近年がんの代謝は大変注目されており、欧米ではCancer Metabolismのシンポジウムが頻繁に開催されております。がん遺伝子、がん抑制遺伝子の変異は多様ですが、不思議なことに、ほとんどの種類のがんでワールブルグ効果と言われる好気的解糖など特異的な代謝が亢進しています。最近、がん細胞の増殖に必須である代謝経路を特定し、代謝酵素を標的とした抗がん剤の開発が精力的に行われています。しかし我が国では、がんの代謝に関する定期的な学会、研究会は存在しておらず、大学や企業の研究者が成果を発表し、情報を交換する機会がほとんどありませんでした。
そこで、本邦でがんの代謝解明に携わっている各分野の研究者が集まって最新の成果について議論したり、研究のネットワークを構築したりして、この研究分野を推進させることを目的とした「がんと代謝シンポジウム2013」(発起人曽我朋義、江角浩安、末松誠)を、2013年の1月に慶應義塾大学信濃町キャンパスの北里記念講堂で開催しました。定員を超える300名以上の参加者があり、特に半数が、製薬会社を中心とした企業の研究者でした。またアンケートの回答からシンポジウムが高い評価を受けたことや、参加者の93%が毎年の企画を希望していることがわかりました。
この結果を踏まえて「がんと代謝研究会」を正式に発足し、2013年10月に第1回研究会を慶應義塾大学先端生命科学研究所、2014年7月に第2回研究会を東京理科大学葛飾キャンパス、2015年7月に第3回研究会を金沢大学がん進展制御研究所で開催致しました。特別講演、記念講演、教育講演、一般講演に加え、ポスター発表も行われ、最新の研究成果を基にした熱い討論が繰り広げられてきました。
今後も、広範な分野の研究者から「がんの代謝」に関わる基礎から創薬までの研究内容を発表して頂きたいと思います。アカデミア、企業を問わず、がんの代謝研究にご興味ある多くの方々のご参加をお待ちしております。
がんと代謝研究会の発起人を代表して
慶應義塾大学先端生命科学研究所 曽我朋義 |