愛媛県のプレホスピタルケアの現状

第3回中国四国救友会アンケート調査(平成13年5月)より


はじめに

 平成13年5月、広島市で開催されました
第3回中国四国救友会では、中国四国地方のプレホスピタルケアの現状を知るために実施された詳細なアンケート調査の結果が報告されました。

 アンケート実施は平成13年4月で、4月1日の時点の各消防本部の状況をご回答いただきました。ご回答いただきました消防本部は117消防本部のうち106本部で、回答率は90.6%となっています。愛媛県からは16本部中15本部からご回答をいただきました。

1.特定行為に関して

 イ)指示を受けることのできる時間帯について
  a.週7日間24時間態勢で     b.平日の日勤帯のみ
  c.指示を受けることができない  d.その他:具体的に記載して下さい

愛媛県 24時間  平日日勤  その他  無回答 ――――――――――――――――――――――― 東予   3     1    1    1 中予   5     0    0    0 南予   5     0    0    0 ――――――――――――――――――――――― 合計  13     1    1    1

 第1に救急救命士の特定行為の体制をみると、中国四国地方の80%以上の消防本部ではすべての時間帯で医師の指示を受けることができる。愛媛県でもほぼ同様である。

 ロ)指示要請の電話は直ちに(コールから10秒程度まで)医師につながるか。
  a.おおむね直ちに医師につながる。
  b.直ちに医師につながらないことがある。(10回に3回程度以上)
  c.医師以外のものが電話を取り、医師に引き継がれることが多い。
   (b.との重複選択可)
  d.その他:具体的に記載して下さい

愛媛県 直ちに 直ちにつながらないことも まず医師以外が出る その他  無回答 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 東予   0      2        5        1    1 中予   1      1        4        0    0 南予   3      0        2        0    0 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 合計   4      3       11        1    1

 しかし、特定行為の指示を仰ぐ電話が他の職員を経由して医師につながる本部が30%を占めている。特に愛媛県では大半が他の職員を介している。



 ハ)電気的除細動を行うにあたり心電図伝送が必要か。
  a.心電図伝送を基本としている。
  b.心電図伝送は必要としていないが、指示医師から求められる。
  c.心電図伝送を必要としていないし、指示医師からも求められない。
  d.その他:具体的に記載して下さい
愛媛県  消防要  医師要  不要  その他  無回答   ―――――――――――――――――――――――――――― 東予     3    0    1    1    1    中予     3    0    2    0    0    南予     2    2    1    0    0    ―――――――――――――――――――――――――――― 合計     8    2    4    1    1   

 中国四国地方では50%以上の本部が、消防本部の自主的な縛りにより、または指示医師の求めにより、心電図伝送を実施していた。愛媛県ではさらにその傾向が顕著であった。



 ニ)現場到着時の心電図波形が心室細動であったとき、どこで電気的除細動を実施しているか。
  a.患者の枕元で実施する。(実施することを目指している)
  b.患者の枕元と救急車内では枕元で実施することの方が多い。
  c.救急車内で実施することの方が多い。
  d.その他:具体的に記載して下さい
愛媛県 枕元  ほぼ枕元  救急車 その他  無回答 ―――――――――――――――――――――――――――― 東予   1    0    3    0    2 中予   1    2    2    0    0 南予   1    2    2    0    0 ―――――――――――――――――――――――――――― 合計   3    4    7    0    2

 中国四国地方では40%以上の本部が、患者を救急車に収容した後に除細動を実施している。愛媛県ではさらにその傾向が顕著であった。


 ホ)初回の電気的除細動後に心室細動が継続している場合の対応手順について
  a.原則として、初回の除細動に関する医師の指示内容には、必要により3回連続して
   実施することとその場合のエネルギ−量が含まれており、必要により3回まで連続
   して実施している。
  b.指示医師によって異なるが、必要により3回連続して実施することの方が多い。
  c.指示医師によって異なるが、1回の除細動ごとに医師の指示を求めることの方が多い。
  d.その他:具体的に記載して下さい

愛媛県 連続 ほぼ連続 毎回指示 その他 無回答 ―――――――――――――――――――――――――――― 東予   2   2   0    1    1 中予   4   0   0    1    0 南予   2   2   1    0    0 ―――――――――――――――――――――――――――― 合計   8   4   1    2    1

 中国四国地方では70%以上の本部が1回の指示で3回まで連続して除細動を実施している。愛媛県でもほぼ同様である。

2.特定行為を行なった患者などでの事後検証に関して

 イ)医師の事後検証を受けるための記録シートについて
  a.作製済み         b.準備中
  c.準備はしていない   d.その他:具体的に記載して下さい

愛媛県     あり  準備中  なし  その他 無回答 ―――――――――――――――――――――――――――― 東予  0    2    3    0    1 中予  0    1    3    1    0 南予  0    1    4    0    0 ―――――――――――――――――――――――――――― 合計  0    4   10    1    1

 第2に特定行為を行なった患者などでの事後検証に関しては、まず医師の事後検証を受けるための記録シートはほとんどの消防本部が作製していない。愛媛県でも同様である。


 ロ)医師の事後検証の体制について
  a.重要な事例については原則として事後検証を受けている。      
  b.時に事後検証を受けることがある。
  c.事後検証は受けていない。
  d.その他:具体的に記載して下さい


愛媛県  実施  時に実施  なし  その他  無回答
――――――――――――――――――――――――――――
東予  0    3    2    0    1
中予  0    2    3    0    0
南予  1    1    3    0    0
――――――――――――――――――――――――――――
合計  1    6    8    0    1

 重要な事例については原則として医師の事後検証を受けていると答えた消防本部は半数に満たなかった。愛媛県でも同様であった。


 ハ)指示医師等との事例検討会について
  a.定期的に(月1回以上)事例検討会を実施している。   b.時に(年2回以上)事例検討会を行うことがある。   c.事例検討会は行っていない。   d.その他:具体的に記載して下さい


愛媛県   毎月  半年毎  なし  その他  無回答  
――――――――――――――――――――――――――――
東予  0    2    2    1    1
中予  0    1    3    1    0
南予  1    1    3    0    0
――――――――――――――――――――――――――――
合計  1    4    8    2    1

 半数の消防本部では指示医師などとの事例検討会は行っていない。愛媛県でも同様である。


 ニ)ウツタイン様式による集計について
   a.実施している。(平成   年から)
     b.実施を検討している。(平成     年頃から実施見込み)
     c.今の所実施予定はない。
     d.その他:具体的に記載して下さい


愛媛県  実施  検討中  なし  その他  無回答
――――――――――――――――――――――――――――
東予   0    0    5    0    1
中予   0    2    3    0    0
南予   1    0    4    0    0
――――――――――――――――――――――――――――
合計   1    2   12    0    1

 ウツタイン様式を導入済または導入を検討中の本部はほとんどない。愛媛県でも同様である(愛媛県のデータは図と表で一致していないが、表に示すものが正しい)。

3.救急医療協議会の活動に関して

 イ)平成13年度の地域(第2次救急医療圏)の救急医療協議会の活動について
  a.2回以上開催された。
    b.1回開催された。
  c.平成13年度は開催されなかった。
  d.その他:具体的に記載して下さい


愛媛県 2回以上 1回  なし  その他  無回答
――――――――――――――――――――――――――――
東予  1    2    2    0    1
中予  0    4    1    0    0
南予  0    3    2    0    0
――――――――――――――――――――――――――――
合計  1    9    5    0    1

 平成13年度に第2次救急医療圏の救急医療協議会が1度でも開催されたのは、半数の消防本部に過ぎなかった。愛媛県でも60%の本部で協議会に参加したが、開催回数はほとんどが1回のみであった。


 ロ)平成13年度の地域(第3次救急医療圏)の救急医療協議会の活動について
  a.2回以上開催された。
    b.1回開催された。
  c.平成13年度は開催されなかった。
  d.その他:具体的に記載して下さい

愛媛県 2回以上  1回  なし  その他   無回答 ―――――――――――――――――――――――――――― 東予  0    0    5    0    1 中予  0    3    2    0    0 南予  0    0    4    1    0 ―――――――――――――――――――――――――――― 合計  0    3   11    1    1

 平成13年度に第3次救急医療圏の救急医療協議会が開催された地域はほとんどない。愛媛県でも 中予地区だけであった。


 ハ)平成13年度に開催されたすべての救急医療協議会の議題を会の種類ごとに列記して下さい。
 (集計結果は省略)

 ニ)プレホスピタルケアに関する研修会に関して
  a.救急医療協議会主催(または後援)の研修会を定期的(年1回以上)実施している。
   b.救急医療協議会主催(または後援)の研修会を実施したことがある。
  c.救急医療協議会主催(または後援)の研修会は実施したことがない。
  d.その他:具体的に記載して下さい

愛媛県  定期的  非定期  なし  その他  無回答 ―――――――――――――――――――――――――――― 東予  0    0    4    0    2 中予  0    1    4    0    0 南予  0    2    3    0    0 ―――――――――――――――――――――――――――― 合計  0    3   11    0    2

 過半数の消防本部では救急医療協議会主催または後援の、プレホスピタルケアに関する研修会が 開催されたことはない。愛媛県でも同様であった。


4.救急救命士の病院実習に関して

 イ)資格取得後就業前の病院実習について
  a.新人全員に対し実施している。(平成13年度の実習日数   日)
  b.おおむね実施している。(平成13年度の実習日数   日)
  c.実施していない。
  d.その他:具体的に記載して下さい

愛媛県 全員  ほぼ全員  なし  その他 無回答 ―――――――――――――――――――――――――――― 東予  5    0    0    0    1 中予  5    0    0    0    0 南予  5    0    0    0    0 ―――――――――――――――――――――――――――― 合計 15    0    0    0    1

 第4に救急救命士の病院実習に関しては、資格取得後就業前の病院実習はほとんどの 地域ですべての救急救命士が受けている。愛媛県も同様である。


 ロ)生涯教育のための病院実習について
  a.新人を除く全員に対し実施している。(平成13年度の実習日数   日)
  b.おおむね実施している。(平成13年度の実習日数   日)
  c.実施していない。
  d.その他:具体的に記載して下さい

愛媛県 全員  ほぼ全員  なし  その他 無回答 ―――――――――――――――――――――――――――― 東予  1    1    2    1    1 中予  2    0    3    0    0 南予  2    1    2    0    0 ―――――――――――――――――――――――――――― 合計  5    2    7    1    1
 生涯教育のための病院実習を実施している本部は中国四国地方では約半数であった。愛媛県でもほぼ同様であった。


 ハ)第三次救急医療機関における病院実習
  (資格取得後の就業前教育、生涯学習としての病院実習)について
  a.所属救急救命士全員に対し実施している。(平成13年度の実習日数   日)
  b.おおむね実施している。(平成13年度の実習日数   日)
  c.実施していない。
  d.その他:具体的に記載して下さい


愛媛県 全員  ほぼ全員  なし  その他 無回答
――――――――――――――――――――――――――――
東予  1    0    4    0    1
中予  2    0    3    0    0
南予  1    1    3    0    0
――――――――――――――――――――――――――――
合計  4    1   10    0    1

 第三次救急医療機関における病院実習が実現している本部は20%程度に過ぎない。愛媛県でもほぼ同様である。




愛媛県のプレホスピタルケアの現状(まとめ)

1.特定行為に関する指示

  • ほぼ24時間体制で指示を得られるが、迅速に医師の指示を得られているとは言えない。
  • 心電図伝送を要し、このことが救急車内で除細動をすることにつながっている。
  • 3回連続除細動はほぼ実現している。

2.医師による事後検証

  • 検証のための記録シートは未整備。
  • 医師による事後検証は実施されていない。
  • 事例検討会は行われていない。
  • ウツタイン様式による記録も行われていない。

3.救急医療協議会

  • 二次救急医療圏の協議会は年1回程度開催された。
  • 第3次救急医療圏では協議会はあまり開催されていない。
  • 救急医療協議会による研修会は行われていない

4.病院実習

  • 就業前はほぼ全員実施。
  • 生涯教育は半数のみ。
  • 第三次救急医療施設での研修はわずか

5.市民によるCPR実施率

  • 23.5%―中国四国のレベルより悪い(全国水準と同じレベル?)。
  • 目撃例の実施率35%のみ。


■第18回日本救急医学会中国四国地方会/ ■第3回中国四国救友会