげるぐらいの公共心 > を持つべきだったんじゃないでしょうか。 こんなこと,みんなの前で堂々と言えるAさんは偉い. 本当に尊敬します. でも,みんなが病院を選ぶとき,やっぱり待ち時間が短くて,安くて (不要な検査はせず),しっかり直してくれるところへ集中しますよね! 高くて(要らん検査ばかりされて),待ち時間が長くて,説明もろくにしない 病院には行きたくないですよね! その結果,良い病院,良い医師はどんどん忙しくなって大変になるのですが だからといって,それを検査をいい加減にすることや,説明を省くことで時間 を節約して代償していくなら,やがて人気は下がり淘汰されていきます. (味の良いレストランなんかもそうですかね?) じゃ,どこで妥協点を見つけるかと言うことですが,これが経営者の判断と言 うことになります.安全を犠牲にして公共(でなくとも)の交通機関がちょっと 長いスタンスで考えれば,それがどれほどのriskか考えればよいことです. むしろ,そういう会社に対して消費者がはっきりとNO!と言うことが実際には 大切なような気がします. 消費者の立場から言って高くて,遅い交通機関をわざわざ選べって言うのは (少なくとも小生のような小市民には)難しいのですが・・・?


Subject: [eml-nc5: 0833] Re: BLS/JR 尼崎事故 From: Date: Tue, 17 May 2005 21:23:54 +0900 K@・・病院です O様のご意見です > 定期検診で大学病院に行くたびに思うことですが > 待合室に設置してあるディスプレイは、いつもテレビ番組を流しています。 > > 昨年秋に、厚生労働省に行った際のことですが > ロビーにビデオ専用の大型ディスプレイがありましたが > 何も上映されていませんでした。 > 待合室などで、BLSについてのビデオを上映していただくことは > 意味のあることだと思います。 まったく,そのとおりです. 病院等を利用される方は,一般の人に比べて,健康に 関する関心度が高いので,心肺蘇生に対する興味も 当然湧いてくるはずです. 当院でも市民講座や健康教室でわずかの方を対象に 蘇生の話をしていましたが,待合室のディスプレイに BLSの必要性,手技等を載せていくよう努力していき たいと思います. 貴重なご意見有り難うございました.(目からウロコです!)


Subject: [eml-nc5: 0834] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置 From: Date: Tue, 17 May 2005 21:39:28 +0900 そうなんです。 A >> 私たち、何て勝手な消費者なんでしょうか。「鉄道は公共の物」であれば、JRが公共の分を超えて、 >> 商業的活動に奮闘しなければならないようなところへ追 い込んでしまってはいけないはず。消費者 >> が鉄道に公共性を求めるなら、高くても、遅くても、儲かってない方に乗ってあげるぐらいの公共心 >> を持つべきだったんじゃないでしょうか。 Kさん > でも,みんなが病院を選ぶとき,やっぱり待ち時間が短くて,安くて >(不要な検査はせず),しっかり直してくれるところへ集中しますよね! そうですよね。 > 高くて(要らん検査ばかりされて),待ち時間が長くて,説明もろくにしない > 病院には行きたくないですよね! はい。 > むしろ,そういう会社に対して消費者がはっきりとNO!と言うことが実際には > 大切なような気がします. > 消費者の立場から言って高くて,遅い交通機関をわざわざ選べって言うのは > (少なくとも小生のような小市民には)難しいのですが・・・? 私のようなわがまま極小市民にはもっと難しいです。 結局。。。 JRに公共性を求めることは、私たちの身勝手でしかないのではないでしょうか。 国鉄がJRになったとき、私たちは同じような事を言っていました。 それまでのJRは殿様商売。でも、私鉄と競合して、切磋琢磨すれば、ちゃんと利 潤をあげる体質に改善できると。私鉄は利潤の上がらない所には路線を持ちませ ん。でも、JRはそんな事はできない。「公共財産」だから。 その上、被害者の方々に補償をし、あのマンションを買い取り。。。尚かつ、年 度末には黒字経営にしなければならない。。。 何か、かわいそうです。


Subject: [eml-nc5: 0835] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置 From: Date: Tue, 17 May 2005 22:39:50 +0900 Kです. Aさん > 結局。。。 > JRに公共性を求めることは、私たちの身勝手でしかないのではないでしょうか。 > 国鉄がJRになったとき、私たちは同じような事を言っていました。 > それまでのJRは殿様商売。でも、私鉄と競合して、切磋琢磨すれば、ちゃんと利 > 潤をあげる体質に改善できると。私鉄は利潤の上がらない所には路線を持ちませ > ん。でも、JRはそんな事はできない。「公共財産」だから。 > その上、被害者の方々に補償をし、あのマンションを買い取り。。。尚かつ、年 > 度末には黒字経営にしなければならない。。。 > > 何か、かわいそうです。 いえいえ,甘やかしてはいけません!(笑)  今話題の郵政事業も同じような議論がされていますが, とりあえず,公共性を重視するなら税金免除や補助金,無利子の貸付金等 経済的な補助は確かに必要だと思います(このへんの仕組みについて, 恥ずかしいほど無知なのでどのようになっているのか全くわかりませんが).  ただ,公共であれ,民間企業であれ,結局は人気商売であり,安全を 犠牲にした利潤追求は,結局高いものになるということが大切だと思います. 三菱自動車のリコール隠しなんかも,その例だと思うのですが?  競合することで,安全性が向上した例もあると思います.  そもそも,安全を重視していればたとえ利用客が少なくとも,被害者の方の 補償,マンションの買い取り等の費用は発生しなかったはずです.また今の ままの体質ならば利用者のJR離れが加速し,更に高いものとなるでしょう. (おそらく同区間の私鉄では,危険を冒してまでJRと早さ比べをすることに 意味がないと判断していたのだと思うのですが・・・)  救急の現場で,忙しいから,(利益を出すために)人手が足りないからと 言って,ミスを犯したことを「可哀想」とだけ言っていては前には進めません (実際に可哀想ですけど) 企業のイメージや信用というのは,非常に大切なもので,いったん墜ちて しまうと取り戻すことはできません.それを捨てるriskを選んで,結果として その通りとなってしまったわけです.  そして,何よりも,多くの尊い魂を捨て去ってしまったのです.それは残された ご遺族の魂の一部でもあったはずです.  JR職員ひとりひとりに,罪は無いのですが・・・


Subject: [eml-nc5: 0842] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置 From: Date: Thu, 19 May 2005 00:29:58 +0900 On 2005/05/17, at 22:39, K wrote: (中略) > いえいえ,甘やかしてはいけません!(笑) でも、民営化以来、苦渋を忍んで来たJRさん。 その前は甘やかされ放題でしたが、ここ何年かはケナゲに見えました。 >  今話題の郵政事業も同じような議論がされていますが, そうなんですね。結局、こういう方に話は進んでしまいますよね。でも、同じように考えてよ い物なのか、熟考を要すると思うのですけれど。熟考できないので、とりあえず、考えないこ とにして。。 >  ただ,公共であれ,民間企業であれ,結局は人気商売であり,安全を > 犠牲にした利潤追求は,結局高いものになるということが大切だと思います. 安全に対しては大前提だと思います。 それがたとえ、高い物につかなくても。 安全性という枠組みは、市場性やその他、どんな要素が肥大しても、不可侵であるべき。 だから、「効率の名の下に安全性が蔑ろにされた。」というようなコメントはありえないはず。 今回の件も、JRの無謀なダイヤの原因は、確かに「速さ」を売りにしたいという市場性もある とは思うのですが、キャパシティを超えた輸送力を要求されてしまった結果とは言えないので しょうか。JRもしかたなく、本数を限界まで増やすしか無かった。この路線に乗った事が無い ので、どれほど混んでいるか知らないのですけど。 マスコミは一方的に、JRが儲けたいばかりに無謀なダイヤを運行したとしか言っていませんけ れど。(私がムカついてるのはその点なんです) >  そもそも,安全を重視していればたとえ利用客が少なくとも,被害者の方の > 補償,マンションの買い取り等の費用は発生しなかったはずです.また今の > ままの体質ならば利用者のJR離れが加速し,更に高いものとなるでしょう. > (おそらく同区間の私鉄では,危険を冒してまでJRと早さ比べをすることに > 意味がないと判断していたのだと思うのですが・・・) 私鉄だったら、会社更生法なんか使って、ツブして、また同じメンバーで再建すればいいんで すよね。メグミルクみたいに。 >  救急の現場で,忙しいから,(利益を出すために)人手が足りないからと > 言って,ミスを犯したことを「可哀想」とだけ言っていては前には進めません > (実際に可哀想ですけど) 実際に可哀想ですよー。 だって、オーバーランなんていうミスは誰でも起こるものではないのでしょうか? 安全装置を付けていないという事は責められるべきなのでしょうけれど、でも、その一方で、 結局あのダイヤを運行するなら、安全装置があったら運転できない。という話もあるようです。 毎日ミスばっかりしている私には、人間がミスをしない事に依存した安全というのはとっても コワイです。議論すべきはそちらではないかと。 > 企業のイメージや信用というのは,非常に大切なもので,いったん墜ちて > しまうと取り戻すことはできません.それを捨てるriskを選んで,結果として > その通りとなってしまったわけです. 私はいまだに不思議なのですが、 本当にスピード違反だけであのような事故になったんだろうか? 何人もの「専門家」がスピードの出し過ぎだけで脱線はしないはず。と言っていましたけれど。。 けれど、それが不可抗力であったとしても、JRの信用回復には時間がかかるでしょうね。 >  そして,何よりも,多くの尊い魂を捨て去ってしまったのです.それは残された > ご遺族の魂の一部でもあったはずです. それは本当に同感です。


Subject: [eml-nc5: 0846] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置 From: Date: Thu, 19 May 2005 22:21:59 +0900 Kです。 Aさんのご意見です. > 毎日ミスばっかりしている私には、人間がミスをしない事に依存した安全というのはとっても > コワイです。議論すべきはそちらではないかと。 そうなんです. これには二つの面があって,ひとつはソフト的に 今回の事故のJR運転手が,「ミスのリピーターであった」 と言う事実です.この運転手の適性の問題だったのか 教育や訓練のシステムの問題なのか,知る由もありませんが 再三ミスを繰り返していた人を,運転手という職種から外すことが できなかったJRの体質に責任の一つがあると思います. (その意味で「あまやかしてはいけない?」と) 実際には,病院の中で危なそうな医師や看護師に 「君!危険そうだから他の職種に移って」なんて なかなか言えませんから,実際には難しいのかも・・・ とすると,もう一つの面である,ハード的に速度制御や自動運転 の導入を重視していくと言うことになります. これには,多額の出費が必要です.この費用は利用者である我々が 最終的に負担しなければならないものです.  「30年間以上,事故がなかったから大丈夫」あるいは「たまたま 個人の資質の問題」と片付けるわけには行きません.なぜなら 30年前に比べて,秒単位の仕事が要求されるようになり, 技能の劣る人から事故を起こしやすい環境になってきていますが いずれ優秀な人でも,ハード面の改良なしではついていけなくなります. (その意味で「職員1人1人に罪はないのですが・・・」と)  このことは我々の医療現場でも,同じことです.山本さんがおっしゃるように 安全を担保していくのに,この二つのバランスについて議論し続けなくては いけないと思います. 話は変わりますが(というより小生は最初からこのことだけを 言っていたのですが),先日の新聞記事で 「JR事故に関するこころの ケア特別相談」に寄せられた相談で,「電車を見るだけで怖い」といった 直接的なトラウマについての相談の他に,「救助活動をしなかったのが 悔やまれる」との相談が多かったとのことです. BLSは,人のためばかりではなく,また心臓マッサージや人工呼吸を することだけが人を(自分を?)救うことではないということです. たとえ命をが救えなくとも,魂が救われることもあると思うのです.


Subject: [eml-nc5: 0851] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置 From: Date: Sat, 21 May 2005 01:35:01 +0900 毎日、ミスばかりしているAです。 (中略) > 再三ミスを繰り返していた人を,運転手という職種から外すことが > できなかったJRの体質に責任の一つがあると思います. しかし、人間はミスをするものという本質は変わらないとすると、それは単に確率の 問題でしかないですよね。100回に1度ミスをする人の代わりに、246回に1度 ミスをする人に変えただけ。でも、必ず、247回目の仕事は来るわけですよね。 > 実際には,病院の中で危なそうな医師や看護師に > 「君!危険そうだから他の職種に移って」なんて > なかなか言えませんから,実際には難しいのかも・・・ そう考えると、100回も246回も50歩150歩であって、別の職種に移る事の メリットは、単にこの数値の差でしかないと言えるのかもしれません。 > とすると,もう一つの面である,ハード的に速度制御や自動運転 > の導入を重視していくと言うことになります. そう思います。結局、抜本的にはそれしかないのではないでしょうか? >  このことは我々の医療現場でも,同じことです.山本さんがおっしゃるように > 安全を担保していくのに,この二つのバランスについて議論し続けなくては > いけないと思います. 鉄道の世界でそうした抜本的な改革をしようとすると、国家予算的な数字になってし まうのかもしれません。でも、もしかして、医療の世界だったら、もっと規模の小さ な「抜本策」って、あるんじゃありませんか? よく、三方活栓の系の改良の話を聞きますが、あんな事、一般のモノ作りの設計者だ ったら、考えられない非常識です。USBだって、どんな原始的なケーブルだって、逆さ まに入らないようにできています。電気のコンセントだって、どっちでも良いように 設計されています。 そんなあまりに基本的な事が考えられていない設計も驚きですが、何よりも驚くのは、 そういう明らかなモノの不備を、糾弾する事が無かった事です。そんな モノの不備を、 医療の現場の人たちは神経をすり減らして、補おうとしている。しかも、ミスしたら、 ミスした方が悪いと。 今回の尼崎の事故でも、過剰なダイヤ構成というモノの不備を、人間が補おうとして、 ミスをした。ミスをしたのは、あんなダイヤを設計したヒトじゃありませんか!運転 手じゃない。(でも、そんなダイヤにせざるをえない程、輸送力を要求されていたわ けですけれど) > 話は変わりますが(というより小生は最初からこのことだけを > 言っていたのですが),先日の新聞記事で 「JR事故に関するこころの > ケア特別相談」に寄せられた相談で,「電車を見るだけで怖い」といった > 直接的なトラウマについての相談の他に,「救助活動をしなかったのが > 悔やまれる」との相談が多かったとのことです. > > BLSは,人のためばかりではなく,また心臓マッサージや人工呼吸を > することだけが人を(自分を?)救うことではないということです. > > たとえ命をが救えなくとも,魂が救われることもあると思うのです. そうだと思います。 今回の事故で、たくさんの救助の現場の映像が、繰り返し流されていました。 人は見た事のあるものには好感を持つ、という習性があるそうです。 「救命活動」へ一般の関心を引きつける、一つのチャンスかもしれません。 亡くなった方の為にも、彼らの命の最後の姿を、人々の目に焼き付けて、そういう活 動に繋げていくことは、小さな供養の形でもあるのかもしれません。


From: 越智元郎 Date: Sun, 19 Jun 2005 20:07:37 +0900 Subject: [eml-nc5: 1004] JR 社員よりご意見をいただきました  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。私共のウェ ブ資料「尼崎JR事故に建設的な批判・提案を(救急医療メーリングリスト からの提言)」 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/p5-JR.htm に対し、JR社員の方よりご意見をいただきました。ご了解をいただき、皆 様に紹介させていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ From: W Subj: JR・・の平社員にも同意見の人間はいます。 Date: Wed, 15 Jun 2005 23:55:58 +0900 突然のメールでおそれいります。 JR・・に勤務するWと申します。 ・・で在来線の運行管理を担当しています。 下っ端の平社員ですので責任ある発言は到底できないことをお許し ください。 このたびの脱線事故では多くの方にご迷惑おかけしていることをお 詫びし、なくなられた方々のご冥福、お怪我をされた方々のご回復を お祈りいたします。 私は、阪神大震災の年に自己研鑚で消防の応急手当普及員講習を 受け、応急手当の普及に関心を持っています。 社員へのBLS教育や、AEDの設置については、私も同意見で、機会 がある時に意見を上申していますが、なかなか理解されません。 今回の事故後も、社員研修センターに勤務する元上司や、労働組合 に意見を述べていますが、現在の所、事故そのものへの対応に多忙な 状況で、前進していません。 添付ファイルは、昨年厚生労働省がAED使用を認めた時に、書いた提案 書です。 どのように動いたら、このような意見が採用されるのか模索しています。 「JRには同意見の人間はいない」と思っている方が多いと思いますが、 そのようなことが無いことだけご理解いただければ幸いです。 添付ファイル〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 救命体制の確立に向けて(私案) 〜JR社員から始まる救命リレー〜 平成16年・月・日                       W                (・・消防局認定応急手当普及員) 1.提案趣旨 当社において人命に危険が発生した場合、就業規則や作業標準などの 規程やマニュアルには応急の処置をすることが定められているが、救命 講習は何かの機会に実施する程度であるなど、十分な体制はできていな い。近くにいた人が病気やけがで倒れた時、落ちついて状態を観察し、 それに応じた応急手当をすることは重要なことである。心筋梗塞などで 心臓のポンプ機能が失われた場合、近くにいた人が何もしないと助かる 可能性は急速に低下し、救急車が到着する頃は死亡する確率が100%にな る。(カーラーの救命曲線参照) 平成16年7月1日、厚生労働省はAED(自動式体外除細動器。電気ショッ クを与え、心臓の異常な状態を回復するもので、早く使用するほど救命 率が高い)の使用を医師・看護師や救急救命士でない一般市民にも広く 認める報告書を発表した。AEDを一般市民が使用することは、欧米ではす でに実施されており、日本においても航空機の客室乗務員に例外的に認 められていた。今後の急病人発生時などにおいて、救命に関する取組み が積極的な企業では救急車到着までに気道確保・人工呼吸・心臓マッサ ージ・AED使用まで行われ、それが積極的でない企業では救急車到着まで 何もされずにあたふたするだけという状況が発生することが予想される。 不特定多数のお客様が利用する当社においても、高齢化社会、危機管 理意識の向上など社会情勢の変化に対応し、定期的に社員への救命講習 を実施するなど、急病人発生時や事故・災害時に状況の悪化を最小限に していく必要がある。平成14年11月に救急隊員が死傷する事故が発生し た当社としては、反省の意を含めて積極的に取組みたい。 2.取組み内容 1)主要駅や新幹線車内へのAED設置  AEDは1台50〜70万円と高価であるため、多くの箇所には設置できない。 急病人発生の可能性が高い、主要駅に設置する。既にAEDが設置されて いる航空機との対抗があり、次駅までの時間が長い新幹線においては、 車内にも設置する。 2)全社員への救命講習実施  毎年1回3時間程度、全社員に対し消防機関の普通救命講習レベルの講 習(成人に対する心肺蘇生法・止血法)を実施する。多くのお客様と接 する駅社員や列車乗務員に対しては、乳幼児に対する心肺蘇生法や搬送 法などの講習内容を加え、重点的に実施する。AED設置箇所においては AED使用に関する教育を行う。  各職場において、管理者1名以上に普通救命講習を実施できる消防機 関の応急手当普及員資格を取得させる(資格取得時は24時間講習、再講 習は3年ごとに3時間)。 3)備品の配置  応急手当時の疾病の感染は可能性が低いが、駅・乗務員に対しては応 急手当を実施する場合の感染防止器具等を配布する。  救命講習を実施する機会が多い箇所には蘇生訓練人形を配置する。 4)推進体制の整備  救命講習やAEDの設置は消防機関や日本赤十字社、AED販売会社などの 協力を得て実施する。当社の鉄道病院は、社内において推進体制を整備 する。 5)災害補償  応急手当を実施したことにより負傷したり病気に感染した場合は消防 法第36条により補償が適用される。応急手当の実施により症状が悪化し た場合の問題は民法第698条[緊急事務管理]や刑法第37条[緊急避難]に 免責の条文がある。会社においてもバックアップを図る。 3.まとめ  この分野では、同業他社である航空業界にすでにリードされている。 高齢者や心臓疾患等の経験者にとって、安全で安心して乗れるのはJRで なく航空機といっても過言ではない。  「救急車が着くまでさわらないのが一番」という認識は過去の話にな ってきており、「JRの社員が近くにいたのに何もしなかったから助から なかった」と問題にならない様に、積極的に取組んでいきたい。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  転載、ここまでです。皆様のご意見をお聞かせ下さい。


Date: Mon, 20 Jun 2005 08:44:52 +0900 Subject: [eml-nc5: 1006] Re: JR 社員よりご意見をいただきました From: 田辺博之(消防職員) みなさんこんにちは 田辺@消防隊です。 JR各社また支社、職場単位で違ってくるかもしれませんが JR東日本新潟支社のある営業所では、毎年7月半ばに普通救命講習を 実施しています。 今年も7月20,21日と2日間の日程で約40名(新規、再講習含む) が受講予定です。 このように、すぐに会社全体でなく職場単位、支社単位から始められて はいかがでしょうか? 東日本だけになってスミマセンが、各職場単位で受講しているところが 何ヶ所かあるようです。 Wさん: > どのように動いたら、このような意見が採用されるのか模索しています。 > 「JR西日本には同意見の人間はいない」と思っている方が多いと思い > ますが、そのようなことが無いことだけご理解いただければ幸いです。 「同意見の人間はいない」というのは違うと思いますよ。 必ず同じ考えの人はいると思います。ただ、職場内(組織)の中にはいる と前面に出てこなくなります。 こういった考え方の違いなどを、周りを見ながら、最初は有志だけの受講 でもかまわないと思います。 そこから、すぐには変わらなくてもいい、数年後には自分のいる職場の社 員全員が受講出来るように頑張っていただきたいと思います。 ----------------------------------- 〒956−0035 新潟県新潟市程島1958−1 新潟市新津消防署 警防課警防第1係(機械装備担当) -----------------------------------


From: (消防職員) Subject: [eml-nc5: 1015] Re: JR 社員よりご意見をいただきました Date: Mon, 20 Jun 2005 20:19:45 +0900 越智さん、田辺さん、みなさん、こんばんは。 P@・・消防です。 > 社員へのBLS教育や、AEDの設置については、私も同意見で、機会 > がある時に意見を上申していますが、なかなか理解されません。 本日、理学療法士専門学校の救命講習に行きました。 先日、講義を行い、今日は実技という構成でしたので、講義の際、各地にAEDが配置 されていることや奏効事例が出ていることを紹介し、主要施設の配置状況も紹介しま した。 京都駅は、この辺の施設では充実した配置状況でして、この学校では、京都駅利用の 学生も多いのですが、やはりAEDの設置についてはまったく知りませんでした。そこ で、「次回の実技の時間までに調べてきてね」といっておいたので、数人が調べてく れたそうです。 その際、駅員さん(JR西の社員)に聞いたところ、「AED? 何それ?」と返事が返 ってきたそうです。 やはり?教育や理解はされていないようです。 まぁ、そんなもんかなと思いつつ、学生が自力で「5台見つけました」なんて言って くれたのがうれしかった次第です。 別の「PAD 検証作業」のスレッドでも議論されているとおり、MCが機能していない 中、ただただAEDをおいて、DC打たせりゃいいのかは議論が別として、JR西さんの現 状をお伝えしました。


Date: Mon, 20 Jun 2005 21:11:50 +0900 From: (防災関係者) Subject: [eml-nc5: 1017] JR 東、 AED を試行導入 eml-nc5の皆様 Qです。 駅でのAED設置に関する情報提供です。 JR東日本は、16日、 9月より御茶ノ水駅にAED2台を試行導入すると発表しました。 http://www.jreast.co.jp/press/2005_1/20050607.pdf


From: 越智元郎 Date: Fri, 24 Jun 2005 06:39:47 +0900 Subject: [eml-nc5: 1049] ML の提言を実現していくために(JR社員より)  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。  私共のウェブ資料「尼崎JR事故に建設的な批判・提案を(救急医療メー リングリストからの提言)」 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/p5-JR.htm に対し、JR社員の方よりご意見をいただき、本MLで紹介させていただきま した。さらにこの方から第2通をいただいていますので、ご許可を得て転 載させていただきます。なお、今回の意見交換は皆様からのコメントを含 め、上記ウェブ上に収載させていただいています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ From: W To: 越智 元郎 , Subj: MLの提言を実現していくために Date: Tue, 21 Jun 2005 22:58:24 +0900 越智先生 W@JR・・です。 JR社員へのBLS普及やAED設置に関して、 救急医療MLでは、有益な意見が並んでいますが、MLやウェブ で意見交換、発表するだけでは、当社の具体的な取組みにつな がりません。 私も平社員としてできる限りのことはしたいと思いますが、素人 では説得力に欠けます。当社内の専門家であるべき鉄道病院に そういう視点が欠けるのも気になります。 提言には色々な方法があると思いますが、MLの利点を活用して、 多くの専門家から一斉に意見を(お客様の声として)提出するとい うのはいかがでしょうか? 当社の、一般の方からの意見の受付先は https://www.jr-odekake.net/info/info.html https://www.jr-odekake.net/info/form_kikuzo.html にあります。納得いく回答がなければ、繰り返し提出する必要もある でしょう。 大事故や災害の対策といえばどうしてもハード面が中心になり、 BLS普及のようなソフト面や、事故と直接関連無いAEDなどは、後 回しにされがちです。 当社にはやるべきことが多々あるわけですから、優先順位を上げて いく努力をしなければ、後回しにされ続け、具体的な取組みに至らない ことになってしまいます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  転載、ここまでです。皆様のご意見はいかがでしょうか。


ACLS大阪メーリングリストにおける意見交換


From: (救急隊員) Subject: [acls-osaka:8046] JR西日本への普及活動 Date: Thu, 5 May 2005 23:31:08 +0900 どーも、皆さんこんばんわ。(い)@・・消防です。 尼崎での列車事故で亡くなられた方のご冥福を心からお祈り申し上げます。 また、現場で活躍された医師、看護師、救急隊員の皆さん本当にご苦労さんでした。 いろいろと、問題提起はされていますが、ACLS大阪つながり、そしてJPTEC つながりと横の連携はわりと出来ていたと聞いております。 うーん、すばらしいですね。 ところで、このJR西日本ですが職員が救助にたずさわらなかったとか、ボーリング大会 またその打ち上げ等と、まったく危機管理の意識がありません。 日頃から感じることですが、実際に駅構内で倒れていた患者さんに何の処置も されていない。 おまけに、列車事故で出場して患者さんを観察している時に「早くどけてくれ。 電車を早く通したい」という駅員の言葉を聞いて、おとなしい私が何回も切れた 経験があります。 しかし、今起こったことを責め続けても仕方がありません。 私は今がチャンスで、この機会にJR西日本の職員にBLS講習を受けてもらい 乗客の命を助けるということで、少しは危機管理の意識を持ってもらいたいと 思っております。 出来るなら、少しはお金がかかるかもしれませんが、JRの駅すべてにAEDを 設置してもバチは当たらないんではないですかね。 こういうことで、JR側も少しは罪滅ぼしとしての宣伝になるとおもうのですがね・・・ ・・先生、JR西日本の幹部の方へ宣伝できませんか? ここには色々な先生がいるので、どなたかJR西日本の幹部の方に知り合い いませんかね。 私もJRを利用しているので、もう少し安全に電車に乗りたいもんです。 皆さん、どんなもんですやろ・・・


Subject: [acls-osaka:8047] Re: JR西日本への普及活動 From: 徳田秀光(医師) Date: 2005/05/06 00:06 やはり教育が大事だと思います アメリカかぶれの僕としてはどんな職場でも 30人に一人HS First aidを受けてほしいです そうするとHSだけでも受けたいって人が出てくるわけですし 鉄道に限らずサービス業の管理職はBLSを受講していないと なれないと強制するしかないかもしれませんね


From: 小林正直 Subject: [acls-osaka:8048] Re: JR西日本への普及活動 Date: Fri, 6 May 2005 00:19:47 +0900 (い)さんこんばんは,小林正直@大阪医科大学附属病院救急医療部です。 > 私は今がチャンスで、この機会にJR西日本の職員にBLS講習を受けてもらい > 乗客の命を助けるということで、少しは危機管理の意識を持ってもらいたいと > 思っております。 > 出来るなら、少しはお金がかかるかもしれませんが、JRの駅すべてにAEDを > 設置してもバチは当たらないんではないですかね。 > > こういうことで、JR側も少しは罪滅ぼしとしての宣伝になるとおもうのですがね・・・ 同感です。JRに話しを持ちかけていますがレスポンス悪いそうです。 今はJRさんはたいへんな時期でそれどころではないかもしれませんが,逆に夏の暑い日に熱 いカレーを食べるということもいいと思います。 事故対策だけじゃなく,広く危機管理せなあかんでという論調でね。 =================================================================== 小林 正直 大阪医科大学附属病院救急医療部  総合診断・治療学講座救急医学担当 救急医療部home page; http://www.osaka-med.ac.jp/deps/emm/index.htm 高槻ICLSコース; http://www.osaka-med.ac.jp/deps/emm/iclshome.htm 日本救急医学会認定ICLSコース近畿地区のページ;            http://www.osaka-med.ac.jp/deps/emm/jaamicls.htm


From: 大窪正茂 Subject: [acls-osaka:8049] Re: JR西日本への普及活動 Date: Fri, 6 May 2005 00:47:34 +0900 有沢総合病院の大窪です。JRに限らず多くの鉄道ではAEDもおいてくれませんね。 なにかあったときの責任問題が嫌なんだそうです。 只、今回の事件の前にJRは、AEDを設置する具体的な計画はないが、「導入に向け て職員の教育方法や設置場所などについて、検討している」(同社広報室)という。 (http://mytown.asahi.com/osaka/news01.asp?kiji=1271より。)検討という曖昧な言 葉ですが、今回の事故を見ると本当に検討してくれているのか半信半疑ですね。何とも 寂しいばかりです。実はあの路線は私の通勤路線で、人ごととは思えません。私のご近 所のかたも亡くなっています。 今、チョット思ったのですが、ひょっとしたら関西の非医療従事者の危機管理は東日本 に比べ低いのかも、と思います。経済性を優先するあまり安全が手薄なのでしょうか? 確認したのですが、死亡事故が起きているにもかかわらずUSJにはAEDがありません。 悲しいですね。JRから依頼があれば喜んで行く人間はこのMLにたくさんいるのにね。 有沢総合病院歯科口腔外科 大窪正茂


Date: Fri, 06 May 2005 09:22:33 +0900 From: な(医師) Subject: [acls-osaka:8050] Re: JR西日本への普及活動 皆様 初めまして。 [な]と申します。 私事ですが丁度事故前日、 新幹線の中で 全身膨疹と呼吸苦、腹痛で倒れました。 (駅弁の貝でアレルギーを起こしたようです・・) にもかかわらず 車内の女性乗務員は見てみぬ振りで なんとか降りた新大阪のホームの駅員に助けを求めても 「アナウンスがありますから」 と言い、他の駅員を呼ぶでも 休養室に案内するでもなく 1時間ほどホームで倒れていました。 (乗客のほうが心配してくれたほどです) 乗客の安全への意識の低さに驚き 提言しようと思った矢先の事故で、やっぱり・・と感じました。 おっしゃる通りBLS講習含め、社員への安全に関する意識教育を 充実させるべきだと思います。 また どんなベテランであっても中高年者であれば 「運転士自身」が運転中のいつ何時、心停止になってもおかしくないでしょう。 そういう意味でも 駅構内あるいは車内にAEDを設置する必要もあると思います。 多くの命を乗せる運転士が一人というのもいかがなものでしょうか? 経済的に難しいのかもしれませんが 飛行機のように 副運転士を置くわけには いかないのでしょうか・・ と色々 考えさせられる 事件です。


From: 西本泰久 Subject: [acls-osaka:8051] Re: JR西日本への普及活動 Date: Fri, 6 May 2005 10:28:33 +0900 こんにちは、西本泰久@大阪医科大学救急医療部です。 (い)様ありがとうございます。一度、ルートを探して申し入れできればと思いま す。JRでは駅で傷病者が出た場合も、一旦上司に報告がいき、確認の後に消防に通報 されるようです。私が昨年経験したときはそうでした。そのため通報から上司の確認 に10分それから、救急隊到着に10分かかりました。この点にも問題があります ね。


From: 高橋正行 Subject: [acls-osaka:8052] Re: JR西日本への普及活動+喫煙対策もお願い Date: Fri, 6 May 2005 10:37:41 +0900 (JST) JR西日本の利益優先・人命軽視の経営方針と従業員のモラルの低さには驚きました。 「自分は専門ではないから。自分のノルマは目の前の事だから余計な事はしない」という のは、典型的な歯車的発想です。信楽高原鉄道事故の時からまったく進歩していません。 大声を上げて、救命活動を訴えても「自分たちの業務ではないし余計な事には関わらない」 というのが現場の意見かもしれません。駅で発生した急病人への対応も大変不親切です。 是非、大声でJR西日本のトップから、意識改革を進めて欲しいと思います。 喫煙対策の不備や受動喫煙(毎日大量に被爆)への対策がJR西日本が遅れている事は前か ら指摘されています。能動喫煙も受動喫煙はゆっくり確実に出来る殺人です。AEDの設置、 従業員へのAED+BLSの講習と並んで駅構内の完全禁煙の実施もどんどん推進して欲しいと 思っています。 救急活動は一般市民、隣接する会社員、マンションの住人、救急隊、警察、自衛隊、病院、 行政を含めてかなり進歩してきています。これは阪神淡路大震災の経験が大きいと思いま す。ここに参加の方々も多数協力されたと思います。意識改革が進んで行動変容が起こっ た領域と意識も行動も全く変わらない領域の違いが歴然としています。 高橋 正行(たかはしまさゆき) Masayuki Takahashi, MD, PhD blog http://biwasport.exblog.jp/ びわこ成蹊スポーツ大学


Date: Fri, 6 May 2005 11:59:30 +0900 (JST) From: (放射線技師) Subject: [acls-osaka:8053] Re: JR西日本への普及活動  ACLS大阪のMLの皆様、いつもお世話になっております。(と)です。 先日の尼崎列車事故の犠牲者となられた方々のご冥福をお祈りすると共 に、救急活動にご参加された皆様方、心より敬意を表します。  (い)さんはじめMLに寄せられた皆様のメッセージを拝見し、私も黙っていられず思 わず投稿しました事をお許し下さい。私も今回の事件に際し(い)さんはじめ投稿され た諸先生方と同じ憤りを覚えます。特に安全だと思っていたJRへの企業体質への不 信感は連日のニュースを見る度、募らないと言えば嘘になります。けれど、冷静に考 えてみると私も立場が違えば、一つの組織に入ると同じ穴のムジナにいるのかもしれ ません。  私は診療放射線技師ですが、ACLS大阪の存在を知ったのをきっかけに様々な活 動に参加させて頂いております。(い)さんもおっしゃられていた様に、きっかけが人 を変えるかもしれません。特に今、JRの体質改善と叫ばれていますが正直、企業体 自体に余裕が無いと思います。そこでご提案ですが、大きな企業体には福利厚生施設 がございます。JRにも「大阪鉄道病院」という立派な施設がございます。JRの職 員に働きかけるのも一つの手だと思いますが、同じ医療施設である「大阪鉄道病院」 にまず「ACLS大阪」の活動をご紹介するというのは如何でしょうか?


From: 寺井岳三 Subject: [acls-osaka:8054] Re: JR西日本への普及活動 Date: Fri, 6 May 2005 14:41:52 +0900 寺井@大阪労災病院です On 2005/05/06, at 11:59, (と) wrote: > そこでご提案ですが、大きな企業体には福利厚生施設 > がございます。JRにも「大阪鉄道病院」という立派な施設がございます。JRの職 > 員に働きかけるのも一つの手だと思いますが、同じ医療施設である「大阪鉄道病院」 > にまず「ACLS大阪」の活動をご紹介するというのは如何でしょうか? 大阪鉄道病院がなにもしていないような誤解があるといけないので、 昨年3月まで大阪鉄道病院に勤務していたのでコメントさせていただきます。 JR西日本は、大阪鉄道病院と広島鉄道病院の2病院を持っています。 (中略) 大阪鉄道病院内においては、 二次救命処置コースを、私が在職中の2003年から1年間でたしか9回開催しました。 救急対策委員会と麻酔科が中心となった院内コースです。 2004年4月に私が異動した後も、麻酔科スタッフが中心になり継続して院内コースを 開催していますが、麻酔科医人手不足で忙しく、開催回数は減り、今 年3月にも開 催予定でしたが中止になったようです。 ACLS大阪の活動は当然知っていますし、ACLSに関しては院内である程度は取り組ん でいることをご理解ください。 ACLS大阪の公認コースを開催するほど積極的でないのは確かです。 新幹線の車内にはAEDを置く方がいいとは感じていました。駅にも置いておくべきで すね。ただし、JR西日本の社員全員にBLS/AEDを指導するなるとなかなかむずかし い問題があると思います。


From: 木下 隆 Subject: [acls-osaka:8055] Re: JR西日本への普及活動(level1?) Date: Fri, 6 May 2005 18:24:29 +0900 寺井先生、皆様、お疲れ様です。 木下@社保京都です。 鉄道員はフライトアテンダント、ファイヤファイター、フェリークルー、ポリスマン のようにlevel1の方々なのでしょうか? もっともレベル1の人々はもともとBLS施行の義務のある人となっていますが… 日本ではカタカナで小生が書いた職種にBLSの義務があると思っていると考えにく い状況ですが…(フライトアテンダントは別格ですが…)


Date: Fri, 6 May 2005 21:46:22 +0900 (JST) From: 越智元郎 Subject: [acls-osaka:8056] JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育)  大阪ACLS関係者の皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。  さて、皆様の「JR西日本への普及活動を」という意見交換を興味深く読 ませていただきました。まことにごもっともだと思います。そして今が普及 活動の絶好のチャンスだと思います。  JR事故の検証が進んでいますが、一方でJR職員への(マスコミの)風 当たりは厳しいものがあります。何か妙な方向に行っているのではないかと いう心配もあります。とはいえ、組織としてのJR、またそれぞれの職員が 大きく変わることのできる機会であることは間違いないと思います。私は人 命重視や危機管理の一つの表れとして、今こそ真剣に職員の応急処置教育に 取り組んでいただきたいと思っています。  私が参加しております、救急医療メーリングリスト(eml)やemlから派生 した市民団体「心肺蘇生法を学び広める市民の会」でもJRと接点があり、 職員の応急処置教育について提案をして参りました。特に2002年および2003 年に広島駅でJRの催しに協力する形で実施した「踏切事故防止キャンペ ーン」では、駅前の広場にテントを張り、市民へのCPR指導、2003年には JR職員に対するAED訓練も行いました(2003年の催しでは広島鉄道病院から も参加して下さいました)。  JRのような大きな組織がいったん目覚め、動き出したらその好影響は多 大なものがあると思います。事故当日のボーリングや親睦会のことはさてお き、具体的な改善の方向に目を向けてゆきたいですね。   ■991222. JR職員に救命手当の普及を ―1999年12月18日、JR西日本への提言― (津秋活之、津秋圭子、円山啓司ほか eml有志) http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/99/jcjr.htm ■踏切事故防止キャンペーン  2002年および2003年 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/02/maJR.files/slide0001.htm *追伸:私が1995年に視察に行った米国Pittsburgh市では、公務員はすべて (警察官も役所の職員も)一次救命処置を身につけることが義務になってい  ました。JRに限らず、わが国の公的な機関の職員は同様の教育を受ける  べきだと思います。そうすれば、多数のけが人を前に「敵前逃亡(テレビ  に映った市民の声)」せずに済むのではないかと思います。  それでは皆様、また。


From: 寺井岳三 Subject: [acls-osaka:8060] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育) Date: Mon, 9 May 2005 06:30:01 +0900 寺井@大阪労災病院です (引用部分省略) 今年の日本交通医学会総会は、6月4日(土)〜5日 (日)大阪国際会議場で、 JR西日本の大阪鉄道病院が主催で開催されます。 プログラムでは、特別講演に  JR西日本の安全・安定輸送に向けた取り組み  西日本旅客鉄道株式会社 安全推進部担当部長 森江悦治 が企画されているようです。 昨年までは学会に参加していましたが、 異動にともない退会したので、今年はいくつもりなかったのですが、こ の特別講演ちょっと気になるところです。


From: 寺井岳三 Subject: [acls-osaka:8065] Re: JRが変わるチャンス(職員の応急処置教育) Date: Mon, 9 May 2005 22:32:50 +0900 寺井@大阪労災病院です [acls-osaka:8060]の内容を訂正します 日本交通医学会ホームページ( http://jatm.umin.jp/ )によると 5月9日付けで、 JR福知山線脱線事故に伴う諸般の事情にともない学会運営が困難な状 態となり, 交通医学会総会は開催中止だそうです。


From: Subject: [acls-osaka:8356] JR西日本の回答 Date: Fri, 15 Jul 2005 20:25:15 +0900 どーも、皆さんこんばんわ。い@・・消防です。 (中略) 話はかわりますが、だいぶ前にJR西日本の職員に救命講習を受講してもらい お客さんの命を守るということで、危機意識を持ってほしいとメールでアップさせて もらいました。その後ネットで見つけてJR西日本の「お客様相談コーナー」に その内容を提案させて頂きました。 その回答がやっときましたので、アップさせて頂きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ・・・・ 様 この度は、貴重なご提案をいただきまして誠にありがとうございます。 また、ご連絡が大変遅くなりまして誠に申し訳ございません。 弊社では、乗務員におきましては運転士、車掌の養成課程において、救急措置として止血 方法や心肺蘇生についての研修を実技を含めて2時間程度実施しておりますが、 会社として統一的に実施している救命救急に関する教育・訓練はございません。 今後につきましては現在のところ計画はありませんが、貴重なご意見として参考にさせて 頂きます。ありがとうございました。 今後ともJR西日本をご利用いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 西日本旅客鉄道株式会社 JR西日本お客様センター お客様相談窓口責任者 ・・・・ 提案文(ウェブ担当者により、趣旨が変わらない範囲で一部、改変させていただきました) |JRの安全への対策はかなり進んでいると思っております。さらに、出来ればこの機会に |JR職員の方に救命講習を受講して頂き、お客さんの命を守るということで、さらに危機 |意識を持って頂けないでしょうか? ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (以下、省略)


From: 大窪正茂 Subject: [acls-osaka:8361] こんなんどうですか?(・・さんのメ−ルにたいして) Date: Sat, 16 Jul 2005 02:50:38 +0900 有沢総合病院の大窪です。JRに直接いってだめなら仙台の様な以下のようなイベントをしませんか? http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/miyagi/news/20050623ddlk04100260000c.html つまりJRの大阪駅とか梅田で大阪ライフサポ−ト協会主催、AED各メ−カ−協賛で 「AED体験イベント〜あなたは愛する人を救えますか?〜」 ・・先生どうですか?ただし場所を借りるのに金がかかりそうですが。。。 大窪の無責任な提案です。。


産業保健メーリングリストにおける意見交換


Date: Thu, 12 May 2005 10:52:27 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3515] 尼崎JR事故と産業医 ・・ネットワークおよび産業保健MLみなさん、洙田です。 尼崎で悲惨な事故が起きましたが、再発を防止するためにも、 産業医の果たす役割が大であると思います。 (中略) 私が特に関心があるのは、「鉄道事故というリスクを予防する ために、産業医がどのようなリスクマネージメントをすべきか」 ということですが、関連する話題は数多いと思います。 みなさま方の御意見を伺えれば幸いでございます。よろしく お願いいたします。 洙田靖夫 洙田労働衛生コンサルタント事務所 日本予防医学リスクマネージメント学会幹事 http://www.jsrmpm.org/ 1999年度及び2000年度大阪狭山青年会議所理事長 新潟県中越地震の被災者で 乗用車等で寝泊りしている方々の健康リスク対策Ver.1 http://www.rescuenow.net/other/car_taisaku_ver1.pdf 災害ボランティアの安全衛生対策マニュアルVER.3 http://www.rescuenow.net/other/anzen_manual_ver3.pdf 水害および震災ボランティアのために作成しました。 ぜひご意見をお聞かせください。 『SARS対応マニュアル(中堅企業〜大企業版)』 http://www.rescuenow.net/japan_world_now/world/other/virus/sars-manual.html ボランティアによる除灰作業マニュアルVer2(案) http://homepage2.nifty.com/nameda/usu/manual-usu.htm


Date: Thu, 12 May 2005 12:48:03 +0900 From: 守屋章成 Subject: [OH-ML:3516] Re: 尼崎JR事故と産業医 守屋(章)@家庭医療クリニック西岡です.  嘱託産業医も契約が終了し産業医学からは遠ざかっている身ですが,洙田先生の問題提起に 対し1点レスさせて頂きます.  今回の事故ではたまたま事故列車に同乗していたJR西日本の運転士2名が「現場で救助活動 に当たらず」「そのまま出社した」ということが随分マスメディアで非難されました.  この2名の運転士氏は爾後の対処につききちんと社に電話して判断を仰いでいるので,非難 される必要はないと私は考えています(出社を指示した上司の判断がどうであったかはさてお き).  ただ,他のMLにも書いたのですが,この2名の運転士がその日乗務に就いたことは大きな問 題だったのではないでしょうか.  私の記憶では,確か2名とも予定通りの運転業務を行ったはずです.しかもうち1名は事故か ら約20分間失神していたと報道されています.  大きな列車災害に遭遇し失神までした運転士をそのまま別の列車の運転業務に就かせた…も しこの運転士が例えば急性硬膜外血腫を起こしていて,そのまま乗務中に再度意識消失してい たら次の大惨事が起きていたはずです.  もう1名の運転士も,自社の大事故に遭遇して精神的な動揺は大きかったはずです.その状 態で運転したのは危険ではなかったのか?  実際,事故後もJR西日本の管内でオーバーランが相次いで報道されています.事故に対する 運転士の同様の影響がないとは言えないと思うのですが.  あるいは,産業医の先生があらゆる診療の結果として「乗務OK」の判断を下していたのなら 別ですが….  2名の運転士が実はその日乗務に就いていなかったのであれば,単純な私の記憶違いです. その際は御容赦下さい.(自宅の古新聞は始末してしまっていて,ネット上の記事でも既に追 跡できなくなっているので,明確に確認できませんでした) ■□ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ □ |  守屋章成 医師・事務長 | |  特定医療法人社団 カレス サッポロ |  家庭医療クリニック 西岡 | |_________________


Date: Thu, 12 May 2005 14:05:17 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3517] Re: 尼崎JR事故と産業医 守屋先生、みなさま、洙田です。 >  ただ,他のMLにも書いたのですが,この2名の運転士がその日乗務に就いたことは > 大きな問題だったのではないでしょうか. まず同乗していた2名の運転士がはたして乗務についていたかを確認しなければ なりませんね。 守屋先生のいわれるように、大惨事につながりかねないわけですから、「リスクは 大」です。 このリスクをどのように処理したか、すなわち、 1)乗務につかせたのか否か 2)その判断基準は何であるか 3)誰が判断を下したか 4)判断を下した者が適正な権限をもっていたか 5)産業医等、専門家がその判断にどう関与したか 6)その判断に対して後日誰がどのように評価したのか などなど、公式の場で報告をしてほしいですね。 できましたら、学会等がよいと思いますが、いかがでしょうか。 洙田靖夫


Date: Thu, 12 May 2005 15:07:00 +0900 From: 守屋章成 Subject: [OH-ML:3518] Re: 尼崎JR事故と産業医 守屋(章)@家庭医療クリニック西岡です. >まず同乗していた2名の運転士がはたして乗務についていたかを確認しなければ >なりませんね。  ネットをよくよく検索してみたら出てきました.読売新聞の「特集記事」コーナー に事故関連の報道が時系列で並んでいました. ■脱線電車にいたJR運転士2人 救助活動せず出勤 (5月4日付報道) http://www.yomiuri.co.jp/features/dassen/200505/da20050504_02.htm 記事要約(越智元郎):  JR西日本によると、2人は、大阪支社管内の運転士で、それぞれ事故車両の4両 目と6両目に乗車。ともにけがはなく、救急隊員や乗客、近所の人たちが負傷者らの 救助にあたる様子を見ながら、徒歩で現場を離れて、そのまま出勤した。運転士の1 人は途中で職場に電話をかけ、事故を報告したうえ「これから向かう」と当直職員に 伝えたが、もう1人は職場に着くまで何の報告もしていなかった。両電車区は点呼で 2人に異状が見られないとして、ともに予定通りの列車を運転させた。  これによると「点呼」は行われたようですが,産業医によるチェックを受けたとは 書いてありません.  また翌5日の記事に失神していたことも報道されていました. ■上司、救助指示せず http://www.yomiuri.co.jp/features/dassen/200505/da20050505_03.htm 記事要約(越智元郎):  運転士の1人は事故で約20分間、気を失い、意識が戻った後、6両目の車内から 当直係長に電話。係長は「遅れずに来て下さい」と指示した。  「気を失い」「意識が戻った」という報道です.  報道が正しいとすれば,列車事故によって意識消失を来した運転士をそのまま乗務 させたのは事実のようです.  また,意識を失わなかった運転士は電話連絡したようですが,意識を失った運転士 は連絡無しで出社してしまったようです.この点は批判されても仕方ないかも知れま せん.


Date: Fri, 13 May 2005 06:43:44 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3519] Re: 尼崎JR事故と産業医 守屋先生、みなさん、洙田です。 >  報道が正しいとすれば,列車事故によって意識消失を来した運転士をそのまま乗 > 務させたのは事実のようです. この点は、確認の上にも確認を要するところですね。 >  また,意識を失わなかった運転士は電話連絡したようですが,意識を失った運転 > 士は連絡無しで出社してしまったようです.この点は批判されても仕方ないかも知 > れません. これに関しては、JRが当初の情報提供を訂正し謝罪しております。意識を失った 運転士は電話で上司に指示を仰いでおります。 洙田靖夫


Date: Wed, 18 May 2005 06:10:08 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3524] 尼崎JR事故と産業保健のあり方 ・・ネットワークおよび産業保健MLのみなさん、洙田です。 昨日、NHKのプロジェクトXを見ていたら、東京のあるホテル建設の エピソードが紹介されておりました。東京オリンピックに間に合わす ために、通常は3年かかる工期をいかにして半分に短縮したかという 話でした。 目玉は、設計と施工を同時進行させたというもので、これが工期短縮の 切り札になっております。 これを見ていた妻が、「私は、このホテルには、泊まりたくない。 なぜなら、ちゃんとした地震対策が施されているか心配だから」と 申しました。私もまったく同意見です。 時代は高度成長真っ只中です。相当に無理をした突貫工事の連続で あったことは想像に難くありません。このホテルだけではなく、高速 道路や鉄道を始めとした各種のインフラ、それに加えてビルや家屋など 各種の建造物がこの時代に作られております。 幸い、戦後の日本は、阪神大震災が起きるまで、大都市を襲う巨大 地震の洗礼を受けておりませんでした。そのため、高度成長時代の 突貫工事で作られた建造物が「問題なく使えているのだから、問題は ない」と解釈されておりました。 この幻想は、阪神大震災でもろくも崩れ去りました。もちろん、問題の 所在に気づいていた専門家はおりましたが、その声が主導権を握る ことはなかったと思います。もっとも、阪神大震災後は、あわてて 耐震工事(たとえば、首都高速羽田線)を行っております。 翻って、JR西日本の悲惨な事故のケースですが、国鉄の膨大な 債務の一部を引き受けていますので、これを返却しなければ ならないという重荷をJRは背負わされておりました。とくに、 関西圏は、伝統的に私鉄が強いので、旧国鉄の時代からスピード 競争に血道をあげていた場所です。 これらを背景に民営化した時から、JR西日本はスピードアップを 推進してきました。企業戦略としては、間違いはないと思います。 ただし、安全に配慮するという条件を満たしているのならばです。 民営化後のJRは、高度成長路線を強制されていたといえるでしょう。 これに対して、リスクをマネジメントする力がどう働いていたのかが、 私の最大の関心事です。 産業保健MLでは、これに関して事故車両に偶然乗り合わせていた 2人の運転士がその日乗務に就いていたかどうかが議論になり かけましたが、尻すぼみになっております。 公衆衛生の1分野である産業保健は、「労働者の健康を守る」ことが 使命です。これを通じて労働者が死んだり病気になったりすることを 防ぐわけです。 労働者が心身ともに健康に職務に専念できると、安全な作業が可能に なることは疑いの余地もないと思います。今回の事故の背景として 死亡した運転士に対して過剰なストレスがかかっていたのではないか という強い疑念があります。 運転士に対する過剰なストレスは、リスクそのものです。これを 適切にマネジメントできなければ、いろいろと悲惨な事態を引き起こす でしょう。また、身体的な病気はなかったのでしょうか。たとえば、 睡眠障害などを引き起こす病態などです。 昨今、職場にメンタルヘルスが叫ばれておりますが、JRの産業保健は これに対し、どのように取り組んでいったのでしょうか。また、これから どのように取り組むのでしょうか。産業保健の現場から上がる声は かき消されているのでしょうか。 JR西日本は、衆議院国土交通委員会で「安全諮問委員会」を設置する 旨を表明しましたが、産業保健(産業衛生、労働衛生)の専門家が 選任されることを念願しております。 これまで・・ネットワークおよび産業保健MLにおいて、 尼崎JR事故に関する意見を提出してまいりましたが、議論が 盛り上がっていないようです。この話題をタブーにしてしまうと、 将来に渡って禍根を残すのではないかと懸念します。 MLに意見を表明されるのが憚られる場合は、私に直接メールを下さい、 よろしくお願いします。 洙田靖夫


Date: Wed, 18 May 2005 17:13:18 +0900 From: 金 一成 Subject: [OH-ML:3525] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 トヨタ産業医金です。 (洙田) >公衆衛生の1分野である産業保健は、「労働者の健康を守る」ことが >使命です。これを通じて労働者が死んだり病気になったりすることを >防ぐわけです。 >昨今、職場にメンタルヘルスが叫ばれておりますが、JRの産業保健は >これに対し、どのように取り組んでいったのでしょうか。 JRに限らず、当社も人事ではない気がします。 NASAの事故調査が客観的かどうか分かりませんが、マスコミのような感情的ではなくて 出来るだけ科学的・客観的な分析がされる事を望みます。 その上で大いに議論したいですね。 >この話題をタブーにしてしまうと、将来に渡って禍根を残すのではないかと懸念します。 洙田先生の義憤も大いに理解できます。 ただ如何せん私は勉強不足と情報が足らないので、つい生半可なことは言えないと、 だから皆さんもなかなか議論が活性化しないのではないかと、、、 ***************************** 金一成 トヨタ自動車(株)高岡工場 産業医 トヨタ記念病院メディカルサポート部 産業医G *****************************


Date: Wed, 18 May 2005 18:34:07 +0900 From: 清水隆司 Subject: [OH-ML:3526] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 清水です。 私は、1年間、某鉄道会社の産業医をしましたが、 鉄道業の産業医の仕事は難しいですね。 まず、機関区、車掌区、など、といった事業所が沿線に分散しており、なかなか産業医が全てを管理 しにくい現状がありました。 鉄道業の産業保健は、分散事業場の産業保健に似ているところがありますね。  だいたい、乗車する前には、点呼があり、作業責任者にあたる方が、乗車前に、その日の体調確認 並びに仕事上の注意点を 話して、それから乗車します。  運転士と車掌は、組織的には分離していて、お互いに注意しあっているのが普通です。  ただ、悲しいことに、お客さんは、数分の遅れでも文句をいったり、酒に酔って車掌等を殴ったり して、他の業種と比べると、第3者による暴行が労働災害で多いのも事実です。  そういう意味では、かなり、ストレスフルな仕事ではないか、と思われます。  産業医学的に問題なのは、その日その日の運転士並びに車掌の体調をどう科学的に、しかも、簡易 に測定することだと、私は思っています。  他社によるチェックや自己申告では、限界があると思います。  産業疲労に関して、もっと、真剣に研究が進まないと、このような問題の解決は難しいのではない でしょうか。  一部では、声で、疲労度を測定する調査が始まっていますが。 清水隆司 医学博士、日本産業衛生学会指導医


Date: Thu, 19 May 2005 01:07:38 +0900 From: 津田徹 Subject: [OH-ML:3527] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 洙田先生 > 労働者が心身ともに健康に職務に専念できると、安全な作業が可能に > なることは疑いの余地もないと思います。今回の事故の背景として > 死亡した運転士に対して過剰なストレスがかかっていたのではないか > という強い疑念があります。 > 運転士に対する過剰なストレスは、リスクそのものです。これを > 適切にマネジメントできなければ、いろいろと悲惨な事態を引き起こす > でしょう。また、身体的な病気はなかったのでしょうか。たとえば、 > 睡眠障害などを引き起こす病態などです。 職業ドライバーの睡眠が確保されていないのも問題だと考えています。バス 運転手も同様ですが、夜23時頃まで乗務し、自宅でない宿泊所に泊まり、 朝5時の点呼とのことです。食事を自分たちで作ったりで、就寝するのは早 くて1時頃、実質 睡眠時間は4時間に満たないのが現状です。これが、二 晩続く(二徹)とのことです。 駅をオーバーランした運転手さんが当院へ受診されますが、1時間あたり20 回以下の軽度の睡眠時無呼吸症候群でも、睡眠時間が短くなると、ヒューマ ンエラーが起きるようです。 今回の尼崎の事故の場合、運転手さんが睡眠時無呼吸であったか、どうかは 情報は得ておりませんが、前の駅でのオーバーラン、その後 発車後、車掌 からの連絡にこたえなかった、これまで、うつろな眼を指摘されたことがあ る、などより、どのような睡眠時無呼吸症候群に対する取り組みが職場でな されていたか、公表されるべきであると考えます。 > JR西日本は、衆議院国土交通委員会で「安全諮問委員会」を設置する > 旨を表明しましたが、産業保健(産業衛生、労働衛生)の専門家が > 選任されることを念願しております。 > > この話題をタブーにしてしまうと、 > 将来に渡って禍根を残すのではないかと懸念します。 同感です。 ********************************************* 津田 徹 TORU TSUDA, MD, PhD 北九州市小倉北区高坊2丁目8−32 医療法人恵友会 津田内科病院             恵友会訪問看護/ヘルパーステーション             デイケア ほっとホーム霧ヶ丘 ホームページ:http://www.k-you.or.jp 睡眠時無呼吸、呼吸リハ、喘息の指導などみてください! *****************************************


Date: Thu, 19 May 2005 06:24:18 +0900 From: "nameda yasuo" Subject: [OH-ML:3528] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 To: occ_h-ml@info.uoeh-u.ac.jp (Occupational Health ML) (イ)先生、みなさん、洙田です。 *引用部分要約(越智元郎):  出来るだけ科学的・客観的な分析がされる事を望む。 その通りですね。私も事故直後は逆上していたので、半月の冷却期間を置いての 意見表明となりましたが、(イ)先生の言われるように科学的・客観的な分析が なされることが重要ですね。 そのためにも、学会等の場で、ありのままの事実を報告していただきたいと 希望します。その上で、分析→議論ということになるでしょうね。 *引用部分要約:  議論が活性化しないのは? JRの産業医を始めとする産業保健従事者は、当然のことながら、守秘義務があ るわけでむやみやたらな情報提供は禁じられていると思います。だからといって、 社会的に必要とされるもの(たとえば、再発を予防するための産業保健的知見な ど)は、同業他社の事故予防という観点からして、公表をすべきものとなります。 従いまして、「何を公表すべきか」という論点に絞り、そのあたりを議論し、整 理することは部外者であっても可能ではないかと考えております。 洙田靖夫


Date: Thu, 19 May 2005 06:30:20 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3529] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 清水先生、みなさん、洙田です。 > 私は、1年間、某鉄道会社の産業医をしましたが、 > 鉄道業の産業医の仕事は難しいですね。 > > まず、機関区、車掌区、など、といった事業所が沿線に分散しており、なかなか産 > 業医が全てを管理しにくい現状がありました。 > 鉄道業の産業保健は、分散事業場の産業保健に似ているところがありますね。 もともと、産業保健活動が困難な条件が揃っているわけですね。 >  だいたい、乗車する前には、点呼があり、作業責任者にあたる方が、乗車前に、 > その日の体調確認並びに仕事上の注意点を > 話して、それから乗車します。 > >  運転士と車掌は、組織的には分離していて、お互いに注意しあっているのが普通 > です。 運転士と車掌が組織的には分離しているという、基本的な事柄も知りませんでした。 >  ただ、悲しいことに、お客さんは、数分の遅れでも文句をいったり、酒に酔って > 車掌等を殴ったりして、 > 他の業種と比べると、第3者による暴行が労働災害で多いのも事実です。 > >  そういう意味では、かなり、ストレスフルな仕事ではないか、と思われます。 尼崎市内の阪急武庫之荘駅で、振替輸送の誘導に従事していたJRの職員が市民から 相当に絞られているところを目撃しました。暴力行為はなかったですけど、かなりの ストレスがかかったと思います。 >  産業医学的に問題なのは、その日その日の運転士並びに車掌の体調をどう科学的 > に、しかも、簡易に > 測定することだと、私は思っています。 >  他社によるチェックや自己申告では、限界があると思います。 > >  産業疲労に関して、もっと、真剣に研究が進まないと、このような問題の解決は > 難しいのではないでしょうか。 > >  一部では、声で、疲労度を測定する調査が始まっていますが。 疲労をどの程度まで客観的に評価するかは、重要な問題であると思います。 ご意見、ありがとうございました。 洙田靖夫


Date: Thu, 19 May 2005 06:43:47 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3530] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 津田先生、みなさん、洙田です。 > 職業ドライバーの睡眠が確保されていないのも問題だと考えています。バス運転手 > も同様ですが、夜23時頃まで乗務し、自宅でない宿泊所に泊まり、朝5時の点呼 > とのことです。食事を自分たちで作ったりで、就寝するのは早くて1時頃、実質  > 睡眠時間は4時間に満たないのが現状です。これが、二晩続く(二徹)とのことで > す。 このような実態を知りませんでした。私は、製造業と小売業の産業医経験しか ありませんので、みなさま方に教えていただくことばかりですね。 しかし、このような実態は労働基準監督署や都道府県労働局は把握していると 思うのですが、実情はどうなっているのでしょうか。 > 駅をオーバーランした運転手さんが当院へ受診されますが、1時間あたり20回以 > 下の軽度の睡眠時無呼吸症候群でも、睡眠時間が短くなると、ヒューマンエラーが > 起きるようです。 > > 今回の尼崎の事故の場合、運転手さんが睡眠時無呼吸であったか、どうかは情報は > 得ておりませんが、前の駅でのオーバーラン、その後 発車後、車掌からの連絡に > こたえなかった、これまで、うつろな眼を指摘されたことがある、などより、どの > ような睡眠時無呼吸症候群に対する取り組みが職場でなされていたか、公表される > べきであると考えます。 睡眠障害がご専門の先生が私に直接メールを下さいまして、その重要性を指摘 されました。たしか、JR西日本は、山陽新幹線の居眠り運転があり、津田先生が ご指摘された睡眠時無呼吸症候群との関連が指摘されましたので、対策は 十分に行っていると思うのですが、どうなっているのでしょう。 > > JR西日本は、衆議院国土交通委員会で「安全諮問委員会」を設置する > > 旨を表明しましたが、産業保健(産業衛生、労働衛生)の専門家が > > 選任されることを念願しております。 > > > > この話題をタブーにしてしまうと、 > > 将来に渡って禍根を残すのではないかと懸念します。 > 同感です。 メンタルヘルスだけの問題ではないのではないか、少なくとも睡眠障害など 機能的な疾患の可能性も考え合わせると、産業保健の専門家が安全諮問委員会の メンバーに選任されるべきであると思います。 このように、さまざまな方々が意見を表明されたので、この話題がタブーになる ことだけは避けられたと思います。 守屋先生、(イ)先生、清水先生、津田先生に改めて感謝の意を捧げたいと思います。 洙田靖夫


Date: Fri, 20 May 2005 10:37:34 +0900 From: 金 一成 Subject: [OH-ML:3532] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 トヨタ金です。 睡眠に関連して、、、 (津田先生) >食事を自分たちで作ったりで、就寝するのは早くて1時頃、実質 睡眠時間は4時  間に満たないのが現状です。これが、二晩続く(二徹)とのことです。  駅をオーバーランした運転手さんが当院へ受診されますが、1時間あたり20回以  下の軽度の睡眠時無呼吸症候群でも、睡眠時間が短くなると、ヒューマンエラーが起  きるようです。  これまで、うつろな眼を指摘されたことがある、などより、どのような睡眠時無呼  吸症候群に対する取り組みが職場でなされていたか、公表されるべきであると考えま  す。 (清水先生) >他社によるチェックや自己申告では、限界があると思います。 先だっての産衛学会、職域の呼吸障害研究会でJR東の先生が発表されていました。 現状では、まずは問診による絞込みが現実的な施策かな、逆にいうとSASだけでも拾 い上げるのは至難の業だな、と感じました。 ましてやSAS以外の睡眠覚醒障害となると、かなり支障が出ない限り予測発見不可能 なので、他のデバイスでリスクを軽減する方法を考えざるを得ないと思いました。 日中の過度の眠気に対しても、MSLT(入眠潜時テスト)などの客観的測定をするイン フラがあまりにも整備されていないので、作業制限といってもなかなか難しいという 気がします。 津田先生ご指摘のように、シフトスケジュールに関して何らかの規制強化の方向を積 極的に検討してよいと思います。 それは運送業社のスケジュール管理、当直医師の医療事故の問題にもいえることと思 います。 (勿論、当社も交替制勤務者や運送担当のものいます。) でもそもそも労働者の側も、過重労働や睡眠衛生に関してもっと機運が盛り上って欲 しいと思います。 (スローフード運動みたいにじゃ、例えが悪いかな、、、) ***************************** 金一成 トヨタ自動車(株)高岡工場 産業医 トヨタ記念病院メディカルサポート部 産業医G *****************************


Date: Fri, 20 May 2005 11:37:09 +0900 From: 影山隆之 Subject: [OH-ML:3533] 産業保健と睡眠のこと 影山@大分です。 金先生のご意見にまったく同感です。 私にとって人生は、眠い時間と、ものすごく眠い時間しかないので(笑) 睡眠の問題は他人事ではありません。 (あとは眠っている時間) 幸い私が居眠りしても事故にはならないので、笑い事になってしまいますが、 現実には笑っていられない状況が多々あるのですね。 現実の職場では、SASが大きな問題であることは疑いありませんが、 それ以上に「忙しくて休む/眠る暇が足りない」人々のことのほうが心配です。 国際睡眠障害分類では睡眠不足症候群ということになるのでしょうが。 ですから、SASのことだけにとらわれすぎず、眠気の問題全体に焦点を当てること、 裏を返せば「栄養と運動のことだけでなく休養のことにも焦点を当てること」が 重要だと思います・ >津田先生ご指摘のように、シフトスケジュールに関して何らかの規制強化の方向を積 >極的に検討してよいと思います。 >それは運送業社のスケジュール管理、当直医師の医療事故の問題にもいえることと思 >います。 病院の看護師もそうです。 三交代で日勤の8時間後に深夜勤というのは、病院では常識ですが 冷静に考えると「常識化させてはいけない」のではないかと思います。 自分が患者の立場だったら、 眠くてぼーっとしている医者や看護師にみてもらいたくはないですから、 医療ユーザの側から「医療従事者に休息を!」という運動を盛り上げることも大切で しょう。 影山 隆之 大分県立看護科学大学(精神看護学)


Date: Sat, 21 May 2005 11:07:56 +0900 From: 越智元郎 Subject: [OH-ML:3534] 尼崎JR事故と産業医  洙田先生、産業保健MLの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎 です(中略)。  さて、尼崎JR事故と産業医の話題を関心をもって読ませていただいて います。私が所属しております救急医療メーリングリスト (http://eml.amazing.co.jp/)でもこの件で活発な意見交換が行われて います。そして「尼崎JR事故に建設的な批判・提案を」というタイトルで、 JRへの提言とこの件でのメーリングリスト内の意見交換を公開ウェブとし て紹介しています。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 【尼崎JR事故に建設的な批判・提案を】         救急医療メーリングリストからの提言(2005/05/17)         http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/p5-JR.htm ■科学的な原因究明・立証と、今後に繋がる防止策の立案。 ■JR客室乗務員への一次救命処置(BLS)+除細動教育。  主要駅や新幹線に自動体外式除細動器(AED)を備えること。 ■鉄道(特に新幹線)と関連施設のテロ対策も急務。     文責:金子高太郎(県立広島病院)、越智元郎(市立八幡浜病院) ―――――――――――――――――――――――――――――――――


Date: Tue, 24 May 2005 12:56:44 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3540] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 (ニ)先生、(イ)先生、越智先生、みなさん、洙田です。 尼崎JR事故の産業保健関連の話題が睡眠に集約されてきたようです。 私としては、メンタルヘルスの話題がもっと活発に出るのではないかと 期待していたのですが、どうでしょう。 さて、越智先生の作られたサイトを拝見しておりましたところ、興味深い 情報に行き当たりました。 救急医療メーリングリストからの提言(2005/05/17) http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/p5-JR.htm 「正常化バイアスに陥らないためのリスク・コミュニケーション」 広瀬宏忠先生(日本臨床救急医学会の特別講演) 「正常化バイアス」とは『言いえて妙』であると感心しました。私は 不勉強だったので、この用語を知りませんでしたが、どうやら、 越智先生流の解釈では、 「うまくゆく筈」という一種の願望により、危険性に対して目を ふさいでしまうということ だそうで、首肯できるものがあります。 「安全神話」などが、この典型例ですね。もっとも、担当者や指導者が がんばって、「安全神話を形作るほどの安全性を達成する」のは、 問題はないでしょう。 しかし、その後継者が「安全神話」に寄りかかって、必要な努力を 惜しむようになると、「正常化バイアス」の発生ということになるので しょうね。 創業者が苦労して作った会社を、2代目が潰すというような話に なぞらえることもできるでしょうね。 過度のマニュアル依存も、これに類する行為ではないでしょうか。 ただし、マニュアルを作成するのは、相当に難しいので、「単に マニュアルを使う」のではなく、「マニュアルづくりに関わる」という 手法が取れないかなと思います。 マニュアルというものは、下品な譬えですが、カンニングペーパーの ようなもので、一生懸命カンニングペーパーを作れば、それ自体が 勉強になるので、本番の試験では使う必要もなくなる。 (中略) ・・・・・、「正常化バイアス」が発生するような職場環境は お客にとっても困るわけでして、ついそのような行動や思考の癖、 というものも、メンタルヘルスとしては、考えられないでしょうか。 すなわち、「不安全行動を惹起するような行動や思考に対して メンタルヘルスは有効だろうか」という問いかけです。 みなさまのご意見をお聞かせください。 洙田靖夫


Date: Tue, 24 May 2005 14:32:32 +0900 From: 清水隆司 Subject: [OH-ML:3541] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 すなわち、「不安全行動を惹起するような行動や思考に対して メンタルヘルスは有効だろうか」という問いかけです。  メンタルヘルス的アプローチは、有効だと、私は思います。  人間工学の分野では、事故頻発者は、メンタルヘルス不全であることが 多く、カウンセリングや精神科的治療が必要なケースが含まれていることは 有名な事実です。  参考文献は知りませんが。。。。。  今のメンタルヘルスの分野では、睡眠障害とメンタルヘルスの関係が トレンドになりつつあるように思われます。   睡眠は、ライフスタイルの中で、今や一番軽視されているものだと、 どこかの学会で聞いた覚えがあります。  「産業疲労」「睡眠」「メンタルヘルス」、これらは、全て関係していると 私は思っています。 清水隆司 医学博士、日本産業衛生学会指導医


Date: Tue, 24 May 2005 16:08:37 +0900 From: 影山隆之 Subject: [OH-ML:3542] メンタルヘルスと睡眠問題 洙田先生と清水先生のコメントを読んでの感想です。 >すなわち、「不安全行動を惹起するような行動や思考に対して >メンタルヘルスは有効だろうか」という問いかけです。 > > メンタルヘルス的アプローチは、有効だと、私は思います。 > > 人間工学の分野では、事故頻発者は、メンタルヘルス不全であることが >多く、カウンセリングや精神科的治療が必要なケースが含まれていることは >有名な事実です。 アクシデントをアルコール問題、欠勤(absenteesm)と合わせて「3つのA」と呼ぶ 言い方がありますね。その背景にはメンタルな問題があることが多いと。 事故・エラーが頻発する理由は詳しく言えばさまざまで、睡眠不足以外にも、 心配事にとらわれて不注意になるとか、幻覚に支配されて急降下するとか、 いろいろ考えられるとは思います。 >  睡眠は、ライフスタイルの中で、今や一番軽視されているものだと、 >どこかの学会で聞いた覚えがあります。 睡眠学会などでは確かにそのように強調しています。 ただ、睡眠問題というのは、SASのようにそれ自体が原疾患という場合もあれば、 何か他の疾患の結果として不眠症状が出現する場合もあり、その一部に メンタルヘルスの問題もあるわけです。 ですから、睡眠問題とメンタルヘルス問題は大いに重なり合う問題ですが イコール視もできないのではないか、というのが私の意見です。 尼崎の事例の場合、机上の推論としては、過重労働の結果として睡眠時間が 不足していたという可能性もありますが、別の可能性として、 業務上の失策を叱責されたことなどから抑うつ状態をきたし、その結果として 熟睡できずぼんやりしていることが多かった、あるいは「また叱責されたらどうしよう」 という不安にとらわれて仕事が手につかない状態だった、という可能性もあるでしょう。 事故の詳細がわからない現在、報道されている状況証拠から推測するならば 後者の可能性は小さくないように思いますが、いかがでしょうか? 影山隆之 大分県立看護科学大学(精神看護学)


Date: Tue, 24 May 2005 16:21:48 +0900 From: 津田徹 Subject: [OH-ML:3543] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 To: occ_h-ml@info.uoeh-u.ac.jp (Occupational Health ML) メンタルヘルス話題が移らんとしているときに睡眠の話で失礼いたします。 (イ先生) *引用部分要約(越智元郎):  職域の呼吸障害についてはまずは問診による絞込みが現実的な施策か? JR東海の新島先生が熱心に取り組んでおられます。 JR以外の事業所でも先の新幹線事件のあと、国土交通省の働きかけもあり、以前より ずいぶん取り組みが真剣となっています。しかし、問診だけでは、潜在する睡眠呼吸 障害を逃すことが多いようです。 筑波大学の谷川先生がやっているように、パルスオキシメーター・フローセンサーを 用いた客観的スクリーニングは全職業ドライバーに必要かと考えています。 全日本トラック協会でも、この方法でスクリーニングをめざしています。同協会では 2万人分を補助することを決定しました。 (イ先生) *引用部分要約:  ましてやSAS以外の睡眠覚醒障害となると、かなり支障が出ない限り予測発見は難  しい。 国土交通省(職業ドライバーにおける睡眠時無呼吸症候群と事故の視点)だけではな く、睡眠全体の問題を労働衛生の視点に立った大きな問題として取り上げる時期に来 ていると思います。 先ほどアンケート調査が行われた労働衛生の重点研究項目に入ってないのも問題です ね。 昔から睡眠衛生という言葉があります。産業衛生学会でも昔から熱心に睡眠の問題に 取り組んでいらっしゃる先生もおられるのですが。。 MSLTについてはルーチンで行うのは、無理な話ですので、将来的にも、問題事例の職 場復帰などに限って行われるかもしれません。 産業医大 森本教授、宮崎大学 加藤教授、筑波大学 谷川助教授、新島先生(全員 の名前を挙げきれませんが)と昨年の産業衛生学会で職域における睡眠呼吸障害研究 会を立ち上げました。 睡眠時無呼吸症候群に対する職域での問題と対策を核にして発足しましたが、今年 は、産業医学総合研究所の高橋先生にも呼びかけて、眠気をどうとらえるかについて お話していただきました。(今年は講演会が重なって、私は参加できませんでした が) 医療法人社団 恵友会 津田内科病院 津田 徹


Date: Wed, 25 May 2005 06:29:32 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3544] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 津田先生、みなさん、洙田です。 > メンタルヘルス話題が移らんとしているときに睡眠の話で失礼いたします。 メンタルヘルスと睡眠の話題は同時並行で行えば良いと思いますので、 どうかお気遣いなさらないで下さい。 > JR東海の新島先生が熱心に取り組んでおられます。 > JR以外の事業所でも先の新幹線事件のあと、国土交通省の働きかけもあり、以前より > ずいぶん取り組みが真剣となっています。しかし、問診だけでは、潜在する睡眠呼吸 > 障害を逃すことが多いようです。 > 筑波大学の谷川先生がやっているように、パルスオキシメーター・フローセンサーを > 用いた客観的スクリーニングは全職業ドライバーに必要かと考えています。 > 全日本トラック協会でも、この方法でスクリーニングをめざしています。同協会では > 2万人分を補助することを決定しました。 睡眠障害への取り組みが相当に具体化している、とくに、谷川先生におかれては、 客観的なスクリーニングに取り組まれているわけですね。 つまり、解決への道筋がすでにあるということ(言い過ぎたらごめんなさい)です ね。 > 国土交通省(職業ドライバーにおける睡眠時無呼吸症候群と事故の視点)だけではな > く、睡眠全体の問題を労働衛生の視点に立った大きな問題として取り上げる時期に来 > ていると思います。 > 先ほどアンケート調査が行われた労働衛生の重点研究項目に入ってないのも問題です > ね。 > 昔から睡眠衛生という言葉があります。産業衛生学会でも昔から熱心に睡眠の問題に > 取り組んでいらっしゃる先生もおられるのですが。 ごめんなさい。睡眠衛生という言葉を知りませんでした。ただ、「日本においては、 睡眠の研究がほとんどなされていない」という趣旨の文章を、20年程前に、読んだ ことが鮮明に記憶に残っており、その本をいま探しているところです。 (阪神大震災で千冊近くの本を失いましたので、本探しが難航しております。どこかの 教授が一般向けに書いた単行本でした) > 産業医大 森本教授、宮崎大学 加藤教授、筑波大学 谷川助教授、新島先生(全員 > の名前を挙げきれませんが)と昨年の産業衛生学会で職域における睡眠呼吸障害研究 > 会を立ち上げました。 > 睡眠時無呼吸症候群に対する職域での問題と対策を核にして発足しましたが、今年 > は、産業医学総合研究所の高橋先生にも呼びかけて、眠気をどうとらえるかについて > お話していただきました。(今年は講演会が重なって、私は参加できませんでしたが) すばらしいですね。組織まであるんですね。 津田先生、この話題をどんどんと深めていってくださいませ。 洙田靖夫


Date: Wed, 25 May 2005 06:38:35 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3545] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方 清水先生、みなさん、洙田です。 > すなわち、「不安全行動を惹起するような行動や思考に対して > メンタルヘルスは有効だろうか」という問いかけです。 > >  メンタルヘルス的アプローチは、有効だと、私は思います。 やはり、そう思われますか。 >  人間工学の分野では、事故頻発者は、メンタルヘルス不全であることが > 多く、カウンセリングや精神科的治療が必要なケースが含まれていることは > 有名な事実です。 >  参考文献は知りませんが。。。。。 なるほど、参考文献をご存知の方は、ご教示ください。 >  今のメンタルヘルスの分野では、睡眠障害とメンタルヘルスの関係が > トレンドになりつつあるように思われます。  > >  睡眠は、ライフスタイルの中で、今や一番軽視されているものだと、 > どこかの学会で聞いた覚えがあります。 > >  「産業疲労」「睡眠」「メンタルヘルス」、これらは、全て関係していると > 私は思っています。 「産業疲労」「睡眠」「メンタルヘルス」、この三者がどう関係しているのか、 非常に興味深いですね。 関係する学会で、シンポジウムでもしてくれたら、いいですね。 洙田靖夫


Date: Wed, 25 May 2005 06:52:56 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3546] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方(メンタルヘルスと睡眠問題) (ニ)先生、みなさん、洙田です。 *引用部分要約(越智元郎):  事故・エラーが頻発する理由はさまざまで、睡眠不足以外にも心配事や幻覚など  もある。 今回の事故を起こした運転士もその可能性があったでしょうね。 *引用部分要約:  睡眠問題とメンタルヘルス問題は重なり合うが同一ではない。 整理がついてきましたね。 *引用部分要約:  尼崎事故の原因として、業務上の失策を叱責されたことなどから抑うつ状態をき  たして・・ということもありうる。 この運転士は、宝塚駅に到着したとき、非常ブレーキを2回も作動させています。 そして、宝塚駅で折返し運転になるので、車両の端から端へ運転士と車掌が 移動するわけで、当然、途中ですれ違うわけですが、新聞報道によりますと、 すれ違った際、車掌はなぜ非常ブレーキをかけたのかと運転士に問い掛けたところ、 全く返事がなかったということです。 この時点で明らかな異常があったとみなすべきではなかったか、と思います。 後知恵では、何とでもいえますが、再発は防ぐべきなので、何か策を講じられない ものか、とも思います。 洙田靖夫


Date: Thu, 26 May 2005 14:38:37 +0900 From: 海道昌宣 Subject: [OH-ML:3549] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方の話題をウェブ 収載させていただきました 皆さんの意見を全部読んだわけではありませんし、こんなことをいっては失礼かも しれませんが、他人事の外野の野次を聞いているような感じがしてしまします。自 分がJR西の産業医だったらどうするかといった視点で議論すべきではないでしょう か?  まず現在やらなくてはならないことは以下のことです。 1)JR西の社員から自殺者を出さないように最大の努力をする。社長や管理職は現 在非難の矛先になって、極めて孤独な状態にいますからメンタルサポートがもっと も必要な時期にいます。そして生き残った車掌は、もっとも危ない状況にいるとい えるでしょう。JR西の産業保健職はもっとも注意すべき点です。 2)会社全体が危機状態にありますので、我々が知り伝えられる情報は、一般的な 状況より頻繁に、そしてやや過剰なぐらい流し、その情報に関係のある人の不安を できるだけさげる。マスコミを通じて知るより早く、社内の情報網で流すことが肝 心です(これは会社全体として取り組むことですが)。情報の流れが滞れば、社内 の状況はどんどん悪くなっていきます。 3)事故で負傷をしている方々のところに、管理職と一緒に行き、病状などについ てJR西の管理職が医学的な状況をより理解できるようにサポートする。 4)亡くなった家族の方にメンタルサポートを提案する「外部業者などとの契約な どの手配をサポート」。多くの遺族は拒否するでしょうが、それでもできるだけ誠 意を尽くすことが大切です。こういったことは医療職のほうがたの職員よりよくわ かるはずです。 5)JR職員への救急対応の訓練プログラムの充実。事故だけでなく、今後乗客に問 題がお起こったときにすべてのJR西の職員が適切、そしてより高度な対応できるよ うに訓練する。大きな駅ではAED設置とその使用訓練をするべきでしょう。こうい った取り組みを始めれば社会的な印象にもプラスです。今後は、事故の時だけに限 らず人命救助に力を入れるということですから、、、。 6)医学、人間工学的にどのようにしていくのが、人間の判断、認知などの面でよ り安全に業務ができるかについてアドバイスしていく。業務システムへの人間工学、 疲労などの医学知識のアドバイス。 7)最後に医学適正に関するプログラムをより充実する。ただ、それが不当な差別 にならないようにすることが肝心です。しかし、これは現在の状況がかなり落ち着 いてからの話になるでしょう。プランを作り、そのようなものに取り組んでいると いった程度で、社会的(マスコミ)からはある程度の納得を得られるのではないで しょうか。 当社でしたら、少なくとも1〜5までは一ヶ月ぐらいでできなければ私の存在価値 はなくなります。 海道 昌宣 Masanobu Kaido, MD P&G北東アジア統括産業医 P&G NEA Medical Leader


Date: Thu, 26 May 2005 17:16:47 +0900 (JST) From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3550] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方の話題をウェブ 収載させていただきました 海道先生、みなさん、洙田です。 > 皆さんの意見を全部読んだわけではありませんし、こんなことをいっては失礼かも > しれませんが、他人事の外野の野次を聞いているような感じがしてしまします。自 > 分がJR西の産業医だったらどうするかといった視点で議論すべきではないでしょう > か?  海道先生、貴重なご意見をありがとうございます。全然、失礼であるとは思いません。 それどころか、切れ味の良い視点であるので、これからもどんどんとご指摘ください。 > まず現在やらなくてはならないことは以下のことです。 > > 1)JR西の社員から自殺者を出さないように最大の努力をする。社長や管理職は現 > 在非難の矛先になって、極めて孤独な状態にいますからメンタルサポートがもっと > も必要な時期にいます。そして生き残った車掌は、もっとも危ない状況にいるとい > えるでしょう。JR西の産業保健職はもっとも注意すべき点です。 残念ながら、日本では特定の誰かが追い詰められて自殺する。それによって、禊(み そぎ)が終わり、問題は解決していないのだが、幕引きとなる。こういうケースが 多いですね。海道先生のご指摘のように、自殺者を出さないよう産業保健関係者が 努力しなければなりませんね。 > 2)会社全体が危機状態にありますので、我々が知り伝えられる情報は、一般的な > 状況より頻繁に、そしてやや過剰なぐらい流し、その情報に関係のある人の不安を > できるだけさげる。マスコミを通じて知るより早く、社内の情報網で流すことが肝 > 心です(これは会社全体として取り組むことですが)。情報の流れが滞れば、社内 > の状況はどんどん悪くなっていきます。 我々というのは、もちろん産業保健関係者のことでしょうが、社内ルートで知るのよ り先にマスコミ等の報道で知ってしまうと社員のモラルが非常に低下しますね。 阪神大震災の時、村山首相(当時)が首相官邸でウロウロし、マスコミから情報を得て いたことを思い出させます。こんな状況であれば、誰が首相でも何もできなかったで しょうね。もっとも、いざという時の体制を整備するのも首相の責任ですから、 この理由をもって免責はできませんが。 > 3)事故で負傷をしている方々のところに、管理職と一緒に行き、病状などについ > てJR西の管理職が医学的な状況をより理解できるようにサポートする。 地道で大変優れたアプローチであると思います。これがうまくいけば、産業保健に 関心を示してくれる管理職が増えるでしょう。 > 4)亡くなった家族の方にメンタルサポートを提案する「外部業者などとの契約な > どの手配をサポート」。多くの遺族は拒否するでしょうが、それでもできるだけ誠 > 意を尽くすことが大切です。こういったことは医療職のほうがたの職員よりよくわ > かるはずです。 これも3)と同様に社内的社外的に好ましい影響をもたらすでしょう。 > 5)JR職員への救急対応の訓練プログラムの充実。事故だけでなく、今後乗客に問 > 題がお起こったときにすべてのJR西の職員が適切、そしてより高度な対応できるよ > うに訓練する。大きな駅ではAED設置とその使用訓練をするべきでしょう。こうい > った取り組みを始めれば社会的な印象にもプラスです。今後は、事故の時だけに限 > らず人命救助に力を入れるということですから、、、。 産業保健が労働者の衛生確保という枠組みを超えて、適切な社会貢献をなすことに なると思います。 > 6)医学、人間工学的にどのようにしていくのが、人間の判断、認知などの面でよ > り安全に業務ができるかについてアドバイスしていく。業務システムへの人間工学 > 、疲労などの医学知識のアドバイス。 このあたりを産業保健MLで議論していたわけですね。もう少し、広い視点で 考えてもよかったと思います。 > 7)最後に医学適正に関するプログラムをより充実する。ただ、それが不当な差別 > にならないようにすることが肝心です。しかし、これは現在の状況がかなり落ち着 > いてからの話になるでしょう。プランを作り、そのようなものに取り組んでいると > いった程度で、社会的(マスコミ)からはある程度の納得を得られるのではないで > しょうか。 医学的に適正な労働者の配置ということでしょうが、JR単独で可能な話でもない でしょう。関係する大学や研究所との協働が必要になると思います。 海道先生、これからもよろしくお願いします。


Date: Thu, 26 May 2005 19:26:17 +0900 From: 影山隆之 Subject: [OH-ML:3551] 事故後のメンタル対応について 海道先生、幅広いスコープのご呈示ありがとうございました。影山です。 私には問題の全体を論じる力がありませんが、 1点だけ、少しの情報を提供させてください。 > > 4)亡くなった家族の方にメンタルサポートを提案する「外部業者などとの契約な > > どの手配をサポート」。多くの遺族は拒否するでしょうが、それでもできるだけ誠 > > 意を尽くすことが大切です。こういったことは医療職のほうがたの職員よりよくわ > > かるはずです。 ご指摘には賛同します。 ただ、このような契約に応じてくれる「外部業者」は存在するのでしょうか? 最近はそういう保険契約もあるのかもしれませんが、勉強不足で存じません。 どなたでも、もしご存じでしたらお教え下さい。 事前契約していなくても、「どういう時に、外部のどこに支援を要請したらよいのか」を 企業側が知っておくことは、有事の際に役に立つでしょう。 業者契約ではありませんが、類似の対策例ならあります。消防官に重大なストレスが 及ぶような火災等があった時に、(被災者ではなく)消防官の心のケアのために 総務省が専門家を派遣するという制度があります。稀にしか発生しない問題なのと、 全国で発生の可能性があることから、総務省としては、日頃から予防的な活動に 協力依頼をしている専門家や、そのような専門家が多く加入している学会の力を 活用しています。 そうした学会の受け皿はいくつかありますが、一つの例が日本精神衛生学会です。 総務省経由の要請に応じて学会員が急遽組織され、消防・救急隊のサポートに 派遣されています。今回の事故に関しては、救急隊員向けの支援以外に、 フリーダイヤルの「心の相談緊急電話」も開設しました。 (なおこの学会は、他にも一般的な産業メンタルヘルスの問題はカバーしており、 産業保健分野からの選出理事もいます。この際ですから宣伝します。) http://www.seishineisei.gr.jp/ 実はこの学会では、阪神淡路大震災の経験を出発点にして、 そしてカリフォルニア州などのCRT(Crisis Response Team)の例を参考にして、 地震のような天災も含めて備えておくMCRT(Mental Crisis Response Team)活動を、 日頃から組織しつつあったところでした。 登録した会員が、日頃から有事の際の対応を学び、 必要に応じて体制を組織するというものです。 災害時のメンタルケアと言えば、いっそう専門的に取り組んでいるのが 日本トラウマティックストレス学会です。ここのHPには、 各地のCRT活動についてなど、有益な情報が多くあります。 http://www.jstss.org/index.html ここで暫定的な意見です。 今回の事故は「一私企業の責任において発生したものなので、事後策も 当該企業の責任において行うべきだ」という考えはあるでしょう。 しかしどのみち、人為責任によらない天災を想定して 対策を考えておくことも必要です。 そこで、上のような学会や臨床心理士会などの活動に対して 有事の際に責任ある企業や自治体が出動要請し、その代わり 有事の実費を負担するだけでなく、日頃からの組織的な準備に対して拠金する、 という方式が実際的なのではないでしょうか。 なお、「学校で児童生徒の自殺が発生した時に教師たちはどうすべきか」 ということを論じた文献があります。たとえば・・・    橋本治:いじめと自殺小野予防教育.明治図書,1998.    高橋祥友:青少年のための自殺予防マニュアル.金剛出版,1999. 海道先生が今回ご呈示くださった諸問題に通じるところも多いように 思いましたので、付け加えます。 日本精神衛生学会 常任理事 影山隆之


Date: Fri, 27 May 2005 08:24:34 +0900 From: 清水隆司 Subject: [OH-ML:3552] Re: 事故後のメンタル対応について 事故後のメンタル対応ですが、 国立精神神経センタ− 精神保健研究所の 金 吉晴先生が、その分野ではよく研究されているので、 ご相談するのも、ひとつの方法と思います。 > ただ、このような契約に応じてくれる「外部業者」は存在するのでしょうか? > 最近はそういう保険契約もあるのかもしれませんが、勉強不足で存じません。 > どなたでも、もしご存じでしたらお教え下さい。  それは、EAPになります。いろいろな会社がありますので、 個別にお問い合わせしたら、よいと思います。  事故後のメンタル対応の基本的な方針は、 まずは、「安全・安心・安眠」を確保する 次に、現場や関係者に一人ずつ会って、話を聞き、気になることが あれば、いつでも相談にのることを述べて、相談先を広報する 事故後、1ヶ月の間は、さまざまな心因反応が出ますので、 症状に応じた治療・カウンセリングが必要となります。 1ヶ月を過ぎると、症状が安定してくるので、診断がついて 本格的な専門医療をスタ−トさせる必要があります。  ただ、困るのは、容赦のないマスコミの取材攻勢ですね。 これは、かえって、ご遺族や被災者のメンタル不全を余計に悪化させる危険性が 大きいので、新聞のトップ記事として事故を扱わない、被災者に対する取材は 自粛し、被災者代表のみだけに取材を許可する、といった対応が必要でしょう。  繰り返し、事故のことを新聞やテレビが取り上げる度に、被災者やご遺族の メンタル不全を悪化させるので、JR西としては、マスコミに、きちんと被災者や ご遺族に対する取材については自粛してもらうよう、依頼した方がよいと思います。  なお、PTSDは、事故発生から1−6ヶ月間経過しないと判断できないので 安易に、PTSDというのは控えた方が良いと思います。  Psychological debriefing という手法には、賛否両論がありますので、 お気をつけ願いたいものです。  私としては、1年間だけでしたが、鉄道会社の産業医をしていたので、 JR西の産業保健スタッフのご心痛をお察しするばかりです。  だいたい、このような事故発生の時には、理想論ばかりが展開され、 社内事情に配慮した発言が少ない傾向が多いからですね。  私とすれば、JR西の産業保健スタッフの方は、現状で、できるところから 始めるしかないと思います。それが理想からかなり外れていても仕方のないことです。  これをきっかけに、産業保健スタッフのメンタルヘルスが悪化しないよう 祈るばかりです。  参考までに、私がちょっと関わった「テロ等による勤労者のPTSD対策と、 海外における精神医療連携に関する研究」を添付します。 海外では、圧倒的に、「交通事故」による被災が多いので、少しは参考になると 思います。 http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do 清水隆司 医学博士、日本産業衛生学会指導医


Date: Fri, 27 May 2005 11:53:57 +0900 From: 海道昌宣 Subject: [OH-ML:3553] Re: 事故後のメンタル対応について ひとたび発言をしてしまいましたので、これについてももう少しコメントさせてい ただきます。 今回は「外部業者」と書きましたが、このような状況で内部のシステムを使う事に 遺族から信頼感が得られないだろうということでそのように書いております。 ただ、社内的なメンタル対応では当社では、地域のカウンセラーや専門家を巻き込 んだ社内のシステムができれいます。われわれがその費用を管理し、適切なところ に送っています。そこでは一例一例評価していますので、結果を出せない地域のカ ウンセラーや専門家は、二度と使いません。どのような手法を使うかは、実のとこ ろどうでもいいのです。従ってどのようなケース、例えばPTSD、セクシャルハラス メント、上司・部下関係の問題でどのカウンセラーや専門家が上手く対応できるか については大体把握しております(それこそが我々がもっとも把握しておかなけれ ばいけないことです)。会社(産業保健部門が管理)が金を出すわけですから、当 然結果について上司、本人、我々の面接など多方面でチェックし、問題があればカ ウンセラーや専門家に改善の要求を出します。そして、いい緊張感を持って外部機 関と内部機関が協力しております。 ただ、わたしが1−7まで番号を振って書いたように、どのような状況でも優先順 位があることを忘れてはなりません。その優先順位を考えないで自分が関心あると ころだけやっていれば、専門馬鹿のそしりは免れないでしょう。産業医学の現場の 最先端の場で研究のみをしている専門家や研究者が、全く役に立たないゆえんです。 もし、私が管理する事業所で優先順位をしっかり考える対応をしてないで何かや っているのであれば、私が行う各事業所の産業保健活動の監査では落第です。私が 考える優秀な産業医であるかどうかは、その優先順位がどれだけ上手く決められ、 実行できるかに大きなウエイトがかっているからですし、企業もそれを求めていま す。 海道 昌宣 Masanobu Kaido, MD P&G北東アジア統括産業 P&G NEA Medical Leader (グローバル産業保健業務監査委員、監査基準作成委員)


Date: Fri, 27 May 2005 14:23:05 +0900 (JST) From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3554] 尼崎JR事故と産業保健(被害管理と危機予防) 清水先生、海道先生、みなさん、洙田です。 メンタルの話題が続いておりますが、これに関連する話題を提供します。 一連の議論を拝見していて感じたのは、産業医の職務を捉える際に戦略的な 思考および行動が強く要求されているという点です。 海道先生が優先順位を強調されております。産業保健を全体として把握し、 全体の中で何が優先されるかという視点を常日頃から持たない限り、優先 順位は分からないでしょう。 すなわち、産業医は全体を捉えられる能力が求められると共に、一部分の 最適化だけではダメで、「全体をいかに最適化するか」という能力が求め られているのだろうと思います。 この背景があってはじめて、メンタルヘルスが活用されるのではないかと 感じます。 事故の被害者のメンタルヘルスは、通常の産業医の職務を逸脱してますね。 でも、私は、それが悪いことであるとは思えないのです。 表題に被害管理と書いてありますが、ご存知の方々には釈迦に説法ですが、 ある緊急事態が起こったとき、いかにして被害を極小に抑えるかが被害管理 です。英語では、damage controlになります。英和辞典では、被害対策と 訳していますが、ピンとこないので、私は被害管理と訳しております。 私は、被害管理が広義の危機管理に含まれると考えておりますが、日本語 では混乱があるようで、被害管理と危機管理は別物と考える説もあります。 「危機管理=危機予防」と考える人たちもいるからです。 そこで、混乱を避けるために、危機予防という用語を使用しますが、尼崎 JR事故が起こったとき、「JR西日本の産業医としては、被害管理と 危機予防のどちらをまずは求められているか」と考えれば、被害管理に 決まっていますね。危機予防の重要性は疑いないところですが、社外の 専門家に頼んでも、とりあえず最初の数ヶ月は問題ないでしょうね。 それよりも、社員の自殺を防ぐとか、被害者のメンタルヘルスの支援を するとかの方が重要ですね。産業医の職務を少々逸脱しても、怒る人間は いないでしょう。危機的な状況下では、柔軟な思考と行動が求められます から、産業医自身の能力の範囲で協力すれば、事態は良い方向に向かうで しょう。 そのためにも、頭の整理を常に行い、自分の置かれた立場で何が求められて いるのかを、明確にしておかないと、つい間違ってしまうのでしょうね。 清水先生は、「理想論」がお嫌いのようですね。私も嫌いです。ですが、 「被害管理と危機予防」という立論をすることによって、簡単に解ける こともあります。補助線は1つではありませんが、いくつかの補助線を 頭に思い浮かべることによって、「そう大した理想論でもないな」という 感触がわかる場合があります。 清水先生が積極的に議論に参加してくださるのは、とても良いことなので、 これからもよろしくお願いいたします。 また、海道先生におかれましては、忌憚のないご意見をよろしくお願い いたします。


Date: Fri, 27 May 2005 14:43:54 +0900 From: 海道昌宣 Subject: [OH-ML:3555] Re: 事故後のメンタル対応について EAP vendorとして今すぐ頭に思い浮かぶのは次のものです。 ・ コムサイク ComPsych: 米国系のEAP ・ グッドウィル(フォーサイト): グッドウィル系の子会社 ・ ティーペック: 電話相談が主でしょう わたしは、この様な場合、単なる公共サービス的な活動のものは「安かろう悪かろ う」の状況のものとあまり変わらないことが多いと思っております(偏見かもしれ ませんが、私の今までの産業保健業務に携わってきた経験から導かれたものです) 。形だけやっているといったことだけに意義があるのであれば(オリンピックの参 加することに意義があるように)、公共サービス的なものもいいかもしれません。 しかし、わたしは基本的に結果を出さない人、業者、学会は信じておりません。私 が言っているのは、そこに参加する個人の質に問題があるというのではなく、集団 としての質や方針、役割の明確な合意などの専門集団行動ができていないというこ とです。 また、当社では従業員向けについては社内システムでやっています。特に難しい問 題に関しては、いまだ外部でしっかりできている機関(EAPなど)を見たことがあ りません。 個人のレベルでは、高い資格の有る無しにかかわらず、満足いく結果を出す優秀な カウンセラーは沢山います。この分野は医師以上に玉石混合の著しいところでが、 残念ながら私の経験では特別な免許や資格、地位で、それを測ることはなかなかで きません。 逆に、免許や資格、地位だけで、質や成果まで保証されるのであれば、どのような ときにどの専門家(集団)を使うかといった経験的な積み重ね(我々の重大な能力 やネットワーク力)は必要なくなるでしょう。 海道 昌宣 Masanobu Kaido, MD P&G NEA Medical Leader


Date: Fri, 27 May 2005 15:49:40 +0900 From: From: 海道昌宣 Subject: [OH-ML:3557] Re: 尼崎JR事故と産業保健のあり方の話題をウェブ 収載させていただきました (海道) >> 7)最後に医学適正に関するプログラムをより充実する。ただ、それが不当な差別 >> にならないようにすることが肝心です。しかし、これは現在の状況がかなり落ち着 >> いてからの話になるでしょう。プランを作り、そのようなものに取り組んでいると >> いった程度で、社会的(マスコミ)からはある程度の納得を得られるのではないで >> しょうか。 (洙田) > 医学的に適正な労働者の配置ということでしょうが、JR単独で可能な話でもない > でしょう。関係する大学や研究所との協働が必要になると思います。 日本の企業でどうかはよく知りませんが、これ外資系企業では日常的で常識的な産 業保健業務です。これに関して最近私が分担出筆した本の文章の抜粋を以下に添付 します(もうすぐ発売になるそうですが、、、)。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 海外の先進国で産業保健にかかわる「健康診断」というと、有害作業や危険作業に つくことによって生じる可能性のあるさまざまな健康問題に対処するための健康診 断であり、つまり日本で言う「特殊健康診断」のことを意味する。日本ではあまり 特殊健康診断についてその役割別の分類が明確になっていないが、海外の先進国で は役割別に以下の4つの呼び名が使われている。これら4つは目的や対応も明確に 異なっているので、それについて説明する。 1)医学適性検査(Qualification): 特殊業務に携わるにあたり、その業務を行 うのに適切な健康状態かどうかのチェックをする健康診断である。適性がないと判 断されると仕事を失う可能性があり、産業保健職が最も神経を使う判断である。こ こで問題になる健康障害とは、その労働者がそのまま労働に従事した場合、自傷他 害の可能性あると考えられる場合である。特に他害、つまり第三者の健康や生命に かかわる可能性のある業務に就く場合は厳格に行う必要がある。具体的に他害の可 能性のある業務とは、意識を失ったり注意力が下がったりした場合に顧客や同僚の 生命にかかわる乗り物の運転手(飛行機のパイロットからフォークリフトの運転手 などまで)、大型機械のオペレーターなどである。自傷、つまり自分の命を危険に さらす可能性のある状況の例としては、高所作業、巻き込まれた場合に怪我をする 可能性のある機械の運転などである。米国では呼吸器マスクをつける労働者に対す る医学適性検査がある。またスウェーデンでは消防士の体力として6分間、200 Wの運動負荷に耐えられる体力を持っていることが必要であり、医学適性検査でそ の体力が出せなくなった場合は消防士として働くことができないということである。 2)クリアランス(Clearance): 医学適性検査と似ているが、長期的な意味での 適正を判断するのではなく、その時々での健康状態が業務を行う上で問題になるか どうかを判断するものである。例えば日本で現在おこなわれだした過重労働・長時 間労働に耐えられる健康状況であるかどうかといったチェック・医師の面接はこれ に当たるであろう。また感染症の予防として消費者に感染症を広げる可能性のある 食品取扱者や加工業者などが伝染性の感染症を持っていないことをチェックするも のから、職場で他の従業員に感染を広げないといった意味での結核検診や、最近問 題になったSARSの空港や職場などでの体温チェックも、このクリアランスである。 ここで重要なのは、そのとき異常があっても健康状況が回復すれば労働に就ける。 つまり労働や環境暴露による健康の一過性の低下やリスクの上昇を見つけるのが目 的である。従って長期的に適正があるがどうかを判断する医学適性検査とは異なっ ている。 3)スクリーニング(Screening): これは特殊環境での暴露で生じる可能性のあ る健康問題の早期発見、早期治療をすることを目的とした健康診断である。基本的 に上記の1)や2)では、ほとんどの例で、その健康状態の異常を本人自身が認識して いるのに対して、この3)では個人が認識できていない場合が多く、そのようなごく わずかの変化を精度の高い検査によって見出すことを目的として行われる場合が多 い。例としては騒音暴露による聴力低下の検査や化学物質暴露での代謝産物のスク リーニング検査などである。従って本人がその健康の異常を認識するぐらい健康の 悪化がある労働者が多数出てくるような状況では、スクリーニングがうまく機能し ていないことになる。そして異常がでた場合の対応としては、適切な作業環境管理 や作業管理に結び付けていくことが大事になる。 4)サーベイランス(Surveillance): これは3)のスクリーニングに似ているが、 労働環境を評価し作業環境管理に結びつけることを目的にしていることが3)と異な っている。つまり、個人対応を前提とする3)では当該作業者は100%スクリーニン グを受けるべきであるが、このサーベイランスでは抜き取り検査のように、100% の従業員を検査する必要はない。このサーベイランスは多くの場合、特定の環境暴 露や、暴露化学物質の健康影響が明確でないときに行われることが多い。 これら4つの健康診断は上記のように目的が異なっており、3)の場合の判断として 要注意者に対して「フォローアップする」というのがあっても、1)ではそのような 判断は基本的には適切ではなく、何らかの対策をするかしないかを明確にする必要 がある。このように4つの健診ではそれぞれ異なった対応が産業医や産業保健専門 職に求められているのであり、社内のグローバル基準として業務を行うだけでなく 、日本の法定の特殊健診でも、この概念をよく理解熟知し外国人管理職に説明して いくことが必要になってくるであろう。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 海道 昌宣 Masanobu Kaido, MD P&G NEA Medical Leader


Date: Wed, 1 Jun 2005 10:09:06 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3559] 尼崎 JR 事故と産業保健(安全性向上計画) 産業保健ML、・・ネットワークのみなさん、洙田です。 昨日、JR西日本より尼崎JR事故をうけて、安全性向上計画が 国に提出されるとともに、広くHPより公開されました。 それを読み、余りにも抜け落ちている点がありましたので、僭越 ながら、指摘したいと思います。 かねてより、係る事故の対策、すなわち危機管理には、公衆衛生 (予防医学)の一分野である産業保健の参画が欠かせないもので あると主張してきました。 具体的にいうと、運転士の心身の状態のコントロールが適切に なされてきたかが問われているわけです。運転士がメンタルに 異常をきたせば、事故に繋がりかねない、ということは子供にも 判る理屈ですね。また、睡眠障害など器質的な障害があっても 安全運行に支障をきたしますね。同じくJR西日本が運行する 山陽新幹線で居眠り運転をしたのは、数年前のことでしたね。 これら心身の障害を早期発見し、予防し、当該労働者の健康被害を 低減するのが産業保健の目的ですが、鉄道業の場合は、産業保健の 適切な実施が事故予防に直結することが多いと思います。 ゆえに、産業保健が強く関与することにより、事故原因の検証や 再発予防に資することが大であり、これがひいてはJR西日本を 始めとする鉄道業に対する信頼回復の道筋になると思います。 もちろん、海道先生の主張のように、被害拡大の予防を目的とした 被害管理も必要で、これに関しても産業保健の貢献は大であると 思います。 このように、非常に重要な地位を占める「産業保健」という文言が ありません。産業保健に関連する、労働衛生、公衆衛生、予防医学 等の文言もありません。それどころか、医学や医療という言葉すら ないのです。 また、予算を見て驚きました。安全関連投資の概要として、列挙 されているのは、ハードに関するものばかりです。日勤教育の 改善やマニュアルの整備を高らかに宣言しながら、これに関連する 予算を計上していないのは、明らかに間違いであると思います。 もちろん、産業保健に係る予算項目は列挙されておりません。 安全関連投資と別枠であると主張したいのかもしれませんが、 それならそれで、別枠として記載する必要があります。 結論として、JR西日本が示した「安全性向上計画」には、産業保健 やその他の点で、重大な不備があるということになります。 これを見過ごせば、国民が多大なる関心を寄せる尼崎JR事故という 重大事故に対する産業保健の発言力は無に等しくなるでしょう。 それは、取りも直さず、公衆衛生や医学の発言力の低下につながる 事態であると認識しております。 洙田靖夫


Date: Thu, 2 Jun 2005 11:24:44 +0900 From: 海道昌宣 Subject: [OH-ML:3560] Re: 尼崎 JR 事故と産業保健(安全性向上計画) 我々の取り組みが軽視され、存在感がほとんど無いことは大変残念です。 しかし、わたしはその状態に対して次のどれか、あるいはその両方が原因になって いるように理解しております。 ・今まで、ビジネスや社会に貢献してこなかったために、存在を忘れられている。 ・自己満足として勝手に貢献していると思っているだけで、相手(社会)が本当に  必要としているときに対応し貢献してこなかった。 ・自分達で我々の仕事を狭く限定し、この様な場合に会社や社会が頭に思い浮かぶ  ような仕事をしていこなかった。 法律をたてにして、会社や社会にやることを押し付けるだけで、本当に望まれるべ き仕事を模索し行動してこなかったために、会社や社会からは相談すれば厄介な状 態になるという印象をもたれているのかもしれません。相談したいなといったポジ ティブな印象をもたれていれば、次回もお願いしたい、あるいは「、、、のような 問題に対してどうしたらよいでしょうか、、、?」と必ず頼りにされるはずです。 そして、その時に「これは産業保健ではありません」と言ってしまえば、その話を 永遠に来なくなります。自分達で産業保健の枠を狭くし、可能性の芽を摘み取って いるのです。狭い範囲の事に限定し法律だけに仕事を限っていれば、その枠の外に は永遠に出れません。 この様な状況にならないために私たちがしなくてはならないことは、関係者が望む 仕事をしっかりすることです。 産業医大の堀江先生は働くという事の語源は「傍楽」つまり「傍を楽にすること」 といっています。またピーター・ドラッガーはBusinessの目的を「Create a Customer」とし、それには次の二つ、つまり「よりよい商品やサービスの開発 (Innovation)」とそれを売ること「市場に展開し、顧客を満足させること( Marketing)」が必要と言っています。我々は、法律に守られ、これを無視してき たのではないでしょうか? 「傍が嫌がること」をしていてはいけないのです。ただこの「傍」に関しては「社 会」医学をやる以上、狭い範囲で取られるのではなく、できるだけ広く取られる必 要があります。そうでないと特定の個人や会社のみために他より利益を搾取する事 もしてしまうからです。会社の管理職だけでなく、従業員、社会のすべての立場に 立ち、困難な状況の中でもすべての立場の人にとってのWin-winやSynagyは何なの か専門的な知識を駆使して考え、選択し、行動する。我々がしなくてはいけないの はそういったことだと思っています。それこそが社会医学の一つである産業医学で はないでしょうか? 現在の状況は、単にこの様なことをしてこなかった結果の現 われだと理解します。だからこそ、この瞬間、役に立つことを優先順位を考え決定 し、行動しなくてはいけないのです。何もやっていない人には次の仕事は来ません 。まして、万が一「傍が嫌がること」をしていたのであれば、意図的に排除される でしょう。 この状況を真摯に受け止め、我々が今現在何ができるのか、今からでも考え行動を 始めないといけないと思っています。わたしは、現状を憂い、非難をするのではな く、そういった議論をし行動するべきだと思うのですが、如何でしょうか?  この様な話題を出された洙田先生には、「産業保健職の危機意識を高める」といっ たことをしていただいたといった意味で敬意を表します。ただ、話題が上記の事か ら外れていくのを見て発言させていただいた次第です。私には、社会医学である産 業保健が会社や社会に貢献する大きな可能性を持っているにもかかわらず、それを 探求することをせず、自分たち自身を法律や制度に依存させ、考えること、行動す ることを停止し、朽ち果てていく状況に入っているように感じてなりません。わた しは本当に危機的な状況というのは、このような状況だと思っています。 海道 昌宣 Masanobu Kaido, MD P&G NEA Medical Leader


Date: Fri, 3 Jun 2005 10:25:08 +0900 From: 毛利哲夫 Subject: [OH-ML:3563] Re: 尼崎 JR事故と産業保健(安全性向上計画)  海道 先生 産業保健ばかりでなく、労働安全衛生全体について、わたくしもかねがね感 じていたことをご発言いただき、ありがとうございました。 重複もしますが、わたくし流にごく簡単にいえば、 ・古いしがらみへの埋没 ・「ひとりよがり」、「いいわけ」だけのための言動 ・社会とCustomerとのつながりの無視、忘却 ・停滞による先進諸国との格差の限りなき拡大 ・このような事態をまねいた根本構造への関心、認識の欠如 ということかと思うのですが、わかってくださる方は、多くはないようです。 海道先生のご発言で力を得たので、もうすこしがんばることとします。 毛利哲夫 毛利労働安全衛生コンサルタント事務所長


Date: Fri, 3 Jun 2005 10:57:08 +0900 From: 洙田靖夫 Subject: [OH-ML:3564] Re: 尼崎 JR 事故と産業保健(安全性向上計画) みなさん、洙田です。 海道先生、貴重なご意見をありがとうございました。 > この状況を真摯に受け止め、我々が今現在何ができるのか、 > 今からでも考え行動を始めないといけないと思っています。 > わたしは、現状を憂い、非難をするのではなく、そういった > 議論をし行動するべきだと思うのですが、如何でしょうか?  私の所属する学会でシンポジウムが開催できないかと 構想を練っている段階です。かねてより、学会理事長より、 関西でリスクマネージメントに関するシンポジウムを 開きなさいといわれておりましたので、現在、頭の中だけで 計画を練っておりますが、海道先生の言われるような 「前向きで建設的、そして行動につながる」議論を行える場に したいと思います。 まだまだ未熟者でございますので、どうかみなさま方の ご指導とご鞭撻をよろしくお願いいたします。 洙田靖夫


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