がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクトfacebook

北見地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2023
【グループワーク】

グループワークのテーマ説明

渡邊:多くの皆さま方にご参加、ご発表いただきまして、ありがとうございます。私自身も一つ一つご質問をしたいぐらい、多くの情報があるお話でありまして、今回、ぜひご参加の皆さま方にも、ご意見、ご提案をいただきたいということでグループワークを早速始めていきたいと思います。
がん患者さんとご家族への支援というところで、皆さま方がうまくいっていること、あるいは逆に苦労していること、あと工夫していることを、ぜひ共有いただきたいと思っております。
特に何か結論を出すという会ではありませんが、できれば、どうすればよい取り組みが広がるか、どうつながっていくのか、あるいはどう無理せず続けられるかということについてお話しいただきまして、ぜひ最後に共有をしたいと思っております。

まず自己紹介からスタートでしょうか。アイスブレイクから始めていただいて、全部のグループは難しいかもしれませんけれども発表する方を決めていただいて、ぜひ周りの方を集めていただいて、演者の皆さま方にも入っていただけると伺っておりますので、ぜひディスカッションをお願いいたします。

グループ発表

渡邊:では、グループ発表を始めていきたいと思います。オンラインの方も今100人以上のご参加をいただいておりまして、ありがとうございます。
どのような話し合いがなされたか、ぜひ共有のほどお願いします。

人手不足の問題に「共同指導」で省力化

藤川:私、北海道庁でがん対策を担当しております藤川と申します。よろしくお願いします。私たちのグループでは、いろいろな職種の方とお話しさせていただいて、大きなところで人手不足の問題があって、やはり訪問看護事業所でも所長さんが1.5人分働いていたり、介護ヘルパーさんもなかなかいらっしゃらなかったり、あと薬剤師も人数が少ない職場は、やはり外来中心にならざるを得ないなど、そういったお話が出ていました。
また、やはり人手不足ということで、やらなければならない書類のルーティンや手続きなどで、なかなか迅速にできない部分もあるなど、そういう話も出ておりました。
そこで、その対応策ではないのですけれども、もともと、病院を中心に「共同指導(退院前に入院施設と訪問看護が共同で退院後の在宅療養について指導を行うこと)」を行っていて、そこに多職種の方が入って連携をして、それによって退院後の担当者会議がスムーズにいくなどの部分で省力化されているということも伺いました。

あと介護保険制度ですが、ここで何かそれぞれ介護の点数が取れるようになったら、非常にもっと参加しやすいという話も出ていました。
また、顔が見える重要性のお話が講演の中でもありました。コロナ禍前には緩和ケアの先生が中心になってカフェを開くなどしていましたが、コロナ禍で顔が見える機会をつくることが難しくなってしまったという話が出ていました。
いろいろな課題を出させていただきました。私もがん患者さんの介護度が要支援にもかかわらず、4日後に亡くなるというのは、衝撃的だったので、いわゆる行政の手続きの部分と実際に担っている現場の実態は、少しやはり乖離(かいり)があるのかなということは、非常に印象に残っています。
私たちのグループではこういった話が出ていました。ありがとうございます。

渡邊:短い時間に的確にまとめていただきまして、ありがとうございました。
では、続きましてお願いいたします。

アドバンス・ケア・プランニングで支援の方向性が明確に

坂本:常呂地区地域包括支援センターの坂本と申します。私たちのグループでは、うまくいっていることと苦労していることについて意見を出し合いました。うまくいっているところでは、林さんから、「ターミナルの相談は断らない」と事業所として統一しているというお話があったり、ターミナルの方、がん患者さんにACP(アドバンス・ケア・プランニング:今後の治療・療養について患者さん・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス)を全員にしているので、関係する事業所も支援の方向性がはっきりするというような意見もあったりしました。
苦労しているところとしては、レンタル、用具の調整など、サービスが間に合わないというところで、状態が落ちていく時に支援を開始するような場合だと、調整がつかずに歯がゆい思いをするというようなお話がありました。

また、北見から遠い場所、市外や留辺蘂(るべしべ)の奥のほうなど、距離がある方への支援というところで、相談があった時にやはり受けたいということで行くけれども、その往復の時間を使えば、もっと多くの人に支援ができるのではないかという思いを抱えているというお話もありました。
その方に支援できずに断ってしまうという介護側の現状や、医療側でも受けはするけれども、「善意だけでは続けられないのでは」という意見がありまして、やはり「市としてどう考えるのかという意見交換の場があったほうがよいのではないか」という意見が出ておりました。以上です。

渡邊:ありがとうございました。どのグループでも「意見交換ができる場がある」「顔が見える機会をつくる」ということが、非常に重要だと改めて思います。
では、次のグループの皆さまからお願いいたします。

退院時の「共同指導」に参加しリハビリ面でアドバイス

大段:北見赤十字病院で理学療法士をしております大段です。このグループは、私、理学療法士と訪問看護師さん、北見市役所の方と渡邊先生の4人でディスカッションしました。
工夫していることとしては退院支援の話で、多職種連携の話が先ほどほかのグループでもありましたが、リハビリのほうでも退院時の「共同指導」に参加しております。北見市はどうしても訪問リハビリの支援が少ないので、リハビリのほうから訪問看護師さんに、リハビリ的なことで「こういう感じでやっていけばよいのではないでしょうか」というようなアドバイスをさせていただいているということを話し合いました。
また、苦労していることとしては介護保険の話で、先ほども物の導入などに時間がかかるという話もあったのですが、やはり最初の取っかかりの部分をどうしようかというところで、ACPや、これから状態がこう変わるという患者さんの需要について、なかなかイメージがつかないというところがあるかなと思っています。
そのため、こちら側としては、早くから介護保険を申請しておいたほうがよいのではないかと思いますし、ご家族の方も必要だとは思いますが、なかなかご本人が受け入れられないということが多々あるのではないかというところは、苦労しているという話がありました。以上です。

渡邊:ありがとうございます。では、次のグループの皆さまからお願いします。

苦痛の緩和と患者さん・ご家族の思いに寄り添うことを大事にして

サカイ:訪問看護ステーションたんぽぽのサカイです。
私たちのグループでは、まず、苦労していること、何か頑張っていることなどについて話をしました。苦労しているところでは、やはり在宅での看取りの時には家族の支援がとても必要になるのですが、家族がいなくて、でも、「最期まで1人でも家で過ごしたい」「サービスはできるだけ来てほしくない」など、結構難しいケースがあり、その時にも病院やほかの多職種の方と相談しながら、どういうふうにこの人の望みをかなえられるかというところを考えていたという事例の情報共有をしました。

大事にしているところは、やはりご家族とご本人がどう過ごしたいかという思いに寄り添うことで、多職種と連携をしてかかわっていけたらと思っています。
その中で、やはり先ほどもほかのグループから出ていたのですけれども、人員不足というところで、大規模ステーションもあれば人数の少ないステーションもあって、ターミナルの方をみるとなると、やはり緊急の訪問が増えて、ステーションでは毎日が夜勤のような感じになってしまうなどの苦労があるのではないかと思っています。
タイムリーに看護展開をしていかないといけないこと、あとは患者さんとご家族の気持ちが揺れ動く中で、やはりご本人が「つらい、痛い」と言う姿をご家族は見るのがつらいので、苦痛の緩和が一番大事になるのではないかというところでは、病院としっかり連携をして苦痛の緩和を図って、その人がどのように過ごしたいかというところをしっかりサポートしていきたいということを話し合いました。
また、やはり人手不足で、介護の手が足りない、ヘルパーを入れたい、お風呂も入りたいけれども、北見市には訪問入浴サービスがある所は2事業所しかなくて、サービスの調整をしている間にすぐ亡くなってしまうなどのケースも多々あるので、どう寄り添っていくかというところが課題だとお話ししました。以上です。

渡邊:ありがとうございます。そのほかのグループの皆さん、今までになかった論点で何かありましたら、いかがでしょうか。では、関さんから。

メディカルスタッフや介護スタッフと医師のやりとりが循環していくことが必要

関:どなたとも話をしておりませんが、今の報告を聞いて感じたことがありました。医療は命や健康をつなぐ役割で、その医療が手当てをして、痛みを取ったり、治療をしたりできて初めて、介護サービスはその人としてどう生きるかということが考えられる、これがいわゆる医学モデルと生活モデルの役割なのだろうと思います。
今日のお話の中では、痛みを取り除いたり安楽に過ごせたりという、生きていく最低限の条件をどう整えるかという課題がまず1つありました。そして、それを引き継ぐ時にどのような情報のやりとりをするのか、おそらく、これをつないでいくのがACPなのだろうと思います。本間先生が報告をされた、「診療方針をきちんと医師がつくる」ということは非常に重要で、診療方針がまとまらなければチームは動きません。
ただし、患者さんやご家族の意思も変化をしていく時に、医師からの命令を待つだけではなく、それをキャッチしたメディカルスタッフや介護サービスの人たちが医師に、改めて診療方針に変化が必要なのかどうか、そういったことをフィードバックする、そういったお互いのやりとりが、循環をしていくことが必要なのではないかと感じました。

渡邊:ありがとうございます。ぜひコメントやご意見、チャットでももちろん大丈夫ですけれども、いかがでしょうか。

関:ないようですので、渡邊先生からお願いいたします。

アドバンス・ケア・プランニングは「前もって」

渡邊:先ほど私は1つのグループに入らせていただいたのですけれども、やはりACPの「アドバンス」は要するに「前もって」です。その「前もって」をいつするかというところは、やはり前もって話をしておかないといけないのです。
迫られて、あるいは、せかされて何か決めなくてはいけないということは、やはりご本人にとってもご家族にとっても、かかわるわれわれ医療者にとっても、少しストレスがかかったり、これで本当によかったのかなと思ったりすることがたびたびあります。
そこは、どこに住んでいらっしゃるか、あるいは拠点病院との距離がどのぐらい離れているかということは、あまり関係ないというと少し乱暴になってしまいますが、やはり共通の問題であって、では、それに対して医療従事者がかかわれることは、おそらく、経験や知識は多く持っているし、がん患者さんがこれからどういう道筋をたどるかというイメージはできていると思うので、そこをご本人・ご家族が受け入れられやすいかたちでお伝えして、その上で耳を傾けることだと思います。
そこのキャッチボールをしていかないとなかなか難しいというのが、大事なことだと思ったのと、私も普段がんの診療をやっていますし、地域だと病院など、がん治療をしていらっしゃる先生方も含めて多くの方がいらっしゃるのですけれども、逆に、そうだと気付かないことも結構あるので、そこはやはり、こういう場で教えていただくのは非常に大切だと思いながら伺っておりました。

ぜひまだご発言いただいていないグループの皆さまも、順番に、今までにない話でも、先ほど話していないと思い付いたことでも大丈夫です。ぜひお願いします。

抗がん剤の内服のタイミングを変更して副作用を軽減

石川:北見保健所の石川と申します。私たちのグループでは、うまくいったこと、苦労したことというよりは、事例のお話を通して、うまくいっているのではないかと少し話が盛り上がりました。
薬剤師さんが訪問していた事例では、抗がん剤の内服の副作用で、朝内服するとお昼ぐらいには具合が悪くなって寝て過ごさなければいけない状況の方について、内服のタイミングを変更していただくようにお話をして夕食後の内服にしたところ、日中の体のだるさが取れて、かなり生活するのが楽になったというお話がありました。
ただ薬を追加するだけではなくて、内服する時間を変更するなど、いろいろな調整の仕方を薬剤師さんはやはりよく知っていらっしゃるので、そういうところがチームで共有できる、非常によい事例だったというようなお話が出ていました。

また、訪問診療をしていない医療機関に通っていた、50代の旦那さんと2人暮らしの女性の方ご本人が、「どうしても最期を家で逝きたい」という希望があって、もともと通っていた病院の外来の看護師さんやケアマネジャーさんにかなり調整をしていただいて、訪問診療をしている医療機関に移られて、最期をご自宅で迎えることができたという事例のお話もありました。
ご本人にそういった強い意志があると、支援者の皆さんもやはりご本人の希望をかなえたいということで、少しハードルが高い調整も頑張って支援されているというような現状もお話しいただきました。
あとは今、結構訪問看護師さんもヘルパーさんも忙しくて、なかなか仕事を頼めないというような状況もある中で、薬剤師さんも服薬の管理で訪問に行っていただいて、いろいろな職種が毎日代わる代わる訪問することによって、結構、1人暮らしや介護力がないご家庭の方でも、ぎりぎりまで在宅を継続していけるというようなところで、やはり多職種で連携して支えていくという事例を共有できました。以上です。

渡邊:大切なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。多職種で患者さん・ご家族と日々お話ができるというのは、非常に患者さん・ご家族にとっても安心だと思いました。

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掲載日:2023年11月20日
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