院内がん登録は、がん登録等の推進に関する法律の第3章(44条―45条)に基づき、厚生労働大臣の定める、院内がん登録の実施に係る指針い沿って全国のがん専門施設、がんの診療に力を入れている施設で実施されている、がんデータベースです。各施設、都道府県、全国でデータを活用して、がん医療の質の向上やがん対策の推進に資することが求められています。

解析をする際にはデータの特性を知ることは必須です。正しく理解して正しく活用されることを支援するために簡単に下記にポイントをまとめます。

1.院内がん登録の対象者

院内がん登録を運営している施設を受診した、悪性腫瘍、および一部の良性腫瘍、境界悪性腫瘍の患者が対象です。これらは、自施設で新しく診断した患者、他施設で診断されたが自施設の初診した患者が含まれます。

対象となる腫瘍:

悪性腫瘍はすべて。脳・脊髄に発生した良性腫瘍、境界悪性腫瘍、および以下の卵巣の境界悪性腫瘍が対象疾患です。悪性腫瘍の定義は、国際疾病分類腫瘍学(International Classification of Diseases - Oncology、ICD-O)で決定されます。2025年現在、3.2版(ICD-O-3.2)で定義がされています。

なお登録対象となる卵巣境界悪性腫瘍は、8442/1 境界悪性漿液性のう胞腺腫、8444/1 境界悪性明細胞のう胞腺腫、8451/1 境界悪性乳頭状のう胞腺腫、8462/1 境界悪性漿液性乳頭状のう胞腺腫 8463/1 境界悪性漿液性表在性乳頭状のう胞腺腫、 8472/1 境界悪性粘液性のう胞腺腫、 8473/1 境界悪性乳頭状粘液性のう胞腺腫です。

2.カバー率

国立がん研究センターの院内がん登録の報告書のページによると、全国がん登録で罹患数は2020年症例で、浸潤がん(悪性腫瘍)は、926,901、上皮内がんも含めると、1,037,572となっています。これに対応する院内がん登録の浸潤がんの「初回治療開始数」は、703,474となっており、カバー率は75.9%となっています。 上皮内がんを含んだ初回治療開始数は、800,102であり、 77.1%とされています。これらは、がん種や年齢によってカバー率は異なっていますので詳しくは、報告書をご覧ください(2020年症例カバー率報告書はこちら

3.各項目で知っておくべき事項

重複登録: 院内がん登録は、各施設で別個にデータベース化されていることから、ある患者が複数の施設に受診すると両方の施設で登録されます。これは全国収集データを国立がん研究センターが作成する際には整理されませんので、そのデータ上は重複登録があります。これを区別するために、データ上「症例区分」という項目があり、それの内容から「初回治療開始」例のみに限定すると、初回治療が開始されるのは原則1回だけなので、重複を排除することができます。

項目の詳細: 院内がん登録は全国共通の「標準登録様式」に記載されたルールに従って、そのルールに習熟し、国立がん研究センターの認定を受けた実務者の方々が中心となって作業を行っています。院内がん登録の実務者を支援するために、国立がん研究センターが「院内がん登録支援のページ」を運営していますので、その「学ぶ・調べる」というページから詳細な情報を得ることができ、解析についても役に立ちます。標準登録様式は2016年に大幅改定をされましたので、データも2015年診断症例までと、その後は変わってきます。

その他、UICC TNMの版や、ICD-Oの版、また、登録対象も時代とともに少しずつ変わってきます。以下にその概要をまとめたので参照してください。

他にも、細かいルールは適宜変更されています。特に2020年症例からはICD-O-3.2が採用されたことに伴い、変更は多岐にわたります。

原文は院内がん登録支援のページのこちらをご覧ください。

(以下、順次、充実させていきます。)