研究項目:A01-4

思春期におけるシナプス分布の動的変化と樹状突起演算の創発

今井 猛
九州大学大学院 医学研究院 教授

研究室ウェブサイト:https://www.lab.med.kyushu-u.ac.jp/dn/
Researchmap:https://researchmap.jp/takeshi.imai

研究内容

哺乳類の脳が高次機能を獲得するうえでは、脳発達の最終段階である思春期における脳機能創発過程が重要であると考えられるが、その実体はよく分かっていない。研究代表者は、独自に開発した脳透明化法SeeDB2と大規模超解像シナプスイメージングを駆使し、思春期には大脳皮質感覚野第5層ニューロンにおいて、尖端樹状突起の特定のコンパートメントでシナプス入力が劇的に増えること、これが統合失調症モデルマウスにおいて特異的に障害されることを見出した。本研究では、思春期におけるシナプス分布の動的変化によって樹状突起における入力統合や感覚知覚がどのように創発されるのかを明らかにする。二光子Ca2+イメージングを組み合わせて入力変化の役割を明らかにするとともに、膜電位シミュレーションによって樹状突起スパイク発生への影響を明らかにする。更に、感覚野第5層ニューロンから順行性・逆行性標識を行って発達ステージ毎に全脳イメージング解析を行い、思春期特異的に増える入出力の同定を行う。これにより、皮質局所回路の機能創発と脳全体で生じる機能創発の関係を明らかにする。さらに、思春期における感覚知覚回路の創発異常が統合失調症における感覚知覚異常(幻覚・妄想など)に関わっている可能性について検証する。