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北見地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2023
【実践報告】
北見赤十字病院におけるがん診療および退院支援等の課題と対策

上林 実さん(北見赤十字病院 副院長・患者支援センター長)

北見赤十字病院の上林です。それでは、よろしくお願いします。今日は、3点についてご報告いたします。

オホーツク医療圏の北見赤十字病院の概要

講演の画面01

まず、「オホーツク医療圏と北見赤十字病院の概要」について少しお話しいたします。皆さんご存じかもしれませんが、3次医療圏ということで、全国に52ありまして、通常は都道府県単位なのですが、北海道は広いので6医療圏に分かれていて、オホーツクは新潟県と同じ面積に人口27万人というところで、遠紋医療圏と北網医療圏になりますが、高齢化率が高くて医師数が少ないという地域状況にあります。
その中で当院は、「人道・博愛に基づき、患者さんを尊重した医療を提供し、地域の信頼に応えます」という理念のもと、1935年に開設しておりますが、2005年から地域がん診療連携拠点病院の指定を受けております。2018年からは隣接する道立北見病院の指定管理を開始していますので、道立北見病院の職員も日赤の職員ということになります。現在は2病院で、高度急性期・急性期医療を提供しています。

講演の画面02

これは昨年の実績ですが、新患としては2万4,000人で、救急車が3,600台で応需率は98%、新入院患者数は1万2,000人弱ということになります。

次に、「がん診療および退院支援の現状」を少しお話しいたします。先ほどお話ししました道内の地域がん診療連携拠点病院に指定していただいているわけですけれども、院内がん登録は、2020年のデータになりますが、道内で登録数が9番目になっております。

講演の画面03

詳細としては、2020年で年間1,600人ぐらいの院内がん登録の患者さんがいらっしゃって、外来の化学療法は年間6,000件程度ということになります。
下のグラフに全国と北海道全体と当院の比較があり、色が変わっているのはいろいろながん種を表しているのですが、全国や全道のデータと非常に割合が似ているというところで、いろいろな診療科がいろいろながんの患者さんを満遍なく診療させていただいている、地域全体の患者さんを診ているという特徴が出ているかと思います。

緩和ケア病棟を中心に、地域の皆さまと連携して退院支援を

講演の画面04

また、「緩和ケア病棟診療の概要」を少しご説明します。病棟の一番景色のよい8階に、新病院建設とともに緩和ケア病棟を設置しております。ここ2年間の年間の入院患者数は180人程度になりまして、平均在院日数は17日程度になります。いわゆるホスピスではなくて急性期緩和ケアということを特徴としている病棟で、年間の退院数は170~180人で死亡退院が2021年度に104人で、2022年度は少し少なくて71人になります。
特筆すべきところとしては、在宅に行く方が2021年度は70人、2022年度は93人という在宅復帰率が高いというところで、地域の先生方、医療機関の皆さまにご支援いただきながらというかたちで、他院にご依頼することもありますけれども、当院の医師と看護師が訪問診療を、訪問看護ステーションの皆さま、あるいはケアマネジャーさまと一緒に協力しながら在宅診療を展開している、病院が展開しているというところが少し特徴かなと思います。
ただ、そうはいっても緩和ケアの先生は1人しかいませんし、実際に多くの患者さんがいますので、問題としては、各診療科外来でもそういった患者さんは、在宅に向けての調整が必要になっているということです。一般病棟でも死亡退院される方もいますし、転院調整が必要になるというところで、近隣の医療機関や、いろいろな施設の皆さまにご協力いただきながら退院支援を展開しているというところです。

人材不足の解消に「医療DXの推進」が必要

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最後に、「課題と対策」のお話をさせていただきます。細かいことはいろいろあるのですが、一つには高齢化社会というところで、患者さん自身の併存疾患が非常に増えている中で、認知機能であったり身体能力であったり、いろいろなものが低下しているというところがあります。
その上で、医療技術革新があるので、医療・ケア・介護に関しては多職種連携をしていけば大変よい支援ができるかなと思うのですが、非常に手間と時間がかかるというところが問題かと思います。
対策として、実際にその手間や時間をかけないわけにはいかないというところがありますので、質を維持していくにはどうするか、高齢者機能評価などもそうですけれども、いかに手間をかけずに情報を皆さんと共有していくのか、情報の二次利用も含めてですけれども、ここはDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術による社会・生活の変革)を推進していく必要があります。
実は2024年の1月に当院は電子カルテシステムを更新する予定ですが、新しい地域連携システムを導入して、地域の皆さまによりよい情報を、二次利用できる情報をお届けしたいと思っております。

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最後のスライドです。いろいろながんの患者さんを診療させていただいておりますけれども、地域の皆さまと連携して退院支援を行っていくということと、どの領域もそうですが、人員不足は避けられませんので、「医療DXの推進」が必要かなと思います。以上になります。

関:上林先生、ありがとうございました。続きまして、「在宅看取りを支える事業所の垣根を越えた連携の必要性」をテーマに、オホーツク勤医協北見病院院長、菊地憲孝先生からご報告をお願いいたします。

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掲載日:2023年11月06日
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