つれづれなる概説

◆スウェーデンPFOSをPOPs議定書に追加を提案


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POPs議定書リスティングプロポーザル和訳:

Perfluorooctane sulfonate (PFOS)を残留性有機汚染物質のためのストックホルム条約会議の付属書Aにリストするための提案
スウェーデン環境省化学物質調査局(KemI)
スウェーデン
2005年6月


はじめに
ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)は完全にフッ素化された陰イオンで、いくらかの直接の用途、より大きな重合体に取り込まれたような形で用いられる。その表面活性特性のために、それらは多種多様なアプリケーション、例えば織物、革製品;金属めっき;食物包装;泡消火剤;床光沢剤;入れ歯洗浄剤;シャンプー;コーティングとコーティング添加剤;写真あるいはフォトリソグラフ産業;そして航空産業での油圧作動液で使われている。

PFOSは多くの関連物質群(PFOS関連物質)からの分解によって形成されうる。PFOSと96のPFOS関連物質は、指定に必要不可欠な要素である。全てのこれらの物質は、ペルフルオロアルキル化合物(PFAS)の大きな一群のメンバーであり、その中にはPFOSの代替品が見いだされうる。

この関係書類は単に、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約会議の付属書Dのパラグラフ1と2の下で必要な情報だけに焦点を当てており、それは主に以下のレビュー報告から情報に基づいている:

・2004年8月に、スウェーデン化学物質調査局による国連欧州経済委員会長距離越境大気汚染条約議定書およびストックホルム条約会議へのPFOS指定のための支援として準備された草案書類

・OECD(2002)既存化学物質についての共同作業-ペルフルオロオクタンスルホン酸とその塩類の有害性評価, 化学物質委員会と化学物質・農薬・生物工学作業班の環境理事会共同会議, 経済協力開発機構, パリ, 2002年11月

・英国 ステージ4 最終報告, ペルフルオロオクタンスルホン酸: リスク軽減戦略および便益損害分析, Risk & Policy Analysts, Limited. (Building Research and Consultancy Environment社と共同), 2004年3月

・環境リスク評価報告:ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS), 環境庁, 英国, 2004

これらの広範囲のレビュー報告(付属)は、また、このPOP候補物質についてストックホルム条約会議の付属書Dのパラグラフ3で言及される更なる情報源として用いられる。


1 化学的同一性
1.1 名称および登録番号
CAS chemical name: Perfluorooctane Sulfonate (PFOS)

同義語:
1-Octanesulfonic acid, 1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-heptadecafluoro;
1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-heptadecafluoro-1-octanesulfonic acid;
1-Octanesulfonic acid, heptadecafluoro-;
1-Perfluorooctanesulfonic acid;
Heptadecafluoro-1-octanesulfonic acid;
Perfluoro-n-octanesulfonic acid;
Perfluoroctanesulfonic acid;
Perfluoroctylsulfonic acid

CAS登録番号: 307-35-7

1.2 構造
分子式: C8 F17 SO3
構造式:



Figure 1. PFOSカリウム塩の構造式
PFOSは完全にフッ素化された陰イオンであり、一般に塩として使われるか、より大きな重合体に取り込まれている。PFOSとその密接に関連した物質(PFOS不純物を含んだり、PFOSに分解したりする)は、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩物質(PFAS)の一群のメンバーである。PFASの概略構造は、図2のようになる。


CF3-(CF2)x-SO2 -R

図2 PFASの概略構造
Rは、OH、NH2などのような官能基。PFOS関連物質ではx = 7。

2.残留性
PFOSは、非常に残留性である。それは加水分解、光分解、生分解試験をいかなる環境条件で行ってもまったく分解を示さなかった。PFOSが分解される唯一の既知条件は、高温焼却することである。

3. 生物蓄積性
PFOSは、最上位の捕食者、例えば北極グマ、アザラシ、ハクトウワシとミンク(北極、米国とスウェーデンでは)で、より下の栄養段階ものより、非常に高いPFOS濃度であることに基づく生物蓄積の基準を満たす。

4. 長距離環境輸送の可能性
PFOSは、長距離大気輸送への可能性の基準を満たす。これは、北半球のいろいろな地域で非常に高いPFOSレベルを示しているモニタリングデータを通して明白である。

5.有害影響
PFOSは、毒性の基準を満たす。それは低濃度(数mg/kg-bw/day)亜急性反復投与試験が哺乳類に毒性を示して、出生直後に起こった仔死亡率で生殖毒性を示し、おそらく肺成熟の抑制に起因したと思われる。PFOSは、アミエビで観察される最も低い無影響濃度NOEC(0.25mg/L)であり、水生微生物に有毒である。

6.懸案事項とする理由書
利用可能なデータによると、PFOSは環境で非常に残留性である。その理化学的性質と非常に長い大気中半減期によって、また遠隔地(例えば北極)での環境試料の調査結果に基づくけば、PFOS/PFOS関連物質がその発生源からほど遠く、大気中を長距離輸送されうると仮定しえる。PFOSは、哺乳類と水生微生物で重大な有害影響と関連している。米国主要製造業者によるPFOS生産からの自発的な廃止は、PFOS関連物質の使用の大きな縮小に至った。しかし、それらが若干の国でいまだ製造されていると考えられ、そして、それが多くの国で使われ続けられているという証拠がある。PFOS関連物質がその発生源から遠い場所に大気中を移動可能であるために、一つの国もまたは多国間グループによってとられる処置はそれに起因する汚染を弱めるのに十分ではない。地域的な行動はすでに必要であると考えられ、そして、PFOSはPOPsについてのLRTAP議定書の下で候補物質に指定されている。その有害なPOPとして性質とありうる継続的な生産と使用に関連したリスクのために、世界的な行動は、PFOSに起因する汚染を排除するために正当化される。

[原文]

[2005/07/28]


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