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こだまの世界

---倫理学者のふしぎな日記---

99年1月中旬号

モリイ「若いうちって、自分だけ特別だと思うじゃない……。」
(ウィリアム・ギブソン、『ニューロマンサー』、291頁)


1月中旬のまとめ


1月中旬の主な話題


何か一言


01/11/99 (Monday/lundi/Montag)

早朝

夜、ワードでちょっと修論の整形をしてから、 下宿へ。 朝まで寝る。

某おくだ君がんばれ。


お昼過ぎ

一応、整形が終わる。いったんプリントアウトしてみよう。


昼下がり

本文の字の大きさを12ptにすべきか、10.5ptにすべきかで悩む。

とうとう明日が〆切なんだなあ。 この二年間、あっという間だったなあ。いやはや。


みそラーメン食べる。


夕方

一時間ほど寝る。


A4の紙買う。

あとは、副題の再検討と、結論の再検討。


さんにもう一度読んでもらう。感謝

結論一部削る。それでいいのか。


いちごうまい。むしゃむしゃむしゃ。


百万遍の某飲み屋で夕食。 某助教授、某師匠、 某先輩などが出席されたので、 豪華な食事となった。 ごちそうさまでした。


何か一言


01/12/99 (Tuesday/mardi/Dienstag)

真夜中

某E研で試し刷り。


早朝

6時間半寝る。 ぐうすか寝てる間に某おくだ君はだいぶ書き上げたようだ。 すごい。脱糞。いや。脱毛。ちがった。脱帽。 おれもがんばらねば。

起きてすぐ、シリアル、ヨーグルト。


君来る。

さん来る。


お昼

出した


お昼過ぎ

某所でジャンプを買ってくる。

またラーメン。


昼下がり

眠い。


某教授の新コンピュータにワードをインストールしたり。

現在研究室。安堵感が漂っている(気がする)。


何か一言


01/13/99 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

お昼過ぎ

下宿寒すぎ。さっそく風邪をひく。頭痛。


慰労会

昨日、夕方から某所で慰労会。鍋。大勢参加する。 「とりあえず、論文出せたということで乾杯」。 論文の口頭試問にスーツは着てこなくてよいとのこと。 残念。 おれだけ午前中に修論を提出したことについて、みなから責められる。なぜだ?

それから、某飲み屋で二次会。 これも大勢参加する。 一部、いない人の悪口で盛り上がったり。

論文執筆者は一次会も二次会もただにしてもらう。大感謝。 この時点では酔いつぶれた人はいなかったはず。

その後、 半分ぐらいの人間が隣のカラオケ屋に移動。 きっとみな暴れたに違いない。 おれを含め、修論提出者は全員参加せず。


下宿に戻る途中、ビデオ屋に寄って、『フィフス・エレメント』と 『デューン』(二本組)を借りる。 下宿でシャワーを浴びた後、 『フィフス・エレメント』だけ観て寝た。

お昼前、起きる。約8時間寝た。 寒いのでシャワーをまた浴びる。 この冬初めて電気ストーブを付ける。

それから大学へ向かう。 途中、某喫茶店でミックスサンドのセットを食べる。 サンデー。マガジン。

今日やること。 名和先生のレポート。 育英会の手続き。

頭痛。


昼下がり

育英会の書類書き。さらに頭痛。


夕方

暗号の勉強。知る必要のあることが多く、たいへん。 むかしから暗号なんて興味なかったもんなあ。


何か一言


01/14/99 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

夜明け前

用事で朝から大学へ。レポートも書かねば。


prudence

酒を飲むとしばらくの間は大きな快楽を得られるとしても、 その後ほぼ確実に二日酔いと自己嫌悪に苦しまされるのならば、 いっそのことまったく飲まないのがprudence (注) というものではないだろうか? もちろん、酒をほどほどに飲む能力を身に付けるのも一手だが。

注: prudence…自愛の思慮=目先の快楽に惑わされず、 自分の長期的な幸福を増やすことができる能力


ところで、 『岩波哲学・思想事典』(「賢慮」の項: 475頁左)によると、 prudenceはもともとギリシア語のphronesisに対応するものらしい。 しかし、西洋近代のprudenceの概念は、 「正しい目的と適切な手段とをともに考慮するような実践的理性」 というアリストテレスのphronesis(知慮、賢慮)の概念とは異なり、 「しだいに倫理的な性格が薄められ、功利的な性格のものに変質していった」、 すなわち、「アリストテレスにおける倫理的なモチーフがすっかり剥ぎ取られて、 たんなる〈怜悧〉〈器用〉〈利口〉に変貌し、 あるいは〈抜け目なさ〉〈狡猾〉にすら変貌してしまった」んだそうだ。

わざわざ引用したのは、もちろん、「功利的な性格」 という表現が目についたから:-)

「功利的」=「怜悧」「器用」「利口」「抜け目なさ」「狡猾」……

!!!!%!!#!*@+!!!&!!!!####!!@@!!!=\!!*!*!*!&&%!!!! (暗号)

……。まあ、「功利主義的な性格」と書いてないから良いんだろうけどさ。

この事典ではprudenceの評価がえらく低い気がするけど、 少なくとも、 英国の道徳哲学ではprudenceというのは徳の一つとして高く評価されていると思う。

あと、Prudenceっていうのは女の子の名前でもあるんだそうだ。 Dear Prudenceっていうやつですな。


朝、JR京都駅で母に会い、 奨学金の借用証書を渡す。 母の方に行っていた年賀葉書など、もらう。

いつものようにガムを噛んでいると、 いきなり「ガリ」という歯ごたえ。 あれ、詰め物が取れたのかな、 と思って取りだして見てみると、 米粒の半分くらいの大きさの、白い石のようなものが。 げ。これは歯ではないか。

後で鏡で見てみると、 どうも右下の奥歯の一部が欠けたらしい。 ううむ。おれもついに歯の欠ける年頃になったのか。

それから喫茶店でモーニング。プレイボーイ。


お昼過ぎ

某師匠にPGPのやり方を教えてもらうが、 なぜかしらうまく行かず。

モーニング読む。レポートはいいのか。


昼下がり

眠い。

歯医者に行くべきだと勧められる。 そうするか。


夕方

レポートの提出をあきらめる。 敗因は、課題が難しさと、 「出さなくっても単位はそろう」という動機づけの弱さにあったと思われる。 無念。


古本屋。 その後中央購買部で半額のサンドウィッチを買う。

倫理学入門読書会 「世紀末の倫理学に向けて: その思潮 (Toward Fin de siecle Ethics: Some Trends)」その1。

要約: 二十世紀の倫理学は、 ムーアの「善さは定義できない」という主張から始まった。 彼が主張した自然主義的誤謬(注1)は存在しないかもしれないが、 彼がそこで用いた未決問題論法(注2)は、 非認知主義への道を準備することになった。

注1: naturalistic fallacy--善さや正しさなどの道徳的性質を、 「快さ」とか「欲求されている」 などの自然的性質によって定義する誤り。 (例えば「『善い』とは、『快い』ということである」) ムーアによれば、道徳的性質は自然的性質に還元することはできない。 そのことを示すために使われたのが、未決問題論法である。

注2: open question argument-- 定義の適切さを吟味する一方法。 ある定義(たとえば「馬とは、馬属の有蹄四足獣である」)が与えられた場合、 その定義を疑問文の形(「馬とは、(本当に)馬属の有蹄四足獣であるか?」)にしてみる。 そして、その問いが無意味である(あたりまえすぎて質問として問う意味がない) ように思われるならば、 その定義は適切であり、 逆に有意味であるように思われるならば、 その定義は不適切である、とされる。
そこで今、 「善さ」がある性質P (たとえば『快い』) によって定義されるとしよう。 この定義が適切であれば、 「P(快さ)は本当に善いのか?」という問いは無意味であることになるはずであるが、 実際のところ、どのような自然的性質を挙げても、 この問いが無意味に思われるようなものはない。
したがって、道徳的性質は自然的性質には還元されないことになる。

難しい。疲れた。


それから某さん、某君、某君、 某君らと 某定食屋へ。

夕食後、いったん研究室へ。


何か一言


01/15/99 (Friday/vendredi/Freitag)

昼下がり

雨。今日は成人の日らしく、着物姿の女性を見かけた。


昨日は半日近く寝てしまった。 大学に来る途中、某所でラーメンを食べ、 ついでにチャンピオンも購入。


下宿で風呂。ビジネス英語も少し聴く。

自分がある種の虚脱状態にあることに気付く。 修論を書き終わって、解放感に浸るというよりもむしろ、 ぽっかりと穴が開いたような気分である。 とくに、自分の好きな本が読めるというのは、変な感じである。 (もちろん試問の準備をしなければいけないのだが)


何か一言


01/16/99 (Saturday/samedi/Sonnabend)

今日はセンター試験第一日目らしい。 京大にも若き人々が集いつつある。


なぜか研究室で朝からラーメンを食う男 (匿名希望)。


夜、古本屋に寄ってから研究室に来る。


某所で某カレー。


British Moralists読書会のお誘い

D. D. Raphael編のBritish Moralists 1650-1800 をテキストにして読書会します。 この本は、ホッブズからベンタムまで、 19人の英国道徳哲学者の著作を抄録したものです。 彼らが何を問題にしていたのかを直接知るために適当な本だと言えます。

二巻組のかなり厚い本ですが、できれば1年間で読み通してしまおうと思います。 そこで、週2回から3回という頻度で読書会を行なうつもりです。 早ければ来週からでも始めたいと思っています。

参加する気がある人は、メイルなどで連絡して下さい。 「ヒュームだけ」とかいう部分的な参加でも結構です。 また、読書会の簡単な報告を、ベンタムML上で行なうつもりですので、 メイルで参加されたいという人も連絡して下さい。


何か一言


01/17/99 (Sunday/dimanche/Sonntag)

真夜中

修論のHTML化の作業。めんどう。


某師匠と白川通の某所まで歩いていってラーメン。 帰りは雨。


修論のHTML化完了。 しかし、まだ「説明と弁明」を書く必要がある。


夕方

夜中、下宿に戻り、 『デューン』の前編を見てから夜明け頃に眠る。 『デューン』はまだおもしろくならない。 なんか、(単なる)陰謀うずまく中世の王家の物語みたいだ。

お昼過ぎに起きる。 しばらくロックやSelby-Biggeの文章を読む。 それから入浴。

昼下がりに下宿を出て倫理学研究室へ。 センター試験二日目らしく、 今日も若き人々が集っている。


少し日が暮れるのが遅くなってきたが、 それでもまだまだ夜になるのが早い。


何か一言


01/18/99 (Monday/lundi/Montag)

お昼過ぎ

お昼前に起きて、奨学金の書類を提出するために急いで学生部へ行ったが、 書類を某E研に置いてきたことに気付いて某E研に来る。ばか。 歯医者の予約もする。


昼下がり

奨学金の書類提出。 無事進学したら4月に在学届を文学部の事務に提出しろとのこと。


ロック読書会。第三巻第一章と第二章の第二段落目まで。 言葉は、言葉を使う当人の観念を表わすものである、という話。


下宿で『デューン』見る。 どこにもほとんど盛り上がりがない不思議な映画。


何か一言


01/19/99 (Tuesday/mardi/Dienstag)

真夜中

現在、倫理学研究室。 紅茶を飲みながら、 閉店間際の某所で購入したジャンプを読んでいる。


デューン』の感想。


つい研究室のソファで寝てしまった。


お昼前

某喫茶店でモーニング。プレイボーイ。雨。

それから事務で「博士課程後期進学願」とかいう書類をもらい、 さっさと書いて提出した。 研究題目は学振に書いたのと同じのを使った。 「ベンタムの倫理学=法哲学思想の検討と応用」とかいうやつ。


お昼過ぎ

眠い。だるい。


昼下がり

用事で郵便局へ。それから中央生協で久しぶりに食事。 ジャコワカメ雑炊、かぼちゃ煮付け、みそ汁。

食事しながら読んでいた『らいふすてーじ』(京大生協が毎月出している小冊子)に 「京都の自転車事情」という記事があり、 そこに京都市の道路管理課のウェブサイトが書いてあった。 京都市の自転車撤去などの方針に関心、疑問がある人はどうぞ。

郵便局に行ったときには雨がひどかったが、だいぶましになったようだ。 雪が降らないのは、良いことなのか悪いことなのか。


雨、小降りになる。ふったりやんだり。

歯医者に行く。 欠けた歯にかぶさっている詰め物を一度全部取ってから、 また詰め直さなければならないらしい。 今日はレントゲンを撮られ、仮の詰め物を付けられた。 次回は麻酔するらしい。考えただけで痛いよう。


何か一言


01/20/99 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

お昼過ぎ

昨夜、下宿に戻ってから、『デューン』読み始める。 ディックの『パーキーパットの日々』読み進める。 この短篇集に収録されている「第二変種」は絶品。 読んだら恐くなったので電気を消して寝れなかった。

お昼に起き、シリアルを食べてから大学へ。


ロック読書会の予習。


夕方

なんか疲れた。


某喫茶店でピラフセット。サンデー、マガジン。


明日の倫理学入門読書会の予習。難しい。


某所で夕食。

アメリカに留学していたときの友達から手紙が来ていたので、 返事をメイルで書く。彼女もすでに結婚して二児の母だが、 彼女の親友(ぼくの友人でもあった)なんかは、 二児の母で、しかもすでにシングルマザーなんだそうだ。 時が経つのは速い。


真夜中

修論の説明と弁明を書いたり、 倫理学入門読書会の予習をしたり。 今日はやけに疲れた。 勉強もずいぶんした気がする。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Thu Nov 5 21:51:33 JST 2015