市立砺波総合病院麻酔科 生垣 正
目 次
<質問内容>
当町では,観光地でホテル,旅館からの救急要請も多く,四,五階からの患者の搬送
で階段,エレベーターなどを利用した場合の適切な心肺蘇生の留意点をご教示願いま
す
回答:
心肺蘇生術の中断は,できるだけ短くするように工夫して移動する。
解説:
「心肺蘇生法の手引」の17ページを見て下さい。
<質問内容>
交通事故等による頭部外傷及び頚椎損傷の疑いのある負傷者の心肺蘇生を行う場合の
留意点についてご教示願います。
回答:
心肺蘇生術の基本はどのような場合も変わらない。
解説:
頚椎損傷が疑われる場合は,頭部後屈は好ましくはないので気道を開通させる方法(
気道確保)は顎先挙上ではなく,下顎挙上が望ましい。顔面の外傷がある場合には口
対口人工呼吸は困難であり,バッグマスク人工呼吸をマスターする必要がある。
<質問内容>:
人それぞれ頻脈、徐脈と個人差があり心肺蘇生の中止の判断として1分間に50回以
上触知できたときは、中止して良いと明記してあるが、救急隊が現着し、ハートスコ
ープで20〜30回の脈拍が確認された場合では、直ちに心肺蘇生を実施して良いも
のか、ご教示願います。
回答:
人工呼吸をしても、心拍数の回復・血圧の回復や皮膚の色の改善が得られない場合は
、直ちに心肺蘇生術を実施する。
解説:
心肺蘇生術の対象は、必ずしも心臓の完全停止ではない。重要臓器への循環が得られ
ないと考えられる場合である。
20〜30回の脈拍では心機能が極端に低下して、血圧も測定できない状態と考えら
れる。従って、心肺蘇生術の対象となる。
40台の心拍数は正常でもあり得る。
40未満の時は血圧や、脈拍の触知具合を勘案して判断していく。但し、冷たい水の
中での溺水の場合などは、極端な徐脈と血圧の低下があっても、人工呼吸をすること
によって心機能が回復することがある。この場合は、皮膚の色が改善していく。
以上の点から、まずは気道確保を行い、人工呼吸をする。それでも、脈が触れてこな
かったり、皮膚の色が改善してこなかったら、直ちに心マッサージも行う。
<質問内容>:
第4期救急II課程、”酸素吸入について”で救急隊の酸素吸入が禁忌の場合がないと
考えるべきと回答がありましたが、いぜん喘息発作の患者に酸素吸入をしながら搬送
、病院到着と同時に呼吸停止にいたった。
@酸素吸入との因果関係
解説:
急性の喘息発作であれば、患者の最も楽な姿勢で、酸素吸入をしながらできるだけ早
く医療機関へ搬送しなければならない。
ところで、呼吸不全患者の酸素投与に関してであるが、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺
炎、パラコート中毒などでは、高濃度酸素投与は問題がある。それゆえ、救急隊の酸
素吸入が、禁忌の場合はないという主張には異議を唱えられることが充分予想される
。
しかし、なぜあえて禁忌がないと断定したかを述べる。
まず第1に考えることは、救
急現場という状況を想定するなら、そこでは医学書をひもといて調べるということも
できない、しかも即座に正しい対処を迫られるので、あやふやな知識でのいい加減な
対処はできないし、考え込んで時間を過ごすこともできない、つまり、間違いが無く
、あれやこれやと迷うことのない明快な知識が要求されることである。
第2に、患者
自ら「息が苦しい」とか「胸が苦しい」などと訴えたり、呼吸回数が多かったり、呼
吸が荒かったりするのが観察されたら、呼吸困難の症状ととらえるべきであり(特に
救急現場は一般的に「症状把握とそれへの緊急避難的対処の場」であって、「診断の
場」ではない)、呼吸困難は酸素の不足していることの現れと捉えて対処すべきであ
る。
第3に、通常は救急現場から、医療機関への搬送が10分前後で行われること。
以上の3点を踏まえて考えると、まず慢性閉塞性肺疾患の場合であるが、このときは
低酸素が呼吸運動をさせる引き金になっているので、高濃度の酸素が与えられると呼
吸運動の命令が発令されないという事態が発生し、呼吸停止になってしまうという恐
れがあるということである。しかし、いま救急車が呼ばれたということは、一般的な
慢性呼吸不全の状態ではなく、慢性呼吸不全の急性増悪の状態であり、酸素が極端に
不足し緊急に酸素が必要とされていると考えられる。従って酸素は必須である。もし
高濃度酸素によって呼吸停止になったとしても、それは血液中に酸素が、呼吸運動を
発令する基準より多いことを示しているからであり、酸素投与が致命的になるとは考
えられない。医療機関へ搬送されてから、血液ガス分析などをして適切な酸素の投与
がなされればよい。
次の問題であるが、酸素は細胞毒の一面もあり、特に肺は常にこ
の危険にさらされている。間質性肺炎やパラコート中毒の場合、高濃度の酸素は肺の
障害を促進する可能性がある。従って、一般的には酸素投与は必要最小限にすべきで
ある。しかし、呼吸困難の状態の時には、酸素は絶対に必要である。適切な酸素投与
量の決定は医療機関でなされるべきことであり、それまでは、酸素の不足を可能な限
り避けるべきである。
以上述べた以外の場合は、酸素投与が必要でないことがあって
も、やっていけないことはない。反対に、例えばショック状態の場合などでは充分な
酸素投与は絶対に必要で、投与しないということが無いようにしなければならない。
以上を総合的に考えれば、医療機関への搬送という限定の中では、酸素投与をしてい
けない場合はないと考えるのが最も安全であると筆者は考える。
ただ、現在ではパルスオキシメータがほとんど常備されているので、慢性呼吸不全の
場合は、特に医療機関への搬送に時間がかかる場合などでは、90%ないしは90%を少
し越える程度にとどめるように、酸素流量をたとえば毎分1〜2Lあるいはそれ以下
にとどめておいた方がよい場合がある(しかし酸素は投与すべきである)。
<質問内容>:
心肺停止時には、A→B→C(エアウエイ・ブレス・サーキュレーション)に基づき心
肺蘇生法を行うが、C→A→Bの順で行うことも考えられると聞いたことがあります。
気道確保・人工呼吸をしないでの心臓マッサージの有効性についてご教示願いたい。
解説:
1992年のアメリカ心臓協会が出している「CPRのガイドライン」によると、オランダ
ではこれが通常の方法であり、アメリカの行っているABCと結果は変わらない。しか
し、人間での比較研究がなされていないので、現在これをABCにとって代えるという
ことにはならない。さし当たり、どちらも効果があるとする、というなことを記述し
てある。
筆者としてはこれ以上のことは、述べられない。ただ、心停止直後には、人工的な循
環の確保が何よりも大切であると考えられており、それを強調した手技であると思う
。
<質問内容>:
回答:
感染症一般については、ここではとても回答できない。
ただ、救急隊員自身のHBV、HCV、HIVなどの血液や体液などからの感染の予防に関し
てはすでに記述してあります。
<質問内容>
最近、感染症(HIV,MRSA,肝炎等)が国内外で話題となっているが、私たちも救急現
場で感染症患者に救急処置等の対応をしていかなければなりません。この場合の感染
防止、感染したと疑われる場合の処置、また、病院での感染症患者への対応をご教授
願います。
回答:
患者の血液を含む体液に接しないように努める(手袋の着用、予防衣の着用など)。
接した可能性が考えられる場合は、流水でよく洗う。
針刺事故等の感染の可能性が生じた場合は、医療機関で検査のための採血を行う。
<質問内容>
感染防止対策として当署はB型肝炎のワクチンの接種、救急隊員はグローブ等の着用
を行ってまいりましたが、もし救急隊員が感染したとしたらたとえばB型肝炎、C型肝
炎ではB型肝炎の免疫グロブリン、C型肝炎の場合インターフェロンで慢性化の予防が
できるのか、またどれくらいで劇症肝炎はどれくらいで発症するのでしょうかご教示
願いたい。
回答:
B型肝炎について、成人での感染では慢性化することはほとんどない。
C型肝炎について、急性感染の場合50〜80%と高率に慢性化する。
激症肝炎の発症は1%以下で、C型肝炎よりB型肝炎の方が多く、死亡率はだいたい
70%といわれている。
解説:
B型肝炎の場合は激症肝炎にならなければ、慢性化という点に関しては問題がない(
急性B型肝炎は発症する)。C型肝炎は高率に慢性化するが、感染してからの期間が
短ければ、インターフェロン療法は効きやすいと言われている。現在のところ急性C
型肝炎に対してインターフェロン療法は保険適応になっていない。
<質問内容>
感染症には多々ありますが、日頃からどのようにすれば最も効果的に防止できるでし
ょうか。
回答:
問題となる感染症、例えば、C型肝炎ウィルス、B型肝炎ウィルス、HIV感染症は
、主として血液を介して感染するので、血液が傷などを介して体内に入らないような
対策を講じる。
解説:
効果的な防止策に関しては、前の説明と同じ。
<質問内容>
訴える症状と違った疾患があった症例として胃痛を訴えている傷病者が心筋梗塞だっ
た例がありましたが、他にもこのような症例はありますか。
回答:
予想と違う疾患であることは珍しくありません。症状を先入観無しに、聞くことが大
切です。一般的には現場では診断はできません。
解説:
診断は通常、いろいろな医療器械や診断技術を駆使して客観的な評価をして下されま
す。それまではいろいろな場合を想定して症状への対処を行います。
たとえば、過呼吸症候群だと思っていたのが、自然気胸であることがあります。呼吸
困難を訴えていれば、診断がつくまでは無条件に酸素を十分与えることが大切です。
「胃痛」というのは、医療関係者は使うべきではありません。内臓の痛みは特定でき
ませんし、まして「胃の痛み」という特別のものはありません。どこの場所がどのよ
うに痛いのか、いつからか、ずうっと続くのか、などを正確に聞いて把握してくださ
い。
心筋梗塞は上腹部が痛いと訴えることは、大いにあります。胸はもちろんのこと、肩
であったり、背中であったりすることもあります。また胆石の場合の痛みも、痛みの
場所としては同様なことが言えます。
<質問内容>
感染症のうち、肝炎、エイズは血液などを介して感染しますが、MRSAはどのように感
染するのか、又、MRSA患者を搬送した後、隊員および救急車の消毒はどのようにすれ
ばよいか。
健康者には発症しないが、隊員が保菌していた場合、重傷患者に感染させることにな
らないか教えて欲しい。
回答:
感染経路には、手指による感染、医療器具を介する介達感染、くしゃみ、咳などによ
る飛沫感染などがあげられる。
MRSA患者搬送後の処置として、隊員に関しては、石鹸と流水による手洗いで十分で、
可能であればディスポーザブルなガウンの着用も良いと考えられる。救急車に関して
は、一般的清掃を確実に行うことが基本で、薬物による清拭は必要に応じ、次亜塩素
酸ナトリウム、テゴ、ハイアミン、オスバンを用い行う。
隊員が保菌者の場合、感染させる可能性はあるものの、基本的衛生事項を守れば救急
活動に従事することに問題はないと考えられる。
解説:
鼻腔、咽頭に保菌している場合は適切な処置(ポピヨンヨードの鼻腔塗布、ポピヨン
ヨードによるうがい)が望まれる。
<質問内容>
頭部外傷および頚椎損傷の疑いのある負傷者の心肺蘇生を行う場合の留意点について
ご教示願います。
回答:
心肺蘇生法のやり方は、基本的にいつも同じです。ただ頚椎を捻ったり、ゆすったり
しないように十分注意してください。
<質問内容>
救急車内で心臓マッサージを行いながら病院へ搬送途中、急ブレーキ等の振動、ゆれ
で力の入れ方で患者の肋骨が折れる場合がありますが、この様な場合、通常の心臓マ
ッサージを行ってもよいでしょうか?
回答:
心臓マッサージでは、圧迫する部位、および力のかけ方に注意することが大切です。
従って、揺れや、急ブレーキでそれが乱れることは、大変まずいことです。できるだ
け創意工夫して、正しく行われるようにしてください。
<質問内容>
老齢者や癌の様な慢性病の末期的状態で心停止を起こした場合は、心マッサージを行
ってはならないと聞いたことがあるが、このような傷病者を搬送する場合、医師がい
る場合は指示を仰ぐことができるが、家族しかいない場合はどうすべきか?
回答:
医療機関へ来て、癌による心停止と診断されるまでは、心マッサージを行うべきです。
解説:
癌患者本人が、延命のための医療をしないで欲しいという意思を示していた場合は、
難しいのですが、もし心肺停止が癌とは全く無関係の場合は、一層ややこしくなりま
す。原則として、診断をつける医療機関へ搬送する間は、一律に心マッサージをすべ
きでしょう。特に、ここではかかりつけの医師ではなく、救急車が呼ばれたときのこ
とを想定しているので、なおのことです。
<質問内容1>交通事故などにより、胸部を強打し、肋骨骨折又は胸骨を骨折し、さらに呼吸停止を
呈した場合の応急処置(心肺蘇生法など)について
<質問内容2>
開放骨折の場合、受傷初期の汚染創の処置は感染防止のため重要であるため、その実
際の応急処置についてご教示願いたい。
<質問内容>
CPRは一人で行う場合、2回の人工呼吸と15回の心マッサージを1サイクル、二人で
行う場合は1回の人工呼吸と5回の心マッサージを1サイクルと成っているが、この
回数の根拠と一人二人の回数の違い、回復の確認について知りたい。
一般の人を対象にした場合は、一人で行う心肺蘇生法だけを教える。
救急隊員の場合は二人心肺蘇生法を覚える。やりやすさと疲労度から言った場合は二
人心肺蘇生法の方が有利。
回復の確認は、最初の4サイクルをしたあと、頚動脈で行う。回復していなければ、
医療機関に到着するまで続ける。
<質問内容>
交通事故などによる胸部骨折及びその疑いのある患者が心肺停止をしている場合、心
肺蘇生法をどのように行えばよいか?
<質問内容>
交通事故やその他の事故などにより、頭部に外傷があり、心肺停止状態にある傷病者
に対する処置として、はじめに出血部位の止血を行い、その後CPRを実施するのが正
しいと思われるが心肺蘇生法を行う度に外傷部位からの出血を伴うと思われる。この
様な場合における最も効果的な止血方法及びCPRとはどのような方法でしょうか?
<質問内容>
救急隊現着時の観察結果「生命徴候無し」患者の場合、救急車内ではCPRの実施は原
則であると思われるが、その結果が成功し、植物人間状態となることもあると思われ
る(一般的に脳に10分以上酸素が無い)が、その場合の脳の蘇生はあるのかどうか
。
また、現実、救急車内に家族及び関係者などがいない場合、CPRを実施すべき傷病者
とそうでない傷病者はいるのではないだろうか。
回答:
心肺停止の場合は直ちに心肺蘇生法を行うべきである。結果を考えてや患者家族の状
況によって変わることはない。
解説:
一般に脳に4分以上酸素が行かなければ、不可逆性の変化をきたすと言われている。
しかし、循環が止まってどれだけ経つかは普通判定できない。また体温によって酸素
需要は大きく変わる。従って、医療機関に運び、人工呼吸をし、点滴をとり、薬剤を
投与した上で、心電図などの客観的なデータのもとで始めて、死の判定ができる。
<質問内容>
交通事故等による胸部骨折およびその疑いのある患者が心肺停止をしている場合、心
肺蘇生法をどのように行なえばよいか留意点を伺います。
回答
肋骨骨折があっても心肺蘇生法が必要な場合はガイドライン通りにしてください。
解説
第5期の質問1の回答・解説を参照してください。
<質問内容>
CPRは一人で行なう場合、2回の人工呼吸と15回の心マッサージを1サイクル、二
人で行なう場合は、1回の人工呼吸と5回の心マッサージを1サイクルと成っている
が、この回数の根拠と、一人と二人の回数の違い、回復の確認について知りたい。
救急講習会で住民からの質問が多いため。
回答
解説:
1分間に60〜80回の心マッサージと12回前後の呼吸が効果的に行なわれること
が望まれますが、それを満たすことは不可能で、ぎりぎりの条件として上記の回数が
割り出されたのだと筆者は理解しています。
一人CPRと二人CPRでは、二人CPRの方がより効果的に行なうことができ(気道確保、
スムーズな手技の実行)、かつ疲れも少ないと考えられますが、一般の方には複数の
やり方を覚えてもらうのは避けるべきなので二人いても一人CPRを交代で行なうよう
に指導して下さい。他方救急隊の方は3人一組で出動すると思いますので、二人CPR
を行なって下さい。
<質問内容>
交通事故や転落などにより、頭部に外傷があり、心肺停止状態にある傷病者に対する
処置として、まず初めに出血部位の止血を行ない、その後CPRを実施するのが正しい
と思われるが、心臓マッサージを行なう度に外傷部位からの出血を伴なうと思われる
。このようなケースにおける最も効果的な止血方法及びCPRとは、どのような方法で
しょうか。
回答:
心肺蘇生法を必要とする場合は、止血処置を考えることなく、心肺蘇生法を行ないま
す。
解説:
心停止に至っている場合は、出血はしません。もし心マッサージのたびに出血するよ
うな傷ならば、現場では止血できないだろうと考えられます。心マッサージをしなが
ら、医療機関へ速やかに搬送します。
<質問内容>
当消防本部は、一般住民・事業所従業員等の応急手当等の普及啓発に努めているところ
鼻ですが、将来は、学校の授業での応急手当等の指導が考慮され、水泳教室等の一部
では既に実施しています。そこで、小・中学生の医学的理解での心肺蘇生法指導は、
下記の通りでよろしいかご教示下さい。
○中学生----------------------高校生と同様で心マッサージまで
回答:
小・中学生の心肺蘇生法指導のガイドラインがあるのか知りません。できるだけ調べ
てみます。
解説:その場の状況で判断したほうが最もよいかもしれません。非常に興味を持てば子供は
どんどん吸収するし、逆におもしろくないとどんなに良いことを話しても聞いてくれ
ないのではないでしょうか。
追記:金沢大学麻酔科の山本助教授にお聞きしたところ、アメリカの事情をいろいろ聞いて
いただきました。
アメリカは州によっていろいろで、決まってはいないけれど、高校生以上は人形をつ
かって訓練するけれど、中学生以下は人形をつかって訓練することは無いとのことで
した。
<質問内容>
心肺蘇生法を実施したところ、胃内にも酸素が入り腹部がふくらんでいたので中止し
た。この場合どのような対応をすべきか。
回答
解説:
「胃内にも酸素・・・」とあるから、アンビューバッグ使用中のことかも知れません
。アンビューバッグを使って、一人で人工呼吸するのは大変難しく、胃内へ空気を送
り込むことになりがちです。アンビューバッグを使うときは、一人は下顎挙上法によ
り気道を確保し、同時に両手でマスクを口の周囲に密着します。もう一人がバッグで
空気(または酸素)を送ります。つまり二人で人工呼吸を行うようにすべきであると
筆者は考えております。
胃内に空気が送り込まれる原因は、気道がうまく確保されていないのにむりやり人工
呼吸をしたり、呼気吹き込みが早すぎる場合です。
胃内に空気が入り、腹部が膨満すると横隔膜が押し上げられ、呼吸がしにくくなりま
す。しかしだからといって、上腹部を圧迫して胃から空気を押し出すと嘔吐の危険が
あります。胃液や胃内容物が気管に入り込むと重篤な肺炎を引き起こします。従って
腹部圧迫は原則としてしてはなりません。
<質問内容>
119番通報を受けてから、救急隊が現場に到着する前に的確な応急手当が速やかに
実施されれば、現在運用されている救急救命士の高度な救命処置と相まって救命率が
向上することは明らかです。住民等による応急手当、特に救命に最も重要な心肺蘇生
法の修得の必要性及びその理解がいまだ十分でなく、その普及方策に積極的に促進す
べきで消防機関の住民等への普及方法等について特に注意すべき点は?
解説
II. 一般市民への普及方法に関して
以上の点を考慮して、所轄のプール施設の職員にたいして毎年プール開きの前
に、全員に対し、実技を含む講習会を実施することを計画できないものであろうか。
(その際に、設置または常備してある酸素ボンベや救命器具の点検や使い方および消
防署への正確な情報伝達の仕方なども必ず行う)
<質問内容>
交通事故等で頭部外傷及び頚椎の外傷の疑いのある負傷者に心肺蘇生を行なう場合
、心肺蘇生法のラインにそった蘇生法でよいのか、頭部後屈により外傷部の悪化とい
うことはないのか対処の方法をお願いします。また低酸素に陥っている患者に酸素を
投与する場合の酸素量についての留意点を詳しく教示願います。
回答
解説
2)に関して:
第4期の質問2の解説を参照してください。
<質問内容>
先般「歩行中の男性が乗用車にはねられた」との通報で出動した。現着時意識レベル
300、脈無し、瞳孔散大の状態だったので、ただちに心肺蘇生を開始した。ところが
、心マッサージをすると胸部が異常に沈み込み、骨折しているのがわかった。そこで
手加減しながら搬送した。適切な処置を教えて頂きたい。
回答:
多発性の肋骨骨折患者の場合でも、心停止の場合にはガイドライン通りに手加減する
ことなく、心マッサージしてください。
解説:
心マッサージの効果は、心臓を直接圧迫することによる効果と、圧迫解除の時に末梢
の静脈の血液を胸に吸い込み、胸を圧迫することによって胸腔内の圧を上げ、それに
よって胸の中の血管の血液を動脈の方へ絞り出すという効果の二つの効果があわさっ
たものと考えられています。多発性肋骨骨折の場合は、後者の効果は激減しますので
、心臓マッサージの効果も極めて悪くなります。しかしそれに対しては対処の手段は
有りません。それ以上の骨折を避け、できるだけの効果を発揮するように、正しい手
の位置と正しい力の掛け方を修得して下さい。
<質問内容>
交通事故等による胸部骨折、およびその疑いのある患者が心肺停止をしている場合、
心肺蘇生法をどのように行なえばよいか留意点をご教示願います。
回答:
他の心肺蘇生法を必要としている場合と同様にガイドライン通りに行なって下さい。
回答:
心肺蘇生法による救命率は一般に悪いけれども、心筋梗塞によるものが他の場合より
も悪いということは言えない。
解説:
むしろ外傷などによる心肺停止の方が、救命率が悪い場合が多いでしょう。
アメリカ心臓協会が編集している心肺蘇生法のガイドラインが、現在世界の教科書と
なっているが、これはどちらかといえば、心臓が原因の心肺停止をターゲットにして
いるように思えます。
救急隊の収容した傷病者の自己申告により、B 型肝炎患者を搬送する事例がありま
した。このような自己申告による把握はごくまれなことと思われます。
<質問内容>
使用した救}資材等の、その後の取り扱いはどうすればよいのか。例えばどのような
消毒(薬品等)方法が望ましいか。
また、上記患者を処置した場合に救急隊員は、直ちに病院で検査を受ける必要がある
のか伺います。
<質問内容>近年エイズ患者が全世界および日本国内でも感染爆発が予想される中、我々救急隊員
の患者に対する対処の方法をお願いいたします。
(1)幼児の熱性痙攣後の酸素吸入の必要性について
(2)救急傷病者に対する酸素吸入およびどのような傷病者に対して行なっていけな
いか、また酸素量について解説して欲しい
(3)過呼吸症候群以外に酸素吸入してはいけないものがあるか(病名)
(4)現在救急車に流量計付加湿酸素吸入装置の低・中濃度酸素マスクを接続して心
筋梗塞およびショック等の疾患傷病者に酸素吸入を行なっています。酸素吸入を行な
う場合は酸素流量を毎分4〜6l に設定していますが、傷病状態に適応した酸素吸入
量の判断をご教示願います。
解説
(1)熱性痙攣後の酸素吸入について
(2)救急傷病者への酸素吸入について
(3)酸素吸入の適応、非適応について
過呼吸症候群には酸素は必要ではないが、していけないということはない。むしろ自
然気胸など急性呼吸不全との鑑別がただちにつかない場合も多いと考えられるので、
酸素吸入をしながら病院へ搬送するほうがよい。
肺気腫や肺気腫を伴う喘息や、以前に肺結核や肺癌の手術を受けている場合など、慢
性的に呼吸困難を訴えているような慢性呼吸不全(「救急救命士標準テキスト」P
.248 表1-6を見よ)だけは不用意な酸素吸入を避けねばならない。しかしこのよ
うな場合でも、呼吸困難が高度となった緊急の場合は(119番されるのはこのよう
な場合が多いと考えられる)、酸素投与は必須である。酸素吸入によりそれまで見ら
れたチアノーゼが消失したにもかかわらず、発汗や顔面紅潮が見られ、意識レベルの
低下を認める例では酸素流量を1〜3L/分に減らす(「救急救命士標準テキスト」P
.255を見よ)。
(4)酸素流量について
1998年 第13期 救急II 課程 質問書について
1997年 後期(第12期)救急II 課程 質問書について
1997年 前期(第11期)救急II 課程 質問書について
1996年 後期(第10期)救急II 課程 質問書について
A搬送時の体位
B適切な応急処置
Cこの様なケースはよくあるか1996年 前期(第9期)救急II 課程 質問書について
1. 感染症の症状について
2. 救急を要する主な感染症について
3. 感染症の救急処置について
4. 感染予防について1995年 後期(第8期)救急II 課程 質問書について
1995年 前期(第7期)救急II 課程 質問書について
1994年後期(第6期)救急II 課程 質問書について
○小学生(高学年)------------人工呼吸まで
○ (中学年)------------気道確保まで
○ (低学年)------------止血等の応急手当に止どめる1994年前期(第5期)救急II 課程 質問書について
1993年後期(第4期)救急II 課程 質問書について
1993年前期(第3期)救急II 課程 質問書について
1992年(第2期)救急II 課程 質問書について
付録1.平成3年12月25日 全砺波消防署からの質問
(1)救急傷病者に酸素吸入をしていけない場合はない。
(2)一般に酸素流量は毎分4〜5Lとする。
□生垣の救急II課程・質疑応答集