(じゆう liberty [freedom])
I have my freedom, but I don't have much time.
--Rolling Stones, `Wild Horses'
And freedom, oh freedom, well, that's just some people talkin'
You're a prisoner walkin' through the world all alone.
--The Eagles, `Desperado'
バーナード 「君は自由になりたいとは思わないのかね、レーニナ?」
レーニナ 「わたし、あなたのいうことが分からないわ。わたし自由よ。 とてもすばらしい時を過す自由を持っているわ。 今ではすべての人は幸福なのよ」---ハックスリー
フランス革命が人間の努力の目標としての普遍的自由という概念を生み出したと 言っても、まあ言い過ぎではない。フランス革命以前は、 自由は一部の人が特定の事柄を行なう自由を意味した。 フランス革命以降は、自由の要求は自由一般、原則としての自由、 万人の自由となった。 フランス革命を生んだ人々はこのことの意味を理解していなかった-- それどころか、 われわれはその意味を理解しようといまだに努力しているのである。
---E.H.カー
単に欲求に突き動かされるのは奴隷であり、 自分が作った法に従うことこそが自由である。
---ルソー
This was supposed to be a war of liberation, but the Iraqis are now going to have to be "forced to be free", a delusion that will cost thousands of lives.
---Madeleine Bunting
「本人の将来のために叱るのだ。 本来なら退部、そして学校さえやめておかざるをえないところ、 人情家の私は体罰を与えることによって許してやるのである。 つまり、彼を救ってやるために彼を諌める」
---篠竹幹夫、元日大アメフト部監督
目の見えない人に、あなたは自由だ、世界を隔てていたドアをあけろ、 と言ってみる。さあ行け、あなたは自由だ、と。 目の見えない人は行こうとしない。 道のまんなかで身動きもできずに立ちつくしている。
---ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』
Sonny: Do you think we are all created for a purpose? I'd like to think so.
(...)
Sonny: Now that I've fulfilled my purpose, I don't know what to do...
Spooner: I guess you'll have to find the way like the rest of us, Sonny. That's what it means to be free.---From I, Robot (2004)
(書きかけです)
[定義]
もっとも広い意味では、邪魔が入らないこと。
あることをするに当たって、障害がないこと。
[通常の意味での自由、哲学的自由の区別]
ここで述べるのは、通常の意味での自由。
哲学的自由については、
自由意志を参照せよ。
[バーリンの二つの自由概念]
消極的自由。積極的自由。
「〜からの自由」、「〜への自由」という説明は、とくに後者が、わかりにくい。
[消極的自由]
「他人に邪魔されないこと」。
他者(とくに政府)に干渉されないという意味での自由。
「自由主義」における自由。
これについては、
ミルの危害原理を参照せよ。
[自由の価値]
しかし、政府の役目は消極的自由を守ることだけではない。
オクスフォード大学の教授の自由と、
エジプトの小作農民の自由は価値がかなりちがう。
裕福な大学教授にとって干渉されない自由は非常に貴重だが、
貧しく文盲の小作農民にとっては、
干渉されない自由よりもむしろ衣食住や医療、教育が大切である。
自由を亨受するためには、政府(あるいは他人)によるある程度の介入が必要になる。
この「真の自由を亨受するためには、他人によるある程度の介入が必要だ」 という発想は、積極的自由の概念を生みだす。
[積極的自由]
「自分自身の主人になること」。
自分自身の主人(自律的存在)になるためには、
下等な欲求の干渉を排除し、理性に従わなければならない。
理性に従おうとしない人間は、欲望の奴隷になっているので、
政府が干渉してでも解放してやらなければならない
(ルソー、`forced to be free')。
この「手品」によって、積極的自由は、
自由主義と対立する全体主義の思想的基盤になる。
ただし、バーリンも、積極的自由を完全に非難しているわけではない点に注意。 (積極的自由と消極的自由については、Razの第15章第2節も参照せよ)
[マルクーゼの自由批判]
消費社会における多すぎる選択肢(100種類のコーヒー)は、
真の自由を奪ってしまうので、自由を規制すべきである。
[テイラーの消極的自由批判(`What's Wrong with Negative Liberty')]
ある欲求が、他の重要な欲求の「障害」になることもある。
自己実現のためには、消極的自由だけでは不十分。
また、自由は内在的価値を持つのか、あるいは道具的価値を持つのか、 という論争もある。(Razの本を参照のこと)
以下のミルの危害原理、 ハートの自然権、 ロールズの自由原理は、 基礎づけの方法は違えども、内容はほぼ同じである。
ミル
「人類が、個人的にまたは集団的に、 だれかの行動の自由に正当に干渉しうる唯一の目的は、 自己防衛だということである。すなわち、文明社会の成員に対し、 彼の意志に反して、正当に権力を行使しうる唯一の目的は、 他者にたいする危害の防止である」
ミル、J.S. (1979) 「自由論」 『ベンサム、J.S. ミル (世界の名著49)』(関嘉彦責任編集、中央公論社)、224頁.
ハート
私がこれから提示しようと思うテーゼは、 もし何らかの倫理的権利が存在するとすれば少なくとも一つの自然権、 すなわち、自由であることに対する万人の平等な権利が存在することになる、 というテーゼである。 この権利が存在すると述べることにより私が念頭においているのは次のことである。 権利が平等の権利であることと矛盾しないような何らかの特別な状況が 存在しなければ、 行為を自由に選択する能力をもつあらゆる成年者は、 (一)強制や拘束を避けること以外の目的で他者が彼に対し強制や拘束を 加えることを差し控えるよう要求する権利を有し、 (二)他者を強制、拘束することがないかぎり、 また他者に害を加えることを目的としないかぎり、 あらゆる行為を遂行する自由を有する (すなわち、行為を差し控えるべき如何なる義務にも服していない)。
H・L・A・ハート、『権利・功利・自由』、小林公・森村進訳、木鐸社、 1987年、9頁
ロールズ
First Principle -- Each person is to have an equal right to the most extensive total system of equal basic liberties compatible with a similar system of liberty for all.
John Rawls, A Theory of Justice revised edition, Belknap Harvard, 1999, p. 266
01/Feb/2001 (03/Feb/2001追記)
冒頭の引用は以下の著作から。