当科について
科長ご挨拶
日頃より、東京大学医学部心療内科学教室をご支援いただきまして、ありがとうございます。
当科は、全国でも数少ない「心療内科学」の教室として、最新の知見を取り入れながら、最適な医療の提供と、そのための研究と教育を日々行っております。
ちなみに、「心療内科」という言葉だけは有名になっていますが、本当の「心療内科」はまだまだ知られていないということを感じております。「心療内科」は、ストレス関連疾患、特に「心身症」を診療する診療科として、わが国において、1963年に九州大学に誕生しました。この「心身症」という病気は、ストレスが関連する「身体疾患(からだの病気)」で、「精神疾患(こころの病気)」ではありません。
心療内科の専門性は、大きく分けて、2つあると考えております。
1つ目は、「患者さんを全人的に理解する」ということです。つまり、心身両面の評価と、さらに、「こころ」と「からだ」の関連を評価することによって、疾患・症状だけではなく、環境をも含めた患者さん全体を理解する努力を行います。つまり、心理・精神面の評価と身体面の評価を個々に行うことだけでは得られない、心身相関の評価とアプローチという部分を含み、これは、心身医学という学問を基盤に持つ「心療内科」ならではの専門性ということが言えます。
2つ目は、薬物療法以外に心理療法を用いるという点です。心療内科が「心理療法を併用する内科」という名前の由来を持つ通り、心療内科医は、複数の心理療法に精通し、患者さんの状態に合わせて併用することができます。具体的には、生活習慣病などの「心身症」の患者さんを中心とした「行動変容」から「ストレスによって心身に不調を来した」状態まで対応可能です。
このように、心療内科の専門性が「特定の疾患」ではない点で、分かりにくくなっています。しかし、今後の医療においては、「治癒からケア」の比重が大きくなることが予想され、医療費削減の観点からも心理療法のトレーニングを受けた心療内科医が現代の医療に寄与できる部分は大きいと自負しております。
そして、東京大学医学部附属病院心療内科では、大学病院という特性を活かし、より専門性の高い診療・教育・研究を行っています。
診療に関しては、心身症の他に、身体的合併症が生命の危険にもつながる摂食障害、薬物療法だけでは治療が難しい生活習慣病、心身相関の要素が大きい「がん患者さんのこころのケア(サイコオンコロジー)」に力を入れています。
教育に関しては、卒前・卒後を含めて、心療内科に関する教育を、学内外の医学生、医師に加えて、心理士等にも積極的に行っております。
研究に関しては、従来の医療を変えるべく、IT機器を用いた臨床研究を中心に行っております。
「目の前の患者さん、ご家族はもちろん、社会のために貢献をしよう」という理念のもと、最適な医療の提供を行うよう努力するとともに、「新しい医療を創る」という目標を共有して、教室員が一丸となって日々精進しておりますので、引き続き、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
科長 吉内 一浩