痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief　ー皮膚の痛み

│皮膚の痛み│

○熱傷の痛み Burn Pain

熱傷は、上皮あるいは皮下組織が熱あるいは化学物質によって被る損傷である。

　[分類]

いわゆる熱傷熱湯熱傷	熱湯、火焔、蒸気などの熱による損傷。皮膚に高温が作用したために起こる傷害。人間の皮膚は45℃以上の熱で熱傷になる。45℃の場合は、１時間。70℃の場合は、１秒で組織の破壊が始まる。皮膚症状が中心だが、熱傷を受けた面積が広ければさまざまな全身症状があらわれる。
低温熱傷　low temperature 　burn injury	普通なら熱傷しないような温度で起こる熱傷。電気カイロ、ホットカーペットなどの低温熱源に長時間肌が触れる事で起こる。接触部の温度が44℃であれば、約6時間で受傷する。 44～51℃であれば、接触する温度が高くなるにつれて受傷する時間が短縮される傾向にある。痛みに気づかないためDDBまで傷を負い、さらに進行性に深くなりDBまで達することもある。皮膚の血流量より脂肪層の血流量が少なく、皮膚の血流で受傷した創が冷やされて軽症に見えても脂肪層では血流により冷却されないため傷は実際より深いことがある。
化学熱傷　chemical burn	強酸、強アルカリなどの化学物質による皮膚、粘膜の損傷。工場や実験室での事故によって起こるものが多いが、家庭での消毒剤、漂白剤、洗浄剤、錆落しなどの化学薬品の誤使用も原因となる。数時間にわたって徐々に組織が壊疽するのが特徴。治療上まず皮膚以外の眼損傷、吸引による気道粘膜損傷、誤嚥による消化管粘膜損傷などの損傷の可能性に注意すべきである。
電気熱傷＝電撃傷　electric burn	電流による損傷。電流への抵抗によって生じる5000℃ほどの熱で組織が破壊される。一般の火傷と違い、電気熱傷では、局所の損傷がわずかでも不整脈おこすことがある。体表面の損傷の広さでは重症度は判定できないこと、時間がたつとともに局所の損傷が拡大すること、筋肉の損傷、壊死を伴うことも多く、二次的に出血をきたすことが特徴。筋損傷、血管損傷になる可能性が高く、重症例では、心停止（心室細動）のおそれがあり、また絶縁後も進行性壊死が見られる。主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難。重症度は電圧、電流、伝導体への接触時間に左右され、交流電源は直流電源より危険度が高いと言われている。主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難である。
放射線熱傷　radiation burn	放射線による損傷。高線量の放射線により皮膚を構成する細胞や血管が傷害され、熱傷に類似した症状を呈する。日焼けも厳密に言えば熱傷である。太陽光線に含まれる紫外線（UVA、UVB）に被曝すると、皮膚組織の破壊が起こる。日焼けといえども、照射時間・範囲のいかんによっては重態になりかねない。

気道熱傷

気道熱傷とは、熱や煙の吸入により生じた呼吸器系の傷害で、さまざまな原因による傷害がすべて含まれる。
その原因により、熱による傷害、煤煙および煙に含まれる有毒化学物質による傷害に分類される。
熱による直接の傷害は咽頭や喉頭までにとどまり、有毒化学物質によるものはそれより先の気管・気管支・肺の傷害が主になる。
傷害を受ける部位により分類すると、咽頭・喉頭浮腫が主体の上気道型、気管・気管支が傷害を受ける気管・気管支型、肺炎が主体の末梢型に分類される。

症状の現れ方

上気道型の気道熱傷は、咽頭・喉頭浮腫による上気道の閉塞が起こりやすく、最悪の場合は窒息による呼吸停止をまねくことがあるため、受傷後２４時間以内はとくに注意が必要。
室内や車内などの閉鎖された空間で火災による熱気や煙を吸入した場合には、皮膚熱傷の有無にかかわらず、気道熱傷を疑わなければなりません。
一酸化炭素中毒の合併にも注意する必要があり、意識障害が現れることもある。
口や鼻の周囲に熱傷がある、鼻毛が焦げている、口腔や鼻腔内にすすがある場合などは、気道熱傷があると考えたほうがよいでしょう。さらに、すすの混じった痰、嗄声、喘鳴などがある場合は、気道熱傷の存在は確定的。

　[熱傷深度]

I度熱傷　epidermal burn	損傷が表皮だけにとどまっているもの。血管拡張による紅斑と軽度の腫脹、痛みがみられる。 2～3日で治癒し、瘢痕を残さない。
II度熱傷損傷が真皮の浅層にとどまるものと、真皮の深層におよぶ者に分けられる。ピンセットなどで患部を圧迫し、離した時白くなった部位が元に戻ったら浅いII度、そのまま血流が滞り白かったら深いII度である。
II度浅層性熱傷　superficial dermal burn	損傷が真皮の浅層熱傷強い痛みと腫脹があり、血管透過性が亢進して水疱を形成し、血流が停滞する。 1週間前後でほとんど問題なく治癒する。
II度深層性熱傷　deep dermal burn	損傷が真皮・乳頭層、乳頭下層まで達する熱傷感覚が鈍麻し、水疱を形成しないこともある。治癒に３週間前後を要する。
III度熱傷　deep burn	損傷が深部組織におよぶ皮膚全層の熱傷血流遮断と壊死が起こり、痛みはなく、羊皮のように白く乾燥したり炭化したりする。水疱は形成しない。植皮をしないと創閉鎖を期待できない。広範囲熱傷であっても消毒薬や抗生物質は使用しない。熱傷創面を消毒すると，かえって感染しやすくなる。

　[熱傷面積の算出]---熱傷が体表面積の何％を占めるか

手掌法：患者自身の手の面積が、体表面積の1%に相当する。
９の法則 rule of nines（Wallace）：顔面等頸部を9%、上肢9%ｘ2、下肢9％×2、、体幹前面・後面・左下肢・右下肢をそれぞれ18%、陰部を1%として計算する。
5の法則 (Blocker)：頭部の比率が聖人よりも大きいことを考慮して、乳幼児に適用する。
　乳児の場合：頭部・体幹前面・後面をそれぞれ20%、四肢をそれぞれ10%で計算する。
　幼児の場合：頭部を15%、左上肢・右上肢をそれぞれ10%、体幹前面を20%、体幹後面・左下肢・右下肢をそれぞれ15%で計算する。
Lund ＆ Browderの図を利用するとかなり正確に算定できる。　小児では頭部の割合が大きいことを勘案したもの。

II度の面積が小児では面積が10%以上、成人では15%以上。
III度では面積が2%以上。
顔面、手足、会陰などのの強いII度深層以上の熱傷
電撃痛、：面積は問わない。
気道熱傷：面積は問わない。
化学熱傷：面積は問わない。
合併した損傷：年部組織損傷、骨折。

　[熱傷の痛み]

熱傷を負って間もない時期の痛み
- 損傷された神経線維から損傷発射 injury dischargeが出るための痛み
- 組織を損傷した熱が熱傷局所に残って侵害受容線維を刺激する余熱の痛み
- 炎症が発生した局所に発現した発痛物質、発痛増強物質が侵害受容線維を刺激して生じる痛みである。
  　→局所を冷却すると余熱を奪い、発痛物質・発痛増強物質の発現を抑える。さらに冷覚線維が刺激され、脊髄における痛みの伝達を抑制する。
- 熱傷の痛みは受傷から数分間以上、時には数時間も痛みを意識しない例がある。火事の現場では、逃げることがすべてに優先し、必死で逃げる人は熱傷の痛みを感じない。我が子を助けようと比の中に入った時も、熱傷の痛みを感じない。
熱傷後の第一段階の痛み
- 損傷自体によるもので、熱傷部位とその周辺部の安静時痛
- 体位変換・寝返り・歩行時の突発痛
- 呼吸運動によって痛みが強まることがある。
- 移植のための皮膚を切り取られた部位の状態は、II度浅層性熱傷に煮ていて、それと同様な痛みが生じる。こちらのほうが熱傷部位の痛みよりも強いことがある。
熱傷後の第二段階の痛み---治療と関連した痛み
- 創傷局所のガーゼ交感や熱傷から壊死組織の除去（デブリドマン debridement）や創傷清拭の痛みは、しばしば熱傷による痛みよりも強い。熱
- 壊死組織を切開する創傷清拭、抗菌薬の局所使用、理学療法に伴う痛み。
熱傷後の第三段階の痛み---組織の再生と治療過程に関連した痛み
- 皮膚の再生が始まると、痛みを感じる。この痛みは強いジンジンビリビリ感や痒みを伴い、それらは痛みと同様に不快である。
- さらに拘縮や肥厚痕跡がみられる。これは特に肉芽過程は何ヶ月、何年も続き、痛みや異常感覚が痕跡形成後にも続くことがある、

　[熱傷局所の痛覚過敏]

神経線維の自由終末が露出している。
炎症メディエーターが痛覚線維の自由終末が過敏化している。
損傷された神経線維の再生が始まると、局所に神経線維の側芽が現れる。側芽は機械的刺激に敏感である。
痛みが続いたり、繰り返したりすると、痛みを脳に中継する脊髄のニューロンが興奮しやすくなる。
睡眠不足や痛みのエピソードを繰り返し、次第にエネルギーを失い疲労する。
痛み反応が条件づけられる。

　[小児の熱傷]

小児の熱傷では、熱傷面積が過小評価されやすい。
皮膚が薄く、真皮の乳頭層が乏しく、熱の作用が深部におよびやすい。
熱傷面積が同じでも成人よりも重症である。
小児の熱傷の包帯交換に、麻酔薬のための用量よりも少ないケタミンが使われる。普通1.～01.5mg/kgのケタミンの静脈内注射が行われる。ケタミンはNMDA受容体拮抗薬で、中枢性痛覚過敏を抑制する。また、モルヒネの使用量を減らすことができる。小さな熱傷であればオピオイドや弱い鎮痛薬が使われる。

○褥瘡、褥瘡性潰瘍（床ずれ） decubitus ulcer, bedsores

圧迫により皮膚に血液が十分流れなくなり、その部分が損傷を受けた状態。
局所の血流が２時間以上途絶すると、皮膚組織は壊死に陥りやすくなる。
骨突出部位の皮膚に加わる過度の圧迫によって組織が壊死をおこした状態。
年齢には関係なく、寝たきりの人や車いすが手放せない人、自分では体の向きや位置を変えられない人ならだれにでもできる。しかし高齢者は、他の年代よりもできやすくなっている。

　[症状]

ほとんどの場合、痛みとかゆみを伴う。
しかし、感覚が鈍くなっている人では、重症で深い褥瘡ができても痛みを感じない場合がある。

褥瘡は、皮膚が損傷を受けている程度によって4段階に分類さる。

Sheaの褥瘡の分類

I 度	急性炎症を伴うが、表皮のみの浅い褥瘡
II 度	真皮、皮下組織に達している褥瘡
III 度	筋肉にまで達している典型的褥瘡
IV 度	骨組織にまで達していて、骨および関節が破壊されている褥瘡

IAET分類　[IAET : International Association for Enterostomal Therapy]

ステージ１	圧迫除去後30分以内に消退しない発赤（紅斑）。表皮は損なわれていない。いわゆる可逆的な段階。
ステージ2	表皮あるは真皮に至るが、皮下組織に至らない皮膚の部分欠損。発赤（紅斑）を伴う水疱や硬結も含む。創傷底は湿潤で、ピンク色。痛みを伴う。壊死物はない。
ステージ3	真皮全層を超え、皮下組織に至る全層欠損。痂皮で被われていない限り、浅い潰傷がある。壊死組織、ポケット形成、皮下交通、滲出液、感染の可能性がある。創傷底は通常痛みを伴わない。
ステージ4	皮下組織を超え、筋膜、筋層、関節、骨に達する深い組織欠損。壊死組織、ポケット形成、皮下交通、滲出液、感染の可能性がある。創傷底は通常痛みを伴わない。

１段階（表皮障害）	黒色期	皮膚および皮下組織が壊死に陥り、黒色の痂皮として付着した状態。外科的に除去する必要がある。皮下脂肪織の壊死は皮膚の壊死より広範囲になることが多く、いわゆるポケットを形成していることある。
２段階（表皮欠損）	黄色期	黒色の痂皮が除かれても、皮下の壊死組織がまだ付着している状態です。物理的デブリドマン（外科的、水圧をかけた創面の洗浄、wet-to-dryドレッシング、デキストランポリマー粒子）や化学的デブリドマン（酵素製剤の外用）などで壊死物質を除去する必要がある。
３段階（皮下組織）	赤色期	赤色期は壊死物質はほぼ除去され良好な肉芽が形成されてくる時期です。この時期には肉芽形成を促進する外用剤を使用したり、創面被覆剤によるウェットドレッシングを行います。
４段階（腱、骨）	白色期	上皮再生期

　[好発部位]

仙骨部	臥床時に全体重の44%がかかる、便の汚染を受けやすい
大転子	皮下に滑液包があり感染が波及しやすい化膿性股関節炎は重篤になりやすい
腸骨翼	大転子と同様に側臥位をとる場合にみられる
坐骨結節	車椅子生活者にみられる、寝たきりの人にはみられない
踵骨	乾燥した褥瘡の場合は例外的にデブリドマンの必要なし

辱層は、治療よりも予防が重要

ドレッシング

創傷を覆う材料は一般にドレッシングと呼ばれております．傷に服を着せると意味

数千年の昔から人類はドレッシングとして、植物の葉、木皮、獣皮、綿布など様々な材料を使用してきた。

	ウェットドレッシング	ドライドレッシング
	生体細胞の周囲が等浸透圧的である。	生体細胞の周囲が高浸透圧的である。
開放性	フィルムドレッシング食品用ラップ紙おむつ＋オプサイト紙おむつ（大量の滲出液がある場合）持続陰圧閉鎖療法	乾燥ガーゼカデックス軟膏ユーパスタ紙おむつ（滲出液が少ない場合）
閉鎖性	ワセリンガーゼ軟膏ガーゼパッキングデュオアクディブハイドロサイト生食ガーゼ＋フィルムドレッシングハイドロコロイドポリウレタンフォーム

ガーゼドレッシング＝開放性ドライ　ドレッシング	綿花が廉価に入手できるようになってから20世紀なかばまでの皮膚欠損症の治療 �-�度褥創はガーゼドレッシングの適応。熱傷の標準的治療として、消毒したガーゼを貼付する。タンニン酸でかさぶたをつくる方法。手間がかかり、苦痛を伴い、しかも感染などの合併症が多く、治療成績が低かった。
ワセリン軟膏ガーゼ＝閉鎖性ウェット　ドレッシング	20世紀中頃から、ガーゼを当てて創を乾燥させる方法からワセリン軟膏ガーゼやポリウレタンなどのプラスティックフィルムを貼って治療する方法への転換した。 1942年に、492人もの死者を出したココナッツグローブ大火　The Coconut Grove Fire in Bostonの時に、ハーバード大学のオリバーとコープ医師は、129人もの熱傷患者をホウ酸ワセリン・ガーゼで治療した。これが，第2次世界大戦米軍の熱傷の標準的治療になった。湿潤環境が創傷治癒を促進させるという理論。傷ついた皮膚が再生するためには、肉芽細胞が増殖する条件が必要。ウェットドレッシングのほとんどは創に密着し閉鎖するので、ガーゼドレッシングと差別化する意味で。「閉鎖ドレッシング」と呼ばれた。 �-�褥創が閉鎖ドレッシング療法の適応 1945年Bloomは、熱傷にセロファンを貼って治療した。
モダンドレッシング＝閉鎖性ウェット　ドレッシング	1962年Winterは、豚の人工表皮欠損の治療にポリエチレンフィルムが有効であることを報告した。その後，ポリウレタンフィルムや塩化ビニリデン（食品用ラップの材料）など様々なプラスチックフィルムが検討された。ポリウレタンフィルムにアクリル粘着剤を塗ってものが商品化された。滲出液を吸収する能力を持たせたドレッシングが数多く現在商品化されている。滲出液の吸収材としてポリウレタンフォームを使ったハイドロサイトなど
ラップ療法開放性ウエット　ドレッシング	「傷を消毒をしない，抗菌薬を使わない，閉鎖しない，ガーゼを使わない，ドライドレッシング（ユーパスタ，カデックス）を使わない褥創の局所療法」褥創の治療筋肉や骨の壊死組織を取り除いてから行う。ドレナージ目的です．壊死組織が柔らかくなったら，こまめに切除し，浸出液の流れる道を確保しましょう．
ハイドロコロイドドレッシング	創内をこすらないように強酸水にて洗浄を行ったあとガーゼで周囲の水分を拭き取り創外をヒビテンで消毒創縁から３cm以上覆うように、ハイドロコロイドドレッシング剤（コムフィールアルカス?）を貼る。

Pain Relief

いわゆる熱傷熱湯熱傷	熱湯、火焔、蒸気などの熱による損傷。皮膚に高温が作用したために起こる傷害。人間の皮膚は45℃以上の熱で熱傷になる。45℃の場合は、１時間。70℃の場合は、１秒で組織の破壊が始まる。皮膚症状が中心だが、熱傷を受けた面積が広ければさまざまな全身症状があらわれる。
低温熱傷　low temperature 　burn injury	普通なら熱傷しないような温度で起こる熱傷。電気カイロ、ホットカーペットなどの低温熱源に長時間肌が触れる事で起こる。接触部の温度が44℃であれば、約6時間で受傷する。 44～51℃であれば、接触する温度が高くなるにつれて受傷する時間が短縮される傾向にある。痛みに気づかないためDDBまで傷を負い、さらに進行性に深くなりDBまで達することもある。皮膚の血流量より脂肪層の血流量が少なく、皮膚の血流で受傷した創が冷やされて軽症に見えても脂肪層では血流により冷却されないため傷は実際より深いことがある。
化学熱傷　chemical burn	強酸、強アルカリなどの化学物質による皮膚、粘膜の損傷。工場や実験室での事故によって起こるものが多いが、家庭での消毒剤、漂白剤、洗浄剤、錆落しなどの化学薬品の誤使用も原因となる。数時間にわたって徐々に組織が壊疽するのが特徴。治療上まず皮膚以外の眼損傷、吸引による気道粘膜損傷、誤嚥による消化管粘膜損傷などの損傷の可能性に注意すべきである。
電気熱傷＝電撃傷　electric burn	電流による損傷。電流への抵抗によって生じる5000℃ほどの熱で組織が破壊される。一般の火傷と違い、電気熱傷では、局所の損傷がわずかでも不整脈おこすことがある。体表面の損傷の広さでは重症度は判定できないこと、時間がたつとともに局所の損傷が拡大すること、筋肉の損傷、壊死を伴うことも多く、二次的に出血をきたすことが特徴。筋損傷、血管損傷になる可能性が高く、重症例では、心停止（心室細動）のおそれがあり、また絶縁後も進行性壊死が見られる。主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難。重症度は電圧、電流、伝導体への接触時間に左右され、交流電源は直流電源より危険度が高いと言われている。主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難である。
放射線熱傷　radiation burn	放射線による損傷。高線量の放射線により皮膚を構成する細胞や血管が傷害され、熱傷に類似した症状を呈する。日焼けも厳密に言えば熱傷である。太陽光線に含まれる紫外線（UVA、UVB）に被曝すると、皮膚組織の破壊が起こる。日焼けといえども、照射時間・範囲のいかんによっては重態になりかねない。

I度熱傷　epidermal burn	損傷が表皮だけにとどまっているもの。血管拡張による紅斑と軽度の腫脹、痛みがみられる。 2～3日で治癒し、瘢痕を残さない。
II度熱傷損傷が真皮の浅層にとどまるものと、真皮の深層におよぶ者に分けられる。ピンセットなどで患部を圧迫し、離した時白くなった部位が元に戻ったら浅いII度、そのまま血流が滞り白かったら深いII度である。
II度浅層性熱傷　superficial dermal burn	損傷が真皮の浅層熱傷強い痛みと腫脹があり、血管透過性が亢進して水疱を形成し、血流が停滞する。 1週間前後でほとんど問題なく治癒する。
II度深層性熱傷　deep dermal burn	損傷が真皮・乳頭層、乳頭下層まで達する熱傷感覚が鈍麻し、水疱を形成しないこともある。治癒に３週間前後を要する。
III度熱傷　deep burn	損傷が深部組織におよぶ皮膚全層の熱傷血流遮断と壊死が起こり、痛みはなく、羊皮のように白く乾燥したり炭化したりする。水疱は形成しない。植皮をしないと創閉鎖を期待できない。広範囲熱傷であっても消毒薬や抗生物質は使用しない。熱傷創面を消毒すると，かえって感染しやすくなる。

ガーゼドレッシング＝開放性ドライ　ドレッシング	綿花が廉価に入手できるようになってから20世紀なかばまでの皮膚欠損症の治療 �-�度褥創はガーゼドレッシングの適応。熱傷の標準的治療として、消毒したガーゼを貼付する。タンニン酸でかさぶたをつくる方法。手間がかかり、苦痛を伴い、しかも感染などの合併症が多く、治療成績が低かった。
ワセリン軟膏ガーゼ＝閉鎖性ウェット　ドレッシング	20世紀中頃から、ガーゼを当てて創を乾燥させる方法からワセリン軟膏ガーゼやポリウレタンなどのプラスティックフィルムを貼って治療する方法への転換した。 1942年に、492人もの死者を出したココナッツグローブ大火　The Coconut Grove Fire in Bostonの時に、ハーバード大学のオリバーとコープ医師は、129人もの熱傷患者をホウ酸ワセリン・ガーゼで治療した。これが，第2次世界大戦米軍の熱傷の標準的治療になった。湿潤環境が創傷治癒を促進させるという理論。傷ついた皮膚が再生するためには、肉芽細胞が増殖する条件が必要。ウェットドレッシングのほとんどは創に密着し閉鎖するので、ガーゼドレッシングと差別化する意味で。「閉鎖ドレッシング」と呼ばれた。 �-�褥創が閉鎖ドレッシング療法の適応 1945年Bloomは、熱傷にセロファンを貼って治療した。
モダンドレッシング＝閉鎖性ウェット　ドレッシング	1962年Winterは、豚の人工表皮欠損の治療にポリエチレンフィルムが有効であることを報告した。その後，ポリウレタンフィルムや塩化ビニリデン（食品用ラップの材料）など様々なプラスチックフィルムが検討された。ポリウレタンフィルムにアクリル粘着剤を塗ってものが商品化された。滲出液を吸収する能力を持たせたドレッシングが数多く現在商品化されている。滲出液の吸収材としてポリウレタンフォームを使ったハイドロサイトなど
ラップ療法開放性ウエット　ドレッシング	「傷を消毒をしない，抗菌薬を使わない，閉鎖しない，ガーゼを使わない，ドライドレッシング（ユーパスタ，カデックス）を使わない褥創の局所療法」褥創の治療筋肉や骨の壊死組織を取り除いてから行う。ドレナージ目的です．壊死組織が柔らかくなったら，こまめに切除し，浸出液の流れる道を確保しましょう．
ハイドロコロイドドレッシング	創内をこすらないように強酸水にて洗浄を行ったあとガーゼで周囲の水分を拭き取り創外をヒビテンで消毒創縁から３cm以上覆うように、ハイドロコロイドドレッシング剤（コムフィールアルカス?）を貼る。