第44回日本胸腺研究会の開催にあたって

 
 この度、第44回日本胸腺研究会を国立病院機構九州がんセンターにて開催させていただく運びとなりました。一介の腫瘍内科医である私に伝統のある本研究会の会長を務める貴重な機会を頂きましたことを大変光栄に存じます。
 本研究会の他の学会と大きく異なる点は、胸腺研究に携わる、基礎医学研究者、病理医、放射線読影医、放射線腫瘍医、神経内科医、呼吸器内科医、腫瘍内科医 そして胸部外科医が分野を越えて一堂に会する集学的研究会であることです。
 参加者同士が、ひざを突き合わせて忌憚ない意見を交わしあうのが、特徴と認識しています。
 私は、熊本大学第一内科(神経・呼吸器・消化器内科、関連病院で循環器内科)での研修医時代に、周術期、重症筋無力症合併胸腺腫を経験しました。初めて外科医と連携して治療した経験でもあり、胸腺疾患が複雑で難しいと認識した最初の症例でした。私が初めて胸腺を直視したのは、亡き一瀬幸人医師の執刀による胸腺腫の拡大胸腺摘出術の前立をした時です。胸骨正中切開で現れた胸腺に骨蝋を落とし、一瀬医師に叱られたことと、その時見た胸腺の不思議な形状が今でも忘れられません。その後、腫瘍内科医として、進行期胸腺腫・胸腺癌の薬物治療に長く携わってまいりました。胸腺腫の臨床においては、ステロイドと薬物療法の有効性や、減量手術の有用性について、常に悩んでいます。胸腺癌では肺癌の二次治療で行うナラティブな治療に準じた方が、奏効も奏効期間も長いような気がしたので、West Japan Oncology Groupにてカルボプラチン+パクリタキセルの臨床第Ⅱ相試験を行い、その治療はガイドラインに引用される試験になりました。また、胸腺癌の遺伝子変異について、サンガーPCR法を用いたダイレクトシーケンスで解析した結果、c-KITの遺伝子変異があることがわかり、その薬物療法の効果を含め、世界胸腺研究会(ワシントン)で発表しました。系統だった研究歴があるわけではありませんが、臨床経験を通して、胸腺腫瘍を奥の深い、不思議な疾患だと感じております。
 さて、本研究会は、普段は関係者しか入れない大学の講堂などの施設に入れることが、一つの楽しみであります。今回は九州の癌治療の拠点であります九州がんセンターの講堂にお越しいただいて、胸腺疾患について議論を交わせたらと思っております。また、別室において、胸腺疾患の温故知新と称した治療の変遷に関する講義や実診療で悩んだ症例の病理や画像を持ちよって、討議できる場も設ける予定です。
 おりしも2月8日~9日にて日本肺癌学会・日本呼吸器内視鏡学会九州地方会が藤田昌樹会長のもと、福岡大学病院 福大メディカルホール・多目的室にて開催されます。胸腺研究会に参加された際には、地方会にも足をお運びいただければと存じます。
 多くの皆様と福岡の地でお会いできますことを楽しみにしております。


第44回日本胸腺研究会
会長 瀬戸 貴司

会告

第44回日本胸腺研究会
会 長: 瀬戸 貴司 (九州がんセンター 呼吸器腫瘍科)
会 期: 令和7年2月8日(土)
会 場: 九州がんセンター 講堂
〒811-1395 福岡県福岡市南区野多目3丁目1-1

【博多駅からのアクセス】
●鉄バス 博多駅前A乗り場にて48番・48-2番「福翔・野多目」行き乗車、「九州がんセンター」にて降車(約35分)
【天神からのアクセス】
●西鉄バス 天神大丸前4C乗り場または天神北9番乗り場にて61番「九州がんセンター」行き乗車、「九州がんセンター」にて降車(約40分)
●西鉄電車(大牟田線) 西鉄福岡駅にて特急・急行・普通電車に乗車、西鉄大橋駅にて降車(約10分)
西鉄大橋駅1番乗り場にて48番 「福翔・野多目」行き乗車、「九州がんセンター」にて降車(約15分)

【福岡空港からのアクセス】
●福岡市営地下鉄 福岡空港駅より姪浜・唐津方面に乗車、博多駅(約5分)もしくは天神(約11分)で降車
博多駅・天神からのアクセスは上記参照





第44回日本胸腺研究会