
前回の記事で、私は「システマティックレビューとメタ解析に基づき、GRADEシステムに沿って包括的に解説」するようなプロンプトを紹介しました。
これを実際にGeminiに投げてみます。返ってきた回答は、一見すると完璧ですが、残念ながら標準では「参照元(ソース)」が提示されません。
Geminiは決してインターネットから遮断されているわけではありません。標準のインターフェースにも、背後でウェブを検索し、その情報を回答に統合する機能、いわゆるRAG(検索拡張生成)の仕組みは備わっています。
情報の裏付けを即座に確認できることが検索タスクとしてAIを使う最大の利点であるはずなのに、標準Geminihaデフォルトの挙動では、参照元が提示されず、それは単なる「もっともらしい文章」に過ぎません。
そこで、「参照元のリンクを付けて」と頼んでみます。すると今度は、Geminiは検索を行わずに内部の記憶だけで答えようとしはじめることがあります。タイトルや著者は合っているのに、URLが存在しない。いわゆるハルシネーション(幻覚)です。素晴らしい検索能力を持ちながら、最後の最後で「根拠の提示」ができていません。
実は、開発者向けの環境(Google AI Studio)には「Google検索で裏付けをとる」ことが明示できます。これをONにすれば、AIは強制的にWeb検索を行い、参照元まで提示してくれます。ところが、「標準のGemini」には、この設定が見当たりません。
設定がないなら、言葉で指示するしかありません。Gemini3で臨床用途で検索したいとき。参照元の記載には「記憶に頼らず検索すること」と「一意のID(PMID/DOI)に基づくこと」を強制する指示が有効そうです。URL/PMIDを「書いて」「出力」というとハルシネーションのリスクが高まる印象です。以下のプロンプトを試してみてください。
Provide a comprehensive explanation drawing on systematic reviews and meta-analyses (SR/MA), and list recommendations according to the GRADE system.
[Citation Requirements]
Format: Vancouver style.
Verification: Use the browser tool to verify each reference.
Links: Include the PubMed ID (PMID) and a direct, clickable link to the PubMed entry or DOI for every citation.
Accuracy: Ensure the title, author, and year match the provided link exactly.
