(ぎむ duty, obligation)
[T]here is no contradiction in saying of some hardened swindler, and it may often be true, that he had an obligation to pay the rent but felt no pressure to pay when he made off without doing so. To feel obliged and to have an obligation are different though frequently concomitant things.
---H.L.A. Hart
Now, moral obligation is an obligation imposed by opinion, or an obligation imposed by God: that is, moral obligation is anything which we choose to call so, for the precepts of positive morality are infinitely varying, and the will of God, whether indicated by utility or by a moral sense, is equally matter of dispute.
---John Austin
われわれの情念が、われわれに何ごとかをさせるときには、 われわれは自分の義務を忘れてしまう。 たとえば、ある本がおもしろいと、ほかのことをしなければならないときでも、 それを読んでしまう。 けれども、その義務を思い起こすためには、 何か自分がきらいなことをしようと思い立つことである。 そうすれば、ほかにしなければいけないことがあるという言いわけをすることになり、 この方法で自分の義務を思い出すようになる。
---パスカル
「倫理学の根本問題」というような書物は、現代でも多数出版されているが、 完全義務と不完全義務を扱ったものがないというのは、ちょっとスケールの 大きい理論的なスキャンダルではないだろうか。 だいたいローマ時代から使われていて、カントとミルの倫理学の基本概念に なっている概念に、一冊も専門書が存在しないというのは、まったく不可解である。
---加藤尚武
もし義務が、倫理的要求や政治的要求を満たすさいの実務的側面であるとしたら、 なぜわれわれはこれほどまで権利ばかりに注目するのだろうか。 また、なぜわれわれは、義務について語ったり考えたりするときには、 あまりに無口で適当なのだろうか。 おそらくその理由の一つには、 他人がわれわれになすべきことを考える方が、 われわれが他人になすべきことを考えるよりも楽しいということがあるのだろう。
---Onora O'Neill, A Question of Trust
法、道徳、または宗教によって、 やらねばならないとされている行為。 dutyを「義務」、obligationを「責務」と区別して訳す人もいるが、 どのような区別をしているのか聞いてみたいものである。
法的義務と宗教的義務は、 それぞれ実定法および神による命令および強制によって生じるものと 理解できるが、 道徳的義務がいかに生じるかに関しては意見が分かれ、 古来から大きな論争点となってきた。 すなわち、道徳的義務も神の命令から生じると考える立場や、 自然ないし人間本性から生じるとする立場、 さらにわれらがベンタムのように、 単純に世論による拘束力から生じるとする立場などに大きく分かれる。
完全義務の項も見よ。
09/01/99; 20/May/2001更新
上の引用は以下の著作から。