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ベンタム曰くっ、(その3)

Jeremy Bentham, A Fragment on Government, The Collected Works of Jeremy Bentham, pp.397-8.


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解説者の仕事と批判者の仕事との区別

そもそもじゃな、解説者の役割っつーのと、批 判者の役割っつーのがある訳じゃ。それでじゃ、あんたが法律っちゅ うテーマに関して何か言う場合にはじゃな、そのどちらかの役割を担当するこ とになると言えるのじゃな。

さてさて、「法がどうあるか」についての考えを述べる のは、これ解説者の仕事じゃな。

他方、「法がどうあるべきか」についての考えを述べる のは、これ批判者の仕事じゃな。

そこでじゃ、解説者が主としてやることは、事 実を述べるか、あるいは事実を知ろうと研究する ことじゃ。

他方、批判者が主としてやることは、正当化根 拠について論ずることじゃ。

だからじゃな、職分をしっかりわきまえとる解説者理解力記憶力判断力 以外の頭の働きは使わんわけじゃな。

他方、批判者はじゃな、考察中の対象に対して快・不快 の感情を感じることがあるために、感情という頭の働きも いくらか使うわけじゃ。

さらにじゃな、「法がどうあるか」は、国が異なれば大 幅に異なるのは当然じゃ。

他方、「法がどうあるべきか」は、どこの国でも大部分 同じじゃ。

したがってじゃ、解説者はいつなんどきでもじゃな、A 国かB国かは知らんがの、とにかくどっかの一国の市民じゃ。

他方、批判者は世界市民なのじゃ。あるいは世界市民で あるべきじゃ。

またじゃな、立法家とその請負職人である裁判官がすでに やったことを明らかにするのは、これ解説者の仕 事じゃ。

他方、立法家がこの先やるべきことを意見するのは、こ れ批判者の仕事じゃ。

要するにじゃな、立法家が実践する学を教えるのは、 批判者の仕事っつーことじゃ。そして批判者 が立法家に教えるとき、は持ち主が変わって になるわけじゃ。


・特に法哲学の方面で有名なベンタムの鋭い指摘。ベンタムはヒュームか ら「である(事実)」と「べし(規範)」の区別を学んで、この区別を法律の分野 で徹底するように強調した。

・要するにベンタムは、事実を述べる役割と規範を述べる役割は全く別個 のものである、と言いたいわけである。当時、自然法思想をはじめ、あたかも 事実からそのまま規範が出て来るかのような話をする輩が多かったのであろう。

・それにしても、『統治論断片(政府論断片)』は語り口が明快とか簡潔と か聞いてた気がするが、やはり説明の仕方はかなりくどい。


Satoshi Kodama
kodama@socio.kyoto-u.ac.jp
Last modified on 08/09/97
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