ハンズオンリー(胸骨圧迫のみの)CPR:病院外における突然の心停止に対するバイスタンダーの対応に関する呼びかけ2008年3月31日Michael R. Sayre, Robert A. Berg, Diana M. Cave, Richard L. Page, Jerald Potts, Roger D. White
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突然倒れた成人を目撃したバイスタンダーは救急医療サービス(EMS)システムを起動させ、傷病者の胸の中央を強く速く押すことで良質な胸骨圧迫を行い、かつその中断を最小限にとどめなければならない。この推奨事項は、最近の科学的研究の評価とAHAの緊急心血管治療(ECC)委員会のコンセンサスに基いている。この科学的推奨は、病院外において突然の心停止を目撃した バイスタンダーを対象とした「心肺蘇生(CPR)と緊急心血管治療(ECC)のための2005年のAHAガイドライン」を修正し、明確にするために発表する。
10年前、AHAは蘇生科学者の作業部会に、バイスタンダーによる心肺蘇生の推奨手順に人工呼吸が含まれていることに関して再検討するよう要請した。作業部会は、動物実験によるまたヒトでの研究の報告を再評価し、1997年の声明1においてそのまとめを報告した。この時の声明の重要な結論は、CPRの際に口対口人工呼吸を実施する当時のガイドラインはその時点では変更するべきではないというものであった。
1997年の声明で引用されている動物実験において、心室細動による心停止が短時間(6分未満)であるとき、胸骨圧迫に人工換気を加えることは胸骨圧迫のみを行うことと比べても転帰を改善しなかった(LOE6)2-8。全米病院外CPR登録(a national out-of-hospital CPR registry)によるヒトのデータの解析では、バイスタンダーCPRに際して、胸骨圧迫に人工呼吸を加えることが胸骨圧迫のみを行うことと比べ生存率を改善させるとは示されていない(LOE4)9,10。1997年の声明では、上記の研究を根拠にバイスタンダーのCPR手順から換気を除くことが妥当とはみなされなかった(were not deemed sufficient to justify the elimination of ventilations)にもかかわらず、「人工呼吸のタイミング、単位時間当たりの回数(rate)および深さに焦点をしぼると同時に、どのような状況で人工呼吸補助が必要になるかに注目した研究を行うよう強く促した。声明は「学び、知識を保持し、実際にCPRを実行することに対する現場での障害について一層の研究を...」とも促した。加えるに、声明には「口対口換気をしない胸骨圧迫を行うことは、全く蘇生を試みないことよりはるかによい」という副次的な(secondary)結論も含まれていた1。
CPRとECCに関するAHAの最近のガイドラインは、1997年の声明の主要なまた副次的な結論を反映して、「最良のCPRの方法は換気と協調して行う(coordinated with ventilations)胸骨圧迫であるが、人工呼吸を行うことができないか、したくなければ、一般の人は胸骨圧迫のみを行うCPRをするべきである(Class IIa)」とした11,12。加えて、訓練を受けていないバイスタンダーに対して通信指令が口頭指導をする場合は、胸骨圧迫のみのCPRを(指導するよう)推奨している11,12。
「CPRとECCのためのAHA 2005年ガイドライン」はバイスタンダーCPRの普及と質の向上の必要性について言及した。ガイドラインと(訳者註:それをもとにしたAHAの)トレーニング教材は良質な胸骨圧迫を行うことの重要性を強調した。つまり、圧迫を十分な速さと深さで行い、(圧迫後は)胸郭をしっかり元のかたちに戻し、圧迫の中断を最小限にする。(2005年の)ガイドラインは胸骨圧迫の中断の頻度を少なくするために、成人に対して胸骨圧迫・換気比を増やし30:2ので行うことを推奨した。さらにAHAのコースでは、受講者が中断時間(人工呼吸を行うための中断を含めて)を10秒以下に制限した、質の高い胸骨圧迫を練習する時間を増やした。
この科学声明の目的は、2005年以降発表された研究を総括するととともに「AHA CPRとECCのための2005年ガイドライン」を明確なものにし、磨きをかける(elaborate on)ことである。この声明において、2000年と2005年のAHA CPRとECCガイドラインを策定した際に引用された研究は、星印(*)で示している。 同ガイドラインが発表されてから出版された研究は星印2つ(**)で示している。(なお)この報告では、同ガイドライン策定時につくられた(developed)エビデンス分類の指標を用いている。
ブタの短時間の心停止(心室細動を3分間放置)の実験において、従来法のCPRと胸骨圧迫単独との比較が行われたが、異なる結果が示された。Dorphら13は10分間のCPR中 両者に血行動態の差は認めなかったが、救助呼吸を受けなかった群で生存率が低下した事を示した(LOE 6)。Bergらの実験14では、12分間の良質な15:2のCPR(救助呼吸あり)を受けた動物において、冠動脈潅流圧の積分値(integrated coronary perfusion pressure)と左室血流量の中央値が減少するが、左心室心筋酸素供給量や24時間後に神経学的異常なく生存していた動物の率には、この群と胸骨圧迫だけを受けた群との間で差がなかった。バイスタンダーCPRを模したブタによる別の研究において、Kernら15は気管チューブを閉塞させた状態で胸骨圧迫のみを6分間行った群と通常のCPRを行った群と、は24時間後の生存率と神経学的な転帰に差を認めなかったと報告している。1人の救助者によるバイスタンダーCPRを模した2つの動物実験(1つは従来法として15:2の圧迫:換気比で救助呼吸により16秒の胸骨圧迫中断して胸骨圧迫単独と比較、もう1つは従来法として30:2の圧迫:換気比を用いて胸骨圧迫単独と比較した)ともに、従来法のCPRと比較して胸骨圧迫単独の方が転帰が良いことを示していた。
肺の拡張と換気のない心停止中に血液の酸素飽和度が次第に減少することを認めることは重要である(It is important to acknowledge that・・)。蘇生処置中のいずれかの点をとれば、胸骨圧迫単独(人工呼吸なし)による血行動態改善の利点はこの酸素飽和度の減少により相殺されることになる。そして最終的な結果は(訳者註:心筋への)酸素供給 のいかんによって決まることになるだろう(the ultimate result will be a compromise in oxygen delivery)。ブタの心停止の研究18(心室細動を3分間放置し、その後12分間のCPRを施行)は、救助呼吸なしの胸骨圧迫を4分間行った後、圧迫100回毎に2回救助呼吸を行う方が胸骨圧迫のみよりも生存率が高くなることを示唆している。
窒息性の心停止に対する、質の高い圧迫によるCPRを模した動物実験19,20では、胸骨圧迫のみよりも救助呼吸を追加した方が転帰がはるかに良好であった。しかし、このタイプの心停止においてさえ、胸骨圧迫のみを実施することは全くCPRをしない場合より優れていた。これらの研究は、窒息性の心停止(例えば溺水、外傷、気道閉塞、急性呼吸疾患、無呼吸(薬物中毒によるものなど)、小児の心停止、長時間経過した心停止)に対しては、CPRの重要な構成要素として救助呼吸を欠くことができないことを示している。
人における臨床研究
1997年に人工呼吸に対するAHA声明が出た後、、バイスタンダーによる通常のCPRと胸骨圧迫のみのCPRの有効性を比較した5つの重要な人における研究が発表された(表)。これらの研究は動物実験や過去に発表されたヒトにおけるデータと矛盾するものではない9,10。
2000年にHallstromら21が、通信指令の口頭指導の内容を胸骨圧迫のみのCPRと人工呼吸を併用したCPRの2群に無作為に割り付けて実施したところ、両群で院外心停止患者の生存退院率は同等であった。(また)Waalewijnら22は、胸骨圧迫しか行わないことで、従来法のCPRと比べ生存退院率が低下しないことを示した(LOE 3)。
ヒトのバイスタンダーCPRに関するランダム化されていない観察研究が2007年に3編発表された。この3つの研究のどれもバイスタンダーの処置から換気を除いた時に生存率が悪くなると言う結果は出ていない。神経学的に問題のない30日後の生存を重要なエンドポイントとすると、成人の目撃された院外心停止(心原性、非心原性どちらも含む)に対するバイスタンダーによる胸骨圧迫のみのCPR後の生存率は、従来法のCPRを受けた後の生存率と差がなかったと報告されている23(LOE 4)。(また)石見ら24は心疾患が原因と考えられる目撃された心停止患者に対して胸骨圧迫のみを行った群と、従来法のCPRを行った群とで、神経学的後遺症のない1年後の生存率に差を認めなかったと報告した(LOE 4)。(一方)Bohmら25は、バイスタンダーCPRを受けた院外心停止の成人登録患者の1カ月後の生存率を検討した。それによれば、胸骨圧迫のみを受けた患者と通常のCPRを受けた患者との間に統計的有意差は認められなかった(LOE 4)。Bohmら25もまた、バイスタンダーCPRを受けた院外心停止の成人患者登録の全例において1カ月後の生存率を検討したところ、胸骨圧迫のみを受けた患者と従来法のCPRを受けた患者との間に有意差は認められなかった(LOE 4)。これらの研究ではバイスタンダーCPRの質を評価したり対照化する(control)ことはできなかったし、各バイスタンダーは「ILCORの2005年国際コンセンサス(CoSTR)」26または「CPRとECCの2005年AHAガイドライン」12が出版される前に作られたガイドラインに従って訓練されている。これらの2005年のガイドラインは胸骨圧迫の中断を最小限にしてより有効な圧迫を行うことを強調している。
ハンズオンリー(胸骨圧迫のみの)バイスタンダーCPRにより、CPR開始までの時間が短縮され、成人の院外心停止における最初の数分間の胸骨圧迫中断が減りより多くの圧迫を行えるかも知れない。いくつかのヒトでの研究において、ともに訓練された救助者が従来法による一人法CPRを行う方がハンズオンリーCPRを行うよりも、CPR開始までに時間がかかったことが示されている。このことは、(従来法CPRでは)複雑な精神運動作業を実施する際にさらなる認知・情意の負担が生じていると説明することができる。
AHA2005年ガイドラインよりも前に訓練を受けたBLSプロバイダーに関する研究27,28では、一般市民、ヘルスケア・プロバイダーともに従来法のCPRを行う場合、換気を行うために推奨されるよりもはるかに長い時間(それぞれ16.1、10.1秒)胸骨圧迫を中断しており、胸骨圧迫のみの救助者よりも少ない回数しか圧迫していないことが示されている。ある研究29では、訓練後18カ月経つと、胸骨圧迫のみを訓練された者よりも、従来法のCPRを訓練された者の方がより能力(posttraining performance)が低下していた。しかしながら、バイスタンダーが適切な速さと深さで胸骨圧迫のみを長時間続ける能力に関してはよく分かっておらず、さらなる研究が必要である。
バイスタンダーがCPRを躊躇することへの推測される理由(Reasons cited prospectively for the reluctance)として、口対口人工呼吸の実施に伴う感染への懸念などがよく挙げられる39-45。実際のバイスタンダーを対象とした研究において、Sworら35は、CPR教育を受けたバイスタンダーが院外で心停止の現場に居合わせた際、大部分のバイスタンダーはCPRを実施できなかった理由として狼狽したことや害をなすことへのおそれを挙げ、口対口人工呼吸を躊躇したのは1.4%に過ぎず、感染へのおそれを挙げた者はいなかったと報告している(LOE 3**)。Hauffら46も、通信指令が口頭でバイスタンダーCPRを指導するに当たっては、感染へのおそれがとりわけ大きな懸念や障害ではなかったとしている(LOE 4)。
CPRでは口と口が接触するという考え(expectation of mouth-to-mouth contact during CPR)を取り除くことはCPRの格好よさ(美的であること)を高め(improve esthetics)、バイスタンダーとなるかも知れない人が表明する感染への懸念への一つの答えとなりそうである。CPRトレーニングの簡素化はとりわけ、受講者が正しい胸骨圧迫法を学び実行する能力をも向上させる(LOE 6**)47。最後に、通信司令によるCPRの口頭指導の内容から人工呼吸を除外することで、模擬実習でも(LOE 6*,**)48,49、病院外の実際の蘇生でも(LOE2*)21、圧迫開始までに要する時間が短縮した。
AHA ECC委員会は、すべての心停止傷病者が良質な胸骨圧迫(適切な速さと深さで、中断を最小限とした圧迫)の恩恵を受けるであろうが、心停止傷病者の一部(例えば、小児や溺水、外傷、気道閉塞、急性呼吸器疾患、無呼吸{薬物過量によるものなど})は従来のCPRコースで教えられる、付加的な処置の恩恵を受けるかもしれないことを認めている。従って、委員会は引き続き市民に対して、CPRトレーニングを受けて心血管や呼吸器に関連した幅広い医学的緊急事態に対処する際に必要となる精神運動技術を学ぶことを奨励して行く。
多くの疑問が未解決のままである。ECC委員会は、これらの勧告と提言(these recommendations and the call to action)に重要な制限事項があることを認識している。これらの推奨は現時点で得られている最善の知見に基づいているが、この知見は完璧からはほど遠い。われわれはCPRを実施しやすくすることで、バイスタンダーCPRによる全体的な成果が改善されると信じてはいるが、それが臨床研究で証明されたわけではない。人工呼吸のみで救命の可能性があるにもかかわらず、人工呼吸が実施されない状況があるかもしれない。救命のために人工呼吸が必要不可欠となる、心停止からの経過時間が特定されるかもしれない。従来のCPRを既に習ったバイスタンダーの一部に混乱が生じるかもしれない。成人傷病者を対象としたこれらの勧告の実施は、小児傷病者(間違って適用されれば)や他の窒息性心停止の傷病者に不利に働きかねない。新しい教育方法が出現して、従来通りのCPRで効果的な胸骨圧迫と人工呼吸をバイスタンダーが学習し実施するための能力を向上させるかもしれない。ECC委員会はすべての既知の知見のそれぞれの重要度を鑑み、さらに未解決の多くの問題(unanswered questions)について勘案し、注意深く熟考した上で、本勧告によってもたらされる利益が不利益を上回ると考えたのである。
ECC委員会は、AHAおよび他の研究基金組織(例えば、国立衛生研究所(NIH)など)が国民の利益のために、この勧告で引用されたまだ答えの出ていない重要な問題の答えを出すための研究に、積極的に研究費を提供することを強く推奨する。新たな研究を行いエビデンスを追加することのみが、今後のガイドラインがバイスタンダーCPRの最適な方法を推奨することと可能とするだろう。かくも多数の命に直接影響する、この影響力の大きな(high-impact)研究を推進するための研究費を出すことは、優先されるべきである。
この推奨の及ぶ範囲は、成人の目撃された、おそらく心原性と思われる病院外の心停止(例えば、突然の卒倒、もしくは心筋梗塞の兆候を示した後の卒倒)に対応するバイスタンダーへの実施呼びかけに限られる。このことは、この主題についての「CPRとECCに対するAHA 2005年ガイドライン」を明確化することを意図している。ECC委員会とBLS分科会に属する科学者の有志は、ILCORとAHAの後援のもとに、国際的な蘇生科学の評価に引き続き関与して行く。ILCORの評価活動と継続中のAHAの活動の両者の一部として、ECC
委員会とBLS分科会のそれぞれのメンバーは、市民救助者や医療従事者が、全ての原因による心停止傷病者に対して行う蘇生の試みに関連する、専門家による評価や審査を受けた研究(peer-reviewed studies)をモニターし評価し続ける52。
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1-year survival
70/2817 (3) 19/441 (4) 25/617 (4) 25. Bohm et al, 2007 All cardiac arrests with bystander CPR including cardiac and
noncardiac causes 1-month survival - 591/8209 (7) 77/1145 (7) Survival after out-of-hospital for witnessed ventricular fibrillation cardiac arrests only 23. Nagao et al, 2007 45/549 (8) 24/124 (19)† 23/205 (11)† 24. Iwami et al, 2007 44/535 (8) 14/122 (12) 18/161 (11)
バイスタンダーの能力(Lay Responder Performance)バイスタンダーの行動に対する障壁を減らす
バイスタンダーによるハンズオンリーCPRの恩恵を受けるのは誰か
(Who Should Receive Hands-Only CPR From Bystanders?)制限事項と注意点
推奨と実施の呼びかけ(Recommendations and Call to Action)
背景:酸素で充分満たされた混合ガスを用いる蘇生が行われた心停止の齧歯類動物(リスなど)モデルにおいて、蘇生の可能性と生存は陽圧力換気に影響を受けなかった。最近の研究では、より大きな動物モデルにおいて、前胸部圧迫の間に自然発生的にあえぐことで発生する一回換気量が計測されている。
方法:平均体重34kgの家畜豚が、ペントバルビタールで麻酔され、電気的に心室細動(VF)が誘発されて、4分間の無処置のVFの後、前胸部圧迫が開始された。22匹の豚は、前胸部圧迫とともに2つのうち、つまり、酸素を用いた陽圧換気かまたは挿管チューブを通しての外気圧と同じく供給された酸素のどちらか1つの介入を受けた。8分間の前胸部圧迫の後、除細動が試みられた。
結果:人工換気がない心肺蘇生術の間、動脈酸素分圧は100mm Hgを一貫して上回ったが、動脈PCO2の非常に穏やかな増加のみが証明された。機械的換気が行われた(7/11または8/11)かどうかにかかわらず、心臓蘇生能力と48h後の生存は、酸素吸入を継続された動物においてほぼ同じであった。人工換気がない場合、前胸部圧迫と自然発生的なあえぎにより、5L以上の分換気量を生じた。
結論:陽圧人工換気は、心停止の豚モデルにおいて、蘇生能力または蘇生後予後を改善しなかった。
研究目的:研究目的: 胸骨圧迫に人工呼吸を追加したCPR(CC+V)と胸骨圧迫のみ(CC)のCPRとの比較。
デザイン: 無作為抽出による前向き研究。
設定: 実験室。
方法(Intervention):18頭の飼育ブタ(20〜35kg)において2分間の心室細動を起こした後、10分間、CC もしくはCC+Vで治療し、その後 標準的な二次救命処置を実施した。
結果:血行動態、生存率および神経学的転帰を調べた。CC+V群(n=8)とCC群(n=10頭)の両群の全頭で自己心拍再開をみた。各群において、それぞれ1頭が1時間以内に死んだ。CC+V群では8頭中7頭が24時間後および48時間後に生存していた。一方、CC群では10頭中9頭が24時間後生存し、8頭は48時間後も生存していた。48時間後に生存していたブタは全て、神経学的に正常であった。
結論:今回のバイスタンダーCPRに関する実験モデルにおいては、CPRを胸骨圧迫のみで実施した群と人工呼吸を追加した群において、血行動態、48時間後の生存率、また神経学的転帰に有意差を認めることはできなかった。
背景:口対口救助呼吸はバイスタンダーによるCPR実施の障壁になっている。病院外心停止ブタモデルを用いて、単独救助者によるバイスタンダーCPRを模したCPR中(during simulated single-rescuer bystander CPR)の補助換気の必要性について検討した。
方法と結果:心室細動の5分後、ブタを無作為に3群に割り付け、8分間 以下の処置を行った。すなわち、17%酸素と4%二酸化炭素を用いたバッグバルブ換気(hand-bag-valve ventilation)+胸骨圧迫(CC+V群)、胸骨圧迫のみ(CC群)およびCPRなし(対照群)。その後標準的なニ次救命処置を施した。蘇生に成功した動物には1時間の集中治療的サポートを行い、24時間観察した。CC群10頭の全て、CC+V群の10頭中9頭そして対照群の6頭中4頭で自己心拍が再開した。CC群の10頭中5頭、CC+V群の10頭中6頭が24時間生存したが、対照群6頭中 生存したものはいなかった(CC群と対照群の間でp=0.058、CC+V群と対照群の間ではp<0.03)。24時間生存した全ての動物は神経学的に正常か、ほぼ正常であった。
結論:今回の、病院外での単独救助者によるバイスタンダーCPRのモデルでは、初期の蘇生成功、24時間生存および神経学転帰において、胸骨圧迫のみを行ったものと胸骨圧迫+補助換気を行ったものとの間で同様の結果が得られた(were similar)。両方法ともバイスタンダーによるCPRが無いものと比較して、転帰を改善させる傾向があった。
訳者註:CC群と対照群との間でp=0.058、CC-V群と対照群とではp<0.03とのことである。ここは有意水準をp<0.05として、「CC+V群は対照群と比較して転帰を改善させたが、CC群は対照群よりも転帰がよいという傾向にとどまった」とするべきではないか(24時間生存例の10頭中1頭の差に過ぎないが)。
背景:口対口救助呼吸は、バイスタンダーCPR実施に対する障壁である。われわれは、病院前心停止ブタ心筋梗塞モデルにおいて、単独救助者によるバイスタンダー対応を模した(simulated single-rescuer bystander CPR)CPR中における補助換気の必要性について評価した。
方法と結果:43頭のブタの左冠状動脈前下行枝中央部の内腔に鉄製の筒を留置した(placed in the mid left anterior descending coronary arteries)。心室細動の2分後、動物を無作為に、10分間の17%酸素と4%二酸化炭素での用手バッグバルブ換気+胸骨圧迫(CC+V)、胸骨圧迫のみ(CC)およびCPRなし(対照)の3群に割り当てた。その後標準的な二次救命処置(ALS)を施行した。蘇生に成功した動物に対しては、1時間の集中治療を行いその後24時間観察した。CC群14頭のうち5頭、CC+V群15頭のうち3頭、対照群14頭のうち1頭が24時間生存した(CC群と対照群の間でP=.07)。心筋の酸素供給量と消費量は生存した動物が生存しなかった動物を上回ったが、CC群とCC+V群との間にこれらのパラメータに差はなかった。
結論:この、病院前単独救助者バイスタンダーCPRの急性心筋梗塞モデルでは、補助
換気は転帰を改善しなかった。
キーワード:心肺蘇生、心停止、換気、心筋血流量、心室細動、肺換気、生存
背景:心停止の初期治療に人工呼吸が必要かどうかは、未だ議論が続いている重要な公衆衛生上の課題である。この研究は、ヒトの目撃された院外心停止で報告されているように、心室細動を6分間治療していないブタの心停止モデルにおいて、人工呼吸が自己心拍再開に影響するかどうかを決定するために計画した。
方法と結果:24頭のブタを無作為に、最初の10分間に胸骨圧迫と人工呼吸を行った群と人工呼吸を行わず胸骨圧迫のみを行った群の2群に分けた。冠潅流圧と分時換気量を継続的に記録した。一定時間間隔で(at intervals)動脈血および混合静脈血ガス分析を実施した。自己心拍の再開は5分間以上、大動脈収縮期圧が80mmHgを上回った場合とあらかじめ定め(defined prospectively)、これを主要な結果変数(the primary outcome variable)とした。
すべてのブタに麻酔をかけ、筋弛緩し、気管挿管した。心室細動を誘発して6分間胸骨圧迫をしないままで維持し、引き続いて機械を用いた胸骨圧迫を10分間行った後に除細動を試みた。自己心拍が再開しなかった場合はアドレナリンを投与し、人工呼吸と胸骨圧迫をさらに3分間行った。除細動を再度試み、自己心拍再開の有無を評価した。心停止前の平均心係数、冠動脈潅流圧、動脈血および混合静脈血ガス分圧については、群間の差を認めなかった。しかし、胸骨圧迫開始9分後には、人工呼吸群と非人工呼吸群との間で有意差が認められた。非人工呼吸群では有意に(P<0.05)、平均動脈血酸素分圧が低く(38±17mmHg 対 216±104mmHg)、二酸化炭素分圧が高く(63±16mmHg 対 35±8mm Hg)、混合静脈血酸素分圧が低かった(15±7mmHg 対 60±7mmHg)。人工呼吸群では12例中9例(75%)で自己心拍が再開したが、非人工呼吸群では12例中1例(8%)にとどまった(P<0.02)。
結論:今回の心停止動物モデルでは、人工呼吸は蘇生に重要であった。未治療心室細動時間が長かったことと、非人工呼吸群でより顕著であった低酸素症と呼吸性アシドーシス(hypercarbic acidosis)とが、この人工呼吸の重要性に関連している可能性がある。
研究目的:これまでのブタの蘇生研究においては、換気されずにより高度な低酸素症や呼吸性アシドーシス(hypercarbic acidosis)になっている動物と比較し、換気されたものでは自己心拍再開率が改善したと報告されている。われわれは、心停止後の自己心拍再開に対する低酸素症と呼吸性アシドーシスの個々の影響を調べるために、同じモデルを用いた。
デザイン:心停止の実験室モデル
セッティング:大学教育病院の研究室
実験動物:国内産の豚(23〜61kg)
介入:ブタ24頭を、85%の酸素と15%の窒素(対照群)、95%の酸素と5%の二酸化炭素(高炭酸血症群)、10%の酸素と90%の窒素(低酸素血症群)で蘇生中の換気を行う3つの群に無作為に割付けした。全てのブタを心室細動として6分間CPRを行わず、その後10分間上記のいずれかの換気方法でCPRを行い、最後に除細動した。自己心拍再開がなかったブタではアドレナリンを投与、また85%酸素とし、さらに3分間のCPR、そして除細動を行った。
計測と結果:10分間のCPRの間に、高炭酸血症群では動脈血および混合静脈血のPO2の平均値に有意な差がない一方で、動脈血CO2分圧の平均(SD)が対照群より高く(34±6に対し47±6mmHg;p<0.01)、また混合静脈血のCO2分圧が高かった(59±8に対し72±14mmHg)。低酸素血症群は対照群と比べ、動脈血、混合静脈血PCO2の平均値には有意な差がない一方で、動脈血PO2(228±103mmに対し43±9mmHg)、静脈血PO2(35±7mmHgと比較して22±5 mmHg)ともに下回っていた。このように、高炭酸血症群における低酸素がない高炭酸血症と、低酸素血症群における高炭酸血症がない低酸素血症を作り上げることができた。自己心拍再開率は対照群が6/8(75%)、高炭酸血症群が1/8(13%)、低酸素血症群が1/8(13%)であった(p<0.02)。
結論:低酸素血症と高炭酸血症ともに、心停止からの蘇生に対して個々に悪影響を及ぼした。今回の処置していない時間が長い心停止のモデルにおいて、十分な換気は蘇生に成功する上で重要であった。
背景:多数の動物実験や2つの臨床研究において、胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせによるバイスタンダーCPR(CC+RB)は、胸骨圧迫のみのCPR(CC)と比較して、動脈血酸素飽和度をpHを改善するにもかかわらず心室細動(VF)からの救命率を改善していない。
方法と結果:VF発生から無処置で3分間経過した後に、14頭のブタ(32±1kg)を無作為にCC+RB群とCC群に分けて12分間処置を施し、その後二次救命処置を実施した。14頭すべてが24時間生存し、うち13頭では神経学的に良好な転帰を得た。CC+RB群では大動脈拡張期圧が2回の人工呼吸中に常に低下した。従って、それぞれの圧迫サイクルにおける最初の2回の胸骨圧迫は、最後の2回の胸骨圧迫より平均冠動脈潅流圧が低かった(14±1mm Hg 対 21±2 mmHg、P<0.001)。CPR 1分間あたりの胸骨圧迫回数もCC+RB群が少なかった(62±1回 対 92±1回、P<0.001)。その結果、CPR 1分間毎の冠動脈灌流圧の積分値(integrated coronary perfusion pressure)もCC+RB群が低かった(最初の8分間でP<0.05)。さらに、CPR開始後2分〜5分の間には、螢光球状微粒子(マイクロスフェア)法によって測定した左室血流の中央値はCC+RB群で60mL 100g-1 min-1であったのに対して、CC群では96mL 100g-1 min-1であった(P<0.05)。CC+RBでは動脈血酸素飽和度が高かっため、左室心筋への酸素供給量に差はなかった。
結論:人工呼吸による胸部圧迫の中断は、心室細動に対するCPR中の血行動態に悪影響を及ぼし得る。
キーワード:心肺蘇生法 、心停止、血行動態、細動、換気(人工呼吸)
背景:心肺蘇生(CPR)において、胸骨圧迫が作り出す血流を中断させることは有害である。口対口人工呼吸のために胸骨圧迫を中断すると、冠動脈潅流圧が中断前に得られていたレベルまで「再上昇」するのに一定の時間を要することが、データによって示されている。(しかし、)換気のための中断によって生じるこのような血行動態上の悪影響が、転帰にまで影響を及ぼすのか否かについては、判っていない。
方法と結果:30頭のブタ(体重35±2kg)を3分間心室細動で未処置のままとし、その後12分間一次救命処置のCPRを行った。動物を、換気に呼気ガスを用いて標準的な気道(A)・呼吸(B)・圧迫(C)によるCPRを15:2の圧迫・換気比で行うか、胸骨圧迫のみを絶え間なく行うかのいずれかに、無作為に割り付けた。標準的な15:2のCPRを行った群では、2回の人工呼吸の度に胸骨圧迫を16秒間中断した。心停止から15分経過時点で除細動を試みた。蘇生した動物は1時間集中治療を行い、その後維持施設で24時間管理した。主要評価項目である神経学的に正常な24時間生存は、胸骨圧迫のみを絶え間なく行うCPRを受けた群が有意に良好であった(12/15対2/15、P<0.0001)。
結論:単独の市民救助者による口対口人工呼吸は、胸骨圧迫がもたらす血液循環をかなりの間中断させる。胸骨圧迫のみを絶え間なく行うCPRは、標準的なABCによるCPRを(胸骨圧迫の中断に関して)臨床的に現実的なやり方で行う場合よりも、神経学的に正常な24時間生存が良好である。一次救命処置の初期の10〜15分間に胸骨圧迫を長々と中断せずに済む方法があれば、今後心停止からの転帰を改善するために真剣に検討すべきである。
キーワード:心肺蘇生法、換気(人工呼吸)、心停止、細動
背景:心肺蘇生と緊急心血管治療のためのガイドライン2005は、バイスタンダーによる心肺蘇生の換気と圧迫の比を、従来の人工呼吸を2回行ってから15回圧迫する方法(2:15CPR)から、胸骨圧迫を30回行ってから人工呼吸を2回行う方法(30:2CPR)に変更した(*訳者註)。この変更が明確な知見に基づくと言うよりも合意に基づくものであるということは、ガイドラインの中でも触れられている。本研究の目的は、目撃された心室細動による院外心停止のブタモデルにおいて、神経学的に正常な24時間生存を心肺蘇生の初期に人工呼吸を行う群とそうでない群との間で比較することにある。
方法と結果:64頭の被験動物を12分間心室細動とし、その後除細動を試みた。被験動物を4群に分け、バイスタンダーによる心肺蘇生(イ。胸骨圧迫のみ、もしくはロ。胸骨圧迫と人工呼吸を30:2で行う)に着手するまでの未治療の心室細動時間を、3分、4分、5分、6分と増加させた。未治療の心室細動とバイスタンダーによる心肺蘇生の時間をいくつか組み合わせた上で、全ての被験動物に対して心室細動誘発12分後に初回の除細動を試み、その後2005年ガイドラインで推奨されている二次救命処置を実施した。蘇生24時間後の神経学的に正常な生存は、胸骨圧迫のみの蘇生を受けた群では33頭中23頭(70%)であったのに対し、胸骨圧迫と人工呼吸を30:2で行った群では31頭中13頭(42%)に過ぎなかった(P=0.025)。
結論:心室細動による院外心停止の現実的なモデルにおいて、バイスタンダーによる初期蘇生で人工呼吸を行わない胸骨圧迫のみの心肺蘇生は、ガイドライン2005で推奨された胸骨圧迫と人工呼吸を30:2で行う心肺蘇生よりも、有意に良好な蘇生24時間後の神経学的に正常な生存を得た。
研究目的:心肺蘇生(CPR)中の胸骨圧迫と人工呼吸の最適比はわかっていない。われわれは、遷延した心停止とバイスタンダーCPRのブタモデルで、4つの異なる胸骨圧迫−人工呼吸CPR比を比較して、24時間生存率および神経学的転帰について究明する。
方法:40頭のブタに装置を取り付け、3分間の心室細動とそれに続く12分間のCPRを胸骨圧迫−人工呼吸比を以下の4つのモデルの一つに振り分けた。(1)15:2の標準CPR、(2)CC-CPR、12分間の人工呼吸なし胸骨圧迫のみ、(3)50:5CPR、英国の専門家によって主張された50:5の胸骨圧迫−人工呼吸比のCPR、そして(4)100:2CPR、4分間胸骨圧迫のみ、引き続き100:2胸骨圧迫−人工呼吸比のCPR。CPRに引き続き、標準的な2次救命処置(ACLS)、1時間の集中治療、そして24時間の観察、続いて神経学的評価を行った。
結果:4群では24時間生存率に統計学的有意差はなかった(標準CPR、7/10;CC-CPR、7/10; 50:5CPR、8/10;100:2CPR、9/10)。ブタの cerebral performance category scaleを用いて評価すると、24時間後の神経機能には有意な差があった。100:2CPRを受けた動物は、15:2の標準CPR群より24時間後の神経機能は有意に良好であった(1.5対2.5;P=.007)。100:2CPR群はさらに人工呼吸のない胸骨圧迫を受けたCC-CPR群より神経機能がよかった(1.5対2.3; P=.027)。冠動脈潅流圧、大動脈圧および心筋と腎血流量は、群間に有意な差はなかった。曲線下の積分値(an integrated area under the curve)としての冠動脈潅流圧は、標準CPR群よりCC-CPR群で有意によかった(P=.04)。分時換気とPs02はCC-CPR群で有意に低かった。
結論:バイスタンダーCPRのこの実験モデルでは、4分間の胸骨圧迫のみに引き続き100:2の胸骨圧迫−人工呼吸比を受ける群が、標準CPRおよびCC-CPRを受ける群よりよい神経学的転帰を達成した。既存のものに代わる新たな胸骨圧迫−人工呼吸比の検討が妥当かもしれない。
背景―心室細動による心停止に対する、バイスタンダーによる補助換気のない心肺蘇生法(CPR)には、補助換気がある場合と比べ同等の効果があるかもしれない。しかしながら、完全な窒息による心停止(大動脈脈拍欠如)に対して、胸骨圧迫のみまたは換気のみは効果的ではない。本研究の目的は、窒息過程の初期段階において、これらの技術が個別に、転帰を改善するかどうかを明らかにすることである。
方法と結果―40匹の子豚(11.5±0.3kg)を麻酔導入後、大動脈収縮期圧50mmHg未満の"模擬的な脈無し"になるまで気管チューブを閉塞(6.8±0.3分)した。「バイスタンダーCPR」8分間の処置内容としては、動物を無作為に、胸骨圧迫および補助換気(CC+V)、胸骨圧迫のみ(CC)、補助換気のみ(V)、バイスタンダーCPRなし(対照)の4群に割り付けて実施した。バイスタンダーCPRの初期2分間において自己心拍が回復したのは、10匹のCC+V子豚のうちの10匹、10匹のV子豚のうちの6匹、10匹のCC子豚のうちの4匹、対照群では0匹であった(CC+VまたはV対対照、P<0.01;CC+V対CCとV、P=0.01)。CPRの初めの1分間における動脈血と混合静脈血の血液ガス値は、対照群と比較して他の3つの実験群が優れていた。24時間の生存率は、対照群と比較し他の3群が同様に優れていた(それぞれ10匹中8匹、10匹中6匹、10匹中5匹、10匹中0匹,各P<0.05)。
結論―CC+VによるバイスタンダーCPRは、見た目に脈が触れない窒息による心停止の早期の段階において、転帰を改善する。加えて、この研究は、CCまたはVによるバイスタンダーCPRが、それぞれが単独に転帰を改善することを立証した。
目的:バイスタンダーCPRの有効性が院外心停止後の生存に独立して関連する要因であるかどうかについて調べる(To examine the independent relationship between・・)。
研究デザイン:前向き観察コホート調査
研究が行われた場所--ニューヨーク市
研究対象:ウツタイン基準を満たした一連の院外心停止、計2071例
介入:訓練された救急職員(prehospital personnel)が現場到着時のバイスタンダーCRPの質を評価した。最新のアメリカ心臓協会のガイドラインに従って、十分な胸骨圧迫と換気がなされておれば合格(satisfactory execution of CPR)とした。
主要な転帰判定:CPRの有効性と生存との間の修正された関連性(adjusted association between〜)。生存とは病院から家への退院で定義された。
結果:患者転帰はコホート開始時のすべての対象者でフォローアップされ、脱落例なく確認された。バイスタンダーCPRと生存の間の関連を、母集団データ(N=2,071)においてCPRの有効性で修正すると、有効なCPRだけがロジスティックモデルにおいて有意なパラメータであった(was retained in the logistic model)(修正オッズ比[OR]=5.7、95%信頼区間[CI] 2.7〜12.2、P<.001)。バイスタンダーCPRを受けた662人(32%)のサブッセットのうち、305人(46%)は有効なCPRを受けた。これらのうち4.6%(305人中14人)が生存したのに対し、無効なCPRを受けた者で生存したのは1.4%(357人中5人)にとどまった(OR= 3.4、95% CI 1.1〜12.1; P<.02)。目撃状況、初期リズム、虚脱からCPRまでおよび虚脱から二次救命処置までの時間間隔で補正すると、有効なCPRは生存率の改善に独立して関連する要因となっていた(remained independently associated)(修正OR = 3.9、95% CI 1.1〜14.0、P <.04)。
結論:院外心停止におけるバイスタンダーCPRと生存との間の関連性はCPRの質によって左右されることが判明した。有効なCPRは数的にまた統計的に有意な差をもって生存を改善する、独立した要因である(is independently associated with a quantitatively and statistically significant improvement in survival)。
背景:この研究の目的は、単純で一般的に用いる事が可能な心室細動による院外心停止からの生存予測モデルを発展させる事である。
方法と結果:南西地方の都市(人口41万5千、面積406km2)と北西地方の都市(人工103万8千、面積1339km2)において行われた院外心停止を対象とした二つの後向き研究(それぞれ患者数が206、1667名)に対しロジスティック回帰解析を行った。どちらの都市も同じtwo-tiredな救急対応システムが稼働している。全ての心停止は目撃され、救急対応者の到着前に発生している。初期心リズムは心室細動であった。主なoutcomeは生存退院率である。患者の年齢、バイスタンダーによるCPRの実施、倒れてからCPR開始までの時間、倒れてから電気ショックまでの時間、バイスタンターによるCPR÷倒れてから電気ショックまでの時間指数が有意に生存率と関係していた。明らかな因子を除いて二つの街のデータを検討すると生存率に有意な差は認められなかった。倒れてからCPRまでと倒れてから除細動までの時間のみに注目して単純化した予想モデルをより複雑な解釈モデルとの比較が行われた。
結論:院外心停止による病院前の処置の効果は、倒れてからCPRまでと倒れてから除細動までの時間によって予想する事が可能かも知れない。臨床的に適切な予想因子を均等にしても、2ヶ所の人口から得られたデータによる解析モデルは生存の予想因子として地域の違いを指摘しなかった。このモデルは、その他のアメリカの地域でも一般的に用いる事が可能であり、心停止からの生存率を改善するための処置の効果を調査するのに用いる事も可能である。
キーワード:心肺蘇生、突然死、除細動、生存
目的:心肺蘇生(CPR)訓練を受けたバイスタンダーがCPRを実施するかどうか、およびその実施内容の、それぞれに関連した因子を決定する。
方法:著者らは、院外での心停止に遭遇して救急通報を行った個人を対象とする前向き観察研究(1997年1月から2003年5月)を行った。心停止に遭遇した成人のバイスタンダーへの電話による系統的インタビューを、遭遇2週間後から実施した。インタビュー項目は、バイスタンダーと患者の背景因子、バイスタンダーのCPR訓練受講の有無、CPRの実施時期と実施者、その際の状況などである。CPRが実施されなかった場合は、その理由をバイスタンダーに尋ねた。論理回帰分析を用いてCPR実施に関連する因子のオッズ比と95%信頼区域(95%CI)を計算した。
結果:868例の心停止事例中、684例(78.1%)のバイスタンダーへのインタビューを完了した。インタビューを実施した全てのバイスタンダーのうち、69.6%は傷病者の家族で、36.8%のバイスタンダーは高卒以上の学歴があり、54.1%はCPRの受講歴を有していた。21.2%の患者でバイスタンダーは直ちにCPRを開始し、33.6%の事例で救急医療サービス(EMS)の到着以前に誰かがCPRを開始していた。CPR実施の全般的な予測因子として重要なものは次のとおり:目撃された心停止(オッズ比=6.6; 95%信頼区域=3.5〜12.5)、バイスタンダーの学歴が高卒以上(オッズ比2.0; 95%信頼区域=1.2〜3.1)、公衆の面前で発生した心停止(オッズ比3.1; 95%信頼区域=1.7〜5.8)。これらの変数はCPR訓練を受けたバイスタンダーによるCPRの実施を予測する有意な因子であり、5年以内のCPR訓練の受講も同様であった(オッズ比 4.5; 95%信頼区域=2.8〜7.3)。CPR訓練を受けたバイスタンダーが挙げた、CPRを実施しなかった主な理由は以下の通り:37.5%は狼狽した、9.1%はCPRを正しくできないだろうと思った、1.1%は患者を傷つけるかもしれないと思った。驚いたことに、口対口人工呼吸に抵抗を感じたのはわずか1.1%に過ぎなかった。
結論:CPR訓練を受けたバイスタンダーのうち、CPRを実施したのは少数であった。高卒以上の学歴がありCPR訓練の受講後5年以内のバイスタンダーのCPR実施率が高かった。以前に推察されていたCPRを実施しない理由(口対口、感染の危険性)は、バイスタンダーが挙げた理由ではなかった。CPR訓練受講後のCPR実施率を最大にするためには、さらなる研究を要する。
緒言:救命の連鎖は心停止(CA)後の生存と関連する4つのリンクの重要性を強調している。一般人の関わりが年々増加している。彼らは"早期通報"、"早期心肺蘇生術"(CPR),そして最近では自動体外式除細動器(AEDs)の到着で"早期除細動"に貢献している。バイスタンダーCPR率は公式の記録がないために評価が困難である。
目的:シンガポールの中心部にある3次教育病院に搬送されたCA患者でのバイスタンダーCPR率を12ケ月の期間、評価する。
方法:これは後方コホート研究であり、1999年5月1日から2000年4月30日までに行われた。"バイスタンダーCPR"とは組織された救急応答システムに参加していない人が一次CPRを試みることを指す。一般的には、これは心停止を目撃した人を意味する。
結果:12ヶ月に研究対象条件を満たす心停止成人患者は155名であった。年齢の平均は62.1 ± 6.4 歳であり、患者の大多数(126名 あるいは81.3%)が救急車で搬送された。142名(91.6%)の非外傷心停止、そして13名(8.4%)の外傷心停止だった。ほとんどの患者(96名、あるいは61.8%)は家庭で心停止となり、救急隊員の到着時に呈した初期リズムは心室細動(VF)が一般的(50名、32.2%)であった。バイスタンダーCPR率は20%(すなわち155名中の31名)であった。合計32名(20.6%)の患者が自己心拍再開(ROSC、触知できる脈拍の回復で定義)し、そのうち31名(96.9%、あるいは32名中31名)はある形でバイスタンダーCPRが実施された。バイスタンダーCPRを受けなかった患者は救急外来で全員死亡が確認されたが、バイスタンダーCPRを受けたこれら31名中、4名(12.9%)は引き続いて集中治療部(ICU)に入院した。ICU入院した4名中、3名(4名中の3名、あるいは75.0%;あるいは155名の心停止患者中3名、あるいは1.9%)はその後に病院から生存して退院した。
結論:病院前CAへのバイスタンダーCPR率は20.0%であった。バイスタンダーCPRをいずれの形にせよ受けなかった群ではICU入院は皆無だったのに比べて、バイスタンダーCPRを受けた者の約12.9%(4名)はICUに入院した。3名の患者(全ての病院前CAの1.9%)が病院から生存退院した。
背景:この研究は院外心停止の生存者について、健康に関するQOLをより良くする病院前の要因を評価した。
方法と結果:この前向きの20参加団体のコホート研究は、1年生存した一連の院外心停止成人患者を含んでいた。患者には電話で問い合わせ、0(死)から1.0(完全健康体)まで数値として健康を示す健康実態指数第3版(HUI3)を用いて評価した。8091人の心停止患者の退院時の生存率は5.2%であり、1年生存率は4.0%であった。1年生存した316人のうち268人(84.8%)に問い合わせ、評価出来た。中間HUI3点数は0.80であり(四分位間範囲0.5から0.97)、年齢修正された一般的な人々のHUI3点数(0.83)と比較された。ロジスティック回帰分析より大変よいQOL(HUI3>0.90)に独立して関係のある2つの要因がオッズ比とともに以下特定された。80歳かそれ以上か0.3(0.1から0.84)とまず一般市民による心肺蘇生術2.0(1.2から3.4)(Hosmer-Lemeshow満足度0.74)である。
結論:この研究は院外心停止患者生存者に対して行われ、これらの患者は良いQOLを送っており、まず一般市民によるCPRが行われることが、より良いQOLに強くそして独立して関係していることを示した。これらの結果から、一般市民が気軽にCPRの準備が出来ていることの重要性が強調される。一般市民によるCPRがまず施される割合が多くの社会で低いことを考えると、自発的な市民がバイスタンダーCPRの練習を活発に行うべきと信じている。
背景:医師と看護師は、心肺蘇生術を行うことの大部分を担い、心肺蘇生術に関して教育者と発信源の役割を果たしている。感染性の病気の恐怖によって、医師・看護師が口対口の人工呼吸(MMR)を行うことをためらるうかどうか、我々は調査した。
方法:内科医430人と看護師152人が、提示された模擬の心肺停止シナリオに応対した。
結果:医師の45%と看護師の80%は他人に対しての口対口呼吸は拒否した。18%から25%の看護師と内科医師は子供に対しての口対口呼吸はしなかった。米国生まれや白人は口対口呼吸を行うことのためらいが少ない。15%だけが近所の他人に対して口対口呼吸を行う。伝染性の病気、特に後天性免疫不全症候群に対する恐怖などの理由に直面すると、全ての人は口対口呼吸を行わない。
結論:内科医と看護師は高い確率で口対口呼吸を行うことにためらいがある。口対口呼吸を教える際に、子供と家族にに対してはためらいなく口対口呼吸を行う確率が高いということを強調すべきである。口対口呼吸自体を復活させるためにも、効果的な防護マスクをより広く普及させることもあわせて市民教育をすすめていく。
心肺停止患者に対して容認できない身体的特徴(吐物、入れ歯、出血、アルコール臭)が何であるか、またバイスタンダーがためらいなくCPRを行うことにこれらの特徴が影響しているのか調査した。非外傷性の心肺停止121症例からプロスペクティブにデーターを集積した。その中にはのべ42人のバイスタンダーによる早期のCPRを施された35症例も含まれる。71(59%)症例には一つ以上の容認できない特徴が認められた。40(33%)症例は嘔吐、39(33%)症例は入れ歯、5(4%)はアルコール臭、9(7%)症例は肉眼的血液があった。42のバイスタンダー症例の中の14症例では、一つ以上の容認できない特徴があった。容認できない特徴に遭遇した際、CPRを行うことにためらうことを示したバイスタンダーはいなかった。7人のバイスタンダーは嘔吐した患者に対して十分な準備をしていなかった。心肺停止の患者において、特に嘔吐など容認できない特徴が高い確率で発生していることから、そのような特徴にに対しての対応方法を訓練することはもっともなことである。
背景:バイスタンダーによる心肺蘇生(CPR)は、心停止に陥った患者の数%でしか行われていない。我々は、バイスタンダーによるCPRに対する態度とCPRの実施に対する潜在的な障害を明らかにすることを計画した。
方法:トゥーソン市(Tucson)にあるアリゾナ大学の心臓センターのメーリングリストにより975名にアンケートをとった。被験者は、傷病者との関係(見知らぬ人と家族や友人)、CPRの方法(胸骨圧迫と口対口人工呼吸(CC+V)に対し胸骨圧迫のみ(CC))によって分けた4つの状況において、躊躇せずにCPRを行えるかどうかについて質問された。
結果:被験者はCPRを行う意欲と感染症が伝染する事についての懸念を評価した。傷病者との関係とCPRの方法共に、(心停止の患者に)対応する意欲に影響した。見知らぬ人に対して「明らかに」CC+Vを行うとしたのは15%のみで、68%はCCを行うと答えた。家族や友人に対してでさえ、CC+Vを行うのは74%であり、CCを行うとしたのは88%であった(訳者註:どういう風にアンケートをとったのでしょうか?)。疾患の伝染については、少なくとも「中等度」気になると答えたものが82%であった。
結論:口対口人工呼吸に関する懸念は、バイスタンダーがCPRを行う場合に、潜在的な障害となっているかも知れない。バイスタンダーCPR教育の強化と新しいCPRの研究が望まれる。
目的:緊急指令者が電話により心肺蘇生を指導すれば、バイスタンダーCPRを受ける突然の心停止の傷病者を増やし、生存率が向上する可能性がある。しかし、突然の心停止の傷病者の多くはバイスタンダーCPRを受けていない。
方法:我々は、2000年7月1日から2002年6月30日までの間に発生した突然の心停止404例について、緊急指令者の音声記録と救急医療サービスの報告書を調べた。研究を行った地域では、時期?(1、電話による指示を行っていない、2、電話による指示が行われたが、断られた、3、電話による指示が行われ、受け入れられたが、CPRが実施されなかった)とそれぞれの時期で電話によるCPRを妨げるような要因を調査した。
結果:傷病者の25%(404例中99例)が緊急指令者の指示なしにバイスタンダーCPRを受け、34%(404例中139例)は電話によるCPRを受け、41%(404例中166例)はバイスタンダーCPRを受けなかった。電話によるCPRの手順のどの時期でもCPRの実施が妨げられた。(1)48%(166例中80例)では指示そのものが行われなかった(2)31%(166例中52例)では指示がされたが拒否された(3)21%(166例中34例)では指示がされて受け入れられたが、CPRが実施されなかった。最初の段階では、傷病者が生命の徴候があると報告された(80例中51例、64%)ため、電話によるCPRは高頻度に障害された。第二、三段階では、バイスタンダーの身体的な限界により(86例中32例、37%)、電話によるCPRが最も妨げられた。精神的なストレス、疾患の伝染、傷病者が同意しない、医療法上の考え等が電話によるCPRを妨げた(86例中10例、12%)。
結論:電話によるCPRを妨げる因子がいくつか特定された。多くは理論上難しい問題であるが、興味をそそるものもある。そして一方、救命の連鎖を強化する機会を与えるものもある。
目的:心肺蘇生(CPR)の最初の数分間は、人工呼吸を与えることが必須ではないかもしれないと言う証拠が集まりつつある。我々は、訓練を受けていないバイスタンダーに、仮の救急指令者か ら口頭指示を与え、人工呼吸と圧迫を行う伝統的なCPRと圧迫のみのCPRにおいて、最初の圧迫が与えられるまでの時間を比較した。
方法:この無作為化比較シミュレーション研究は、ある6ヶ月 間に救急部を訪問した英語を話す者を対象とした。以前にCPRの訓練を受けている者、身体的な障害により (CPRを)行えない者は除外した。対象者には心停止のシナリオが一つ提示され、仮の指令者から電話で2種類のうち一つのCPR方法が指導された。TCPR群は伝統的なCPRを指導され、COCPR群は圧迫のみのCPRを指導された。被験者は、レールダル社製レサシアンCPRマネキンにCPRを行い、データを連続的に記録し、圧迫の回数と質が解析された。研究の前後にアンケートを実施し、対象者の疲労と電話による指示内容の理解度を評価した。一次結果は、救急通報から胸骨圧迫開始までの時間であった。
Student t検定、カイ2乗検定、ウィルコクソン法で解析した。
結果:377名のうち、54名が研究に参加する事に同意した。50名の被験者のデータを解析した。TCPR群に比較して、COCPR群の方がより早く(117秒に対して72秒、p<0.0001)胸骨圧迫を開始し、4サイクルのCPRを早く(250秒に対し168秒、p<0.0001)終了し、蘇生の中断がより少なかった(36%に対し13%、p<0.0001)。TCPR群で行われた人工呼吸のうち9%のみでしか、適切な換気量で行われていなかった。疲労やCPR指導の理解度に関しては両群間に有意差は認めなかった。
結論:圧迫のみのCPRを行う事で、何もしていない時間を短くすることができることが示された。CPRの手順から人工呼吸を除いた場合、バイスタンダーによる蘇生がより効果的なものとなる可能性がある。