障害とDisability

「障害」という言葉の難しさ

ICFでいうDisabilityという概念は、Functioningの否定的側面なので、全ての人がDisabilityがあるともいえるほど広い範囲にあてはまります。つまり、慢性疾患、不調、妊娠、高齢などの広範な健康状態の人がDisabilityがあるといえるということです(いすれにせよ、心身機能や解剖的構造に変化がある)。しかし、このような方々を「障害者」と呼ぶことはもちろん、「障害のある人」と言い換えても抵抗があるという印象です。「病人ではあっても障害者ではない」、「体の調子が悪いだけであって障害があるわけではない」、というのが、自然な日本語の感覚なのかもしれません。

「ICFの意味でのDisability」

そこで、ちょっとした工夫で、ICFの意味での障害をそのまま「障害」と呼ばず、回りくどく「ICFの意味でのDisability」といった方が、誤解がない使い方ができるかもしれません。日本人の悪い癖かもしれませんが、外来語をそのまま使うことで新しい概念を表現するという慣習があるのではないでしょうか。「ICFの意味でのDisabilityは、日本語の「障害」とは意味が違うんですよ〜。」というのは、外国かぶれみたいで情けない気もしますが、意外に通じるかも、という印象です。

ちなみに、このような作戦は、精神障害リハビリテーション領域で、「「回復」という概念を見直した」と素直にいえばよいところを、「「Recovery」という新しい概念がアメリカで使われている」という紹介のされ方をして、結構、みんながそれを受け入れていた、というエピソードをヒントにしています。

「妊娠中には、ICFの意味でのDisabilityがある。」「糖尿病は、ICFの意味でのDisabilityの側面がある。」という使い方で、比較的抵抗なく真意が伝わりやすくなる、というのがこれまでの印象です。


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Yuichiro Haruna
yharuna-tky@umin.ac.jp