国立大学附属病院長会議では、平成27年度第4回常置委員会終了後に定例記者会見とプレスセミナーを開催いたしました。説明内容は以下のとおりです。
【日時】 平成27年12月4日(金)17:10~17:40
【場所】 東京医科歯科大学 M&Dタワー21階 大学講義室
◆定例記者会見
定例記者会見では次の3つの報告をいたしました。
自由民主党「大学病院を支援する議員連盟」における決議について
国立大学附属病院では平成27年8月の自由民主党「大学病院を支援する議員連盟」において、「平成28年度国立大学附属病院関係予算の充実」、「特定機能病院の機能を維持するための新たな財政支援の創設」及び「平成28年度診療報酬改定における適正な評価」に関する要望書を提出しました。これを受けて議員連盟では平成27年11月24日に決議書「大学病院に関する平成28年度予算の編成等に向けて」が作成・採択されました。決議書では、平成28年度予算において必要額の確保・必要な措置を講ずべき事項として「大学改革推進等補助金等、高度医療人材の養成と大学病院の機能強化」、「国立大学法人運営費交付金、附属病院の機能・経営基盤強化」、「国立大学法人等施設設備費、附属病院の再開発整備に係る施設設備の整備」「大学病院が担っている高度な医療機能等に対する診療報酬上の適正な評価等」などが盛り込まれております。しかし、平成26年度の消費税率引き上げや診療報酬改定等の影響による大学病院の窮状に関しては、ご理解いただいたものの、具体的な要望は決議書に示されておりませんでした。消費税の未補填問題の解決は、大学病院における医療機器に対する投資抑制等を早期に回避するためにも、新たな財政支援の創設などの政策が望まれるため、今後も引き続き関係省庁等に要望していく予定です。
平成27年度の医師臨床研修マッチング結果に関する国立大学附属病院の現状について
平成27年度の医師臨床研修マッチングの国立大学附属病院の状況については、マッチ者が全体で8,687人、そのうち臨床研修病院が4,984人(57.4%)、大学病院が3,703人(42.6%)となっており、内訳の割合で見ると大学病院は6年連続で減少しており、全国的に大学病院離れが続いていることになります。さらに、国立大学附属病院全体の充足率は69.6%で、大都市地域の6都道府県内の病院では93.1%に達しているのに対し、その他の地域では63.6%に留まっており、地方における研修医不足、ひいては医師不足の問題が深刻な状況にあることが今回の結果から読み取れます。
その他
先般、中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」が報告した、「消費税を5%から8%に引き上げた際の診療報酬上の補填具合に関する調査結果」においては、消費税8%への引き上げに伴う診療報酬上の補填状況は、病院全体として100%を上回り、特定機能病院をみても98.09%でした。国立大学附属病院長会議ではこの検証結果をふまえ、緊急に千葉大学病院と東京大学病院の補填状況を再検証したところ、いずれの大学附属病院においても1億円を超える補填差額が発生し、平均補填率は64%という結果でした。また、「3%相当負担額」の算出において、投資金額ではなく減価償却費を基礎としており、実際の消費税負担額と相違することから、合理性に問題があります。これは、今後も毎年恒常的に発生する状況であり、地域医療の最後の砦を担う国立大学附属病院の機能維持のため、緊急な財源措置が必要であるとともに、税率が10%に改定される際には抜本的な改善が必要になります。
◆プレスセミナー
プレスセミナーでは国立大学附属病院における国際化への取り組みについて説明をいたしました。
国立大学附属病院における国際化への取り組みについて
国立大学附属病院では、国際化の推進を図るため、「国際的なネットワーク化の推進」、中でも「国際的な遠隔医療ネットワークを活用した人材育成」を推進しています。国際的な遠隔ネットワークの構築により、①アジア地域を中心とする医療技術の均てん化(アジア等の医療技術の向上)、②海外の優れた医療技術の導入、③グローバルに活躍する医師等の人材育成、④外国人患者の受け入れ体制の充実、などが期待されるため、今後は、世界的な医療拠点の構築に向けた体制整備を進めるために、遠隔医療教育ネットワークの全国拡大、遠隔医療教育ネットワークの国際化などを中心に取り組み、様々な医療分野において国立大学附属病院の英知を結集した医療プログラムを作成し、世界に発信・展開することを目標として活動しております。さらに平成27度は、国立大学附属病院の「国際化・アウトバンド事業」について、全国45国立大学附属病院へ調査を行い、各病院が海外の医療機関等へ提供した又は現在も提供している臨床研究・医療技術・国際貢献等の状況をまとめました。その結果、特にアジア・南米地域への医療活動等が積極的に行われており、我が国の医療技術に大きなニーズがあることが分かりました。ただ一方で、延べ5,000名超の海外の患者へ高難度医療の提供を行い、現地訪問により延べ8,000名超の医療従事者への教育・人材育成を行っていながら、その取組みは各大学が個別の努力で行っているのが現状で、今後は国立大学附属病院間で情報共有を行い、優れた先行事例については、相互協力を行うことにより、国立大学附属病院全体として、我が国の優れた医療を積極的に発信してまいります。