フォーカス・ グループ・ インタビュー 活用のコツ
1.グループインタビュー法とは
- グループダイナミクスを応用した質的な情報把握の方法。
- 複数の人間のダイナミックなかかわりに関する情報を集め、系統的に整理して新しい理論を構築。
- 最大の特徴は、グループダイナミクスの応用により、単独インタビューでは得られない奥深くそして幅広い情報内容を引き出すことが可能な点。
2.グループインタビュー法の特徴
- 日常生活の延長線上での「現実そのまま」の情報に接近
- メンバーを主体とした質的情報把握
- メンバーの行為と、その行為に意味を与える背景状況の両方を把握可能
3.グループダイナミクス理論
- クルト・レヴィン「場の理論」 1939年
- 集団の力学的性質及び変化を観察することにより、理論化と実践を図るもの
- グループダイナミクスの3要素
1) 個 人(Interpersonal)
2) 個人間(Intrapersonal)
3) 環 境(Environment)
4.グループインタビューの目的
- 関心テーマの一般的な背景情報の把握。
- 質的アプローチを用いたさらなる研究の仮説設定。
- 新しい考え方や概念の創造。
- 新しいプログラム、サービス等の基本的な課題の明確化。
- 関心のあるプログラム、サービス、機関などについて印象の明確化。
- 関係者がどのようなニーズ・意見を持っているかの明確化。
- 質的研究に必要な質問項目や調査項目の抽出。
- 既存のプログラムの評価。
5.グループインタビューの方法
- 司会者:インタビュアー1名(サブインタビュアー 1名)
- 記録者:筆記記録、観察担当者各1名(録音担当、映像担当者各1名)
- インタビュー対象者:通常6~12名
- 所用時間:1時間半~2時間半
- 場所要件:静かな個室、録音映像記録設備
6.データの種類と分析の方法論
emic 対象に近い視点 そのまま
etic 提供者に近い視点 加工
→双方が重要!
7.社会調査法と比較したメリット
- 調査期間が短期で済む。
- 調査費用が安価で済む。
- 研究者が直接対象者とかかわる。
- 非言語的反応を観察による把握が可能である。
- メンバーの意見の積み上げが可能である。
8.個別面接法と比較したメリット
- グループとして意見を構築できる。
- 相互作用による意見の引き出しができる。
- 相互刺激がある。
- 3人寄れば文殊の知恵。
- プレッシャーが少ない。
- 自発的な発言を引き出す。
- 専門性が高い。
- 科学性が高い(密室性低)。
- 構造的である。
- 早い。
9.グループインタビュー法の限界性
- サンプル・バイアスが生じやすい。→選択の段階で工夫が可能。
- 他者の意見に引きずられる。→インタビュアーの面接技術で予防が可能。
- 実施主体側に意見に対する対応の責任性が高い。
- 分析困難もありうる。
- インタビュアー等の与えるバイアス
10.把握する必要のあるパーソナリティ特性
- 他者からの影響の受けやすさ
意見の述べ方、他者への反応等 - 他者に対する敏感性
他者の反応を読み取ったり、意義付けする能力等 - 自己主張の程度
自らの考え方をどの程度集団の中で強調するか等 - 依存性
自己像、能力、態度の一貫性等複数の次元にわたる依存性等 - 情緒的安定性
葛藤が起こった際の情緒的安定性等
11.グループダイナミクスへの影響要因
- 適合性 Compatible
- 他者への影響力 Social power
12.進行に関連する4要素
「集団凝集性」: 参加メンバー個々人をグループ内に留める全ての力
- グループを去ることに抵抗感をおぼえる等、グループに対する魅力
- グループメンバーとしてのモラール(志気)、自覚
- グループの努力への協力
「調和性」:グループの中でメンバーの性格傾向や背景の類似性。グループ参加への満足、安心感につながるもの。
「社会的影響性」:参加メンバーのバランス。インタビュアーは、特定の「声高き者」に全体が大きく影響されることの無いよう、発言の機会等を調整。
「非言語的表現」:グループメンバーが示す表情、身ぶり、反応等
- メンバー間の関係に関するもの(友情、同意、好意等)
- 意見に対する反応
- 対話の同調、笑い、姿勢等
13.グループインタビュー法における妥当性
<妥当性とは>
命題(事実の性質)が真に限りなく近似すること。
- 内的妥当性:2つの変数の関係についての命題が限りなく真に近いこと。
- 外的妥当性:母集団同士の因果関係に関する命題の普遍性。
<グループインタビュー法における内的妥当性の撹乱要因>
- 個別背景の影響
- 相互作用によるメンバーの変化
- グループメンバーの偏り
- ドロップアウトの問題
- インタビュアーの影響
- インタビュアー自身の変化
<妥当性の撹乱要因発生の予防>
- 内的妥当性:記録の充実により撹乱要因への感度を高める。
- 外的妥当性:他の母集団に対する一般化を確認する。
<グループインタビュー法における妥当性>
- あてはまる(fit):構成されたカテゴリーが容易にデータで示されて適用できること。
- つかまえる(grab):グループインタビュー法で導かれたものが、実践の場において核心をついていること。
- うまくいく(work):その導かれたものが研究中の現象を説明し、解釈し、予測するのに有効であるということ。
- 柔軟性(flexibility):社会背景の変化などにより修正が可能なこと。
14.グループインタビュー法における信頼性
結果を実践の場面において活用し、その結果が類似した状況や、相違する問題に対しても応用できるか否かにより検証
15.質的研究における妥当性と信頼性
- 量的研究 質的研究
- 妥当性 証 拠
- 信頼性 確実性
16.質的研究の評価基準(瀬畠、2001)
- デザイン
①質的研究を用いた理由を説明?
②適切な質的方法を選択?
③倫理的配慮? - サンプリング
①対象者のクライテリアを明示?
②対象者の選択過程を明示? - 調査・分析
①具体的なプロセスを記述?
②Validityを確保する努力あり?
③データと解釈の区別は明確?
④結論の導き方は明快?
17.分析
- 逐語記録、逐次観察記録作成
- 一次分析(重要アイテムの抽出)
- 二次分析(重要カテゴリーの抽出)
- 複合分析(複数のグループインタビューを実施した場合)
18.グルイン分析のコツ
- – モッテイキカタをしっかりと!-
- モ 目標
- テ 提供対象
- ユ 行く末(到達点)
- キ 強調点
- カ 活用法
- タ 他の方法
19.グループインタビュー法による論文作成のコツ
- グループインタビュー法選択理由
- 対象特性と抽出プロセス
- 分析プロセス
- 結果と解釈
- 可能性と限界性
参考論文:住民参加型の保健福祉活動の推進に向けたコミュニティ・エンパワメントのニーズに関する研究、厚生の指標、53(5)、28-36、2006
20.グループインタビュー法をエンパワメントのツールとして活用するコツ
- 当事者ニーズを反映させる手段として
- 当事者を巻き込むプロセスとして
- 当事者評価のフィードバックとして
- 当事者のアイディアを創発して事業化する方法として
- 声なき声を束ねて自ら発信する機会として