医学生理学クイズ日本大会2019(PQJ2019) 観戦レポート

医学生理学クイズ日本大会2019(PQJ2019)は、5月26日に東京慈恵会医科大学で開催された。以下はPQJ事務局長井上の観戦レポートである。

生理学クイズは2016年4月に岡山大学医学部で第1回が開催されたのち、2017年に大阪医科大学(PQJ2017)、2018年に鳥取大学(PQJ2018)と各所で開催され、第4回大会となる今回は記念すべき初の東日本での開催である。
会場となった東京慈恵会医科大学には朝の9時から、北からは東北大学、南からは香川大学と、全国津々浦々から10大学13チームが集結した。このうち、第1回から4回連続参加チームは大阪医科大学と藤田医科大学の2チームである。
昨年優勝校の防衛医科大学は、優勝チームメンバーは卒業したものの、連覇を狙い2チームを出場させる。2年前優勝の大阪大学も新たなチームが出場する。2年前から継続出場中の東北大学、徳島大学も悲願の優勝を狙っている。
今回の初参加大学は、国際医療福祉大学、東京医科歯科大学、香川大学の3チームである。国際医療福祉大学は、1年次から英語での医学教育を行うことで知られており、その戦いぶりが楽しみである。

大会はPQJ2019共同代表の岡田浩太郎君の開会宣言で幕を開けた。私はPQJ事務局長として次のような開会挨拶を行った。

Everyone, do you love studying medicine?
Let me ask once again, do you REALLY love studying medicine?

To be honest, studying medicine is sometimes quite boring. It’s because 1) you study alone most of the time 2) you can’t instantly see the result of your study 3) you have to keep sitting on a desk or watching a screen for long hours.

Today, you have come to the right place. In Physiology Quiz in Japan, you’ve got 1)Your teammates to fight and study together 2)You instantly get the result of your effort as either win or loss, 3) You will be overwhelmed by the waves of emotions like joy, nervousness, disappointment and excitement.
All of these stimulating factors boost the study effects of medicine.

Before we begin the first quiz session, I have to point out one thing.
At the end of the day, only one team wins and all the other teams leave here as losers. That’s the hard truth about all quiz competitions.
However, even if you lose, the great deal of knowledge you earned through the quiz will help you when taking the national license exam or curing patients as a doctor.
So fight hard!

予選は13チームが2グループに分かれ、それぞれの会場で3つのクイズラウンドを行い、合計得点で各グループ上位2チームが準決勝に進出する。進出できなかったチームは午後の敗者復活戦に周り、そこでの上位2チームが準決勝に進出する。
午後3時からの準決勝では、決勝進出する2チームが決定する。
最後に午後4時からの決勝では、PQJ2019のチャンピオンが決定する。

予選が始まった。各会場では早くも火花が飛び散るような早押しボタンの連打の音が響く。今回の大会の見どころは、数多くの新しいクイズの形式を導入したことである。

そのうち大きな部分を占めるのは”Who am I question”である。
例えば
“1. I am as small as a rice grain.”
“2. I am located in carotid bifurcation or arch.”
“3. I detect changes in chemical concentrations in blood vessels.”
“4. My outputs change ventilation volume.”
のようなヒントが少しずつ読み上げられ、画面に表示される。

これを読む人の中にも、最後のヒントまで待てば、”Peripheral(arterial chemoreceptors)”と答えられる人は多いであろう。しかしそこまで待っていては他のチームに正解されて、チャンスはない。ヒント1や2などの早い段階で早押しボタンを叩き、答えなければならないのである。英語での正解は10点、日本語では3点が与えられる。誤答によるお手つきは当該問題と次の回の回答権没収であるので、回答には慎重にならざるを得ない。
ヒントが進むに連れ、チームメンバー同士、緊張した面持ちでボタンを押すかどうか話し合いながらラウンドが進む。
白熱した戦いの末、会場1でFirst Roundをリードしたのは徳島大学(Zoo-1), 大阪医科大学(光合成)であった。2チームとも誤答を恐れず積極的にボタンを押す戦略が功を奏したようである。
一方会場2では、防衛医科大学(某B医大)と藤田-三重連合(Team Z)が序盤から抜け出し、他チームが追う展開となっていた。

サード・ラウンドは”Board question”である。クイズ問題に対して各チームが一つのホワイトボードに解答を書き、一斉に提示する。解答時間は40秒と限られており、チームメンバー間でのディスカッションの活発さが正当誤答を分ける。
各チーム、団結力の強さを見せて、全問正解が続き、参加チームのレベルの高さには関心させられた。

予選ラウンドで準決勝進出を決めたのは、会場1では、徳島大学(Zoo1)大阪医科大学(光合成)、会場2では、防衛医科大学(某B医大)藤田-三重連合(Team Z)であった。

続いて行われた敗者復活戦、準決勝への残る2つの椅子をかけて、”Board question”と”Who am I question”で一進一退の戦いが続く。最後の椅子を手に入れたのは、大阪大学(Diversity)東北大学(RIDAZO)であった。

防衛医科大学、大阪医科大学、徳島大学など複数チーム出場した大学は、各1チームのみが準決勝進出する結果になった。敗北したチームメンバーが、準決勝進出したチームメンバーの手を取り、優勝の夢を託し激励する光景が会場のそこかしこで見られた。

準決勝では”Board question”に加えて、”Ranking question””Yamanote line question”が加わった。
“Ranking question”では、例えば「人体で2番めに重い臓器は何ですか?」という質問に対して各チームが解答し、正解すれば10点を獲得するが、間違って1番目を当ててしまうと10点が持ち点から引かれてしまうという恐怖のクイズである。
各チーム、2番めの答えが何なのか、頭を悩ませて、まんまと1位を当ててマイナス10点されてしまうチームが続出する。
”Yamanote line question”は、「山手線ゲーム」の形式で、質問に当てはまるものを各チームが次々に挙げて行く(解答はすべて英語である)。正解一つに付き5点が入るが、誤答するとその時点で脱落して、他チームに比べ大きなポイントのロスになる。
1問目は「Answer the Cranial nerves as many as possible(脳神経をできるだけ挙げなさい)」である。脳神経は1〜12まで12本あり、医学生なら全員覚えているはずであるが、全て英語で答えることがミソである。
各チーム、optic nervefacial nerveなど簡単なものから順に答えてポイントを獲得していくが、vagus nerveを答えたあたりから苦しくなって来て、誤答で脱落するチームが増えてくる。その中、trochlear nerveglossopharyngeal nerveなど舌を噛みそうなものをしっかりと解答してポイントを稼いだのが大阪医科大学(光合成)であった。

最後の問題は「Answer Peptide hormones of human as many as possible(人体のペプチドホルモンをできるだけ挙げなさい)」であったが、大阪医科大学(光合成)の勢いは止まらず、他のチームが脱落していく中、最後までポイントを稼ぎ、75点の首位で決勝に進出した。2位には70点を稼いだ防衛医科大学(某B医大)が入り、この2チームが決勝で優勝の座を掛けて一騎打ちをすることになった。

決勝進出チームをハイタッチで迎え、4時からの決勝に備え最後の準備をする両大学。この日まで2ヶ月以上、勉強してきたBRS Physiologyなどの英語の問題集を見直し、各大学のメンバーからのアドバイスに耳を傾ける。思いは一つ、優勝カップを自大学に持ち帰ることである。 いよいよ決勝が始まった。決勝は”Explanation question”と称し、提示 された問題に対し、各チームが設置されたホワイトボードに解答とその導出過程を3分で書いて英語で説明する。


第1問目は「円筒形の血管がなぜ血管が弱くなり動脈瘤になると球形に膨らむのか?」という問題であり、具体的には「LaPlace’s Law」を使って示す。
各チーム、初めて見たであろう質問に四苦八苦しながらも、それでもなんとかホワイトボードでなぜ球形になるのかを説明する。とても面白いので読者のみなさんも考えてみて欲しい。解説はこのページにある。

審査員の評点の結果、大阪医科大学がリードした。
2問目は「騒音性難聴では、外耳道の共鳴による、ある周波数の音が聞き取りにくくなる。その周波数を計算せよ」であった。この問題は、高校生の物理で習う共鳴の計算をする必要がある。
ここでリードしたのが防衛医科大学である。共鳴の式から、くだんの周波数が4250Hzであることを導出、解説し、審査員から高得点を獲得した。
最後の問題は、「人間が酸素ボンベなしで生きられる高度を計算せよ」という問題であった。高度と大気圧のグラフと生存に必要なPaO2が27mmHgであることが与えられている。
さすが決勝に進出した両チームである。両者、肺胞式から、生存限界の大気圧が267mmHg、すなわち約8000mであることを導出、解説し、共に高評点を獲得した(ちなみに世界最高峰エベレストの高度は8848mである)。

いよいよPQJ2019優勝チームの発表である。優勝チームは、

「防衛医科大学 チーム某B医大!」

防衛医科大学の連覇達成である。PQJで前年度大学が連覇したのは初めてとなる。

優勝チームは、各ラウンドを通じ、常に安定したチーム力を発揮したのが、印象深かった。大阪医科大学 光合成は、決勝戦では相手の4名に対して2名という少人数構成が不利になったかもしれない。しかし、今回の健闘は称賛に値する戦いぶりであった。

3位には、準決勝進出チームの藤田医科-三重大学Team Z、大阪大学 Diversity、徳島大学 Zoo-1、東北大学 RIDAZOが入賞した。

戦い済んで、懇親会の会場では、つば競り合いを演じたチーム同士がお互いの健闘を称え合い、珍解答を振り返って爆笑し、これまでの勉強方法などを情報交換しながら、いつまでも団らんの輪が続いていた。

出席者の間では、IMSPQ(国際生理学クイズ大会・8/21-22・インドネシア ジャカルタ)や、SIMPIC(シリラー国際免疫微生物寄生虫学コンペティション・3月・タイ バンコク)などの国際医学クイズ大会に関する話題が多く、次は世界の舞台で活躍したいという参加者の意欲があふれていた。最後には、来年のPQJでの再会を誓い合い、会場をあとにした。

本大会は、初の東京での開催となり、関東地方から3大学4チームが参加し、PQJ参加校の幅を広げることに成功した。本大会を開催した東京慈恵会医科大学のPQJ2019開催委員会は、共同代表の姫岩翔子、岡田浩太郎の両名、顧問の南沢享教授をはじめ、多大な労力をかけて、新しいクイズ形式の導入など新企画を次々導入し、飛び切り楽しい大会を作り上げてくれた。

PQJ事務局長として、PQJ2019開催委員会の全員と、参加された全ての大学に感謝いたします。

次回大会となるPQJ2020の開催校を募集しております。興味ある方はぜひPQJ2019共同代表の岡田浩太郎君(okada-k@c05.itscom.net)か、PQJ事務局(physiologyquiz@gmail.com)にまでご連絡ください。

(PQJ事務局長 大阪医科大学6年 井上鐘哲)

◯医学生理学クイズ日本大会2019(PQJ2019)
日時:2019年5月26日(日)
会場:東京慈恵会医科大学(東京都港区西新橋)
優勝   防衛医科大学 某B医大
準優勝  大阪医科大学 光合成
3位   藤田医科-三重大学 Team Z
3位   大阪大学 Diversity
3位   徳島大学 Zoo-1
3位   東北大学 RIDAZO

◯競技記録(抜粋)
グループ1 予選 準決勝進出チーム
徳島大学 Zoo-1 180
大阪医科大学 光合成 170

グループ2 予選 準決勝進出チーム
防衛医科大学 某B医大 293
藤田医科-三重 Team Z 146

敗者復活戦 準決勝進出チーム
大阪大学 Diversity
東北大学 RIDAZO

準決勝
大阪医科大学 光合成 75
防衛医科大学 某B医大 70
徳島大学 Zoo-1 45
藤田医科-三重 Team Z 40
東北大学 RIDAZO 35
大阪大学 Diversity 25

決勝
防衛医科大学 某B医大 86.6
大阪医科大学 光合成 79.6

大阪医科大学小野教授と徳島大学チームZoo-1

大阪医科大学チームの面々

防衛医科大学チームのみんなと井上、大阪医科大学生理学教室小野教授

大阪医科大学チーム

左からPQJ2019共同代表岡田君、南沢教授、審査員を務めていただいた群馬大学鯉淵教授、大阪医科大学チーム

決勝戦直後の大阪医科大学・光合成と防衛医科大学・某B医大

PQJ2019参加者

“医学生理学クイズ日本大会2019(PQJ2019) 観戦レポート” に2件のコメントがあります

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