研究項目:A01-3
新生仔期の自発神経活動が創発する網膜の動き検出回路
米原 圭祐
国立遺伝学研究所 教授
研究室ウェブサイト:https://www.nig.ac.jp/nig/ja/research/organization-top/laboratories/yonehara
Researchmap:https://researchmap.jp/read0125092
研究内容
脳はしばしば環境中の動的な変化を時間情報に基づいて処理することができるが、その神経回路基盤がどのようにして創発するのかは不明である。生後発達期の網膜ではアセチルコリンを介した自発神経活動が波状に伝播するが(retinal wave)、これを阻害すると網膜やその下流の視覚中枢において動きを検出する神経回路の形成が阻害される。一見ランダムな方向に伝搬するretinal waveが、どのようにして動きの検出を担う精緻な神経接続パターンを創発するのかは分かっていない。研究代表者はこれまで、二光子顕微鏡による神経伝達物質イメージングと3 D電顕を組み合わせてシナプス入力の時空間ダイナミクスと接続構造を対応づけ、網膜における動きの検出機構を解明した。本研究では二光子神経伝達物質イメージングと3D電顕を併用して発達過程を追跡し、自発神経活動の波がどのような時空間パターンでシナプスや樹状突起を活性化するのか、自発神経活動の波が阻害されると網膜の動き検出回路のどの部分が破綻するのか明らかにする。遺伝学的な機構により創出された小さなバイアスに加え、スパイクタイミング依存性可塑性が関わっているという可能性を想定し、伝搬パターンの光遺伝学操作実験を行う。実験と理論を密に融合することで、動き検出機構の創発に重要な自発神経活動の時空間定数を決定する。