虫の集い
(線虫研究者コミュニティ)

クイズ

クイズ

Q: 線虫の中でもモデル生物として広く使われているC.エレガンスにはいくつの神経細胞があるでしょう?

A

雌雄同体には302個、雄には385個あります。そのうち、頭部には約180個あります。雄に多い理由は、主に交尾のために用いられる尾部の感覚神経や運動神経が追加されているためです。感覚神経細胞は72個です。

Q: 線虫に眼はあるんですか?

A

線虫には、哺乳類が持つような独立の器官としての眼はありません。線虫は土の中や落果した果実の中に生息していますので視覚を持つことにメリットがないためだと考えられています。しかし、光を感じることはできます。頭部の感覚神経のいくつかが光(特に青い光や紫外線)に反応し、線虫は明るいところを避けるように行動することが知られています。

Q: 線虫のシナプスは、ヒトとよく似ていますか?

A

線虫にもシナプスが存在し、ヒトのそれと似た構造を持っています。線虫でも、神経細胞同士がシナプスを介して情報を交換しています。シナプスには主に次の2種類があります:
化学シナプス: このタイプのシナプスは、アセチルコリンやドーパミンなどの化学物質を使って情報を伝達します。情報の流れは一方通行で、次の神経細胞を活性化させたり、抑制したりすることができます。
電気シナプス: ギャップジャンクションとも呼ばれる、神経細胞同士をつなぐ、小さな分子やイオンだけが通れる特別な通路です。この通路を通じてイオンが移動することで、情報が伝わります。電気シナプスでは情報の流れが双方向になることがあります。

Q: 遺伝子は細胞の中の「核」に保管されていていますが、核以外にも遺伝子が存在する場所があります。線虫(動物)の場合、それはどこ(どの細胞内小器官)でしょうか?

A

ミトコンドリアです。植物細胞の場合は、葉緑体を有していて、そこにも独自のDNAを有しています。 ミトコンドリア遺伝子は多くの生物で母親からのみ子孫に伝わる「母性遺伝」を示します。その仕組みの謎について、線虫を使った研究で解き明かされました。詳しくは、2-2「受精」の項目をご覧ください。

Q: 線虫の受精卵で、将来の体の前後軸(どちらが頭でどちらがお尻か)を決めるのに重要な役割を果たす細胞内小器官は何でしょうか?

A

中心体です。線虫の受精卵では、中心体がある位置が体の後ろ側、つまり将来尻尾になるように決まります。前後軸、背腹軸、左右軸など体づくりにおける方向性を決める仕組みの理解には線虫を使った研究が多大な貢献をしています。詳しくは2-3「線虫が卵から体の形を作る初期の過程」や、2-4「細胞系譜」の項目をご覧ください。

Q: 線虫において雌雄同体の発生過程で生じる1,090個の体細胞のうち、プログラム細胞死(あらかじめ決められたプログラムに従って細胞が死ぬ現象)が生じるのは何個でしょうか?

A

131個。プログラム細胞死は様々な生物種の発生過程で起こります。プログラム細胞死では、細胞が死ぬ過程が厳密に制御されており、その仕組みの多くが線虫を使った研究でわかってきました。詳しくは2-4「細胞系譜」や、2-6「プログラム細胞死(アポトーシス)」の項目をご覧ください。

Q: 多くの種類の線虫が地中に暮らしています。これまで見つかった線虫で、一番深くから発見された線虫は地下何 mから見つかったでしょう?

A

2011年のBorgonie博士らの報告によると、線虫Halicephalobus mephisto [ハリセファロブス・メフィスト] は南アフリカの地下1300 mから見つかりました。またこの報告では地下3600 mの水からも線虫のDNAが検出されたとされています。私たちの想像も及ばない地中深くにも線虫の多様性が広がっていると考えられます。

Q: 植物寄生性の線虫は植物の根などに寄生し、農作物をダメにしています。次の野菜のうち、線虫の被害にあっているものはどれでしょう?
[にんじん, だいこん, レタス, トマト, じゃがいも]

A

全部です。ネグサレセンチュウやネコブセンチュウなどの植物寄生性線虫は一種でも300種類以上の植物に寄生してしおらせたり枯れさせたりしてしまいます。世界の12.3%の農作物が線虫の被害により失われていると言われています。その被害総額は世界全体で毎年20兆円以上におよびます。

Q: 線虫の中でも特に特殊な進化を果たしたのが寄生性の線虫です。世界のどれくらいの人たちが寄生性の線虫に感染しているでしょう?

A

2023年のWHOの発表によると全世界の24%の人々(約15億人)が線虫に感染しているとされています。多くのケースでは症状はあらわれないため、見逃されていますが、免疫機能が低下すると重症化や死亡につながることがあります。

Q: 野生型の線虫C. elegansはどのくらいの期間生きられるでしょう?

A

実験環境下で生殖可能な雌雄同体は約2~3週間程度生きられます。ただ、自然環境下では外敵に食べられてしまうなどの要因によってこれほど長く生きられることは少ないと思われます。一方、生殖ができない耐性幼虫になると2~3ヶ月生きることができます。さらにL1などの幼虫は凍結・融解後にも生存が可能なので、凍結することによって半永久的に生きられます。

Q: どのような因子が線虫の寿命に影響するでしょう?

A

多くの因子が寿命に影響することが知られています。たとえば、C. elegansは15℃から25℃で継続的な飼育が可能ですが、15℃で飼う方が25℃で飼うよりも長生きします。また、食餌の量を制限することによっても長寿になります。このほかにも、遺伝子の変化、生殖細胞の有無、化学受容の有無、薬剤の投与などによって寿命が変わります。このように寿命は、内的要因と外的要因により複雑な制御を受けている生命現象です。線虫の寿命に影響する因子のうちの少なくともいくつかは哺乳動物にも同じ効果があることが知られています。

Q: これまでに知られているC. elegansの変異体は、野生型に比べて最長でどのくらい長く生きられるでしょう?

A

age-1という遺伝子の変異体は野生型の10倍生きることが報告されています。
(Ayyadevaraら著、「Remarkable longevity and stress resistance of nematode PI3K-null mutants」、2007年、Aging Cell、7(1) 13-22、doi.org/10.1111/j.1474-9726.2007.00348.x)