検査の準備
Preparation for inspection
尿道狭窄症専用の問診表を使用します。
尿の勢いや途切れといった排尿の悩み、それが生活に及ぼす影響など、患者さんご自身の「生の声」を医師に伝えるための問診表です。
この問診票は「何点以上なら尿道狭窄症が疑わしい」といった、尿道狭窄症自体を診断するものではありません。主に手術の前と後に回答いただき、治療で症状や生活の質がどれくらい改善したかを患者さん目線で確認するために使われます。
現在、iPhoneユーザーの方は、我々が開発した尿道狭窄症に関する問診アプリ(Re:Flow、リフロー)をご利用いただけます。
尿道狭窄症に関する問診票の内容を見る
最近4週間の症状に最も当てはまる□にチェックをいれてください。
質問1.尿の出始めに時間がかかることがありますか?
質問2.尿の勢いはいかがですか?
質問3.排尿を維持するのに力(りき)む必要がありますか?
質問4.排尿の途中で尿が一度でも途切れることがありますか?
質問5.排尿後に尿が残っていると感じることはありますか?
質問6.排尿後に下着を着用してすぐに下着が湿っていることはありますか?
質問7.あなたの排尿の具合は、あなたの生活をどのくらい悩ませていますか?
質問8.最近4週間の尿の勢いに最も近いのはどれですか?
下図の1から4のいずれかに丸をつけてください。
尿流測定検査
uroflowmetry, UFM
尿流測定検査は自力で排尿ができる方のみ行います。
簡易トイレに排尿します。便器の下についたセンサーがどのくらいの勢いで、どのくらいの時間で、どのくらいの尿量が排出できるか感知し左側の機械が測定、グラフ化します。
右図(左)は正常な尿流測定検査の波形(グラフ)です。横軸は排尿を開始してからの時間経過(秒)で、縦軸は1秒あたりの排尿量を示しています。尿が出始めてすぐに勢いのピークを迎え、すぐに排尿が終わります。
頂点の一秒当たりの排尿量を最大尿流量といいます。頂点の高い釣り鐘のような形は正常なパターンです。一方、尿道狭窄症では尿の勢いが弱く、排尿に時間がかかるため、右図(右)のようなピークの低い細長い箱形の波形になります。
尿流測定は、それだけで尿道狭窄症を診断できる検査ではありませんが、治療前後で比較して治療効果の判断材料にします。
Information
- 検査の目的
- 尿の勢いや排尿にかかる時間を測り、排尿後に膀胱に尿が残っていないか(残尿)を超音波で調べるためです。治療前後の排尿状態の比較にも使われます。
- 所要時間
- いつものように排尿する時間と、下腹部に超音波を当てる数分程度です。
- 痛みの目安・麻酔
- 痛みは全くありません。専用のトイレに排尿し、お腹の上から機械を当てるだけなので麻酔も不要です。
- 食事・飲水制限
- ありません。ただし、検査のためにある程度尿を溜めた状態で受診していただく必要があります(150mL以上の排尿量が理想的です)。
- 備考
- 尿道狭窄症の場合、尿の勢いのグラフのピークが低く、だらだらと長引く特徴的な波形になります。
尿道造影検査(逆行性および順行性尿道造影)
Urethrography
逆行性尿道造影検査
逆行性尿道造影は尿道狭窄症の診断において最も基本となる検査です1
特に前部尿道の診断には不可欠です。尿の出口(外尿道口)から尿が排出される向きと逆方向に造影剤を注入して尿道のシルエットを評価します。
尿道が撮影台と水平になるように図(左)のような体位で撮影します。図(右)は正常人の逆行性尿道造影で、白い部分が尿道内に注入された造影剤です。
順行性尿道造影(排尿時膀胱尿道造影)
排尿時膀胱尿道造影は逆行性尿道造影に引き続いて行います。
逆行性尿道造影で膀胱へ注入された造影剤を排出できるかレントゲン撮影をして調べる検査です。
後部尿道狭窄の評価や狭窄部よりも中枢側(膀胱寄り)の情報を得るために必要な検査です。自力で排尿できない方も、どの部位まで尿が通っているかを確認するために必要な検査となります。
図(左)は振子部狭窄の逆行性尿道造影ですが、尿道が完全に閉塞していて狭窄部よりも中枢側の状態が分かりません。排尿時膀胱尿道造影をおこなうことで、狭窄部よりも中枢側には狭窄がないことが確認できます。
Information
- 検査の目的
- 尿道に造影剤(レントゲンに写る薬)を入れてレントゲン撮影し、狭くなっている場所や長さ、範囲を正確に確認するためです。
尿道狭窄症の診断で最も基本となる重要な検査です。 - 所要時間
- 通常、5分から10分程度で終わります。
- 痛みの目安・麻酔
- 尿道の出口から造影剤を入れる際に、少し違和感を伴います。
- 食事・飲水制限
- 特にありません。
- 備考
- ブジー(拡張)や切開手術の直後で尿道がダメージを受けている状態では正確な検査ができないため、
尿道を少なくとも3ヶ月ほど休ませて炎症が引いた適切なタイミングで行うことが非常に重要です。
内視鏡検査
cystoscopy
内視鏡検査は痛みの少ない、柔らかい内視鏡を尿の出口(外尿道口)から尿道内に挿入し、狭窄部の状態を直接観察します。
膀胱瘻を留置されている場合は膀胱瘻から順行性に内視鏡を挿入して尿道内を観察します。
図は正常な尿道と尿道狭窄症の内視鏡画像です。正常な尿道(左)は粘膜がピンク色で血流が良く、奥がきちんと見えますが、尿道狭窄症(右)では粘膜が白色調で血流が悪く、内視鏡を通すことができません。
尿が通過するスペースは点線で囲まれた部分だけしかありません。
Information
- 検査の目的
- 尿道の中に細く軟らかいカメラ(内視鏡)を入れ、狭窄の有無や、尿道の粘膜の色調、硬い傷跡(瘢痕)の程度を直接目で見て確認するためです。
- 所要時間
- 通常、5分から10分程度で終わります。
- 痛みの目安・麻酔
- 尿道の中に局所麻酔をしてから行います。尿道にカメラを入れるため、違和感を感じることがあります。
狭窄している部分を無理に広げて観察することはありません。 - 食事・飲水制限
- 特にありません。
- 備考
- 尿道造影検査では内腔が開いて見えても、粘膜が瘢痕化している場合があるため、尿道の粘膜の傷跡の程度まで詳しく見るために行います。
骨盤MRI検査
MRI
骨盤骨折による後部尿道断裂、騎乗型尿道外傷や複雑な背景を有する尿道狭窄症では、瘢痕の程度や周囲臓器との位置関係を確認するためにMRIを行います。
特に骨盤骨折による後部尿道外傷では、断裂した尿道がどこにあるか(尿道の偏位)を手術前に把握しておくことが極めて重要です。
尿道の偏位は外傷のパターンや重症度、体格によって様々で、手術中に断裂した尿道をいかに見つけ出すかがとても難しいのです。
図は後部尿道外傷2例のMRI画像です。実線で囲まれた恥骨の位置を基準にみると、左の例では上に偏位していますが、右は右下に偏位しています。
このようにMRIは尿道造影で評価ができない尿道外の情報をクリアに描出できるのです2。
Information
- 検査の目的
- 主に外傷性の尿道狭窄症の場合に行います。
尿道の外側からのダメージの程度や、周辺の臓器との位置関係、尿道がどのくらいずれているかを立体的に詳しく調べます。 - 所要時間
- 撮影にはある程度時間(数十分程度)がかかります。
- 痛みの目安・麻酔
- 造影剤の注射による痛みが少しあります。ベッドに横になり、筒状の機械に入って撮影します。
- 食事・飲水制限
- 特にありません。
- 備考
- 複雑な外傷による狭窄の場合、手術の難易度や方法を決めるために非常に優れた重要な検査となります。
引用文献
- Angermeier, K. W., Rourke, K. F., Dubey, D. et al.: SIU/ICUD Consultation on Urethral Strictures: Evaluation and follow-up. Urology, 83: S8, 2014
- Horiguchi, A., Edo, H., Soga, S. et al.: Pubourethral Stump Angle Measured on Preoperative Magnetic Resonance Imaging Predicts Urethroplasty Type for Pelvic Fracture Urethral Injury Repair. Urology, 112:198, 2018