研究項目:A03-1
コネクトームの動的変化が生み出す機能創発のシミュレーション
浦久保 秀俊
藤田医科大学 医学部 准教授
研究室ウェブサイト:https://www.fujita-hu.ac.jp/~datascience/
Researchmap:https://researchmap.jp/urakubo
研究内容
発達や学習の過程で、個々の神経細胞はそれぞれ特徴的な微細形態の樹状突起を獲得し、その形態に基づいて機能を創発する。しかし、樹状突起の特徴的な形態がどのように獲得されるのか、獲得された形態がどのような機能を生み出すのかについて、定量的に理解することは容易ではない。本研究では、超解像顕微鏡や電子顕微鏡から得られた3次元画像に基づいて、膜電位・分子活性の時空間分布を推定するコンピュータシミュレーションを行い、形態と機能創発の関連を調べる。第一のターゲットとしては、匂い識別の機能を創発する嗅球の僧帽細胞に注目する。領域代表者の今井の研究によって、樹状突起刈り込みの分子機構が明らかになっている(Dev Cell 2023)。本研究では複数の樹状突起が競合し、単一の樹状突起が選別されるプロセスのシミュレーションを行い、自発神経活動の時空間パターンを擾乱した時の振る舞いを解析することで、ネットワーク活動の創発現象とニューロンレベルの創発をつなぐ原理を解明する。第二のターゲットとしては、記憶の素過程として古くから研究されてきた樹状突起スパインに着目する。特に、「ヘテロシナプス可塑性」に着目し、スパイン形態、数、密度など、シナプス可塑性の空間分布ルールを支配する法則の理解を目指す。同シミュレーションでは、統合失調症を始めとした神経疾患におけるスパイン異常とシナプス可塑性の関係を明らかにする解析も行う。