もっと柔軟な普通救命講習会の開催を!!

市立秋田総合病院中央診療部 円山啓司

(東北救急救命士会会報 第3号, 1999)

 本年4月18日、広島市でかけがえのない赤ちゃんのための救命講習会を広島マミーサービスの中村徳子さんと開催しました。その講習会を通して余りにも多くの方が乳児の心肺蘇生法を知らないことに気づき驚きました。そこで、この講習会に御手伝いいただいた愛媛大学医学部救急医学講座の越智先生を加えて乳児突然死撲滅キャンペーン実行委員会なるものを作り、事故や病気による突然死を未然に防ぐための活動を始めました。その後、東京、横浜、京都、久喜、江刺の保育関係者の方から是非乳児ののための救命講習会をやってもらえないかとの問い合わせがあり、メーリングリストの仲間や地元消防本部の協力の元に講習会を開催(または開催予定)しています。

 一緒に活動している中村さんは、ホームページ(http://www.alles.or.jp/~mammy)の中で、次のように述べています。

 講習会の参加者の募集時に看護婦、保健婦の方々でさえ乳児の蘇生法を余りご存知ないということと、乳児の人工呼吸はマウス・ツー・マウスと思っておられる市民がとても多いことに併せて気が付きとても驚きました。これは、皆さんの知識不足のためではありません。現在の日本の救命講習での指導のマニュアルが、成人を対象にした内容にな っているためです。 しかし、全国で亡くなられる乳児の人数が成人と比べてとても少ないといいましてもご家族様にとって、かけがえのない大切な命には変わりはありません。 私は、乳児だけの救急講習会を消防署や日本赤十字でして頂きたいと願っているのではありません。年齢にかかわらずご家族様にとって全てかけがえのない大切な命です。 全ての国民の命をお守りするために、乳児から大人までの救急法を盛り込んだ救命講習会をご検討頂けることを願っております。又、そのような講習会を全国のお母さん達は、とても望んでおられますし、 受講意欲も強いです。 お母さんは、ご家庭の中で普段からのご家族の体調や健康について、一番留意しておられます。そしておじいちゃん、おばあちゃん、ご主人、お子さんの救急時にかかわられる可能性が高いのもお母さんです。 又、お母さんが講習内容を、ご家庭へ伝えられることで学ばれたことをご家族で共有できます。ひいては、国民への救急救命法の普及と救命にもつながります。 それらのことを4月の講習会の開催にあたって強く感じました。

 院外心肺停止患者の大半は成人ですので、成人のための心肺蘇生法の啓蒙普及活動は大切です。しかし、院外心肺停止患者に心肺蘇生法を実施しているのは家族の中では、"母親"、"妻"、"嫁"が多いと思います。言い換えると、乳児の講習会に参加されるような方々です。このような方々は子供を助けたい意識を強く持って参加されるわけですから、講習会の内容を十分に理解していただけます。確かに、講習会終了時、子供だけでなく、自分の目の前で倒れた方がいれば、何かできることをするといった強い意識を参加者が持っているように感じました。このような講習会が今後増えていけば、Bystander CPRの増加も夢ではないと感じています。

 我々が行っている乳児のための救命講習会は普通救命講習会と同じ3時間で、事故や病気による突然死についての危険因子等の認識を持ってもらうことと早期通報(電話のかけかたを含む)や心肺蘇生法の重要性を理解させることを主目的としています。また、成人の心肺蘇生法のデモを行ったり、成人の実技指導も併せ行ったりして、成人との相違を理解してもらっています。是非、普通救命講習会の在り方について救急救命士を中心として再検討していただきたいと思います。

■乳児の突然死撲滅キャンペーン