封入体と異常蓄積

(a) 筋萎縮性側索硬化症脊髄前角細胞におけるブニナ体。

(b) 白質中のBuscaino 小体(粘液細胞、異染性小体)は、組織固定不良と髄鞘の死後変性により発生することがある。H&E染色では、これらは淡明な青色の小体としてかろうじて見えるか、またはほとんど透明な空胞として見える。PAS染色で陽性。

(c) コロイド小体(ヒアリン封入体)は、ニューロンの細胞質内にある淡い好酸性の領域であり、電子顕微鏡では小胞体の拡張した嚢として観察される。通常は舌下神経核に見られるが、脊髄の前角細胞(左中)や、ごくまれにクラーク柱核(左下)などの他のニューロンにも見られることがある。病的意義は知られておらず、異常タンパク質蓄積や虎斑融解と勘違いしてはいけない。

(d) Cowdry A封入体は、神経系のヘルペスウイルス感染症(単純ヘルペスI型およびII型、サイトメガロウイルス感染症、水痘帯状疱疹ウイルス感染症、麻疹ウイルス感染症で見られるが、EBウイルス感染症では見られない)で見られる。電子顕微鏡で見ると、宿主細胞の核内でのウイルス粒子が蓄積している。宿主細胞の核内クロマチンが、核膜の端にクロマチンが押しやられ、ウイルス封入体が「フクロウの目」のように見える。このサイトメガロウイルス感染の場合、細胞の細胞質も拡大(サイトメガリー)し、ウイルス粒子によって腫脹している。

(e) 好酸性顆粒小体(EGB)は、ドット状の蛋白質の蓄積物であり、多形性黄色星状細胞腫など、低悪性度脳腫瘍で観察される。これらは、PAS染色によって明瞭に同定可能である。

(f) 好酸性結晶性封入体は、特に高齢者において、下オリーブ核のニューロンの細胞質に時折見られるが、病理学的意義は知られていない。

(g) Gamna–Gandy 小体は、鉄色素およびカルシウム塩で覆われた、線状で竹状の線維組織と膠原線維を含む病巣である。これらは、うっ血性脾臓巨大症の脾臓に記載されていたが、海綿状血管腫、側頭骨のコレステロール肉芽腫、下垂体腺腫、再発性出血を伴う神経系の血管増生した原発性および転移性腫瘍や嚢胞の周囲に見られる。1920年代に最初に記述されたとき、著者らは、真菌ではないことを証明するために多大な努力が必要であった。1922年の論文からカラー図となっている。

(h) Gamna–Gandy 小体、Huらによる1929年の論文からのモノクロ図。彼らは、波状にちりばめられた線維(左)や、波状の竹のような線維(右)であるGamna–Gandy 小体は、真菌の菌糸体と形態学的な同一性がないことを示した。

(i) 脳出血再発部位の組織中のGamna–Gandy 小体。

(j) 顆粒空胞変性(GVBs)は、正常な老化では海馬回の錐体神経細胞質に見られ、アルツハイマー病ではより広範囲で見られる、透明な空胞内の小さな点として現れる。これらの構造は、チューブリン、ニューロフィラメント、タウなどの蛋白質の異常集積である。

(k) 顆粒状の核分裂(上)は、細胞内のクロマチンの集簇であり、高度に分裂している組織でよく見られる。急性脱髄性病変で観察される。図はサイトメガロウイルス脳室炎の症例出見られたもので、微生物と勘違いしないようにする。ヘリング体(下)は球状または卵形の好酸性構造物で、周囲に膜があり、下垂体後葉(神経下垂体)の正常な所見である。これらは、オキシトシンとバソプレッシンの軸索内の貯蔵を表している。

(l) 平野小体は、縦断した場合は細長く、断面では楕円形の小体である。明るい好酸性の神経細胞内封入体で、正常加齢の海馬回錐体神経細胞に見られ、アルツハイマー病のような神経変性疾患では、より広範囲に見られる。平野小体はしばしば神経細胞外に存在するように見えるが、電子顕微鏡で見ると、神経細胞の細胞胞体や細胞突起の中に存在している。平野小体はアクチンとα-アクチニンから構成されている。