リッチー
(りっちー Ritchie, David George)
スコットランド生まれの哲学者(1853-1903)。
あまり詳しいことはわからないのだが、
スコットランドのセント・アンドルーズ大学と
オックスフォード大学で
論理学や形而上学を教えていたらしい。
著書に『自然権』(Natural Rights, 1894)、
『ダーウィンとヘーゲル』(Darwin and Hegel, 1893)、
『プラトン』(Plato, 1902)などがある。
『自然権』の目次を訳してみたので、
興味のある人はこちらを参照。
(12/19/99)
DNB (Dictionary of National Biography)によると、
リッチーはエディンバラ大学とオックスフォード大学で古典学の教育を受けた。
オックスフォード大学でフェロウ、チューターとして教えるかたわら、
トマス・ヒル・グリーンの影響で
ヘーゲル流観念論哲学
および政治哲学に関心を持つようになった。
1894年にセント・アンドルーズ大学の教授に指名されたので、
オックスフォードを離れスコットランドに移り、
1903年の死まで教授職にあった。
1998年にトマスThoemmes社から全集(全6巻)のリプリント版が出たようだ。
(12/22/99 追記)
目次といってもこの頃の目次はいわゆる「分析的」な目次なので、
本の内容が詳細に述べられており、
ここを読めばだいたい内容がわかるようになっている。
第一部 自然権の理論
第1章 '89年の諸原理…8-19頁
- 「人間の権利」はフランス宣言において最初に宣言されたわけではない…3頁
- 米国においてすでに定式化されていた…4頁
- ヴァージニア州「権利章典」…4-5頁
- これらの原理はロックに由来する…6頁
- プロテスタント主義に含意されている…7頁
- ウィクリフとジョン・ボール…8頁
- 「水平派」…8-9頁
- 英国清教徒たちにおける、歴史的権利から「自然的」権利への推移…10頁
- 米国植民者における[歴史的権利から「自然的」権利への推移]…10-11頁
- 擬似歴史的に描かれた自然的権利…11-13頁
- 自然への訴えは、(1)外的権威に対抗する訴えである--13頁
- また、(2)個人の判断への訴えである--14頁
- 自然権の理論は無政府主義者の信条となりうるが、
保守的な個人主義者の信条にもなりうる…14-16頁
- 革命的な信条がいかにして保守的なものになるか
--歴史の弁証法的運動…16-18頁
- カルヴァン主義を用いた例証…18-19頁
- 以下の諸章の計画…19頁
第2章 法と政治における「自然」の観念の歴史
- 「自然的」という語のあいまいさ…20頁
- ギリシアのソフィストは18世紀合理論者の先駆者である…21-25頁
- 「自然」と「慣習」の対立…24-27頁
- アリストテレスの自然観…27頁
- 彼のこの語の異なる用い方…28頁
- 「自然法」の観念を含むように思われる節の検討…29-32頁
- キュニコス派、および彼らの「自然に帰れ」…32-33頁
- ストア派の自然観…33-35頁
- キケロ…35-36頁
- ローマ法…36-7頁
- 自然法jus naturaleと万民法jus gentium…38頁
- ローマ人の法の観念の西洋思想に対する影響…38-39頁
- トマス・アクィナス…39-40頁
- ローマ人の自然法観は法改革に有利であった…40-41頁
- ローマ人の自然法観の国際法に対する影響…41頁
- 政治と倫理(学)に対する影響…41頁
- ホッブズ、ロック、ポープ、ルソーにおける「自然状態」…42-44頁
- (アダム・スミスなどにおける)「自然神学」…44-45頁
- 「自然権」を弁護するハーバート・スペンサー氏に対する自然科学の影響
…45-46頁
- 「生物学的権利」46-47頁
第3章 ルソーとルソー主義
- 『社会契約論』におけるルソーの文明観と
彼の初期の著作における文明観との比較…48-51頁
- 「ルソー主義」--「自然に帰れ」など--はこれらの初期の著作に由来する…51頁
- 正確には「社会主義者」ではなく、
個人主義者あるいは無政府主義者である…52頁
- 文明、その諸要素…53-56頁
- 都市生活と自然愛好…56-59頁
- 文明に対する反抗における真理と虚偽…59頁
- 野蛮人の崇拝…60-62頁
- 文明化された生活の重荷…63-64頁
- 無政府主義者の種類…65-66頁
- 抽象的思考…66-68頁
- 自然と人間の対立…68-70頁
- その誤り…70頁
第4章 自然の分類 DE DIVISIONE NATURAE
- I. 存在するものの全体としての自然;
(a) 能産的自然Natura naturans、(b) 所産的自然Natura naturata…71-74頁
- II. 人間あるいは人為的なものに対立するものとしての「自然的なもの」
…74頁
- III. 最初のものとしての「自然的なもの」…74-75頁
- IV. 通常のものあるいは理想的なものとしての「自然的なもの」…75頁
- これらの意味の混同…75-76頁
- 別の意味の分け方の提案…77頁
第5章 権利を決めるのは何か?
- 法的権利の定義…78頁
- 道徳的権利の定義…78-80頁
- 自然権は道徳的権利と同一ではない;
自然権は、あるべき社会において保証されるであろう
非常に基礎的な権利である…80-81頁
- この「べし」を決めるのは何か?
(1) 権威か? …82-85頁
- (2) 自然、すなわち個人の意識あるいは意見か? …85-87頁
- (3) 功利性あるいは理性か? …87頁
- 「自然法」の衝突する解釈が重婚についての意見によって例証される:
リッカビー教父…88-90頁
- グロティウス…90頁
- ロック…90-92頁
- ロリマー…92-93頁
- シェリー…93頁
- 功利性は同じように不確かな道標であるか…94頁
- ベンタム主義的功利主義の欠点…94-96頁
- これらの欠点は、もし、抽象的に考えられた快苦の感覚の代わりに、
普遍的自我あるいは理性が倫理学の形而上学的基礎とされるなら、
消える…96-97頁
- 個人主義的功利主義から進化論的功利主義への推移…97-101頁
- 権利は社会に依存する…101-103頁
- 奴隷制といった制度を判断する進化論主義の方法…103-4頁
- 産業における競争…104-5頁
- 「自然」よりも理性や経験に訴える利益…105-6頁
- 上述の事柄と関連するいくつかの問い:
われわれよりも劣る動物は権利を持つか…107-111頁
- 進歩の観念…111-114頁
- (1) 政治理論と、(2) 憲法において個人の権利が占める場…115-116頁
第二部 個々の自然権
第6章 生命権
- (a) 自己保存の本能…119-120頁
- これは社会に対する自然権を個人において生み出すか…120-122頁
- また、他の社会に対する自然権をある社会全体において生み出すか…122-124頁
- (b) この自己保存の権利は生命を終わらせる権利を含むのか?
自殺についての見解…124-126頁
- (c) 生を「亨受する」権利…127頁
- (d) 良く生まれるwell-born権利はあるか?
生まれていない者the unbornの権利…127-134頁
第7章 自由権: 思想の自由
- "liberty"と"freedom"という語、その多義性について…135-138頁
- 消極的自由と積極的自由の違い…138-9頁
- 積極的自由は国家を離れては存在しえない…139-140頁
- 「平等な自由」の定式…141-142頁
- それを正義の原理として用いることの難しさ…143-145頁
- フランス人権宣言における個人的自由の制限…145-146頁
- 制限は他の個人の平等な自由以外のものでなくてはならない…146-147頁
- 思想の自由、その文字通りの意味…147-148頁
- 知性の自由という積極的意味においては、
それは強い政府の存在を含意する…148-149頁
- 宗教的自由と市民的自由は常に相伴なうわけではない…149-150頁
- フランス憲法における出版の自由…150-151頁
- 英国においては、検閲の廃止と陪審員による裁判のみに依存する…151-155頁
- 形式的な権利宣言の道徳的価値…156頁
第8章 寛容
- 「寛容toleration」という語の弁護…157-159頁
- 「迫害」とは何か…159-160頁
- 行為の自由に対する制限と同様、
演説と著作の自由に対するいくらかの制限はあらゆるところで必要である
…161頁
- 異端の弾圧に関するトマス・アクィナスと彼の支持者の教説…161-164頁
- 「意見の自由」についてのリッカビー教父の見解…164-167頁
備考A 宗教的迫害と寛容: いくつかの歴史的例証
備考B 米国におけるモルモン教を抑圧する方策
第9章 公共の集会および団結の権利
第10章 契約の自由、国家の自由、その他
第11章 圧政への抵抗
第12章 平等
第13章 所有権
第14章 幸福を追求し獲得する権利
補遺
KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jan 28 07:12:19 JST 2000