研究分野の紹介

現在進行中の研究の紹介とオプトアウト文書の公開のページです。

中耳・内耳・顔面神経

中耳・内耳は、ヒトが周辺環境を感じるために発達させた“五感”の中でも視覚と並んで情報量が多い、「聴覚」を司っています。鼓膜からツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳小骨を通して内耳へと音を伝える「中耳」、それから音を感知する「内耳」の障害は、耳の痛みや難聴、耳鳴、耳閉感などの原因となり、さらには、表情を司る顔面神経が中耳を経由して表情筋へと分布することから顔面麻痺の原因となって、ヒトのQOLを大きく低下させています。

これらの障害に対する取り組みとして、名市大では臨床・基礎研究の両面へのシームレスなアプローチをすることで、治療成績を向上させることを目指しています。

現在までに行ってきた基礎研究として、遺伝性難聴(DFNB93)の病態解明、カルシウムチャネル病の新規治療薬候補の同定、内耳カルシウムイオン調節に必要不可欠な機序の同定の他、顔面神経麻痺動物モデルの客観的評価法の確立、顔面神経再生に必要な遺伝子の網羅解析などを行ってきました。また、臨床研究として、顔面神経麻痺に対して、麻痺の画像診断法の開発、ステロイドの効率的投与法の確立、合併症の少ない手術法の開発を行い、聴神経腫瘍に対しては、その病態の解明と治療法の解析などを行い、その成果を報告してきました。

臨床では従来から施行している耳後切開による鼓室形成術に加え、経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)を導入し、低侵襲で術後の痛みなども少ない治療を積極的に行っております。また、高度感音難聴の患者に対しては言語聴覚士とチーム医療を組み、人工内耳による聴覚の再獲得も積極的に取り組んでおります。

演繹からではなく、日常の臨床や研究を通した“気づき体験”からこそ名市大に必要な研究成果が生まれるという考えから、若い先生の自由な発想に基づいた研究を大切にしています。新しいアイデアを試したい!という先生のご参加を心からお待ちしております。

めまい・平衡

内耳の前庭は、3つの半規管と2つの耳石器より構成され、これらが障害されるとめまいやふらつきを生じます。従来の温度刺激検査(カロリック検査)や電気眼振図検査に加えて、新たな耳石機能検査である前庭誘発筋電位検査(vestibular evoked myogenic potential:VEMP)や3つの半規管それぞれの評価が可能なvideo head impulse test(vHIT)等を行い、内耳の詳細な機能評価を行っております。

めまいの原因は、内耳疾患だけでなく、中枢疾患、循環器系疾患、精神疾患、機能性疾患など多岐にわたります。正確な診断をするために、詳細な問診に加えて、様々な精密検査を組み合わせて行い、さらに全症例をカンファレンスにて検討し、診断・治療方針についてグループ全員で決定しております。

また、理学療法士・検査技師など交えた多職種チームにて、「慢性めまいに対する前庭リハビリの効果」、「持続性知覚性姿勢誘発めまいに対するリハビリの効果」などの臨床研究にも取り組んでいます。

耳鳴

耳鳴は、主に難聴が誘因で聴覚入力不足が生じ中枢にて耳鳴を知覚すると考えられています。まだ、他覚的検査や根治治療がない耳鳴に対して、臨床と研究の両面から取り組んでいます。

臨床面では、慢性耳鳴に対して、教育的カウンセリングと音響療法を組み合わせたTRT(Tinnitus Retraining Therapy : 耳鳴順応療法)を行っています。耳鳴重症度に応じて、環境音・ノイズジェネレーター・補聴器を用いた音響療法、公認心理士によるカウンセリング、精神科的治療を組み合わせ、耳鳴による苦痛の軽減・順応を目指します。大学で研修したメンバーが愛知県内5施設の病院で耳鳴外来を行っています。

また、言語聴覚士、公認心理師、精神科医と多職種チームにてカンファレンスを行い、「心理師が介入する強化TRT」、「耳鳴の重症度分類を用いた治療法の選択」、「複合型補聴器を用いた耳鳴の音響療法」、「耳鳴に対する認知評価の質問紙の日本語版の開発」、「耳鳴に対する認知行動療法の開発」、脳磁図を用いて「耳鳴側での周波数特異性の低下を他覚的に評価する研究」、「片頭痛のある耳鳴患者の重症度」などの研究を行ってきました。

鼻・副鼻腔

臨床面では、鼻副鼻腔領域の炎症性疾患や腫瘍性疾患に対する手術治療を中心に行っています。特に内視鏡手術に関しては、最先端手術支援機器を用いた手術を行っています。頭蓋底疾患に関しては脳神経外科医とチームを形成し、合同手術を行っています。

名古屋市立大学ではご遺体を用いた手術手技研修会を、解剖学教室のご協力のもと毎年開催しています。鼻科領域では、若手から専門医取得後の医師を対象として、内視鏡下鼻副鼻腔手術の手術解剖とその手技の習得を目的とした名古屋市立大学内視鏡下鼻内副鼻腔手術解剖実習を年に1度開催しています。

研究面では、国民の約3割が発症していると報告されているアレルギー性鼻炎について、その感作と発症には遺伝因子と環境因子が関与するといわれていますが、十分に解明されていません。本教室ではアレルギー性鼻炎と微量元素の関連について調査研究を進めております。

音声・喉頭

喉頭は呼吸・嚥下・発声する際に欠かすことのできない重要な役割を果たしています。喉頭の機能不全は、生活の質 (QOL) を大きく損ねることにつながります。我々は特に発声障害に重点をおいて診療、研究を行っています。音声障害の原因は声帯の器質的疾患(声帯ポリープ、声帯結節等)や運動障害(声帯麻痺)、神経疾患(痙攣性発声障害等)、機能的要因(不適切な発声法や声の使い方等)に分類されます。問診票での主観的評価に加え、声帯の動きや粘膜の状態をストロボスコープで、声の性質を音響分析・発声機能検査で客観的に評価します。治療として、保存的治療として発声法の指導などの音声療法、手術療法として外来で行える粘膜下注入、手術室で行う喉頭形成術、喉頭微細手術などがあります。

喉頭形成術は、喉頭軟骨を操作して声帯の位置を変える手術であり、1型~4型の4つに分類されます。これらの手術は音声の変化を指標に手術を行いますが、ヒトにおける客観的評価法に限界があるため、実験動物で喉頭形成術前後の変化を客観的に評価する基礎的実験を行っています。

頭頸部腫瘍

頭頸部がんは舌・口腔がん、咽頭・喉頭がん、鼻副鼻腔がん、外耳・中耳がんなどの総称になります。当科では甲状腺がんも診療対象としております。年間150例以上の新規症例に対して、機能温存を目指した集学的治療を行っています。臨床研究として、再発・転移唾液腺がんにおける新規治療法の開発、頭頸部がん免疫療法における新規バイオマーカーの検討などを行っています。

また、基礎研究として、頭頸部がんにおける生活習慣の罹患・予後への影響、免疫因子の頭頸部がん予後への影響、腫瘍溶解ウイルスを用いた新規治療法の開発などをテーマとしています。

睡眠

睡眠医療センターは睡眠時無呼吸症候群を含むすべての睡眠疾患を取り扱う日本睡眠学会認定A施設として、認定医師・認定技師の厳密な検査体制下で外来、検査を行っております。現在、年間約1,000名の新患及び約400例の睡眠終夜検査(PSG)を行っており、これらの実績は全国でもトップクラスです。当施設は睡眠疾患の治療のみならず、良質な睡眠を目指すことを目標とし、国際睡眠疾患分類(ICSD)にある全疾患を対応できる努力をしつつ、成人のみならず小児にも力を注ぎ、さらに保存療法のみならず外科的治療も精力的に行っております。

また、研究に関しては、「メニエール病の睡眠障害」、「小児睡眠時無呼吸症候群の季節変動」、「睡眠時無呼吸症候群と咽喉頭異常感症の関連性」、「レム睡眠行動障害と脳神経障害」などの臨床研究を行っています。

基礎実験

これまで様々な基礎の教室に出向いて共同研究を行ってきましたが、最近は耳鼻咽喉科の教室内で研究が完結できるように整備がされています。遺伝子導入装置、ゲル撮影装置、リアルタイムPCRシステム、インビボイメージングシステム等がそろっています。その研究内容はマウスモデルを中心としたものが多く、分野別では以下の通りにわけられます。

1. 頭頸部癌の解析と腫瘍溶解ウイルス療法の開発
頭頸部癌の腫瘍塊から癌細胞を分離・培養し、癌細胞の多様性を解析しています。また、頭頸部癌の新規治療法として腫瘍溶解ウイルス療法の開発研究を行っています。マウスの様々な部位に頭頸部癌を移植することにより担癌マウスモデルを作成し、単純ヘルペスウイルス弱毒株HF10による抗腫瘍効果について研究しています。

2. 顔面神経麻痺の解析と新規治療法の開発
顔面神経麻痺モデルマウスを作成し、ハイスピードカメラで顔面の動きを解析して評価するシステムを開発しました。また、顔面麻痺の回復を促す新たな治療法を模索しています。

3. 内耳障害と再生の解析
マウス中耳に単純ヘルペスウイルスを接種することにより、難聴やめまいをおこす中耳感染モデルを作成しています。現在、聴力・平衡機能障害を評価するとともに内耳の組織変化について研究をしています。

4.急性聴平衡覚障害の病態解明

顔面神経麻痺の発症にヘルペスウイルスが関与することはすでに知られていますが、突発性難聴や前庭神経炎は未だ原因が不明です。患者さんの唾液を採取し、リアルタイムPCRでヘルペスウイルスの検出を試みています。

 

研修医・学生の皆様へ

当医局へ興味を持ってくれた方向けに医局説明会へのご案内などのお知らせをお送りしております。ご希望の方は以下のフォームよりメッセージをお待ちしております。

名古屋市立大学大学院
医学研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座
〒467-8602
愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1
電話番号:052-853-8256
FAX番号:052-851-5300

※こちらの連絡先は医療相談には対応していません。

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