ごあいさつ
日本体力医学会第9代理事長
下光 輝一
このたび2012(平成24)年4月1日より歴史と伝統のある日本体力医学会第9代理事長を務めることになりました。1949(昭和24)年に日本体力医学会が設立されて以来、63年の歳月が流れましたが、先人たちの努力により、今日では日本医学会第39分科会として5200人もの会員を擁し、わが国における体力医学、スポーツ医科学、健康科学にかかわる研究をリードする学会として確固たる地位を築いております。
本学会は、公衆衛生、疫学などの社会医学、内科や整形外科などの臨床スポーツ医学、運動生理学、栄養学、体育学、スポーツ心理学などの専門家、研究者、実践家が一堂に会した学際的な学会であります。
今日、日本体力医学会を取り巻く社会状況は、大きく変化しております。つい百年ほど前の時代、すなわち感染症が猖獗していた時代には、病気に罹患するや否や即「死」の転帰をとることが通常でしたが、抗生物質などの登場により感染症はその主役から外れ、がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病などの慢性疾患が疾病の中心を占めるようになりました。その結果、病気の発症と「死」との間に長い期間が存在するようになり、多くの人々が、疾病を持ちながら日常生活を送る時代となりました。また、それらの慢性疾患の要因として過食・偏食、身体的不活動、喫煙習慣などの好ましくない生活習慣との関係が明らかにされつつあります。このような状況の中で、人類は、ステントなどの人工臓器開発、遺伝子治療、再生医療、創薬などの科学技術を駆使した最先端医療を進めつつありますが、一方では、疾病の発症を防止する予防医学や更に、より一層健康を増進するヘルスプロモーションを推し進めることも必要となってきております。また、生物学的な寿命を延ばすことよりも健康寿命を延ばすことが、健康づくり施策の重要な課題となってきました。それを達成するためには、個人の生活習慣改善などの行動変容を進めることばかりでなく、それらを取り巻く社会環境への働きかけも重要となります。これらの働きかけは、小児から高齢者までのすべてのライフステージにおいて、さらに地域、職域、学校というすべてのセッティング(場)において、行われなければなりません。特に、良好な生活習慣の代表的なものである身体活動・運動、スポーツ、体力を対象とした研究の重要性が、一層増してきております。
そのような中で、日本体力医学会に集う研究者たちは、疾病を有する人、一般健常人、運動愛好者、競技選手それぞれの健康増進や効果的な競技能力向上を推進するために、生理学的・生化学的・解剖学的・分子生物学などの基礎医学研究から、体育学あるいは運動学におけるトレーニング指導、運動処方、さらには臨床医学や社会医学、疫学、心理学など多岐にわたる研究を押し進めています。
改めて、日本体力医学会の定款を読み返してみますと、第4条には、「本会は,体力ならびにスポーツ医科学に関する研究の進歩,発展を促進し,研究の連絡協力を図るとともに,その成果の活用をはかることを目的とする。」と定められています。
このような日本体力医学会の運営に責任を有する第9代理事長を拝命しました以上は、定款の目的を達成するために、第8代吉岡利忠理事長の進められてきた学会運営上の重要な課題、学会組織の法人化、および英文誌の刊行を引き継がせていただき、学会をしっかり運営し、学会の発展に微力を尽くさせていただく所存です。
その具体的な活動方針を以下に挙げさせていただきました。
- 1)学会の持てる力を存分に発揮するために、理事、評議員、会員一人一人が学会活動へ何らかの貢献をしていただくよう、理事会、評議員会、各種委員会のあいだでの対話を積極的に行い、民主的な学会運営を図ります。
- 2)学会組織強化の一環として、今期のうちに学会の一般社団法人化を進めてまいります。
- 3)学会誌編集については、和文誌を継続的に発行しつつ、欧文誌「The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine(JPFSM誌)」の発行を軌道に乗せ、内容の充実を図ります。
- 4)マルチレベルでの研究や実践での連携協力を図ります。日本体力医学会内では、会員間の連携(inter-individual)ばかりでなく、分野間の連携(intersectional)を、また体育学会、臨床スポーツ医学会、運動生理学会などスポーツ科学関連学会や肥満学会、糖尿病学会、高血圧学会、循環器学会などの臨床系医学会、公衆衛生学会、疫学会、栄養食糧学会などの健康関連学会などとの学際的な連携(interdisciplinary)、さらに国際的な学会(FIMS、AFSM、ECSS、ACSM)などとの国際的な連携(international)を図ってまいります。
- 5) 4)と関連しますが、本学会での研究成果の応用を図り、国や地域、職域、学校等で健康体力づくり、運動、スポーツの推進のための施策提言や各種ガイドラインの作成などを積極的に行ってまいります。
- 6)男女共同参画を推進するために女性の研究者の育成をさらに進め、学会のパワーアップを図ります。
- 7)健康科学アドバイザーについては、そのあり方について検討し、健康運動指導士や他の学協会の運動、スポーツの指導者制度等との関連等も含めて今後の方向性について議論する場を設けます。
これらの活動方針を達成するために、今期は、総務委員会内に設置されていたガイドライン検討委員会を新たに独立した委員会といたしました。さらに女性研究者、会員の活動を支援するために男女共同参画推進委員会を設置しました。また、渉外委員会と別個に広報委員会を設置し、ITを活用した学会の広報活動などを進めることとしました。
本学会が、益々発展していけるよう学会運営を行ってまいりたいと思いますので、ご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
学会概要
会員数:4,979名(2013年8月31日現在)
日本体力医学会会計年度:9月1日~翌年8月31日
(現在は2014年度:2013年9月1日~2014年8月31日)
学会事務局:〒112-0012
東京都文京区大塚5-3-13
小石川アーバン4階
一般社団法人学会支援機構内
日本体力医学会
Tel:03-5981-6015(学会専用)
Fax:03-5981-6012(学会支援機構)
E-mail:jspfsm@asas.or.jp
編集事務局:〒997-0854
山形県鶴岡市大淀川字洞合1-1
鶴岡印刷株式会社内
日本体力医学会編集事務局
Tel/Fax : 0235-22-3120
E-mail: hj-tairyoku@turuin.co.jp
会員数の推移
1961年8月 | 568名 | |
1970年8月 | 858名 | |
1977年8月 | 1,486名 | |
1985年8月 | 2,408名 | |
1990年8月 | 3,860名 | |
1995年8月 | 4,828名 | |
2000年8月 | 5,177名 | |
2005年8月 | 5,126名 | |
2010年8月 | 5,207名 | |
2011年8月 | 5,197名 | |
2012年8月 | 5,186名 | |
2013年8月 | 4,979名 |
体力科学に掲載された論文数-10年間ごとの比較-
1962年~1971年 | 138編 |
1972年~1981年 | 183編 |
1982年~1991年 | 273編 |
1992年~2001年 | 405編 |
2002年~2011年 | 361編 |