平成14年 5月31日
第18回日本救急医学会中国四国地方会会長
石原 晋 殿
第3回中国四国救友会準備委員長 越智元郎 連絡先: 〒791-0295 愛媛県温泉郡重信町志津川 愛媛大学医学部救急医学 TEL 089-960-5722 FAX 089-960-5714 e-mail: gochi@m.ehime-u.ac.jp
爽やかな初夏の候、第18回日本救急医学会中国四国地方会会長 石原先生ならびに幹事、評議員の諸先生方に
はますます御清祥のことと御喜び申し上げます。
さて、このたび第18回日本救急医学会中国四国地方会前日の 5月31日には、石原会長の多大な御協力を賜り、
第3回中国四国救友会を開催させていただきます。本会は中国四国地方の各県で結成しております救友会、救急
救命士会などの関係者(救急隊員、病院関係者など)が一同に集い親睦を図るとともに、救急業務に反映させる
べく研究、意見交換を目的として講演会、意見交換会などを行う催しでございます。今回は以下の3つのテーマ
で各1時間のシンポジウムを予定しております。
1.中国四国地方の救友会/救急救命士会の現状
2.中国四国地方のプレホスピタルケアの現状
(メディカルコントロールの問題を含む)
3.新しい心肺蘇生法をどう教えるか
第3回中国四国救友会準備委員会では今回のシンポジウムをより充実したものにするために、中国四国地方 117消防本部ならびに9県の消防防災課などにアンケート調査をさせていただきました。回答をいただいたのは 106消防本部ならびに8県で、これは同地方の総人口1189万人のうち94.2%にあたる1095万人をカバーする消防本 部から御回答をいただいた形でございます。
アンケート調査の結果は別紙に示す通りでございますが、中国四国地方のプレホスピタルケアの現状を知る上 で極めて有益な情報を得ることができました。この結果は各消防本部などに送付申し上げる予定でございまし て、今後のプレホスピタルケアの向上に役立てていただけましたら幸甚と考えております。
この中で、特定行為実施にあたり過半数の消防本部がルチーンに心電図伝送を実施しているということが判明 し、この点につきましては早急に是正する必要があると考えられました。すなわち中国四国地方の117消防本部 のうち、特定行為を行うに際し消防本部の方針で心電図伝送を行っているのが53本部(45.3%)、医療機関の求 めにより伝送を行っているのが9本部(7.7%)、伝送は不要としているのが36本部(30.8%)となっており、その 他の回答が6本部(5.1%)、回答なしが13本部(11.1%)でございました。結局、同地方では法律上も行政指導上 も必須とされていない、特定行為時の心電図伝送が半数以上の消防本部で実施されていることになります。
心室細動患者において、電気的除細動の実施が1分遅れるごとに、重篤な神経学的後遺症なしに退院できる患 者の割合が7〜10%減少すると言われています。ところが、病院外心肺停止患者において特定行為を実施するに あたり心電図伝送を必須とするならば、除細動をはじめとする必要な特定行為の実施が確実に遅れます。しかも この心電図伝送は法律上の義務ではございません。自動式除細動器の精度が向上し、世界的には短時間の講習を 受けた市民にも除細動の資格を与えています。中国四国地方において、多数の消防本部が病院外心肺停止患者に 対する救命活動時に心電図伝送を実施していることは、根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)の考え方 に反することになると危惧いたします。
この現状を早急に改善するために、第18回日本救急医学会中国四国地方会会長から、各消防本部ならびに関連 機関に、以下の趣旨の声明または要望書を送付していただきたく、御検討のほどよろしくお願い申し上げます。
・・消防本部消防長殿 第18回日本救急医学会中国四国地方会会長 石原 晋 貴職におかれましては益々御清祥のことと御慶び申し上げます。 さて本年6月1日には広島市におきまして第18回日本救急医学会中国四国地方会が開催され、盛会のうちに終 了いたしました。多大な御協力を賜りました皆様に深謝申し上げます。 なお、本会の関連行事の中で、会員有志が各消防本部の御協力をいただき実施したアンケート調査の結果が報 告されました。その中で、中国四国地方の過半数の消防本部が特定行為実施にあたり心電図伝送を実施しておら れることが明らかとなりました。 心室細動患者においては、電気的除細動の実施が1分遅れるごとに、重篤な神経学的後遺症なしに退院できる 患者の割合が7〜10%減少すると言われています。このため、病院外心肺停止患者において特定行為を実施する にあたり心電図伝送を必須とするならば、除細動を始めとする処置実施が確実に遅れ、貴重な住民の生命が無駄 に失われることにつながります。しかもこの心電図伝送は法律上の義務ではございません。 以上の観点から、貴本部の救急救命活動について御検討をいただき、特定行為実施時の心電図伝送につきまし てはこれを早急に廃止することができるよう、関係各位の善処をお願い申し上げます。 末筆にて恐縮とは存じますが、貴職をはじめ各位の益々の御活躍と御健康を祈念申し上げます。 |