概 要
ノー・ヒット・ゾーン運動は、2005年にアメリカ合衆国オハイオ州のレインボー小児病院が世界で初めて実施しました。その後2012年にケンタッキー州のノートン小児病院が採用し、実施のための資料を他施設に提供することで、米国東海岸を中心に急速に広がりを見せ、現在では、病院に留まらず市を挙げた取り組みとして進んでいる地域も出始めています。
NHZ(ノー・ヒット・ゾーン)の目的
- 病院を訪れる患者さんやその家族、ならびに医療スタッフの全てにとって快適で安全な環境を作り、強化する
- 体罰を行う、怒鳴る、脅すなどの行為は、より深刻な身体的/心理的虐待に繋がり、子どもの健康を害することとなることへの、医療スタッフの理解を促す
- 暴力的なシーンを目撃した際の、行為者と医療者の関わりの質を向上する
- 暴力/体罰に頼らない問題解決方法につき行為者と話し合い、新たな解決法を身に着ける支援を行う
- 自施設における暴力/体罰の発生頻度を減らし、それを他の医療機関、地域に広げていく
これまでの院内暴力対応との違い
これまでの院内暴力の発生時の対応は、事後的に、基本的には「排除の理論」に基づいて行われてきました。
しかし小児病院で発展してきたNHZは「支援の理論」に基づくものであり、暴力を問題解決手段とすることの有害性を啓発し、暴力に頼らない手段のオプションを知ってもらうことに力点が置かれます。
NHZ(ノー・ヒット・ゾーン)の成果
医療スタッフへの効果
NHZを導入し、暴力/体罰の対応トレーニング機会を増やすことで、93%の医療スタッフが介入を行う責任性について理解し、94%のスタッフが「親の体罰を発見した場合に具体的に介入出来るだけの知識が得られた」と報告されています。
患者への効果
現在、NHZの患者への効果に関しては、子どもへの体罰と関係した研究を中心に、複数の報告が存在しています。
NHZ運動に基づき介入した親への事後調査において、5人に1人の親が体罰への考え方が変わったと回答し、4人に1人強の親が体罰に頼らないより良いしつけ法があることに同意する、と回答していました(その割合は体罰をこれまで行っていた親で、より高かったとも報告されています)。