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こだまの世界

2001年7月中旬号

"So climate's changing. So what? It has always changed. The big news would be if it wasn't changing. When people die of epidemics and hunger, why do we fear a little warmth?"

---Philip Stott,
a professor of biogeography at London University

"Just think of those magazines, which use as much paper as would be needed to teach the current population of the world to read and write 10 times over, and which are devoted to gossip about what this or that celebrity did. Enough frivolity to send the current population of the world to hell a hundred times over."

---Fidel Castro

"By smoking, I contribute to the stability of the state budget, by buying cigarettes I increase state revenues, and I will die of lung cancer, so the state won't have to pay me a pension."

---Milos Zeman,
the prime minister of the Czech Republic

日記をつけるのは何のため?
人はいろいろな理由から日記をつけます。 たとえば、国内で重要なことが起きていて、 真実をあるがままに記録したいからかもしれません(…)。 成長してから10才のころに考えていたことをふりかえるために日記をつけることもあるでしょう。 また、 日記は誰にも話せないような考えや気持ちを記すための場所にもなります。 日記は問題を解決したり、怒りを静めたりするのに役立ちます。 日記は自分の奥底にある感情を探り出すのに重要な場所を提供します---ちょうど自分に話しかけるようなものです!

`Tell your diary what you did this summer',
in The Guardian (Guardian Education), 17/Jul/2001.


主な話題


11/Jul/2001 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

お昼前

早起きする。

今日から勉強を再開しなければならない。 8月中旬に法哲学の試験があり、9月中旬には論文の〆切があるので、 並行して勉強すること。

今日は寮費を払い、図書館に本を返しに行くこと。

昼下がり

日記の整理。 イタリア旅行日記はここにもまとめておいた。 旅行中の写真はここ。重いので要注意。

午前中は日記と写真の整理でつぶれてしまった。

夕方

銀行に行ったり、図書館に本を返しに行ったりしているとあっという間に 夕方になってしまう。

某大学の授業料(前期分)を払うことになる。 授業を受けているときは免除され、 受けていないときに払わされるとは。 すこし泣く。


12/Jul/2001 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

真夜中 (午前)

昨晩はたまっていた新聞を読むのに費されてしまう。 最近の英国の話題は、マリファナの合法化議論、 ミロシェヴィッチの国際裁判、京都議定書、 北京が2008年のオリンピック開催地になるかどうか、 保守党のリーダー選出、ウィンブルドン、等々。

昼下がり

早起きして図書館に来たが、昨日の新聞を読んだりしていると あっというまに午前中が終わってしまう。

靖国神社参拝問題

ひさしぶりにウェブで日本の新聞を読む。 首相の靖国神社公式参拝について、 リベラルな毎日はやめるべきだと述べているが、 右寄りの産経は 「誰をどのように祀ろうが日本の勝手だ」と強硬な意見を唱えている。

A級戦犯というのは戦勝国側が「平和に対する罪」など既成の国際法にも根拠 がない理由で一方的に決めつけたものである。百歩譲ってそれを認めたとして も、戦没者をどのように祀るかはその国の文化であり、他国からとやかくいわ れることではなく、分祀論の根拠は乏しい。

「自民幹事長の見識を疑う」(平成 13年 (2001) 7月12日[木] 友引)

一文目は極東裁判の正当性を疑う発言だが、 二文目で譲歩しているのでこれはおいといて、 「戦没者をどのように祀るかはその国の文化であり、 他国からとやかくいわれることではない」 という主張について考えてみる。

(大前提) ある国の文化に属することがらについて、他国はとやかく言うべきではない。
(小前提) 戦没者をどのように祀るかはその国の文化に属することである。
---------------
(結論) 他国は日本首相の靖国神社公式参拝についてとやかく言うべきではない。

この議論にはいくつも問題があると思うが、 倫理学的に一番問題なのは、小前提に見られる文化相対主義の悪質な用法だろう。 この用法は、「ある国または民族の文化については部外者は口をはさむべきではない」 という一見もっともらしい主張を前提におき、 「文化」という概念のあいまいさを悪用して、 議論をしたくないことはすべて文化というカテゴリーに入れてしまうものである。 そこで、クジラを食べるかどうかは文化であり、 死刑制度も文化であり、 奴隷制も文化であるから、 他国にとやかく言われることではない、ということになる。

たしかに、戦没者を火葬にしようが土葬にしようがその国の勝手だというかぎりでは、 「戦没者をどのように祀るかはその国の文化に属する」と言える。 東京に戦没者を祀ろうが、北海道に祀ろうがまあ日本の勝手だろう。

[といっても、戦争責任者をどのように祀るかというのは 完全に自国の勝手だとは言えないだろう。 たとえばドイツでヒトラーやゲッべルスの銅像を建ててみなが礼拝しだしたら、 フランスやイスラエルの政治家や市民が「それはおかしい」と批判するのは もっともだといえる。 いくら偉大な人物だとしても、他の国にとっては殺人者である人物を祀るには、 それなりの配慮が必要なのは当然で、「自国の勝手」だとは言いきれない]

しかし、一国の首相が公式に戦没者を参拝するかどうかというのは、 単に文化の問題ではなく、政治問題である。 ここが産経の「文化」の使用法の問題点だ。 首相が靖国に公式に参拝に行くのは、 南京に公式に行って参拝に行くのと同様、政治的行為であり、 箸を右手で持つか左手で持つかというような文化の問題ではない。

そもそも一国の文化に属することを「部外者」 が批判することがなぜ誤っているのか、という大問題があるが(大前提の批判)、 時間がないのでこれについてはまた。


13/Jul/2001 (Friday/vendredi/Freitag)

真夜中 (午前)

う。また何もしないうちに日付が変わってしまった。勉強しないとやばい。

真夜中2

法哲学の試験の過去問に目を通す。むずかしい。 論文も並行して書かないといけない。勉強しないとやばい。

お昼前

昨日の新聞を読んでから早朝に寝て、朝起きる。勉強勉強。

今日の日本語: 「〜は理解に苦しむ」

意味: 相手の行動や発言が意味不明な場合に、 「あなたの言動は理不尽だ」と相手を直接非難するのではなく、 「わたしは馬鹿だからあなたの高尚な言動の意味がわからない」 と自分の理解力に問題があるかのように述べる日本語らしい奥床しい表現。 しかし、こうした奥床しさを理解しない人からは 「理解に苦しむのはお前の頭が悪いからだ」と反論される可能性があるので注意。

用例: 「野党はもとより自民党内にも早期批准の声が満ち、 国会は早期批准を決議したのに、 首相自らが産業界とともに抵抗勢力になっているのは理解に苦しむ
(毎日社説「京都議定書 批准への抵抗勢力は誰だ」2001年07月13日)

夕暮れ

また勉強しないうちに日が暮れつつある。

夕方に某本屋に行き、法哲学の参考書を購入。 すべてLLB用だが、まあこれをきちんと勉強すれば間に合いそうだ。


14/Jul/2001 (Saturday/samedi/Sonnabend)

夕方

かなり寝てしまう。勉強はかどらず。やばい。

昨夜、某香港人とオリンピックの話をしていたら、 日本の教科書問題について議論になる。 今回は右寄り産経の意見 (今こそ交流ではないのか、平成13年 (2001) 7月14日[土] 仏滅)におおかた賛成する。 この友人も日本の教科書制度が国定ではなく、 「複数検定・自由採択」であることを理解していなかった。 時間がないので、この件については後日よく考えよう。

ついでに、北京が2008年のオリンピック開催地になったことについては、 日本の新聞はだいたい好意的だが、英国ではかなり批判的で、 すでにボイコットの声も大きい。もちろん、人権問題が原因である。

Shrek

ひさしぶりに映画を観る。 マイク・マイヤーズ、エディ・マーフィー、キャメロン・ディアズなどが 声優をやっているアニメShrek

人々に恐れられ孤独に暮らす「醜い」オーガーのシュレックの住み家に、 ある日童話の登場人物(白雪姫、ピノキオその他)が大量に避難してくる。 シュレックが彼らを追放した王子のところに文句を言いに行くと、 竜の住む城に閉じこめられているフィオナ姫を助けてくれば住み家を元通りに すると言う。そこでシュレックは言葉をしゃべるロバと一緒に姫を助けだし、 無事に戻ってくるが…。

小学生が見ても十分に楽しめる内容だが、 西洋の童話についての知識が一通りあると、 パロディに爆笑する。 エディ・マーフィーの早口の冗談がわかれば涙を流して笑えるようだが、 残念ながら半分くらい聴きとれなかった。いつかまた挑戦しよう。 アニメの質も高く、よくできた映画。B。


15/Jul/2001 (Sunday/dimanche/Sonntag)

夕方

昨晩も勉強はかどらず。自愛の思慮が足りないので、 一ヶ月先の試験に向けて真剣に準備をすることができない。 しかし、論文も書かなければならないので、 予定を立ててしっかり勉強すべきだ。

お昼にすこしだけ大英博物館に行き、北斎の富嶽三十六景その他の展示を見る。

イズリントン滞在

某友人が旅行でフラットを空けるというので、 急拠二週間ほどイズリントンで生活することになった。 イズリントンはエンジェルをさらに東に行ったところにある地域。

行ってみるとかなりの豪邸なので驚いた。 フラット(日本で言えばマンション)なので、 ピサにいたときに滞在した豪邸ほどではないが、 寝室一つ、大きな居間一つ、 キッチンその他の部屋がある豪華なフラットである。

イタリアから帰ってきて一週間もしないうちに、 こんなフラットに滞在できるなんて、 ついているというか、 持つべきものは友人というか、 他人の好意に甘えすぎというか、 どうにも身に余る気がしてならない。 とにかく火だけは出さないようにしよう。

法哲学の試験

過去問6年分に目を通したので、山を張って勉強を進めることにする。 ここ4年間ほどは、14問中3問に回答せよ(時間は3時間)という形式なので、 確実に出そうなものに絞って勉強することにする。

  1. ハート: 法実証主義、オースティン批判、法の定義・記述
  2. ドゥウォーキン: 正答、法の解釈、平等、功利主義批判
  3. ラズ: 自律、多元主義
  4. 自然法: アクィナス、フィニス、ヒューム
  5. ロック: 自然状態、同意
  6. ベンタム: 判例法と自然法の批判、功利主義
  7. ミル: 危害原理
  8. バーリン: 自由、多元主義
  9. ルソー: 自由
  10. フェミニズム: そもそも法理論かどうか、ケア

これだけやっておけばまず大丈夫だろう。 他にもコンスタン、共同体主義、法的推論、 クリ法(critical legal studies)などおもしろいテーマがあるが、 これらは読むだけにとどめておく。

真夜中

法哲学、定義についてすこし勉強。あまりはかどらず。


16/Jul/2001 (Monday/lundi/Montag)

夕方

朝、てくてくと歩いてエンジェル駅周辺まで出かけ、 Sainsbury'sで食料品を買いこむ。

[Sainsburyはダイエーのような大手スーパーで、 英国には他にもTesco、Safeway、Asdaなどの全国規模のスーパーがある。 National GalleryのSainsbury Wingは経営者Lord Sainsburyの寄付によって 作られた]

午前中は今日の新聞を読む。 今日からボンで環境問題の国際会議が開かれるせいもあって、 環境問題関係の記事が多い。 京都議定書はもうあきらめて他の案を練るべきだ (たとえば、Contraction and convergence理論)とか、 悪いのはブッシュだけではなく飛行機を使って休暇旅行に出るわれわれも同罪だとか。 なるべく電気を節約するようにしよう。

スーパーで買ってきた食材を使って夕食を作ってみる。今回は日本食。

失敗。

明日はイタリア料理に挑戦するつもり。

法哲学の勉強。こないだ買ったテキストは死ぬほど退屈で困っている。 UCLの法学部の先生が書いているらしいが、 作文も下手だし説明も不十分なのであまり読む気がしない。 ただし、資料集(resource book)の方はおもしろい。 難破して漂流中に子供を殺してその肉を食べたDudley and Stephenのケースとか。


17/Jul/2001 (Tuesday/mardi/Dienstag)

一日中しとしと雨。新聞と牛乳を買いに出かけた以外は、一日中家で勉強。

道徳と法の区別、法に従う義務について勉強した(つもり)。 ハートの「実証主義と法と道徳の分離」のラートブルフを批判している部分とか、 デヴリンの「道徳の強制」の抜粋を読んだりする。

真夜中

保守党の指導者を決める準決勝戦が今日行なわれたが、 一番有力視されていたマイケル・ポーティロが敗退してしまった。 保守党の未来は暗い。

ひきつづき法の役割について勉強。ミル、ウォルフェンデン報告、 デヴリン、ハートの流れについてはきちんと回答できるように もう一度勉強すること。


19/Jul/2001 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

真夜中 (午前)

昨日も友人のフラットにこもって勉強。しかし、新聞を読んだりテレビを見たりと、 集中力が散慢であまりはかどらず。功利主義、 法の経済学的分析(費用便益分析、パレート最適、ドゥウォーキンの資源の平等論など) のところを読む。ドゥウォーキンの説明はわかりやすかった。 道徳や法における市場の役割についてはもう少し勉強することにしよう。

友人のフラットに来た日からすこしおかしいと思っていたのだが、 このフラットはどうも斜めに傾いているようだ。


20/Jul/2001 (Friday/vendredi/Freitag)

真夜中 (午前)

昨日は勉強はかどらず。ベンタム、オースティンの法実証主義。

Together

昨夜、 ひさしぶりにソーホーまでバスででかけて友人と一緒にTogether というスウェーデン映画を観る。

70年代スウェーデンのヒッピー・コミューンの様子を描いた物語。 たいした話ではないが、 「共に暮す」という理想をかかげた共同体が愛憎を交えて運営される姿を ユーモアあふれる(というか、爆笑する)形で描き出しており、 非常に好感が持てる作品。「一人で孤独に暮らすよりは、 みんなで一緒に暮らした方がいいよな」というメッセージか。 カップルか親子で見ることを勧める。B。

帰りのバスですこし物憂げな気持ちになる。 夜中のバスとか電車っていうのは、 人を孤独にする効果を持つようだ。

早起きしてバスに乗り、トテナムコート通りで降りる。

まず散髪。今回も短かく刈られる。 どうやら「東洋人はみなカリアゲにしろ」 という指令がMI5かどこかから発せられているらしい。 しかし、今回はいろいろ注文したのでわりとましな髪型に落ちつく。

それから図書館へ。昨夜からciceroにログインできない。


「人間が大好きだ」というのはちょっと変だが、 「チンパンジーが好きだ」とか「犬が好きで仕方がない」 というのと同様にまあ理解可能な気がする。 他方で、「チンパンジーのメスが好きだ」とか「犬のメスが好きで好きで仕方がない」 とか言うと、動物の場合でも個体じゃないと変人扱いされるのではなかろうか。

大学の中央図書館ですこしコピーをしたあと、 某ブルガリア人の友人と昼食を食べる。中華料理。

ミルのレポートが返ってくる。B+。

寮のそばの古本屋を物色する。

それから寮に立寄ったが、部屋のカギを忘れてきてしまい、何もできず。失敗。

地下鉄でエンジェルに行き、Sainsbury'sで買物。

夜、夕食を作って食べたあと早々に寝てしまう。


何か一言

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KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jul 28 07:37:42 2000