脳腫瘍に対する内視鏡手術の利点

近年の内視鏡の進歩はめざましく、多くの手術分野で導入され、従来の体を大きく切る手術から、小さな切開で深いところが手術できるように様変わりしています。脳腫瘍に対しても、内視鏡を使った手術は急速に進歩しています。

脳腫瘍に対する内視鏡手術の利点は、従来の開頭手術と比べて狭い間口から深いところがよく見えることです。このため腫瘍に到達するまでに脳や周りの重要組織を押しのける必要が少なくなり、脳や周りの組織へのダメージを減らすことができます。

特に経鼻内視鏡手術では、右図でお示しした通り頭蓋を経由しないため、脳組織(図中の黄色で示した部分)を触ることなく、腫瘍に到達できるという、大きな利点があります。

経鼻内視鏡手術の模式図

内視鏡手術は危険ではないですか?

これはよくいただくご質問です。昨今の内視鏡手術事故の報道を拝見しますと、不安に感じられることは、よくご理解できます。しかし結論から申し上げますと、的確な適応のもと、適切な技術をもって行えば、内視鏡手術は危険性の低い、かつ利点の多い治療法と言えます。

内視鏡手術は、一般的に低侵襲(体への負担が軽くなる)といわれていますが、たしかに決して”簡単な”手術ではなく、十分な経験に基づいた知識と技術が要求されます。

経験は手術件数はもとより、患者さんの術後の経過を永きに渡って診察し、学会発表や論文で整理することではじめて、身についた確かなものになると考えています。すなわち、学術的に裏付けされた臨床経験が手術技量の維持に大事だと考えます。

また脳腫瘍に対する内視鏡手術は、すべての脳腫瘍に適しているわけではなく、個々の腫瘍の特徴を詳細に検討して適切に適応することが重要です。

このような内視鏡手術ですが、手術件数は年々増加しています。また保険収載もされ、公的に認められた手術法となっています。危険な手術であれば、公的に認められることはないと思われます。

繰り返しになりますが、的確な適応のもと、適切な技術をもって行えば、内視鏡手術の危険性は低く、メリットの大きい治療法と言えるでしょう。

内視鏡の外観