プロラクチン産生下垂体腺腫
(プロラクチノーマとも呼びます)

プロラクチン産生下垂体腺腫とは

 下垂体腺腫とは,ホルモンの中枢である下垂体に発生した腫瘍です.脳下垂体は鼻の付け根の奥のトルコ鞍という頭蓋骨のポケットのようなところにあります.脳腫瘍の約15%がこの腫瘍でありそれほど稀な病気ではありません.この病気の原因は不明ですが,子孫に遺伝する病気ではありません.ホルモンの中枢に発生する腫瘍であるため,この病気では腫瘍が下垂体特有のホルモンを過剰に分泌することが特徴です.女性では,早期にホルモン分泌過剰症状である乳汁分泌と無月経が見られます.しかし,男性では,ホルモン分泌過剰による症状は顕著でないため,非機能性下垂体腺腫と同様の臨床像です.

治療法

 第1選択の治療は,内服薬による治療です.ほとんどの患者さんがこの治療により,急速にホルモンの分泌異常は改善し,さらにゆっくりと腫瘍が縮小します.以前はパーロデルという薬剤を使用してた時代には,嘔気の副作用で治療を継続できないため手術治療を受けた患者さんもいましたが,最近では安価で副作用も少ないカバサールの普及で,手術治療を受けられる患者さんは激減しています.もし,主治医の先生に手術治療を勧められた場合は,主治医の先生のとよく相談されるか,下垂体腫瘍を専門にしている施設でのセカンドオピニオンをお勧めします.
 ただ,内服治療には,以下の問題点があります.
1)薬物治療では,腫瘍縮小を認めても,完治は得られません.薬の内服を止めると,腫瘍が増大してくることが多いため,生涯にわたって薬物治療を続ける覚悟が必要です.
2)薬物治療を長期間行うと,腫瘍が硬くなり,外科的手術の成功率が低くなると言われています.そこで,薬物治療を始める前に,手術をするかどうかよく検討することが重要です.途中で手術治療に切り換えることは難しくなります.
3)内服中に妊娠すると赤ちゃんに副作用を誘発する可能性があります.このため,妊娠が判明した時点で内服を中止しますが,母体内に薬剤が残留するため,心配が残ります.母体内の残留を少しでも減らすには,高価で副作用も多いパーロデルの内服をお勧めします.
4)まれに,経過中にプロラクチンに対して抵抗性となり,腫瘍が増大する場合が報告されています.
5)嘔吐等の強い副作用や患者さんの性格などの要因で,治療有効量の薬剤を内服ができない場合があります.

その他の治療法

1.経鼻法による腫瘍摘出術.
 腫瘍が小さく,正中に限局している場合は,1回の手術で治る可能性があります.だた,手術の長期成績はあまり良くありません.現在報告されている長期成績では,60〜80%程度の正常化率で,100%近い内服治療に及びません.ただ,1回の手術で治ってしまうと,薬を内服する必要もなく,妊娠分娩時の心配もなくなりますので,それなりのメリットはあります.鼻の穴から腫瘍を摘出する方法では,術後1週間程度で退院できますので,患者さんの負担も軽いと考えます.私の最近の成績では,23人中22人がホルモン正常化していますので,薬物療法にあまり遜色はありません.しかし,手術で正常化された患者さんは,全員手術してよかったと言われますが,二度とあの手術はいやだとも言われますので,複雑な心境になっています.

2.ガンマナイフ(特殊な放射線治療装置)による治療.
 ガンマナイフによる治療の報告はありますが,内服治療の方が遙かに優っています.