心肺蘇生と緊急心血管治療のための科学と治療の推奨に関わる国際コンセンサス2005年会議において認められた科学的知識の乖離と臨床研究上の優先順位Scientific Knowledge Gaps and Clinical Research Priorities for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Identified During the 2005 International Consensus Conference on E and CPR Science With Treatment RecommendationsA Consensus Statement From the International Liaison Committee on Resuscitation (Circulation. 2007;116:2501-2512) キーワード:アメリカ心臓協会の科学声明、心肺蘇生、突然死
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新しいサイクルのエビデンスの評価が始まり、2010年に完了し、新しくかつ改定された推奨治療が発表されると期待されている。これらの推奨事項は、研究期間に集められた科学的知識を再び反映する事になるだろう。このサイクルが始まると、今日疑問に思われている重要な問題が2010年ガイドラインの時には解決されているだろうと言う期待を持って、臨床研究の必要な分野を決めるために、ユニークな目的が存在する。この目的のために、2005年ガイドラインを作り上げるためのエビデンスの評価の過程において、様々な情報が集められた。専門家は、特定の蘇生に関するトピックスが現在分かっている科学をまとめるだけでなく、知識のギャップを埋めるためにも尋ねられていると言う事をレビューするように指示した。結局、専門家は276の指定されたトピックの中から知識のギャップを指摘した。我々は、これらの知識のギャップと(相談したり多数決をとったりすること で)臨床研究の優先されるべき分野をまとめ、系統立ててきた。
これらの知識の乖離は、重複を避けるために照合され、専門タスクフォースのトピックスに分類され、さらなる研究のために担当のタスクフォースの代表者に伝えられ、それぞれのトピックス内で重要なものを10から15にしぼり、再評価、編集、同定された。担当分野の知識の乖離のリストは、AHAのホームページ(http://circ.ahajournals.org/cgi/content/full/CIRCULATIONAHA.107.186228/DC1)で、オンラインのみで公表されている。これらの研究の優先度は4つの分野に分類された。(1)蘇生、(2)急性冠症候群、(3)脳卒中および(4)応急処置である。蘇生の専門家から更なる意見を受け、最終の更新、校正、承認のために、改定されたリストが再びタスクフォースの代表者へ戻された。
翻訳作業中
■急性冠症候群における最優先研究課題
急性冠症候群における最優先研究課題は、「病院前と救急部での評価」「抗血小板薬」「ヘパリン」「ベータ遮断薬」「再潅流療法」である(表2)。「病院前と救急部での評価」では、ST上昇型心筋梗塞において、12誘導心電図を用いるかどうかに注目した。「抗血小板薬」では、クロピドグレルの適切な投与量と糖タンパクIIb/IIIa受容体拮抗薬の投与開始時間を決める必要性を強調した。「ヘパリン」では、病院前と救急部において、ST上昇型あるいはST非上昇型心筋梗塞に対して使用するヘパリンの種類と投与量に注目している。「ベータ遮断薬」では病院前の使用に注目している。「再潅流療法」では、血栓溶解薬を病院前に投与することと、経皮的冠動脈処置(PCI)が適応となる患者さんをトリアージする戦略を含んでいる。
■脳卒中における最優先研究課題
脳卒中における最優先研究課題は、「脳卒中センター」「薬物治療」「代謝管理」「神経保護治療」「一過性脳虚血発作」「脳内出血」である(表3)。「脳卒中センター」は、脳卒中センターの安全性と有効性を評価することと、適切なトリアージのプロトコールを決める事の必要性を確認した。「薬物治療」は、血圧の管理と組み換え型組織プラスミノーゲン活性剤の使用、血栓除去に対する局所治療を強調した。「代謝管理」は、血糖コントロールと酸素投与の適切な治療戦略を決める必要性を含んでいる。「神経保護治療」は、低体温と薬剤、そして同時に行われる他の治療との相互作用を強調している。「一過性脳虚血発作」は、リスクの階層化とトリアージの必要性を指摘している。「脳内出血」は、自然発生の出血と経口抗凝固薬に関連した出血の管理に注目している。
■応急処置における最優先研究課題
応急処置における最優先研究課題の項目には、「出血」、「関節損傷」、「熱傷」、「骨折」、「脊椎損傷」、「凍傷」、「蛇咬傷」、「経口中毒」、「アレルギー反応」および「酸素化」がある(表4)。「出血」では、局所止血のためのターニケットや新しいその他方法の安全性と有効性を評価する事の必要性を強調している。「関節損傷」と「熱傷」では冷却治療に関連した多くの項目を強調している。「骨折」では、骨折部位を正常に戻すことと、損傷した四肢の安定化の重要性を評価する必要性を認識した。「脊髄損傷」は、最初に手当てをする人が脊髄損傷を認識すること、安定化の処置に関連した項目を認識した。「凍傷」では、体の一部を暖める適切な方法を指摘する事に注目している。 「蛇咬傷」は、コブラ(elapid)とコブラ以外の蛇による咬傷に対して圧迫包帯法の安全性と有効性を確認するデータを集める必要性を強調した。「経口中毒」では、活性炭とその病院外(the public)での使用について強調している。「アレルギー反応」は、その認識とアドレナリンを自己注射する傷病者の補助について指摘した。「酸素化」は、呼吸障害のある傷病者に対して酸素を投与する事の安全性と有効性に関連している。