サンクション

(さんくしょん sanction)


法や道徳といったある行動規則に効力を与える要因のこと。 言いかえると、ある規則に従う動機となる要因のこと。 制裁、制裁力とも。

ベンタムロックジョン・オースティンなどにとっては、 サンクションがどういう源泉に由来するかは法や道徳を区別するための鍵概念である。 たとえばベンタムは、『序説』第3章において、 自然的サンクション、道徳的サンクション、法的サンクション、 宗教的サンクションを区別している。 たとえば喫煙を例にとると、 タバコを吸って肺炎で死ぬというのは自然的サンクションであり、 タバコを吸ってまわりの人に嫌われるというのは道徳的サンクションであり、 未成年がタバコを吸って警察につかまるというのは法的サンクションであり、 タバコを吸って神から天罰を受けるというのは宗教的サンクションである。 ベンタムはこれらの理由がタバコを吸わないための動機になりうると考えている。 (ベンタム自身はタバコの例を挙げているわけではない。念のため)

サンクションがいくつに分類できるかは議論があるところで、 ベンタムも後年には「共感、反感のサンクション」 という五つ目のサンクションを挙げており、 逆にロックやオースティンは自然的サンクションを抜いて サンクションを三つに分類している。

慣例と法についてのウェーバーの議論 (『社会学の根本概念』第六節) も参照せよ。

27/Nov/2001


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jan 28 03:43:18 JST 2000