本講座は、社会と医療、経済と医療の関係（あり方）について、広い観点から学術的な議論を進めることを主旨としています。特に、医療の価値（Value of Medicine）を探求し、得られた成果を社会全体に認知させていくことを講座の一つの使命に位置づけています。例えば、社会経済的な要請の高い心臓血管を含む循環器領域などを柱に、関わる議論を始めていく予定です。

　具体的には、健康であること、余命を伸ばすことなどの社会経済的（Socioeconomics）な意義を明らかにし、必要となる資源投資や施策制度などの環境整備を促すことを目的とします。たとえば、健康食品、医薬品、医療機器、または医療情報などについて、健康改善に関わる国民や患者への貢献、産業振興に関わる実体経済への影響などを定量化し、制度設計などの議論へ道標（エビデンス）を示すことを実践していきます。また、医療の価値の見える化で、「医療財源の適正確保」や「医療資源の有効活用」を促し、価値のある医療技術は、社会経済的により適正な対価が設定されることについても論じます。

　このような方針のもと、本講座が推進する「医療の臨床経済的な価値研究」などによって得られた成果などは、我が国の医療システムの発展、ひいては国民の健康福祉の向上に資することが期待されます。医療制度の行く末に閉塞感が漂う時代にも差しかかり、本講座の存在はさらに重要性を増していると考えます。