こころのケア のピラミッド

日本で頻用される「 こころのケア 」という用語は、「精神保健および心理社会支援(Mental Health and Psychosocial Support : MHPSS)」という用語が和訳されたものです。

MHPSS は、災害などにより引き起こされる PTSD といった病理的な側面にのみではなく、公衆衛生的なアプローチにも注目し、心理社会的な支援も含まれています。心理社会的支援 により、多くの被災者のレジリエンスに効果をもたらすと考えられています。

MHPSSは、 スフィアハンドブック にも言及され、以下の図は「MHPSS の 介入ピラミッド」と呼ばれます。

こころのケア MHPSS 介入ピラミッド intervention-pyramid

災害は多種多様であり、人びとの心の安定には、多様なニーズを満たす、多層構造の支援システムが提案されています。このピラミッドはすべての層が重要で、同時に実施することが理想的です。

衣食住といった基本サービスと安全を、社会的、文化的に適切な形で提供することが、人びとの尊厳を保護し、苦痛を軽減し、差別を防ぐために重要となります。

そして、災害時には、喪失体験や家族離散など、コミュニティや家族の機能が大きく損なわれます。損なわれていなくても、よりよいコミュニティや家族の支援は、有益であることがわかっています。

これらのピラミッドの下2つの要素が損なわれると、PTSD 発症のリスク要因であることも報告されています。社会的サポートの不足(平均効果量 r 0.40, 95%CI 0.37 to 0.43)、生活のストレス (r 0.32, 95%CI 0.29 to 0.35)(Brewin, et al., 2000

下から三番目の特化した非専門サービスは、心理的応急処置(Psychological First Aid : PFA)が該当します。これは臨床的な介入ではなく、苦痛に対する基本的、人道的、支援的な対応です。具体的には、注意深く話に耳を傾け、ニーズを評価しそれが満たされているか判断をします。必要に応じて、社会的支援を利用できるような支援をし、更なる害を受けることのないようにします。短期間のトレーニングの後には、だれでも PFA を提供することができるようになります。

以前は、恐怖体験をつまびらかに聞き出す「心理的デブリーフィング」が治療手段として用いられてきました。しかし、効果検証研究では、無効もしくは悪影響の可能性があることが明らかになり、現在では使用しないことが勧告されています。PFA は非侵入的な支援であり、苦しみについて語ることを何ら強要するものではありません。

詳細はこちらのページを参照ください。

http://kokoronokamae.umin.jp/mhpss/
上部へスクロール