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映画のお話(97年6月まで)


INDEX


あなたのお勧めする映画(そのうち必ず観ます)

その他(こだまの感想に対する感想など)


JANIS

ほとんどライブビデオだったので、1時間半は少し疲れた。しかしジャニスはかっこいい。おどりかたがすごく良い。そんなにきれいなわけではないし、圧倒的な存在感は、ない。何か少し頼りないところがある。歌は絶品とはいえないが、粗削りながらやはり大器を感じさせる。故郷に帰ってきたときのインタヴューは少し悲しそうで、かわいそうであった。やはり、親や故郷の人々に対しては屈折した感情を持っているのであろう。

7/28/96

80/100


Modern Times

Written and Directed by Charlie Chaplin

Cast

A factory worker...Charlie Chaplin

A gamin...Paulette Goddard

実はチャールズチャップリンの映画を見るのは初めて。いっきに見れた感がある。工場で働くシーンだけかと思っていたら、刑務所あり、踊りありで、飽きさせない。笑わないかと思っていたが、どうしてどうして、しっかり笑わさせてもらった。特に、カフスに歌詞を書いてもらったのに、客の前に出たとたんに踊りすぎてカフスを飛ばしたのには、大笑い。最後のシーンは「辛い世の中だけど、明るさを失わずに、人間らしく生きていこう」というメッセージだろうか。Paulette Goddardはとてもきれいであった。

7/29/96

92/100


Solaris

邦題『惑星ソラリス』。

自分の記憶が形を取って現れる星、ソラリス。主人公は10年前に自殺した自分の妻を前に苦悩する。妻は自分の存在に疑問を持ち、苦悩する。妻は自ら消滅を欲し、主人公は地球へ帰る。

眠たい映画ではある。主人公の妻がきれい。キリスト教的意味が暗示されているようだが、読み取れない。特に最後のシーンなど。映像も時々はっとさせられる。映画を見た後で、原作を流し読みしたら、内容が良くわかった。この映画だけでは理解できないところが多すぎる。

7/30/96

90/100


A Street Car Called Desire

Screen Play by Tennessee Williams

Cast

Blanche...Vivien Leigh

Stanley...Marlon Brando

Stella...Kim Hunter

邦題『欲望という名の電車』。欲望とは原始的な、コモンな人間のことであり、スタンレーの家そのものである。むさ苦しいスタンレーのような人間たちに、人格を破壊されたブランシェ。没落する上流階級の家に生まれた人間が、止めどもなく落ちていく姿は悲しい。特に、あのヴィヴィアン・リーが演じているので一層悲しい。彼女が精神異常・娼婦の役を演じるのは、見ていて苦痛であった。

8/4/96

88/100


The Great Dictator『独裁者』

Written & Directed by Charles Chaplin

Hynkel and A Jewish Barber...Charles Chaplin

Hannah...Paulette Goddard

2時間あっという間に見せる作品。チャップリンが独裁者とユダヤ人の床屋の二役を演じる。もっと早くに入れ替わりが起きるのかと思っていたが、実際に入れ替わるのは終わる15分ほど前である。ポーレット・ゴダールドがまた出ているが、モダン・タイムズの方がかわいかったような気がする。役のせいか、年のせいか…。イングリッド・バークマンに似ていて、好みのタイプ。独裁者と同じ演説の仕方で民主主義を説く最後の演説は圧倒的だが、エンディングのハンナはいったい何を聞き何を見ているのだろう?希望?全体的にはそれほど笑いはなかった。

8/5/96

90/100


2001: A SPACE ODYSSEY

Produced by Stanley Kubrick

よく分からない結末。話の流れが分からない。いきなり類人猿から始まったので、びっくり。あの薄い塔がキーワードなんだろうが、いったい何のことなんだか。コンピューターの裏切り。あそこあたりからよくわからなくなった。宇宙や宇宙船の撮影の仕方がすごいんだろうか。ちょっと名作というには難解すぎる。

8/9/96

70/100


Duck Soup

Marx Brothers

つまんない映画だった。

8/11/96

45/100


Congo

Paramount Movie

Directed by Frank Yablans

Cast

Karen Ross...Laura Linney

Peter Elliot...Dylan Walsh

Monroe Kelly...Ernie Hudson

Herkermer Homolika...Tim Curry

ストーリー展開は良いような悪いような…どきどきしたが、今一つスリルに欠けていたような気もする。珍しく恋愛沙汰がない。ホモリカがもっと悪いやつだったら良いキャラクターなのに。モンロー役は良い役者。ロス役も良い。ピーター役は最後のシーンなどはいまいちかな?けどこういう物語は基本的に好きなのでおもしろかった。よくあるアメリカのビジネス批判には閉口。

8/20/96

82/100


The Net

Columbia Pictures

Directed by Irwin Winkler

Cast

Angela Bennett...Sandra Bullock

Jack Devlin...Jeremy Northam

Dr. Alam Champion...Dennis Miller

邦題『インターネット』。

すごくサスペンス性のある映画。おもしろかった。実際、自分をアイデンティファイする手段がなくなったらこわいよなぁ。アンジェラはコンピューターばっかりしてて知り合いが少ないという設定が効いていた。最後にはアルツハイマー病の母と一緒に暮らすようになったところも泣かせる。最後には大逆転って言うのがすっきり。ディスクのセィヴの遅さは、うなずけるところ。ウィルスで逆転勝利ってのが伏線が効いてる。

8/20/96

88/100


Seven

Directed by David Fincher

Cast

David Mills...Brad Pitt

William Somerset...Morgan Freeman

John Dou...Kevin Spacey

7つのdeadness sins大罪…Greed強欲、Gluttony大食、Sloth怠惰、Envy妬み、Wrath怒り、Pride高慢、Lust肉欲。これらが蔓延している社会。しかしこのような私刑が蔓延ることは許されるのだろうか。干渉。 "Apathy is the solution." 無関心が解決なのではなく、非干渉が解決なのではないか。無関心と非干渉は違う。映画はよく出来ていた。結末も最後まで分からず、サスペンス性が高い。ジョン・ドウの説得力のある説教。ディヴィッドがジョンを撃つことで7つの罪が完成してしまう。2時間フルに退屈させず見せている。こんな世の中で良いのだろうかと思わせるが、やはり、私刑による制裁が解決だとは思えない。ソドムの町。

08/21/96

89/100


Witness For The Prosecution

Produced by Arthur Hornblow

Directed by Billy Wilder

Cast

Leonard Vole...Tyrone Power

Christine...Marlene Dietrich

Sir Wilfrid...Charles Laughton

Miss Plimsoll...Elsa Lanchester

すごいっ。Charles Laughtonはユーモアがブラックで一流。ディートリッヒは端役かと思ったら、すごい良い役をしかも名演。あの叫ぶところ。最後のところ。すごい。ストーリーも確かにすごい。裏の裏をかく展開。ボールが本当に殺人犯とは。そして傍聴席で座っていた脇役にしてはきれいな女性が最後に出てくるとは。伏線が効いてる。これって、アガサ・クリスティ原作なんですね。『情婦』って邦題になってたけど、直訳すれば「検察側の証人」。

9/8/96

92/100


Jazz on a Summer's Day

A Film by Burt Stern

Cast

Louis Armstrong

Mahalia Jackson

Dinah Washington

Anita O'Day

Chuck Berry

Theronius Monk, etc.

邦題『真夜中のジャズ』。

1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルのフィルム。カメラワークが非常に良いため、まったく飽きさせずに見せる。チャックベリーの演奏は悲惨だと思ったが…。ルイ・アームストロングやマヘリア・ジャクソンはものすごい。すっごいなぁ。ぼくもこんなライブがしたい。

9/8/96

83/100


Psycho

Directed by Alfred Hitchcock

Cast

Anthony Perkins

Vera Miles

John Gavin

Marion Crane...Janet Leigh

怖かった。多分殺人鬼の母はすでに死んでいて、あれは人形か何かだと思っていたけど、実際、やっぱり怖かった。撮影の仕方かなあ。ちょっとストーリー展開が、うまく出来てるけど、強引でない?たまたま寄ったモーテルが、ストーリー展開の主軸になってしまうなんて。

9/8/96

86/100


Gaslight

Produced by Arther Hornblow Jr.

Directed by George Cukor

Screen Play by John Van Druten, Walter Reish and John L. Balderton

Cast

Gregory Anton-Charles Boyer

Paula Alquist-Ingrid Bergman

Brian Cameron-Joseph Cotton

邦題『ガス灯』。

"The Net"と同じように、誰も自分を信じてくれない、自分が気違いなのではないか、という恐怖を味わわせてくれる作品。話の筋書き自体は見え見え、という感じがした。が、結末のバークマンがどうするか、というのはいろいろな選択肢が考えられたので、ああいう態度に出るとは、おもしろいと思った。この映画のバークマンは、今一つ好みではない。もっときれいだと思っていたが。『カサブランカ』の方が好きかも。

9/25/96

87/100


8,1/2

Produced by Angero Rizzoli

Directed by Federico Fellini

Cast

Marcello Mastroianni

Claudia Cardinale

Anouk Aimee

Sandra Milo

名作だと聞いていたが、うーん、良くわからん。断片的に感心するところもあるが、前衛的なものはあまり…。すべての批判を予想して、映画の中に含ませている。しかしそれでも批判ができるのでは?こわれた映画だ。10年後とかに見ると感動するのかもしれない。長い。

9/29/96

78/100


Amarcord

Directed by Fedelico Fellini

ようわからん。8と2分の1よりは楽しめたが、最後の方もなんとなく良かったが、なぜ名作なのかわからん。断片の寄せ集めが統一性を持っているというのか。確かに全体としてイタリアの一つの町での出来事をうまく統合している気がするが、なんとなく山場も無く淡々として味気がない。ぼくは娯楽映画に慣れすぎているのか。

10/2/96

80/100


In The Line Of Fire

Directed by Wolfgang Petersen

Cast

Clint Eastwood

John Marcovici

邦題『シークレット・サーヴィス』。テレビでやっているのを観る。

んー、クリント・イーストウッドは渋い。大統領暗殺役のマルコビッチはなんと『二十日ねずみと人間』でがいきちの弟を演じてた人。イーストウッドがビルの縁にぶら下がって死ぬかけるところ、パーティーで危うく大統領が暗殺されそうになるところ、二人がエレベーター内で死闘を演じるところなど、かなりスリルがあった。今回の敵役も、なんか同情を引く立場を演じていたようだ。最後にはヒーロー扱いになるイーストウッドの、最後までひねくれた態度が良い。

10/13/96

82/100


Maladie d'Amour

Directed by Jacques Deray

Cast

Nastassja Kinski

Jean-Hugues Anglade

Michel Piccoli

個人的に一番好きな映画。分析的な評価を加えるのは難しい。何か打たれるものがある、としか言いたくない。「月光」もこの映画で好きになった。ナスターシャ・キンスキーの美しいこと。めちゃやせてるが。もう何度も何度も見たので、教会のシーンやらラストのシーンやらが絵画のように頭に残っている。フランスではどんな評価があるのかも知らんが、とにかくとても美しい映画。サスペンスも何もないんだけどね。とにかく心打たれる。何度見たんだろ?

10/31/96

98/100


Leon

Directed by Luc Besson

Cast

Leon...Jean Reno

Stansfield...Gary Oldman

Mathilda...Natalie Portman

大義もくそもない殺し屋の物語。腐った麻薬取締官に家族を殺されたマチルダが、殺し屋レオンの下で殺しの教育を受ける。200人もの警官に家を襲撃されて、レオンは結局死ぬが、麻薬取締官を道連れにする。ジャン・レノーの朴訥なカッコ良さが光る。死ななければよかったのにねー。けどまあ、死ぬから人生の不条理さを感じるわけで、マチルダもこれから強く生きていくんでしょう。ゲイリー・オールドマンもかっこいい。が、ほんとになんだか短くって、あっというまに終わってしまった。

11/17/96

86/100


Braveheart

Directed by Mel Gibson

Produced by Mel Gibson, Alan Ladd, Jr., Bruce Davey

Cast

William Wallace...Mel Gibson

Princess Isabelle...Sophie Marceau

Longshanks-King Edward I...Patrick McGoohan

Murron...Catherine McCormack

Robert the Bruce...Angus McFadyen

ほとんど三時間。長い長い。泣いちゃったなあ。最後の「ふりーだむっ」のところなんか。けどちょっとメルギブソンはミスキャストでは?もっと若くてカッコいい新人の方が良かったかも。ソフィー・マルソーはふけたなあ。ミューロン(モロン?)役の人は誰かに似てるのか、どっかでみた気がする。笑顔がとてもかわいい。惑星ソラリスの女性と似てるのかな?とにかく自由のためには闘うことが必要だ、という作品。暴力反対だ、とかいうと斧で叩き殺されます。バグパイプが素敵。

11/18/96

88/100


Nikita

Directed by Luc Besson

Cast

Nikita...Anne Parillaud

Bob...Tcheky Karyo

Marco...Jean-Hugues Anglade

Victor...Jean Reno

前に一度見た気がする…。非常に中身が濃かった。というか、長かった。打ち切りっていうような終わり方が印象的。無機的な音楽もよい。なんともニヒルな映画。うーん、書くことない。印象的で、忘れがたい映画だと思うが、しっかり忘れてた。ニキータが好きか、というと、ぼくはついていけない気がする。マルコのように受け止めてあげることができるか。できるかなー。大きな愛。難しそう。

11/20/96

86/100


Assassin

Directed by Art Linson

Cast

Maggie...Bridget Fonda

Bob...Gabriel Byrne

J. P....Dermot Mulroney

Victor the Cleaner...Harvey Keitel

げげー。おんなじ映画がこんなに違うとは。安物のテレビドラマじゃん、これって。ブリジットフォンダも上手い演技するわけじゃなし。J. P.役の奴は明らかにジャンユーグアングラードに負けてるし。カメラワークには芸術性がないわ、ひどいもんです。ニキータを後に見てたらなんていうかわからないけど。これは明らかにハリウッドの負け。安っぽすぎる。

11/20/96

70/100


Paris, Texas

Directed by Wim Wenderson

Music by Ry Cooder

Cast

Travis...Harry Dean Stanton

Walt...Dean Stockwell

Anne...Aurore Clement

Hunter...Hunter Carson

Jane...Nastassja Kinski

よかったよかった。やっぱり、ナスターシャキンスキーのせいかなあ。最後の二人の独白シーンのところとか。すっごい。ちょっと長かったけど。この映画でのナスターシャキンスキーはけばくって、ブリジットバルドーかマリリンモンローみたい。若い若い。うひゃー。いい女優だなあ。ライクーダーの物悲しい音楽もばっちり。ブラインドウィリージョンソンですな。とにかくすごくよい。なにが?えーと、雰囲気。取り方。主人公とナスターシャキンスキー。けど、ウォルトとかはどうなったんだろ?どんどん先に出てきたことが忘れられていく映画でした。やっぱ、ハッピーエンドとはいかんのだなあ。いったらそれはそれで詰まんないんだろうけど。

トラヴィスはどこへ向かって歩いていたのだろう?パリ・テキサス?

この映画におけるパリ・テキサスの意味とはなんなのだろうか?安全地帯?エルドラド?何もない土地。言葉も、標識も…。目指すべき土地。しかし着くことの出来ない土地。

11/22/96

94/100


French Postcards

Directed by Willard Huyck

Cast

Joel...Miles Chapin

Laura...Blanche Baker

Alex...David Marshall Grant

Toni...Valerie Quennessen

Madame Tessley...Marie France Pisier

つまんないB級青春映画。もともとテレビ映画なのかな?トニ役のヴァレリーなんとかを以前テレビでやっていた映画で見かけてきれいだと思ったので借りた。別に好みのタイプというわけではないけど、なんか雰囲気があってよい。笑顔がきれい。よく見ると笑顔はブリジットフォンダにも似てる。

11/28/96

63/100


Copy Cat

Cast

Helen Hudson...Sigourney Weaver

MJ Monahan...Holly Hunter

Ruben Goetz...Dermot Mulroney

Murder by Numbers...The Police

怖い怖い。エイリアンほどインパクトはないが、同じくらい怖いかも。シガニーウィーバーはうまいなあ。だいぶ老けたか。ホリーハンターも良かった。ルーベン役の男はアサシンのときよりは良い。別にとくに感想はない。犯人が途中から分かるのはちょっと残念?何か最近こういうアブない映画が多いなあ。

11/28/96

85/100


Stanley & Iris

Cast

Iris King...Jane Fonda

Stanley Cox...Robert De Nilo

邦題は忘れた。テレビでやっているのを観る。

中年の恋愛物語。夫を病で亡くして工場で働くアイリス。姉や姉の夫、息子に妊娠した娘など扶養家族も多い。一方、老いた父と二人で暮らす料理が得意なスタンリー。実は彼は字が読めない。そのために職業上の差別を受ける。また、運転免許も取れない。そこでスタンリーはアイリスに読み書きが出来るように訓練をしてもらう。困難の末、彼は読み書きが出来るようになり、もともとあった発明の才も手伝って大きな会社に雇われ、車も運転できるようになる。最後にスタンリーとアイリスは結婚することに。 いろいろと中年的な悲哀がある。老人ホームに入ったとたん、すぐに亡くなるスタンリーの父。夫の死からなかなか立ち直れないアイリス。子供を産み、高校をドロップアウトする娘。

しかし喜びもある。字が書けるようになって開けたスタンリーの第二の人生。それはアイリスとの二人の人生の幕開けでもある。とかいって。飛行機落ちるのかと思っちゃった。ま、ハッピーエンドじゃなきゃ暗すぎる映画になるな。 なかなかきれいな女性だと思ったら、あれがジェーン・フォンダなわけですな。キャロル・キングかと思っちゃった。ロバート・デ・ニーロは最高。なんか雰囲気があります。そいえば昨日もOnce upon a Time in Americaに出てたな。

01/02/97

87/100


Murder In the First『告発』

A Film by Marc Rocco

Cast

James Stamphill...Christian Slater

Henri Young...Kevin Bacon

Associate Warden Glenn...Gary Oldman

タイトルの "murder in the first (degree)"とは、第一級謀殺のこと。うーん。刑務所って怖い。やっぱりこういう映画見ると、刑務所にだけは行きたくないよなあ。ホモとか、いろいろあるみたいだし。

確かに、ヘンリーは死刑にならないとアルカトラズに逆戻りしてしまうわけだから、懲役三年よりは死刑の方が良いわけだ。刑務所が無法地帯とは、恐るべき話じゃないか?

けど、優しくしてたら犯罪者はつけあがるだろうし。難しいよなあ。誰だ、教育刑なんか言い出したやつは。刑罰って難しいよなあ。犯罪者を更正させるとか、社会に適応させるなんてこと、出来るんだろうか。

よく出来た映画でした。

2/21/97

87/100


Frantic

Roman Polansky

Cast

Harrison Ford

テレビでやっているのを観た。

おフランスのお話。主役はアメリカから講演か何かのためにやってきた医者夫妻。あやしい雰囲気で始まって、いきなりハリソン・フォードMr. Walkerの妻が蒸発する。警察がまともに取り合ってくれないので、彼が自分で妻を捜す。妻の失踪の原因は空港でのスーツケースの取り間違いで、妻の持ってきたケースの中には、核爆弾の弾頭部分が入っていたのだ。密輸の取り引きの間で働いていた若い女性(ブロンディのデボラ・ハリーなんだそうだ)と協力して、フォードは自力で誘拐された妻を助け出すが、最後に若い女性は銃で撃たれて死んでしまう。

撃たれて死に行くとき、「わたし寒いわ」というところが印象的。フォードに好意を持っていたらしい彼女。しかし、妻が助かった時点で、彼女の存在は余計になった。映画の展開から行って消えてなくなるべき人物であったと言えるが、少しさびしい。確かにそれ以外の展開はありえないような気がするが。

典型的なサスペンス。ちょっと筋が陳腐すぎるのでは?考えさせられるところがない。

03/07/97

70/100


Twister

A Film by Jan De Bont

Produced by Kathleen Kennedy, Ian Bryce, Michael Crichton

Executive Producers...Steven Spielberg, Walter Parkes, Laurie MacDonald, Gerald R. Molen

Directed by Jan De Bont

Cast

Jo...Helen Hunt

Bill...Bill Paxton

Melissa...Jami Gertz

Jonas...Cary Elwes

わおっ。すごくエキサイティングな映画。大事件が起きて、男女の壊れかけた関係が元に戻る、という話はありきたりでいただけないが、こういう展開しかできないんだろうなあ、実際に映画を作るとなると。竜巻でこんなに楽しい映画が作れるとは驚き。ハリウッドはなんでもエンターテイメントにしてしまえる。ヘレン・ハントはとてもきれいなので、次回作に期待したい。

03/18/97

80/100


Arch of Triumph

Produced by David Lewis

Directed by Lewis Milestone

Cast

Ingrid Bergman

Charles Boyer

Charles Laughton

Louis Calhern

邦題『凱旋門』。

『ガス灯』と同じ男優・女優というのはいただけない。『情婦』で見たCharles Laughtonが今回は悪役。妻を殺したドイツ人に対する復讐に燃える亡命者ラビックと、ラビックを愛しながらも、運命にもてあそばれ、恋心も多い、(扱いにくそうな)ジョーン。最後にはラビックは無事復讐を果たすが、ジョーンは金づるの男に撃たれ、医者のラビックの手当てを受けるが、死亡してしまう。そしてラビックはフランスの収容所へ(復讐を果たし、誇りを持って)送られる。

最後のシーンが問題。果たしてラビックが言った通りにジョーンは死んだのか。ジョーンが死のうと死ぬまいとおそらく、ラビックには分かれる心積もりはあったであろう。これ以上のごたごたを避けるために、ラビックがジョーンに手術をせず、見殺しにした、というのは穿ちすぎか。(そう言えば、初めの方に、若い女性が手術中に死ぬ、という伏線があった。ところであそこの日本語には明らかに誤訳がある。)必死の手当てのかいなく、ジョーンは死に、何も心配することのなくなったラビックは、意気揚々と、また「フランスは医者としての自分をこれから必要とするだろう」と考えて、収容所に行こうとした、と読むのが普通か。

バーグマンはきれい。ちょっとやな役だけど。愛に生きる女性というのは、こわい。また、男をもてあそぶ女性もこわい。すぐに心変わりする不実な女性もこわい。女性がこの映画を見ると、「女は待てないものよ」と共感を覚えるのだろうか。

03/19/97

83/100


12 Monkeys

Produced by Terry Gilliam

Cast

Bruce Willis

Brad Pitt

Madeleine Stowe

何が言いたかったのだろう?12モンキーズの意味は?ジェイムズの運命は変わらなかったが、人類全体の運命は変わるのだろうか?ちょっと伏線の張りかたが急な気がする(犯人があれって言うのはなんか…)。ストーリーに無理があるのかなあ。キャサリンはきれいなので許す。なんだかよくわかんない不気味な前衛映画、という感じ。動物愛護とか予言とか、なんとも現代的。こういうのが受けるのかなあ?なぜかルイ・アームストロングの人間賛歌の「ワンダフル・ワールド」だし。何が言いたいのっ。現代世界に対する警鐘?

03/20/97

74/100


Tess

Produced by Claude Berri

Directed by Roman Polanski

Cast

Tess...Nastassia Kinski

Angel Clare...Peter Firth

Alex d'Urberville...Leigh Lawson

Thomas Hardy原作の物語らしい。家族が貧しい関係で、血のつながりのある金持ちの家で働くことになったテスは、そこの若坊ちゃんに犯されて妊娠してしまう(子供は生まれてまもなく死ぬ)。その後、ある牧師の息子(エンジェル)と相思相愛になるが、二人が過去のことを告白しあった際、テスはエンジェルの過去の性関係を許すが、エンジェルはテスを許さない。曰く、「わたしは別の女性を愛していた。今の君は、同じ姿形をした別人だ。」

エンジェルはブラジルに行き、テスは夫の帰りと彼の許しを待ってけなげに働く。しかし、テスの父親が死に、家族が路頭に迷うことになり、テスはやむなく前の若坊ちゃんと結婚することにする。そこに改心したエンジェルが現れる。テスは一度は彼を拒むが、なんと若坊ちゃんを殺害して、エンジェルと国外に逃亡しようとする。もうエンジェルは迷わず、テスと添い遂げようとするが、結局二人は警察に捕まって、テスは絞首刑を課される、というところで終わり。

醍醐味は、やはり、テスとエンジェルのお互いの過去の告白シーン。テスはエンジェルの過去の性関係を許すが、エンジェルはテスの過去を許さない。「昔の男が自然法による夫だ」って。どうして男ってそうなの?処女性は問題になるのに、どうして童貞性は問題にならないの?ほんといやになってくる。

とにかく、ナスターシャ・キンスキーはきれい。文句なし。顔に小さな傷があるのも許す。演技もうまいんじゃないかと思う。なかなか考えさせられる映画でした。

03/21/97

86/100


Melody

Produced by David Puttnam

Directed by Peter Suschitzky

Cast

Daniel...Mark Lester

Melody...Tracy Hyde

Ornshaw...Jack Wild

邦題『小さな恋のメロディ』。どうもイギリスのテレビ映画らしい。画質が悪い。

金髪の美少年ダニエル君(11才)が、同じ学校に通う黒髪のメロディちゃんと恋に落ちる。メロディちゃんの両親や学校の先生たちは「君らにはそういうことはまだ早い」と言うが、二人は「ぼくたち愛し合ってるから、今すぐ結婚したいんです」と言って聞かない。そしてついに二人は同級生たちの手伝いで結婚式を挙げ、中止させようと邪魔しに来た先生や親たちを蹴散らして、まんまと駆け落ちしてしまう。 音楽にはビージーズの曲や、C, S, N & Yの「ティーチ・ユア・チルドレン」などが使われている。

印象に残ったのは、ダニエル君が、友人のオーンショー君の遊びの誘いを無視して、メロディちゃんと二人で去っていったシーン。

男の子は、ある年齢までは女の子にはほとんど興味を持たず、男の子同士で付き合うものだ。そこには男同士の愛情がある。まあ、普通は「友情」という名で呼ばれるが。

しかし男の子はいつのまにか女の子と付き合い出すようになり、その際、あとに残された友人はまるで恋人に裏切られたようなさびしさを覚える。あれはとてもさびしいものである。ぼくもぼくの親友が結婚してしまったらきっとさびしくなるだろうと思う。

(二人の愛というのは、一つの世界を作ってしまって、そこから他の人間を排除してしまう)

そこでこのさびしい状態を「ポール・マッカートニー病」と名づけたいと思う。

まあ、あとはたいしたことはない映画だった。ジャック・ワイルド君はかっこいい。ああいうのがパンクになるんだろうなあ。やはりイギリスは階級社会なのだと思った。

05/04/97

75/100


Down By Low

Produced by Alan Kleinberg

Directed by Jim Jarmusch

Cast

Zack…Tom Waits

Jack…John Lurie

Robert (Bob)…Robert Benigni

Nicoletta…Nicholetta Braschi

それほど古い映画ではないが、白黒。

舞台はニューオーリンズ。ザックは腰が落着かないために成功しないDJ。ジャックは売春婦を斡旋する二枚目ヤクザ。この二人が、それぞれ何らかの陰謀によってはめられ、同じ刑務所の部屋に入れられることになる。ここら辺の事情は観る者にはほとんど知らされない。

同じ部屋で二人はしばらく仲良く暮らすが、そのうちにいがみ合うようになり、ついには取っ組み合いのケンカをはじめて看守に止められるまでに至る。 と、そこで三人目の囚人ロベルトが入ってくる。彼はひょうきんなイタリア人で英語は上手でない。トランプでいかさまをやったら殺されそうになったので、逆に相手を殺した、という嘘か本当か定かでないような話をする。三人組になってなんとか刑務所生活もうまく行くようになる。

その後しばらくして、ロベルトの抜け道の発見によって三人はまんまと刑務所から脱走する。ここら辺の過程も観る者には知らされない。つまり、どのようにして脱出したのかは描かれない。

しかし、逃げだしたは良いが、三人はルイジアナ特有の湿地帯に迷い込み、なかなか抜け出ることができずに大変苦労する。ここでもザックとジャックは何度もいがみ合うが、イタリア人のひょうきんなとりなしでどうにか別行動をとるには至らずに済む。 ようやく湿地帯を抜け、一軒ぽつんとある、不思議な雰囲気の食べ物屋に辿り着いたが、そこの店はあるイタリア人女性が経営しており、なんとロベルトはその女性と即座に恋に落ち、そこに一緒に住むことになる。ザックとジャックは出て行くことになるが、やはり同じ方向へは行かず、道が右と左に分かれた場所に着いたとき、それぞれ別の道を行くことにする。ここで映画は終わる。

感想。白黒だし、テンポがゆったりとしているので眠いが、ああこれが米国南部のノリなのかな、と妙に感心してしまう。派手なアクションもなければ、色恋沙汰もないし、男三人が脱走して密林のようなところでさまよう、というただただそれだけの話である。

しかし、余分な話がなく、ぜい肉が切り取られているだけに、三人の人間関係が非常に興味深いものとして観る者の目に映る。もうそれっだけがおもしろいのである。それ以外に楽しむところはないっ。あれ、ほめてんのかなこれって? とにかく、三人のやりとりが楽しく、悲しく、何ともいえない雰囲気を作り出している。またそれがなんとなく南部的なのである。白黒の雰囲気もよい。古き良き時代のサイレントムービーを思わせる。

ただ、眠いのはたしかなので、じわじわ型の感動が好きな人とトム・ウェイツが好きな人にしか勧められない映画である。

05/07/97

80/100


New York New York

Produced By Irwin Winkler and Robert Chartoff

Directed By Martin Scorsese

Cast

Francine Evans…Liza Minnelli

Jimmy Doyle…Robert De Niro

第二次世界大戦直後の、スウィング全盛の頃のお話。

歌手のフランシスとサックス奏者のジミーが結婚するが、ジミーはマイナーな人気で終わり、フランシスは後にハリウッド映画の主演をするほど有名になってしまう。典型的な夫婦不和のパターン。(『アイク&ティナ・ターナー病』と命名する――何のことか分からない人は『ティナ』という映画を見ること)

それにしても、妻の方が夫より稼ぐとか、圧倒的に才能に恵まれているとか、彼女は京都大学に合格して自分は河合塾とか、彼女は歌手としてメジャーデビューして自分は木屋町通りで流しをしてるとかいう場合、男性としてはどうしたらいいんだろうか。もしぼくがそういう状況になった場合、ぼくは平気でいられるだろうか。

これはちょうど、兄より弟の方がもてたり、学校でいい成績をとったりするようなものだろうか。それとか師匠より弟子の方が有名になってしまったり。

けど、男性と女性にそういう師弟とか兄弟のような序列があると考えるのがそもそもおかしいような気がする。もちろん主人と下僕という関係でもないはずである。しかしそれほどひどくないにせよ、今言ったような男性優位の考え方が圧倒的な力を持って存在し続けてきたのは事実で、それはやはりぼくにもきちんと刷り込まれている。きっとぼくも「頭ではわかっているんだけど、気持ちの整理が付かなくって」とか言う気がする…。

ま、とにかく、音楽が素晴らしいので、ジャズファンのみならず、ロックファンもすべからく観るべし。特に途中の「ハッピーエンディング」と「ニューヨークニューヨーク」のライブ(?)シーンは最高。ライザ・ミネリーがベット・ミドラーの『ローズ』ばりのアクションを見せてくれます。あ、時代順が逆か。

あと、ロバート・デ・ニーロ(若いっ)もかっこいいので必見。長いが良い映画でした。結末も渋い。

05/08/97

90/100


The Unbearable Lightness of Being

Produced by Saul Zaentz

Directed by Philip Kaufman

Cast

Tomas…Daniel Day-Lewis

Teresa…Juliette Binoche

Sabina…Lena Olin

邦題は『存在の耐えられない軽さ』。

舞台はチェコのプラハ。時は1968年のいわゆる「プラハの春」とそれに続くソ連の軍事介入が起こる頃。その時代に生き、幸福と不幸を交互に体験し、そしてあっけない終わりを迎えた二人の恋人の、運命にもてあそばれる姿を描く。

トルストイのアンナ・カレーニナをまだ読んでいないので、この映画に何度も出てくるそのタイトルの示唆するところがよくわからないが、なんとなくこの映画の長さと、運命にもてあそばれる人間のはかなさ、という主題は東欧・ロシア的な暗さを感じさせる。もう一冊の『オイディプス王』は何を意味するのか。わからん。

また、二人の飼っていた犬がガンで死ぬが、犬が死ぬ、というのは何か象徴的な意味を持っているのだろうか。そういえば『恋の病』という映画でも犬が死んでたっけ。

さて、この映画の持つメッセージについて考えてみる。おそらく一つには政治的な意味も含まれていると考える。牧場での生活において、やっと幸福を見つけたように思えた二人が、交通事故であっけなく死んでしまう、という皮肉なエンディングに、「結局幸福なんてはかないものよ」というメッセージを見て取るべきか。それとも他の肯定的なメッセージはあるのか。

ほんとに「存在は耐えられないほど軽い」のか?

こういう不条理な展開の映画はたまらんなぁ。いや、これが人生か。

テレーザ役の人はきれいだし全く問題はないが、これがナスターシャ・キンスキーだったら、ぼくのフェイバッリット・ムービーになってたかも。

05/15/97

90/100


Jane Eyer

By Charlotte Blonte

Produced by William Goetz

Directed by Robert Stevenson

Cast

Edward Rochester…Orson Welles

Jane Eyer…Joan Fontaine

ううむ、なんとも悲惨な話だが、一応ハッピーエンドになっているのがせめてもの救いか。

孤児のジェーンはまっすぐな性格で、悪く言えば頑固でもある。彼女はある婦人の家で暮らしていたが、偽善的で意地の悪い婦人の希望でローウッド孤児院で生活することになる。

しかしそこでもジェーンは偽善的で意地の悪い院長に悪魔の子だとかむちゃくちゃ言われ、ひどい目に遭い、しかも唯一の友人のヘレン(エリザベス・テーラーだったよね、たしか?)も院長のお仕置きのために死んでしまう。わああ、暗いっ。

それでもジェーンは10年間辛抱強く孤児院で生活し、そこでの教師の職を蹴り、ガヴァネス(家庭教師)となってめでたく出所する。美しいジェーンは住み込み先の主人であるロチェスター卿(オーソン・ウェルズ)と恋に落ちる。が、実は不幸なロチェスターには気違いの妻がいて、ジェーンとは結婚できないことがわかる。

…ところで、この気違いの妻の描写はすっごく怖い。サイコ。ま、当時のイギリスの気違いの定義はひどいものだったらしいから、浮気な妻を幽閉する理由にしていただけなのかも知れないが。

ジェーンは彼と結婚できないことを知って、ロチェースター卿の下を去る。彼女は行くあてがないので最初に住んでいた婦人の家に行く。すると、婦人も放蕩息子が自殺したことで気違いになっている。わああ、もうみんな気違いっ。

まもなくこの婦人も死んでしまって、ジェーンには行く先が無くなったところで、虫の知らせによって彼女が再びロチェスター卿のところへ戻ると、なんと火事で屋敷が全焼。彼の気違いの妻が火をつけて、自分も屋根の上から飛び降りて死んだらしい。

当のロチェスター卿も足にけがをして杖を突いており、しかもショックで目が見えなくなっている。果てしなく暗い…。しかしそんなことにはお構いなしに、優しいジェーンは彼との結婚を望む。やがてロチェスター卿の目には光りが戻り、二人の間には男の子が生まれる…、という結末。

うーむ。暗い。とても女性の自立を説いている話には思えないが。孤児院や結婚といった社会の制度の批判をしたいんだろうか?それともこれは、孤児の女の子でも教育を積めばガヴァネスになりそこの主人と結婚することもできる、という立身出世を説く話だろうか?

なんとも古典的な映画作りなので「ああ、よくできていたなあ。娯楽映画ですねえ」としか言えない。

05/21/97

76/100


Wuthering Heights

By Emily Blonte

Produced by Samuel Goldwin

Directed by William Wyler

Cast

Cathy…Merle Oberon

Heathcliff…Laurence Olivier

Edgar…David Niven

Ellen…Flora Robson

Isabella…Geraldine Fitzgerald

邦題『嵐が丘』。ケイト・ブッシュの同名の曲を聴きながら感想を綴る。

泣きました、最後のところ。泣くとは思わなかったんだけど。いい映画なのでまだ観てない人は観ましょう。『ジェーン・エア』に比べてはるかにいいです。宝塚に行って来ようかと思っちゃった。

ストーリーは略。観なさい。

印象的だったのは、金持ちのエドガーにプロポーズされて喜ぶ虚栄心の強いキャシーに、召し使い(乳母?)のエレンが「けど幼なじみのヒースクリフのことはどう思っているんですか」と聞くところ。キャシーはヒースクリフのことを思い返して、やっぱり自分の真に愛しているのは彼であると言い、おしまいに次のような言葉を述べる。

わたしはヒースクリフなのよ(I am Heathcliff.)」

この一見矛盾した言い回しは非常にインパクトがある。こういう表現は初めて聞いたのでびっくりした。ま、なぜインパクトがあるかについてはまた今度考えよう。

さて、ぼくは「わたしはあなたの奴隷よ」とか「わたしはあなたのもの、あなたはわたしのもの」という類の表現が非常に嫌いなのであるが、よく考えると、この手のせりふを言う人間の持つ熱狂的な愛情というのに、むしろ恐怖感を抱いているのだと思う。本能的な恐怖感なのか、経験的なものなのか分からないが。

しかしとにかくこの手の表現には耐えられないのである。こういう狂気的な恋愛にはなるべく関わりたくない。死んでも地獄から会いに来るわ、などとKISSのアルバムタイトルを彷彿とさせる言葉を言われると鳥肌が立つぐらいでは済まないだろうと思う。

いろいろ考えると、ぼくは基本的に精神状態がまともでなくなることに恐怖を覚えているみたいだ。酒を飲んだりしないのもやはりそれがあるし。今風(?)の表現を使えば、自分が「イッちゃってる」状態になるのが嫌なんだと思う。ぼくは自分がまともではない、と思ってると以前書いたが、それでもある程度自分で自分をコントロールしているわけで、この手綱を離すのが一番恐いと思ってるようだ。

(他人に「まともでない」と思われるのと、自分で自分をコントロールできなくなることは、まったく別の問題ですよね)

ま、それにしてもこういう狂気的な愛に距離を感じているつもりだったが、なぜか泣いてしまいましたね。主演女優がナスターシャ・キンスキーだったらもっと良かったんだけど(また言ってる)。

あと、精神分析的に考えて、ヒースクリフとエドガーをキャシーの性格の持つ二つの面、と見ることもできると思った。何を言ってるかは観ればわかるはず。

あと、なんとなく『風と共に去りぬ』と似ているとも思った。これも観ればわかるはず。観なさい。

05/22/97

92/100


Le Mari De La Coiffeuse

Directed by Patrice Leconte

Cast

Jean Rochefort

Anna Galiena

Henry Hocking

邦題『髪結いの亭主』。某嬢にビデオをお借りする。

以下は主人公のアントワーヌの妻であり、床屋の女主人でもあるマチルダの遺言。ここに映画の主題があるように思う。


あなたが死んだり

わたしに飽きる前に死ぬわ

優しさだけが残っても

それでは満足出来ない

不幸よりも死を選ぶの

抱擁の温もりやあなたの

香りや眼差し

キスを胸に死にます

あなたがくれた

幸せな日々と共に

死んでいきます

息が止まるほど

長いキスを送るわ

愛してたの

あなただけを

永遠に忘れないでね

マチルド


マチルドは、アントワーヌとの結婚生活における幸福の絶頂期に、忍び寄る老いや恋愛の破局を恐れて、激しい夕立の夜に一人で入水自殺をしてしまう。

「不幸になる前に死のう」

これがマチルドの哲学である。俗に言えば「幸せすぎてこわい」というやつである。

こんなことを言うと、何を身勝手なことを、と非難される方もいようが、ぼくはこの「恋愛が悲しい結末を迎えてしまう前に、二人の愛がそのままであり続けている間に自らの手で終止符を打つ」というマチルドの選択に、心のどこかで共感せずにはいられない。(独り残された夫のアントワーヌはかなり悲惨だが…)

そもそも、「愛は永遠である」という命題が偽であると思う人間は、恋愛に対してどのような姿勢を取るべきなのか。言いかえれば、幸福が大きければ大きいほど、それを失ったときの苦悩も大きいとしたら、そしてわれわれが「幸福とはいつか必ず失われるものである」という哲学を受け入れているならば、われわれはどのような行動を選ぶべきなのか。

深みにはまらないように気をつけてどんどん相手をとっかえひっかえすればいいのか、それとも「はかない愛」だからこそ二人で協力して慈しみ育てて行くべきなのか、それともマチルドのような選択をすべきなのか。

だれか「相対主義と恋愛」なんてテーマで論文を書いてくれないかな。(これは相対主義とは言わないか…)

結論。古典的恋愛悲劇。いい映画です。そこはかとなく官能的で。

06/01/97

91/100


Satoshi Kodama
kodama@socio.kyoto-u.ac.jp
Last modified on 07/04/97
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