難病患者の就労について

2005年3月25日 駒場エミナースでの難病支援センター研究会

はじめに

今日は難病患者の就労について、サブタイトルとして「多様な健康問題がある人が社会的なwell-beingを達成するための個別的支援の在り方を求めて」と考えました。難病患者の問題は非常にマイナーな問題と扱われがちで、その中でさらに就労や就業、仕事の問題はもっと小さな問題だと考えられがちですが、病気が慢性化していく時代の中では健康問題がある人が仕事も含めて社会参加できる社会を作っていくこと、そして個別的な支援を作っていく体制が必要ではないか。実はこれこそが今後非常に重要な問題ではないかという観点からお話をしたいと考えております。

私自身の難病との関わりは、卒業論文が筋ジストロフィーの方を地域で支援をしていく医療や福祉の方々がネットワークを作っていくことを取り上げたのです。1997年に労働省からの要望で難病の方の就労問題について研究を始めて、初めて全国の実態調査をしました。実は、沢山の方が仕事についていることも分かり、いろんな可能性もあることが分かってきました。

その後、今までの機能障害、能力障害、社会的不利というICIDHの障害分類が2001年に改訂され、新しいICFという障害分類になり環境因子に関するタスクフォースがWHOで作られて、私も仕事の面について参加することができました。

98年にHIV感染の方が障害認定され、労働雇用政策上も、障害雇用枠にいれる検討会が労働省であり、色んな問題の研究会にも参加しました。

その後、環境因子は非常に重要だと思われ、障害者雇用している事業所でどれぐらいの環境整備が出来るのか、どういう可能性があるのか、全国調査を行いました。データベース情報の提供も非常に重要だと思います。あと、去年から難病雇用管理調査研究会が始まりました。

難病の就労問題を研究していく時に、職業上の問題は病気が治ってからという考え方では難病の方の支援は無理だ。難病の定義からすると非常に重篤な状況なので、仕事についている人はいないのではないかという疑問もありましたが、間違いでした。

難病の方は仕事の非常に難しい方だということだけで終わってしまうのではないかという心配についてもそうじゃないやり方を考えていきたいと。

疾患と障害

急性疾患の方は病気がひどくなり、そして治る。後遺症が残ったらリハビリテーションを行う。慢性疾患は、病気がよくなったり悪くなったり非常に長期にわたって続いていく。自己管理とか再発予防、経過観察、治療を受けながら並行して職場復帰や環境整備やリハビリテーションを行う枠組みが必要ではないかと。

心臓ペースメーカーや人工弁を付けた方、人工透析の方、人工呼吸器を付けている方、言語障害や高次脳機能障害、身体障害。病気は治っているが後遺症は残っている方に就労支援を行う。今は、HIVによる免疫機能障害、精神障害、統合失調、うつなども雇用対策の対象となっています。難病、糖尿病、高血圧等は病気は完治しないが、薬物療法等でコントロール可能です。こういう方が、病気の治療を続けながら仕事にもつけるような在り方が必要になっています。障害者ではないが、職業的には非常に難しいという方は非常に多いです。

労働環境を改善すれば仕事につけるという方は非常に多くて、例えば、潰瘍性大腸炎やクローン病の患者でも障害はないが仕事上の配慮は必要だという方も多い。

病気、疾患の見方と障害の見方の両方とも必要だということ。病気の原因を見つけて治療する。一方でその病気が、仕事も含めて生活にどういう影響を及ぼすかという観点で解決していく見方が必要になってくる。

病気によって出てくる障害の種類によっては、共通項が出てくることがあります。例えば、障害のある方を雇用する障害者雇用事業所は、視覚障害に対しては点字ブロックやコミュニケーション支援機器、上肢障害にはトイレの改造や、透析の方は短時間勤務や残業の規制、通院の便宜などが計られています。難病の方に対してもいろんな支援方法を応用すれば仕事ができる可能性がでてくると考えられます。

難病の方は、障害認定されている機能障害以外に皮膚の機能の障害、疲れやすい、痛みがあるといった障害があっても障害認定されません。けれども、こういう障害は仕事に非常に大きな影響があります。今までの障害者雇用支援だけではカバーしきれない問題もあります。

世界の流れでは、1980年にICIDHという障害の分類ができ、2001年にはICFという、生活機能と障害と健康の国際分類ができました。障害には3つのレベルがあります。例えば足が動かなくても車イスを使えば移動はできますから体の面と実際の活動の面は全然別の問題です。ところが通路が狭い、エレベーターがないとなると、車イスを使ったらできないことがある。昔は、機能障害、活動障害、社会的不利と言っていましたが、今は3つあわせてディスアビリティーと呼んで、普通の人、それの反対をファンクショニング(生活機能)と呼び、それぞれ心身機能、活動、参加という3つのレベルで考えるようになりました。

新しい国際的なICFでは、障害をマイノリティーとは考えない。高齢、妊娠、うつ、そして障害は全ての人が経験する問題です。そして環境因子と相互作用するので、社会全体で考えるべき問題です。

これは、病気の原因等にかかわらず、仕事ができないという問題自体を大切にする考え方です。つまり健康領域だけでなく、雇用、教育、環境など様々な面と連携してはじめて解決できる問題だということです。

モデルとしてのHIV感染症

一番最初にHIVの問題についてこのICFの枠組みで考えました。HIV感染症という病気によって免疫機能の障害が起こってきます。ところが、免疫機能の障害だけが問題なのではなく、非常に複雑な服薬のパターンがあり、定期的な通院が必要になります。さらには社会で理解されず、偏見も非常に強い。それに対していろんな条件を設定して仕事の可能性がでてくるでしょうが、医学的な対応も重要ですし、啓発や差別防止対策が非常に重要になります。職務配置や補助具の問題、服薬や治療への支援、日本の企業は障害のある方を1.8%雇用しなければならないという法律があります。その1.8%の雇用枠にHIV感染も入れていったのです。

@偏見、差別の防止、A服薬治療への配慮、服薬の副作用への対処、Bストレス、重労働、C感染予防の4つを柱にしてHIV感染者に対する雇用対策を行っていこうというのがHIVの研究会の一つの結論でした。

当時のHIV感染は免疫機能が落ちてエイズ発症して死に至るものでした。今までの雇用対策は感染はしても発症する前の状況に対して支援を行うものでしたが、全然状況が変わってきて、早期治療により免疫機能は回復する。ところが服薬を続けていないと悪化し、一方、継続的な疾病管理によって仕事を続けていく可能性も高い。HIV感染症は治らないがコントロールは可能になっていったのです。エイズを発症した人でも1ヶ月程度入院すれば復職が可能になり、平均年1、2回の入院、月1回程度通院で、いろんな状況が改善中だと分かりました。

今回、難病の調査でも非常に似た状況にある病気が非常に多いという印象です。仕事をしながら非常に個別的で複雑な服薬をしている状況でした。

HIVやエイズは急速に死に至る病で仕事にはつけないし、ついても短期間だといった誤解があり、エイズは原因不明の恐ろしい病気で、うつるのではないかという誤解や、同性愛や薬物乱用といった半道徳的なことをやったからだ、自業自得だといったひどい偏見もありました。だから社会参加は望めないというのが非常に強い意見でした。実際その時のHIV感染の方の雇用研究会の中でも偏見や思い込み、先入観はありました。

そこでHIVの正しい知識を普及しようということで、HIVは肝炎と同じように血液感染であり、肝炎ウイルスよりも弱いウイルスであるとか、日和見感染症があったとしてもそれは一緒に生活している家族に対してもうつらない病気であると、パンフレットを作って企業に配り、啓発活動もしました。

また従業員の募集採用に際しては、全ての人について基本的人権を尊重して本人の能力と適正に応じた公平な取扱をすることが原則です。ここではHIVによる障害は、直接仕事には影響しない。だから、採用時に血液検査をして調べたり、履歴書に無理矢理HIV感染の事実を書かせて差別的な扱いをすることは禁止という基本的な配慮を出していきました。

健康診断というのは応募者の採否を決定するために実施するものではないのだから、採用時に病気のことを把握する必要はないといったこともパンフレットには書いてあります。

アメリカでは差別禁止法で、採用時に病気の名前を聞くことすら禁止されているのですが、今の日本では徹底されず、難しいものが残っていることは事実です。

HIVに感染していることを職場の人に知らせなければならないかという疑問が、当然でてきます。話さなければいけないというものはない。しかし、同僚や上司に話して理解し、配慮してもらえることもあるので、様子をみながら話すようにしましょうという指針もあります。

特に難しかったのは、出血事故を起こして血液感染したらどうするのかというものでした。出血事故が起こる可能性がある職場ならば、出血している人に対してはかならずゴム手袋をして対処するなどを徹底すれば、同僚にHIV感染の人がいると教えなくても済むのだというようなことが検討されたのです。

1997年の難病患者の就労実態調査

2番目に、就労事例について、1997〜98年に難病の方の実態調査を行いました。難病の種類による生活の自立度についての厚生省調査結果があって、生活自立している人が非常に沢山いらっしゃるし、病気によってはほとんど生活自立できているが一部の病気では全介助が多い状況でした。

難病の方の就労問題では、問題なく仕事につけている難病の方もいるし、時々休まなければいけないとか、フルタイムでは働けないとか、症状や就労によって非常に影響を受けやすい方もいる。仕事につきたいがつけない方もいるし、疾患が非常に重篤で急性疾患的な、定義通りの難病という方もあるので、難病と一括りにやっても意味がないと考えているところです。

これは97年の情報ですが、難病の方で働いている方が40%、潰瘍性大腸炎は半数以上の方が仕事についています。失業率、求職活動をしていて仕事につけていないのは10〜20%といった状況です。難病の方はこんなに働いているのだとみなさんびっくりされます。

難病の方が仕事についていない理由は、治療に時間がかかる、通勤が困難、適職が見つからない、採用面接などで困難がある、社会的な理解が不十分、などがあります。

もう一つ、仕事についていて中途発病した時に、50〜60%の方が自主退職されていますが、そのうち半数程度が2年以内に再就職されています。

難病の診断を受けたがアドバイスもなく、仕事は当然無理と思って仕事を辞めてしまう。ところが、実際はそれほどではなく、仕事につける可能性があって復職する方がけっこういるのではと示唆されています。ですから仕事を辞めずに、配慮をすれば仕事の継続はできることを職場の人や本人に伝えていくことが非常に重要だと考えています。

ところが難病の方は病気が良くなったり悪くなったりの繰り返しが多いので、今までの障害の方とは違った配慮が必要になると思います。

仕事に関してお医者さんからどういう注意を受けていますかという質問ですが、就労禁止は10%に満たない。軽作業なら可とかストレスを避ける、残業を避けるといった注意事項が多くて、こういう配慮ができる職場が求められるでしょう。

通院時間が短い人は月15日以上働けるが、通院時間が長くなると15日以上の仕事が難しくなります。

事業主への病名の告知は、正社員は75%が告げ、25%が告げていませんでした。なぜ告げないかというと、必要がないから、不利な扱いをうける恐れがあるからという理由でした。病名を告げて良かった点としては、配慮してもらえるようになった、気分的にも楽になったという意見がありました。不当な差別を受けるようになったというのはそれほど多くありませんでした。パートやアルバイトではほとんど病気の事を告げずに仕事に就いている人が多いことが分かっています。

就職時には病名を隠す。履歴書に病名を書くとそれだけで不採用になってしまう。就職後の発病ではじめて病名を告知する例が非常に多い。病名を告げなければいけないと思いながらも、何度も不採用になると、悪いと思いながら隠して就職するというのですが、一定の指針が今後検討される必要があると思います。

ICFと新しい障害の考え方

昔の障害の考え方では、機能障害、能力障害、仕事ができない、そして仕事につけない、働ける人、働けない人をきっちりと判定して、そして働けない人には生き甲斐の場としても就労の場を作るとか、福祉の場を作るといった対策がメインだったのですけが、今は働けるか働けないかはそんな簡単に判定できるものではなくなっています。実際職業センターでは働けるか働けないかの判定業務をやめてしまいました。車イスの人、透析治療を受ける人、精神年齢10歳程度の知的障害の方、酸素補給を要する人、HIVに感染している人、全身の麻痺で目だけしか動かせないとか、顔面に腫瘍がある人、精神障害で薬物治療を継続している人、そういう方の就労は非常に難しいわけですが、仕事についている方もおられる。

1980年にICIDHのモデルが出た時に、障害者インターナショナルが、体の面だけで障害をみるのは間違いで、社会の面からも考えてくださいと。例えば知的に障害があると、コミュニケーションや技能の修得、対人関係、社会生活などに影響がでて、仕事につくのは難しいと思われて障害者雇用率にも入っていなかったのが、今は障害者雇用率に入って対策がとられ、今いろんな企業で仕事をされるようになっています。例えばマクドナルドで沢山の知的障害の方が職場の環境整備によって問題なく働けるようになっています。

障害の考え方は、リハビリテーションの分野では医学モデルの観点が強く、障害者運動では社会モデルの観点が非常に強いと言われ、今までは専門家と障害者運動で対立しがちでした。一方は保健福祉政策の問題で、一方は機会均等政策の問題だ、一方は医者だとか専門家がよく知っているからあなたはこうしなさい、一方は、自分はこうしたいからこういうサービスを提供してください、障害をもっている人がリハビリテーションをして、社会復帰をしましょう、一方では、社会側の環境改善によって、それが必要なのだと。長いあいだ対立関係であったものを、今回のICFは対立を止めましょうと。障害というのは個人と環境の相互作用で、医学的な面もあるし、社会的な面もあると。

仕事につきたい、方策を考える、職場環境整備を前提とした障害者支援をしようというふうにICFによって考え方が変わってきました。

ICFのコンセンサスモデルでは環境因子が入ってきた。能力面だけの評価から、環境面も合わせてその中で能力を考える。もし何かできないのなら、環境整備をちゃんとやりましょうというふうな考え方になってきている。

障害者を雇用している事業所で、こういう配慮の有無が障害のある方の職業上の問題に影響しているか調査したものです。視覚障害の方はコミュニケーション、セルフケア、対人関係、ストレスなどに問題がある人たちだと考えられているのですが、職場の中で本人にあわせた職務割り当て、積極的な対話や声かけ、業務計画や作業環境の改善で障害者の意見を取り入れるなど個別的な配慮事項をやった場合は、この問題の発生率は1〜5%以内、やっていないと50%というように問題発生は職場環境整備によって非常に大きな影響をうけることが分かってきています。

今回の難病の雇用管理に関する調査は、どういった配慮事項が問題解決につながるかを調べたものです。

新しい就労支援の動向

今までは、最低賃金水準を満たせる人は競争的な一般雇用の対象、それに満たないような生産性しか上げられない人は福祉的な就労、これを判定するのが課題でしたが、実際は雇用管理上の配慮、支援によって、こういう直線的な関係でなく、機能状態が悪くても生産性は十分に上げられる場合が多いことが分かってきました。これはサポーテッド・エンプロイメント、援助付雇用という考え方です。専門家が支援するだけでなく、職場の中で自然に配慮ができるように同僚や上司も変えていくことが重要で、それがナチュラルサポートといわれています。

今までは障害や病気を持つ人と一緒に働いた経験から自然に形成されることが多かったのですが、今は専門家が職場に入ってトレーニングして作っていくことも行われるようになっています。

障害者の雇用の促進等に関する法律の中では、事業主の責務として仕事につこうとする人に協力する、正当に能力を評価して雇用の場を与え、適切雇用管理を行って雇用の安定をはかるといった責務が定められていますが、ノウハウがない事業主への支援が重要になってきています。

障害者雇用率1.8%を達成している事業所は全事業所の半数ぐらいですが、配慮する項目としては、マンツーマンの個別指導、作業補助、体力や集中力に応じた職務割り当てなどの環境整備、専任の補助者をつける、障害者用のマニュアルを作るなどがあります。

国際的な動向は「合理的配慮」が障害者の労働の権利として障害者権利条約の中に入れられようとしています。もともと1990年にADA法、障害のあるアメリカ人法の中で取り入れらましたが、今はEU、ヨーロッパでも、また国連の障害者権利条約の草案にも含まれているもので、これがないというのは、障害を理由とした差別の一つであると見なされています。

合理的配慮の具体的内容は、従業員に利用される施設は障害のある方が容易に利用できるようにする、職務再設計、パートタイムや勤務日程の変更、配置転換、機器や装置の獲得、ポリシーの適切な調節や変更などです。

ところが企業にとって大きな負担であればしなくてもいいといった留保状況もあり、まだまだこれから検討していかなきゃいけない問題であります。

環境整備の改造とか職場配置などを企業がやる場合には3分の1とか2分の1の助成金があって取り組みやすくなっていくこともあります。

カスタム化雇用

もう一つ、ホーキング博士です。筋萎縮性硬化症発症から35年以上人工呼吸器を使っている。物理学者で研究、執筆、講演、海外を含む講演活動をやっておられるのですが、例外中の例外で、余り参考にならないと考えられてきたのですが、ICF考えてみると職業的な目標、講義がメインであるとか、物理学者としての仕事に対して機能障害がどう影響してくるのかをみてみると、職住が近接している、公的な援助サービスや私的な看護婦を使っている、車イス据え付けの人工呼吸器、電動の車イス、特殊な入力機器を使って論文を書く、コンピューター読み上げ機を使って講演活動をするといった理屈の通った支援方法、環境条件があってはじめて仕事が可能になっている。

最近アメリカでは援助付雇用をさらに超えたカスタム化雇用が始まっています。ホームレス、経験やスキルが不足している方やマイノリティーの方でも仕事につけるような支援方法で、非常に個別的に考えることが必要ではないか。21世紀の労働は自立性や自由、雇用条件のカスタム化が求められ、全ての人の才能や創造性を引き出すことが重要になる。さらに、9時から5時まで働かくとか職場で働くのではない仕事もかなり増えてきている。もっと仕事の個別性、カスタム化、その人にあった仕事を作っていく可能性はどんどん増えてきている。その人の強みやニーズや興味に応じた仕事を作っていこうと。例えば両腕欠損、車イス、認知障害、弱視で、特殊学校を中退して今までは仕事は無理だと言われて終わりだった人に対して、支援機器や義装具や職務再設計を行ない、労働時間を変更し再教育の機会も作ることで、この方は10年ぐらい安定して仕事についている。

この方は仕事につけないと思われていた自閉症の方ですが、非常に音楽が好きで、音楽をやっている時には症状がでないということで、知り合いの珈琲店でバンドの録音をする小規模事業を試みて、支援制度をフル活用して、小規模ベンチャーを作ってしまった例です。

ICFに基づいて、各人の仕事の興味や強みに基づいて職業的な目標を作って考えていくと、病気や色んな問題は起きるかもしれない、しかしそれに対しての環境整備の方策を考えていくというふうに、今は職業的目標の自己決定を重視した個別的支援が非常に重要になってきています。

難病患者の雇用管理に関する調査研究会ですが、伊藤さん、木村先生も入って、厚生労働省で検討しています。今3,700くらいの回答が得られています。回収率40%。仕事についていた経験がある人が90%以上で、そのうち半数が現在就労中の方でした。半数が、病気が原因で仕事に変化があって、40%に何らかの制約があって仕事の変化があった。現在仕事についていない人の半数が、自分は仕事ができて仕事につきたいと考えています。

こういう配慮があるといいが職場では配慮されていない項目が上がっています。仕事に相談にのってくれる同僚上司や、病気や障害についての正しい理解、配慮事項をさらに分析してまとめていこうとしているところです。

公共職業安定所や障害者職業センターで相談したことはあるが役に立たなかったというのが60〜70%という状況です。ハローワークや職業センターは難病についての知識が非常に少ない。今はハローワークの職員の研修に難病のことも入るようになっていますが、まだまだ知識も少ない状況です。

情報提供

アメリカでは労働省がホームページで難病も含めて職場での配慮の情報を提供していて、非常に参考になると思いますので、日本語訳してホームページで公開する準備をしています。また、配慮事項についてのデータベースも提供しようと準備中で、障害者職業総合センターの研究部門のホームページから近日リンクする予定です。

アメリカのホームページで紹介していた機関では、病気や仕事について詳しい人たちが集まってヒューマンな支援を相談していました。どんなに似ている事例に対してもテーラーメイドの支援を提案しています。最新の情報を提供していました。相談者は、今まで適切な助言が得られなかった人たちだったので、懇切丁寧なサービス、プロフェッショナルなサービス、完全な守秘を守るといった原則で支援していました。

最後に、障害者職業総合センターでも、医療が終わったら労働という支援の方法から医療と労働の密着な連携を前提とした支援の在り方、新しいリハビリテーションのモデルが必要はないかということで、今年度から3カ年、労働と医療の連携による社会的支援の新しいモデル支援を実施して検証するプロジェクトをはじめたところです。今後みなさんとも連携して新たな取り組みができたらと願っているところです。

どうもありがとうございました。


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Yuichiro Haruna
yharuna-tky@umin.ac.jp