行為功利主義

(こういこうりしゅぎ act utilitarianism)


規則功利主義とともに、 ブラント(Ethical Theory, 369, 380)によって造られた言葉。 功利原理個々の行為に適用する立場を指す。 この立場だと、 ある場合には嘘をつくことや物を盗むことや約束を破ることが 正当化されるので、直観に反すると批判される。 規則功利主義は、この批判に答えようとして考え出された立場といえる。 (11/18/99)

ハーサニ先生によると、 「行為功利主義とは、 《それぞれの個々の行為は功利主義の基準によって直接に 評価されなくてはならない》という見解である」。 (Amartya Sen & Bernard Williams ed., Utilitarianism and beyond, Cambridge UP, 1982, p. 41)。 (11/19/99)

Contemporary Utilitarianismの編者Michael D. Baylesによる イントロによれば、J.J.C.スマートは行為功利主義を `extreme utilitarianism'と呼んでいたが、後になって、 より価値中立的な言葉である`act utilitarianism'を採用したそうだ(pp. 9-10)。 また、思想史的には、ムーアが行為功利主義的な 主張をして影響力を持ったため、1950年代にアームソンがミルの功利主義は 規則功利主義的なものだと主張するまで、 功利主義=行為功利主義という理解が存在したとのこと(p. 8)。 したがって、思想史的には、 規則功利主義は功利主義に対する誤解を解くために主張されたと言える。 (09/May/2004)


参考文献


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Mon May 2 13:36:41 JST 2016